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12.初登校

「……よし。男だ」

 目が覚めた。それと同時に僕は自分の股間に手を触れ、息子があることを確認する。

 一気に立ち上がり、思いっきり背伸びをする。

「……なんだエイジ、もう起きたのかぁ……」

 すると、眠そうな声で隣に寝ていたクティラが目を擦りながら話しかけてきた。

 パジャマがはだけていて、露出度が高い状態。僕は彼女から目を逸らしながら、話す。

「今日は学校だからな……早起きしないとダメなんだよ」

 そう、今日からまた学校が始まるのだ。貴重な週休二日をクティラのせいで休めなかったから疲れが溜まっていていつも以上に行く気が起きない。

 昨日は早く寝たかったのに、全然眠れなかった。だから今ものすごく眠くて、ちょっと体調が悪い。

 何故眠れなかったか、それはクティラが隣にいたからだ。

 マスコット状態のクティラなら、アニメキャラのぬいぐるみ的な感じで特に何も意識しなかったが、美少女形態のクティラは破壊力が凄まじかった。

 ぬいぐるみより大きいから、当然川の字で寝ることになる。それ故、顔が近くて、吐息をいつも以上に感じて、柔肌が時折触れたりして──

「……はあ」

 僕は急いで首を左右に振り、ため息をつく。

 いちいちこんなくだらない事を考えていたらメンタルがもたない。まるで発情期みたいで、自分が気持ち悪い。

「……脱ぐから部屋から出てろよ」

 僕が制服に着替えようとすると、クティラの視線を感じたので僕は彼女に出ていくよう指示した。

 しかしクティラは何も答えずに、首を傾げる。

「別によくないか……? 居ても」

「……まあ、そっか」

 不思議と恥ずかしい気持ちとかはないし、全裸になるわけじゃないんだし、別にいいか。

 僕は彼女の視線を気にせずに、パジャマを脱ぎ始めた。



「なー昨日のアニメ観たかー?」

「そう! そうなの! ほんとメメが尊すぎてさぁ……」

「若井さーん、この提出物なんだけど……」

「あ馬鹿お前! この敵先にやらないとダメだろうが!」

「ははは! お前それはねーべ!?」

 騒がしい教室、騒音だらけの教室。

 僕は友達と対面になるように席に座りながら、教室にいた。

 いつも通りの教室。何も変わらない教室。極々普通の教室。

 すごく安心する。クティラもいないし、僕は今吸血鬼状態ではないはずだからヴァンパイアハンターも現れないだろうし、本当に安心する。

 学校ってこんなに安心する場所だったんだ。何も変わらない、不思議なことは起きないしがない教室。そんなこの教室が、こんなにも安心できる場所だなんて知らなかった。

 安心したら、トイレに行きたくなってきた。

「ちょっと、トイレ行ってくるわ」

「おう、しっこか?」

「ああ、しっこだ」

 くだらない会話を交わしながら、僕は立ち上がる。

 教室を出て、廊下を歩いて、真っ直ぐにトイレへと向かっていく。

 中に入る。誰もいない。ラッキー。

 あえてめちゃくちゃ勢いつけた放尿でもしよう。そう意気込みながら、僕は便器の前に立ち、チャックを下ろ──

「ふーん……最近の学校のトイレって綺麗なんだな」

「ここ私立だし……な……あぁ?」

 誰もいないはずなのに、誰かが話しかけてきた。

 耳元に聞こえてきた声。聞き覚えのありすぎる、女の子の声。

 肩に感じる体重。ほんの少し香る甘い匂い。

「……なんでいるんだよ」

「暇だったからついてきたのだ!」

 僕の予想通り、いつのまにか肩に、クティラが自信満々に立っていた。

「……はあああ」

 僕は思わず大きなため息をつく。

 これ、絶対に面倒なことが起きる。そう思うと、一気に憂鬱な気分になった。

 最悪だ。

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