115.夜
夜の街。綺麗なネオンで彩られた不可思議な場所。
スーツ姿のサラリーマン。全身ピンクと薄紫のゆめかわ女子。シャッターに背をもたれタバコを吸う男。
そんな街を、そこにある道を、少女が一人で歩いている。
ニコニコと笑みを浮かべながら、ウキウキと気持ちを昂らせながら、ドキドキと胸を高鳴らせながら持っている封筒を開ける。
中から出てきたのは数枚の現金。それを見た少女はニヤリと口角を上げ、札を一枚一枚取り出していく。
「いち、に、さん、し、ご、ろく、ななっ。ふーん……たまにはアホな約束守る男もいるんだね。相場とかわかってないのかな……いいカモってやつ?」
呆れたように嘲るように笑みを浮かべながら、少女は札を封筒の中へと戻す。
片手で持ったその封筒を指だけで持って一回転させてから、彼女は短いスカートに付けられた小さなポケットへとそれをしまった。
少女は歩き続ける。道ゆく人々を品定めしながら、スキップ気味に歩き続ける。
(うーん……どうせするならイケメンがいいよね。いないけどさ……せめて綺麗な身だしなみの人がいいなぁ。女の人でもいいけど……)
キョロキョロと辺りを見回しながら、少女は歩き続ける。
無精髭が生えほつれた服を着たおじさんを無視して、怪しい雰囲気を出す中途半端イケメンの甘い言葉を無視し、こんな所に来てるくせにやけに偉そうな態度をしている男を無視して、少女は獲物を探し続ける。
(あー……逆に私が買うのもありか。逆転の発想ってやつ? 私意外と頭いいのかもなー)
自画自賛をしながら、少女は歩き続ける。
そして次に目に入った女の子の元へと近づいた。ポケットに手を突っ込みながら、その中に入っている封筒を人差し指で撫でながら、少女は女の子の元へと近づく。
近づいてくる少女に気づいた女の子は、怪訝そうな顔をして少女を見た。そんな彼女の表情を見て、少女はニヤリと笑う。
一歩二歩三歩と近づき、少女は女の子の目の前に辿り着いたと同時に、ポケットの中身を取り出した。
器用に指を動かし、女の子の目の前に封筒を出すと同時にその中身も晒し彼女に見せる。ニヤニヤと笑みを浮かべたまま、少女は一番前に出ている札の端をピンっと弾いた。
「……いいかな?」
少女が一言呟くと、女の子は疑いの目を少女に向けながらも、ゆっくりと頷く。
「……かわいっ」
女の子の手を少女が取る。それと同時に、彼女たちは歩き出した。
*
橙色の照明で照らされた広めの部屋。その中心にある大きなベッド。そこに、裸の女の子が息を乱れさせながら倒れている。
頬を紅潮させ、目をとろんとさせ、どこにも視線が合っていない。
同じく裸の少女は、女の子の隣に座りながら、自身の着けていた下着を人差し指だけで持ちながら、くるくると回している。
(女の子同士って……相手が男と違って、モチモチだしふわふわだし、反応も可愛くて楽しいんだけどさ。やっぱり……アレが無いだけで全然違うよね。イマイチ満足できない。まあそもそもするように出来てないしね……女の子同士でなんて)
隣に寝転ぶ女の子に聞こえないように、とても小さく静かなため息をつきながら少女は立ち上がる。
そして机の上に置かれた封筒を手に取り、未だ息が定まらない女の子の目の前に置いた。
少女は優しく女の子の頭を撫でて笑みを浮かべ、そっと離れた。
「……明日は学校かぁ」
脱ぎ散らかった下着を拾い集め、少女は天井を見上げながら呟く。
長い髪をかきあげながら、自身の顎に人差し指を添えながら、少女はニヤリと笑みを浮かべた。
「……やっぱり今の獲物は、愛作くんだよね」
クラスメイトの苗字を呟きながら、少女はスマホを手に取る。
少女が手に取ると同時にスマホの画面がつく。少女はその画面を見て、少し目を見開き驚いた。
「アムじゃん……こんな時間に珍しい」
友人からのメッセージが届いた通知を見て、少女は思わずそう呟いた。
それと同時に彼女は振り返り、ベッドの上で未だ横たわる女の子を見る。
「それじゃあ私、先に帰るね。また機会があったらよろしくぅ……ってね」
女の子に向け手を振りながら、少女はスマホを置いて着替え始めた。




