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146.なんだかとってもモヤモヤ

「本当にごめんね、ウチの咲が……」

「別に私は気にしてないぞ?」

「……クティラちゃんはもう少し気にした方がいいと思うな。だって奥さんなんでしょ? ね、リシアちゃん」

「そういえばそんな設定だったな……ならばそうだな、私のこの余裕綽々な態度は、妻であるが故に信頼しているからこその態度、ということでどうだ?」

「どうだって……なんか今決めた設定みたいじゃん。ね、リシアちゃん」

「うむ……確かにそうかもな。どう思う、リシアお姉ちゃん」

「おーい……リシアちゃーん?」

「リシアお姉ちゃん?」

「……えいっ」

「ぴぇ!?」

 突然、頭をペチっと叩かれ、私は変な声を出してしまった。

 それと同時に無意識に私は顔を上げてしまう。視線の先にいたのは、目を細めながら私を不思議そうに見つめるアムルちゃんとクティラちゃん。目を逸らすことなく、私をじっと見つめている。

「え……えっと……何の話してたっけ……?」

 少しボーっとしていて、二人の会話を何も聞いてなかったし、何も聞こえていなかった。

 だってエイジがいなくなっちゃったのが寂しくて、ちょっと辛くて、正直悲しくて──

(……誰に言い訳してるんだろ、私)

 私は、私をじっと見つめる二人に気づかれないよう意識して、自分のダメさ加減にため息をつく。

 エイジがいないからって、その寂しさを露骨に態度で示すはよくない事だ。気持ちを切り替えないと。

「そ、それで二人とも! 何の話してたんだっけ!」

 何も答えてくれない二人を交互に見て、私は改めて質問をする。

「あーっとね……ウチの咲がごめんなさいって話をしてたの。ほら、愛作くん勝手に持っていちゃったでしょ?」

「ぴぇ……そ、その話……」

 改めて言われると、ちょっと辛い。そりゃ、私とだけずっと一緒に居てとまでは思わないけれど、私はやっぱりエイジと一緒にお昼ご飯を食べたかった。

 先に約束したのは私なのに。なんでエイジは咲畑さんを選んじゃったんだろう。すごくモヤモヤする、ムカムカもする。

(やだ……私、嫌なこと考えてる……)

 嫉妬心? ジェラシー? それに似た感情が私の中で渦巻く。

 そして最悪の考えと想像も。私の知らない間に咲畑さんがエイジととても仲良くなっていて、私以上の仲になったらどうしようと、考えてしまう。咲畑さんがエイジに好意を持っていて、それを伝えて成就してしまったらどうしようと、想像してしまう。

 やだ。絶対やだ。すごく嫌だ。何が何でも嫌。どうしても嫌。エイジの隣には私が立ちたい、立っていたい。絶対に、絶対にだ。

「それにしても咲畑咲……第一印象とは随分性格が違うな。生徒会らしいし、私はてっきり清楚な真面目系女の子だと思っていたぞ。今日の彼女を見ると、存外小悪魔めいた性格のように感じたが……」

「あー……咲、基本猫かぶってるからね。下手くそだけど」

 アムルちゃんとクティラちゃんが楽しげに会話を始める。私はそれに、上手く混ざれない。

 考えすぎだってわかってる。だけどやっぱり、ずっと心がモヤモヤして、何だかすごく気分が落ち込んでる。ダメだな今日の私、ちょっとヘラってる。

 私は楽しそうに会話をしている二人の邪魔をしないように、彼女たちに聞こえないように、もう一度小さくため息をついた。

「……あ、そうだ。ねえねえクティラちゃん、リシアちゃん。今度一緒に遊びに行かない?」

「うむ……いいな、それは。もっとアーちゃんと仲良くなりたいと思っていたし、私は賛成だ!」

「アーちゃん言うなしっ」

「あいた……っ」

 イチャイチャする二人を見ながら、私はお弁当箱に入っている卵焼きを箸で取り、ひょいっと軽い調子で口に放り込んだ。

(美味しい……)

 卵焼きを飲み込むと同時に、私は思わずため息をつく。

(うぅ……今の私、本当に嫌な女。せっかくアムルちゃんとクティラちゃんが楽しんでるのに……それに乗れないで自分の事ばかり考えて場の空気悪くしかけてる……)

 わかってる。自覚してる。こんなんじゃダメだって。

 でも耐えられない。抑えられない。いつもだったらもう少しメンタルに余裕があるんだけど、今日はあの日だからダメなのかな? タイミング最悪だ。

 目の前でエイジが私以外の女の子を選んだのが、自分が思っているよりショックだったのかもしれない。

 なんだか、将来を予期させた感じで。いつかエイジは、私とサラちゃんの元から離れていっちゃうんじゃないかと、思わされて。

「──って事でいいかな? リシアちゃん」

「いいだろう? な、リシアお姉ちゃん」

「……ぴぇ!? あ、うん! いいと思うよ……!」

 と。突然二人に同時に聞かれ、私は全く聞いていなかった会話に、テキトーに返事をしてしまう。

(はぁ……私、こんなんだから友達少ないんだろうなぁ……三人でおしゃべりしてるのに一人だけ変な事頭の中だけで色々考えちゃって……はぁ……)

 私は心の中だけでため息をついて、お弁当の唐揚げを一口食べた。

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