104.友達に会いに行こう
「……ッと。待ち合わせ場所はここで合ってるな」
「……むぅ」
午前十一時ちょっと過ぎ。僕とクティラはいつものショッピングモールに来ていた。
ふわふわと、ゆらゆらとリシアが結んで編んだサイドテールを揺らしながら、クティラは不満そうに頬を少し、膨らませている。
「またここか……? この街にはここしか娯楽施設がないのか? 飽きないのか? 近辺の学生たちは」
「……まあ明日は学校あるし、遠出とかできないし。しょうがないんじゃないか?」
クティラの言っていることはもっともだ。僕も昨日来たばかりだし、先週も来たし、正直飽きた。
けれど、気軽に来れて誰でもわかる集まりやすい場所はここしか無いし。遊ぶとなったらここばかり選ばれるのはしょうがないと思う。
「……あ、エイジくーん!」
と。少し離れたところから僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
声のした方を見ると、ケイが笑顔を浮かべながら大きく手を振って、こちらに近づいてきていた。
薄いグレーのパーカーを着ており、その下にはキラキラとしたピンク色の文字で「Theres no accounting for tastes」と書かれているシャツを着ている。なんて読むのかわかんないし意味もわからない。
生足を大胆に出しながら履いているのは短めの真っ黒な無地のスカート。それを翻しながら、彼はゆっくりと歩いてくる。
「わ……エイジくん! 可愛い格好してるね!」
少し上目遣いをしながら、ニコッと微笑みながらケイがそう言う。
可愛い、と言われたせいか。僕の胸がドキンッと高鳴った。
僕は思わず彼から顔を逸らす。頬に熱が帯び始め、顔が赤くなっていくのを感じる。
「うぇ……ええとこれはだな……」
彼を、ケイを見ないようにしながら。僕は説明を始めた。
「その……サラが勝手に……僕は嫌だと言ったんだけど、素材がいいのに勿体無いってうるさくてだな……」
「なるほどサラちゃんのセンスか……ふむふむ」
僕が今着ているのは黒が主体のワンピース。サラが何か専門用語みたいな何かを多用しながらドヤ顔でファッションを説明していたが、それは全部忘れた。
とりあえず。サラが自信満々だっただけに、確かに今の僕に合っている可愛い服だとは思う。全体的にヒラヒラしていて落ち着かないけど。
──恥ずかしい。自分のことを可愛いと思う日が来るなんて、全く想像つかなかった。
「クティラちゃんもこんにちは! 髪型変えたんだね?」
「うむ。こんにちはだ、ケイ」
幼い妹を撫でるかのように、微笑みながらクティラの頭を撫でるケイ。
クティラもそれに身を任せ、気持ちよさそうに目を細めている。猫か、コイツは。
「えっへへ……ごめんね昨日は。急に電話しちゃって」
と、苦笑いをしながら軽く頭を下げるケイ。
「いや別に……気にしなくていいよ。暇だったし」
「そうだぞケイ。エイジに繊細な配慮など不要で無駄だ」
(……ん? なんか今、バカにされたような)
僕とクティラがフォローを入れると、ケイはすぐに頭を上げ、嬉しそうに口角を上げた。
そのまま、姿勢を正すように、荷物を持ち直すように動いてから。またも彼は微笑む。
「それじゃ行こっか……エイジくん、クティラちゃん」
「うむ!」
「おう」
僕とクティラは同時に返事をしながら頷く。それとほぼ同時にケイも頷き、彼は歩き出した。
ので。僕たちはそれに続く。一体どこに行くんだろうか。




