154.会いに来たヨ!
「サラちゃん……その子は誰なの? 何者なの?」
リシアが首を傾げながら、サラの膝の上に座る、彼女に頭を撫でられている少女を指差す。
大きくて宝石のように綺麗な赤眼。光に照らされていないにも関わらず、輝いているかのように見える美しく長く綺麗な銀髪。幼さと大人らしさ、それぞれの良さが際立つ端正な顔。本当に可愛くて美少女で、まるでクティラを幼くしたようにも見える。
僕は一度クティラを一瞥する。似ている、あまりにも似すぎている。違いを述べるならばクティラがストレートヘアに対し、少女は綺麗に結われたサイドテール。真っ赤なキャミのように見える服装を着ている少女に対して、クティラは普通の制服を着ている。と言ったところ。
それ以外は本当にそっくりだ。クローンではないかと疑いたくなるほどに。
「うん……っとね。リシアお姉ちゃん、この子はね──」
「サラお姉ちゃん! 私、自己紹介するからいいよ! そのまま撫でてて!」
「そう? それじゃあうん……」
サラが僕たちを見て説明しようとしたところを、少女が元気よく手を上げて遮った。
そのままサラは少女に言われた通り、口を紡ぎ、ゆっくりと慣れた手つきで少女の頭を撫で続ける。
「サラ……お前、サラお姉ちゃんって呼ばせてるのか」
「へ!? ち、違うよお兄ちゃん! この子が勝手にそう呼んでるの……!」
僕が思わず声に出してしまった呟きに反応し、サラは少女から手を離し、僕の呟きを否定するように必死に両手を振り始める。
正直そこはどうでもいいから、僕はサラの返事に返答せず、そのまま黙り込んで少女を見つめた。
今はこの子の正体が気になる。クティラそっくりの、銀髪赤眼美少女の正体が。
(そういえばクティラは知ってるのか……? この子の正体)
ふと気になり、僕はクティラを一瞥する。
彼女は変わらず、どこか不満げな顔をしながら、腕を組みながら睨みつけるように少女を見ていた。
その様子から察するに、流石にクティラは知っていそうだった。知っているからこその不満顔だろうし。
「……よいしょ!」
と。銀髪赤眼美少女が可愛らしく声を出しながら、ぴょんっとサラの膝の上から降り立った。
立っている姿を見て改めて思う。クティラを一回り小さくしたかのようだ、と。
「えっと……私はティアラ・ウェイト・ギルマン・マーシュ・エリオット・スマス・イン・ヤラ・イププトです! そこにいるクティラお姉ちゃんの妹です! よろしくお願いします!」
ビシッと敬礼するかのように。彼女は、ティアラは頭に手を添え、笑顔を浮かべながら彼女の名を言った。
「いも……うと……だと……!?」
「クティラちゃん、妹さんいたの!?」
僕とリシアは同時に驚きながら、同時にクティラを見る。
銀髪赤眼美少女、ティアラの紹介を聞き驚く僕たちに対し、クティラは先ほどと変わらず不満そうな顔をしながら腕を組みながら、ティアラを見ている。
「……む? エイジとリシアお姉ちゃんには言ってなかったか? リシアお姉ちゃんはともかく……エイジには言った気がするのだが」
クティラは僕たちの視線に気付いたのか。少し驚いたような顔でこちらに視線を寄越し、ボソッと呟いた。
彼女の呟きに僕は思わず首を傾げる。クティラに妹がいるなんて、僕は聞いた覚えがないからだ。
「私も初めて聴いた時驚いちゃった……全然知らなかったもん。クティラちゃんに妹がいたなんて」
と。いつの間にか立ち上がっていたサラがこちらに足を運びながら、呟きながらやって来た。
僕、リシア、クティラ、サラの四人はティアラと向き合うような形で横に並ぶ。そんな僕たちを、ティアラはニコニコとした顔で見ている。
「久しぶりだねクティラお姉ちゃん! 一ヶ月ぶりくらいかな? 会いたかった! わーい!」
と。ティアラはクティラをキラキラとした目で見ながら両手を上げ、次の瞬間、目にも止まらぬ速さでクティラに抱きついた。
ぎゅっと。ぎゅっと。ぎゅうううううううっと。側から見てもわかるほどに、クティラはティアラに力強く抱きしめられる。
「……何用だティアラ。何故、私の居場所がわかった? どうして、私の元にやってきた?」
姉妹の再会を喜ぶティアラに対し、クティラはどこか不満げだ。
仲が良くないのだろうか? ティアラの反応を見るに、とてもそうには思えないけれど。
「お姉ちゃんに会いたかったから来たの! お母さんもお父さんもヴァンパイアハンターに見つかったら大変だからダメって言うんだけどね……どうしても会いたかったから来ちゃった!」
「……うむ。そうか」
ニコニコしながらクティラを見るティアラに対し、クティラはずっと不満そうな顔をしている。
するとクティラは、無理矢理ティアラを引き剥がし、彼女にしては珍しく、大きくため息をついた。
「エイジ……私は私の部屋に戻っている。ティアラを頼んだぞ」
「……ウチにお前の部屋なんて無いけど?」
「何度も言っているだろう? 私とエイジは一心同体。ならばエイジの部屋は私の部屋だ。完璧な理論武装、反論も正論も受け付けん」
それだけ言うと、クティラは重い足取りでゆっくりと、リビングを出ていった。
「なんかクティラちゃん……元気ないね?」
と。リシアが首を傾げながら僕に問う。
ので、僕は頷くことで彼女の問いに同意した。確かに、あまりクティラらしくない。ティアラと会ってからドヤ顔もしないし。
「そうなの? クティラお姉ちゃんっていつもこんな感じだよ?」
僕たちが首を傾げていると、ティアラが何故かリシアの服の裾を引っ張りながら、首を傾げながら言った。
(ティアラと昔、何かあったりしたのかな? クティラのやつ……)
クティラが重い足取りで去っていった廊下を見て、僕はそう、頭の中で呟く。
「リシア、サラ。ちょっとティアラ……ちゃんを見ていてくれ。僕はクティラを見てくる」
なんとなくクティラの態度と様子が気になったので、僕はリシアとサラにティアラを任せ、クティラの元へと向かうことにした。ので、その意図を彼女たちに伝えた。
「ん、了解お兄ちゃん」
「……クティラちゃんをお願いね、エイジ」
「……んっ」
──厄介なことが起きなければ良いけれど。




