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冤罪で異界に流刑されたのでスローライフを目指してみた  作者: 灰銀猫


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気持ちの整理

 黙り込んだガルアを前に気まずい時間をどれくらい過ごしただろうか。変化はリューンがドアから出てくることで訪れた。


「リューン……」

「ガルア、待っていてくれたの?」

「あ、ああ」


 ガルアの姿を視界に入れてパッと表情を明るくしたリューンに対してガルアの表情は浮かなかった。あんなにいちゃついているくせに自信がないとか理解出来ないんだが、それもドラゴンの性質なんだろうか。


「リューン、フィンは?」

「ルークさんも。あ、姉のこと、ご存じだったんですね」

「ああ。以前コルナガで会ったんだ。あの時妹を探しているとは聞いていたんだけど……名前を聞いてなかったから気付かなかったんだ」

「そうでしたか。姉がお世話になったんですね」

「いや、俺の方こそ助けて貰ったから」


 あの時は竜殺しという酒を飲まされて死にかけたとこをフィンの治癒魔術で治して貰い、そのお返しにとネイトさんとの繋ぎをした。とは言ってもそれもあまり意味はなかったんだけど。


「姉さん、一人になりたいって言うので今はそっとしておいてくれませんか?」


 眉を八の字に下げてリューンがそう言うのなら仕方がない。心配だけどフィンはおかしな行動をとるような奴じゃない。今は気持ちの整理がつかないんだろう。それもそうだろうな、死んだかと思って探した妹は実は駆け落ちしていたって言われたら……俺も直ぐには受け入れられない、かもしれないし。


「わかったよ。ほら、ガルア、帰るぞ」

「ふふ、ガルア、帰りましょう」

「あ、ああ」


 フィンがガルアの手を取ってようやくガルアの表情が緩んだ。脳筋で考えなしと思っていたけれど意外に繊細らしい。リューン限定だけど。フィンのことも気になるけれど、家族のことに俺が口出しするのも失礼だし、ここは姉妹に任せるしかない。フィンは優しいからそのうちわかってくれるだろう。俺が知っているリューンはいつも幸せそうに笑っていた。それはフィンも望んでいたはずだ。






 その翌日、俺がフィンを訪ねると彼女はコルナガに戻ると言った。


「リューンのことは……」

「御免なさい、ルークさん。まだちょっと気持ちの整理がつかなくて……」

「そっか」


 どこで折り合いをつけるかは人それぞれだから仕方がない。納得しろと強制できるものじゃないし、フィンは少し離れて考えたいのだろう。


「わかったよ。じゃ、コルナガに戻るか」

「はい、お願いします……」


 元気がないのはまだ気持ちが定まらないせいか。リューンも間違っちゃいないが、残されたフィンにしてみれば納得いかないのは仕方がないのかもしれない。これは気長に構えるしかないんだろう。魔道具でリューンを連れてコルナガに戻った。

 魔道具はコルナガの近くのネイトさんの住む黒杉の森が登録地点だったから、そこからは歩いてフィンが世話になっている教会に向かった。


「なぁ、フィン、ちょっと提案があるんだけど……」

「提案、ですか?」

「ああ。あの教会に住んでいる孤児のことなんだけど」


 俺はあの教会に行ってから考えていたことをフィンに話した。アシーレの街は出来たばかりで今は人手が足りないこと、子どもでも出来る仕事があること、何ならシスターも一緒に引っ越してこないかと言うことだった。あそこにいるよりはアシーレにいた方がずっと食べられるし待遇もいいだろう。元々ならず者が集まって出来た街だから差別も少ないし、元々孤児だった人も少なくない。


「それは……」

「まだ物資が十分じゃないから家も足りないけど、今のところ俺たちが張っている結界があるから天幕での生活でも困らないし、魔獣の被害も殆どない。街造りが始まったばかりで人手不足でさ。子どもたちがこっちに来て職人らに仕事を教えて貰えば手の職も付くだろう? 悪い話じゃないと思うんだが」

「そ、うですね。でも……」

「ああ、急にとは言わないし、何なら試しに街に来て貰ってもいい。でも、ここにいても食べるだけでも精一杯だろう? 幸いアシーレは森の恵みが豊富だし、飢えることはないと思うから」


俺が採って来た魔石が原資だけど、それが尽きることは当分ないくらいにはある。それで買った食料以外にも、魔獣肉も魔魚も手に入り放題で食糧事情は相当いいレベルだと思う。子ども三人とシスター二人くらい養っても足りなくなることはない。


「それにシスターや老婦人は読み書きできるんだろう?」

「ええ、あの方々は裕福な家の出身だそうですから」

「だったら街の皆に字を教えてほしいんだ。あんまり読み書き出来る奴がいなくってさ」


 老婦人も先生として街の皆に字を教えてくれたら助かる。やっぱり学がなきゃ仕事だって捗らないし。


「まぁ、急がないけど、よかったらフィンから話してみてくれないか?」

「え、ええ。そう言うことなら」


 フィンも何ならアシーレに来ればいいと思う。何と言ってもリューンがいるし。それに医者がいない辺境の街だと治癒魔術が使える奴は一人でも多くいてくれた方が安心なのもある。






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