134.帰宅後の決戦
「くくく……サラよ! 知るといい……そして刮目せよッ! 種族の違い、その差をな!」
「クティラちゃん……私、信じてたのに残念だよ。私は人間で、クティラちゃんはヴァンパイア。それでも仲良くなれると思っていた、仲良くなれたと思っていたのに、私たち、決して相容れぬ関係だったんだね……」
「それが現実なのだ、それが真実なのだ。私ももう少し……楽しみたかったのだがな」
「……お兄ちゃんの仇、絶対取るんだから」
「エイジか……いい養分だったよ、おかげで私はここまで登り詰められたのだからな」
テレビの前に座って、変に芝居がかった様子で喋りながらゲームをするサラとクティラを見ながら、僕は思わずため息をついた。
彼女たちがやっているゲームは所謂パーティゲーム。最後まで沢山お金を持っていた人が勝ちという、よくあるゲーム。
一応僕も参加しているが、序盤に謎にクティラに集中攻撃をされ、逆転は不可能な状態だ。ので、半分諦めている。
「……む!? まさかそのアイテムは!?」
「ふふふ……クティラちゃん。どうやら女神様は私に微笑んだみたいだよ! 勝利の女神様が!」
「ぐぬぅ……! あのアバズレ女神め……!」
「あー、そう言うこと言っちゃダメなんだー。女神様に失礼だよクティラちゃん」
「すぐに浮気する女に配慮などするものか!」
僕も一応参加しているのに、もう死んでしまったみたいな扱いで、自分たちのターンだけ盛り上げるサラとクティラ。
なんか、一緒にゲームをしているはずなのに、凄い疎外感を感じる。同じ部屋で、同じテレビを使って、同じ時間を過ごしているはずなのに、僕だけ仲間はずれな感じがする。
「あと少しなのだ……このターンを耐えられれば私の勝利は目の前に……!」
「見させないよその光景は……全力で邪魔してやるんだから……!」
「……ふふふ……ふはは! 耐えたぞ! 私は耐えたぞ! どうだサラ!? あの尻軽女を信じたのがお前の敗因と言えよう!」
「……まだ勝負は終わってない。浮気性の女神様のこと、きっとまた私に微笑んでくれるよ……!」
(……さっきから女神様、酷い言われようだな)
完全に僕そっちのけで、勝利の女神様を罵倒しながら戦いを続けるサラとクティラ。
正直見ていて羨ましい。ゲームに熱中できて、夢中になれて、全力全開で遊んで、心の底から楽しんでいるのだから。
こういうパーティゲームでは、僕のようなもうほぼ負け確状態の人間には、もはや諦めてテキトーにボタンを連打することしかできない。目の前で次元の違う戦いを見せられている武闘家のような気分だ。悲しいしちょっと寂しい。
「これが最後のミニゲーム……! クティラちゃん……私負けないからね!」
「化け物を倒すのはいつだって人間……とは誰の言葉だったか。だがなサラ、意思の強さだけではどうにも出来ない事もある。それが、お前が私に勝つということだ」
「始まる前から諦めるほど私は愚かじゃないし弱虫でもないよ……! 相手に挑む、その一歩を踏み出した時点で、道の先に勝利というゴールが作られるんだから」
「自分を奮い立たせるため、慰めるためのポエムか? それは。くくく……思う存分自分に都合の良い言葉を並べて肯定感を満たすといい。勝負とは、勝利とは、気持ちの強さで決まり得られるほど単純なものではないのだ!」
「勝つ……絶対に……ッッ!!」
「……む!? なんだその動きは!? 信じられん……どういうことだ? サラなのか? 本当にサラか!? お前は……愛作サラなのか!?
「人は成長するから人間なんだよ……! 学習して、学んで、それを活かしてこその人間! 人間を舐めすぎだよヴァンパイアッ!」
「……ッ! ならば全力で叩きのめすまで!」
「遅いよ意識するのが! 私は最初から叩きのめす気で挑んでいたんだから!」
「く……ッ!?」
テレビ画面を見ながら、お互い叫び合いながら、サラとクティラは凄い勢いでボタンを連打する。
ちなみにミニゲームの内容は、可愛い羊さんを上手く誘導して自分の領地に連れて行くゲーム。ほんわかとする陽気な音楽と、羊さんの可愛い鳴き声が部屋に鳴り響いている。
「甘いなサラ……! その甘さが! ほんの少しのミスが! 貴様を殺すのだ!」
「死なない……死ねない! 絶対に勝って見せるんだからッッッ!」
メェーメェーと可愛い鳴き声が響く中、サラとクティラはそれとは対照的に、殺伐とした声色と言葉で叫び合う。
頭がおかしくなりそうだ。どうして、こんなに可愛い羊のミニゲームで、こんなにも叫び合えるんだろうか。
「負ける……!? 私が負けるのか!? このクティラ・ウェイト・ギルマン・マーシュ・エリオット・スマス・イン・ヤラ・イププトが負けると言うのか!?」
「敗北を知るといいよクティラちゃん……そして今度は、もっと強くなって、また私も戦おう……!」
「……むぅぅうう!?」
クティラか叫ぶと同時に、ミニゲームが終わりを告げた。
勝者はサラ。クティラとは集めた羊の数の差わずか二での勝利。すごい接戦だった。
「お兄ちゃん……仇、取ったよ」
ゲームパッドを片手に持ち、それを天へと向け掲げるサラ。
僕はそんなサラを見ながら、なんとなく呟いた。
「……えと……ありがとう……?」
「……今、お兄ちゃんがありがとうって言ってくれた気がする。私には聞こえた……お兄ちゃん、ずっと見てくれてたんだね。私のこと、天国からずっと……」
「……言っておくけど、僕は付き合わないからな。そのノリ」
「……むぅ。お兄ちゃんのバカ」




