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冤罪で異界に流刑されたのでスローライフを目指してみた  作者: 灰銀猫


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悩むガルア?

「ルークさん、家族に何かあったのですか? 姉さんが私を探していたのは、もしかしてそのため?」


 リューンの顔色が段々悪くなっていった。俺も詳しいことは知らないけれど、彼女が駆け落ちしたのと同じくらいのタイミングで家族が襲われて両親が亡くなっている、らしい。その辺の経緯は俺にはわからないけれど、両親が亡くなっているのは間違いない。


「お、俺も詳しいことは聞いていないんだ。それに……そういう話はちゃんとフィンから聞くべきだと思う」

「そ、そうです、よね……」

「リューン、大丈夫か?」


 リューンも俺の気持ちはわかってくれたらしいけど、胸に手を当てて考え込んでしまうとガルアが心配そうにリューンの様子を伺った。リューンにだけは本当に過保護だよな。


「わ、私……ルークさん、姉さんは今どこに?」


 ぱっと顔を上げたリューンの目はいつものほんわかしたものではなかった。強い光を宿したそれはフィンによく似ていて、ああ姉妹なんだな、なんてのんきなことを思ってしまった。・


「フィンはマルガさんの宿屋だ。二階の一番突き当りの部屋だ」

「二階の突き当りですね?」

「ああ」

「リューン、まさか……」

「ルークさん、ガルア、ちょっと行ってきます!」

「え? ま、待て! リューン!」


 ガルアが制止する前にリューンは駆け出してしまい、慌ててガルアが後を追った。聖属性なのもあって普段は一人で外に出ないリューンにしては珍しい。ガルアが追っていったから大丈夫だろうとは思うけど、フィンと喧嘩になるかもしれないよな。


「ステラ、すまない。ちょっと様子を見てくるよ。ガルアが一緒だと話が進まないかもしれないし」

「そうですね。ガルアさんはリューンさんのことになると心が狭いですから」


 半ば呆れたようにステラが苦笑したけど、ガルアの心の狭さは街の人ならだれもが知っているほど広まっている。家のことはステラに任せてマルガさんの宿に向かった。


 慌てることはないかと思って歩いて向かった俺だったけれど、宿屋は予想に反して静かだった。リューンはここに来なかったのかと思うほどだったが、フィンの部屋の前にはガルアが壁に背を預けて立っていた。


「ガルア、リューンは?」

「……ルークか。今中で話している」


 会話の邪魔にならないようにしているのかと思ったけれど、どうやら会話を盗み聞いていたらしい。執着心が普通じゃないけどドラゴンはそういうものだとデルが言っていたっけ。それでも同席しなかっただけ進歩したのか。それともリューンが二人で話をしたいといったのか。多分後者だな。


「ルークよ……リューンは姉と行ってしまうのだろうか……」


 珍しく心細そうにガルアが呟いた。家族が亡くなったことでリューンが家に戻るというのを恐れているのだろう。ガルアはリューンから家族の話を聞いていただろうし、駆け落ちして心配をかけたことも理解している。両親が亡くなったことをガルアが知っているのかはわからないけれど、家族の一大事となればリューンがフィンと行ってしまうと恐れているのだろう。リューンがそんなことをするとは思えないけど。


「リューンがガルアを捨てるとは……」

「ぐっ!!」


 そこまで言っただけなのにガルアが胸を押さえて顔をしかめた。執着心が強くて番とか言う概念を持つガルアにとっては想像するだけでもダメージが大きいらしい。大袈裟過ぎないか?


「リューンはそんなことしないだろう。それくらいなら駆け落ちなんかしないと思うし」

「そ、そう、だよな?」


 縋るような目で俺を見られても困るんだけど。それはリューンに聞いて欲しい。それにリューンがガルアを捨てるとかありえないと思うし。って、俺の顔でそんな情けない顔しないでほしいんだけど。いつもは偉そうなくせにリューンのことになると途端に弱気になるんだよな。まぁ、ここでこの二人の仲が壊れたら、リューンのために身体を乗っ取られた俺の立場はないから一生添い遂げて欲しいとは思うけど。


「信じるしかないだろうが。もっとどっしり構えていればいいだろう? 駆け落ちまでしたんだから」

「それは、そうなんだが……」

「何だよ? 何か気になるのか……」


 珍しくうじうじしているけど何かあったのか? 仲違いするような兆候はなかったと思うけど。


「我が……リューンを閉じ込めているから……」

「ああ、そうだな」

「それでリューンが窮屈に感じて嫌になってしまうかもしれない……」

「自覚あったんだ」


 思わず口に出てしまったら睨まれたけど、自覚があることが意外だった。


「だったら少しは自由にさせてやればいいだろうが。街の中なら今のところ安全だろうし」

「それはそうなのだが……だがリューンは珍しい聖属性だ。誰かに狙われたらと思うと……」


 ああ、確かにな。リューンは珍しく聖属性を第一属性として持っているし、その力も強い。駆け落ちしたのも神殿に狙われていたからだったっけ。神殿に連れていかれたら外に出して貰えなくなるからガルアも不安なのだろう。今は人間だから神殿とやり合うだけの力もないし。


「そこはリューンと話し合えよ。リューンだって理解して表に出ないんだろう?」

「そ、そうだが……」


 何が問題なんだ? もしかして俺は惚気を聞かされているのか? あんなに四六時中一緒にいるんだから話し合えよ。






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