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冤罪で異界に流刑されたのでスローライフを目指してみた  作者: 灰銀猫


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話し合い

 それからは食事をしながらリューンがここにいる経緯を話した。時々ガルアが口を挟んで話が中断するから仕方なく声が出せない様に魔術で黙らせた。リューンを心配するのはわかるが過保護過ぎて痛いレベルだ。まぁ、ガルアにとってはリューンを連れ戻しに来たように見えているんだろう。フィンにそんな考えはないんだけどな。でもそれを話して理解するかわからないからとりあえず黙らせておく。


「それじゃ……あなたは自ら望んでこの人といるのね?」


 物凄く不本意そうにフィンはリューンに尋ねた。その対象が俺の身体ってところに複雑なものを感じるが仕方がない。さすがにガルアがリューンのために俺の身体を奪ったことは話さなかった。それを話したらガルアの評価が著しく落ちるし、俺がドラゴンだったってこともバレてしまうからな。ここでのんびり暮らすためにもそれは避けたかった。まぁ、フィンには悪いけど真実は知らないままでいてくれ。その方がフィンも幸せだと思うし。


「ええ、姉さん、私、ガルアと一緒にいるわ。離れたくないの」


 フィンの目を真っすぐに見てリューンが答えた。そこには普段のほや~っとしたリューンはいなかった。覚悟を決めた表情はギギラの街で飢え死に寸前の生活に甘んじていたその時に見たものだった。ガルアの愛情表現が激しいから気付きにくいけど、リューンも相当激しい気性を持っているんだよな。でなかったらあんな生活出来なかっただろうし。

 問題はフィンだ。ここでフィンが認めなくてもリューンはガルアの側から離れないだろう。種族の差も超えた二人だからな。


「わ、私は……認められない……」

「姉さん」

「認められないわよ! どうして?! お父様もお母様も殺されたわ!! なのにあなたはどうして……!!」


 普段のフィンからは信じられないほどの取り乱しようだった。フィンはフィンで死んだかもしれない妹を必死に探していたのだろう。両親の死を悲しむ間もなく妹を探した結果、男と一緒に駆け落ちだったと言われれば……こうなっても仕方ないかもしれない。それくらいこれまでのフィンの生活は過酷だったんだろう。いや、リューンもそうだったけど一人じゃなかった。相思相愛の支えがあったリューンと、ルゼという仲間がいてもたった一人でリューンを探していたフィン。心情的にはフィンの方が辛かったのかもしれない。


「姉さん、ごめんなさい。姉さんには悪いと思っている。でも、私はガルアと一緒にいる。家を出る時そう決めたの」

「そう! あなたは家族を捨ててその男を選ぶって言うのね?!」

「……どちらかを選べというのなら……そうよ」

「わかったわ!! 勝手にしなさい!! 私ももうあなたを妹だとは思わないから!!」

「姉さん?!」

「姉さんなんて呼ばないで!! 私の……私の妹は死んだのよ!!」


 そう言うとフィンは立ち上がって出て行ってしまった。


「姉さん!!」


 リューンが追いかけようとしたけれど、それは俺が止めた。今話をしてもフィンは聞く耳を持たないだろう。余計にこじれるかもしれない。


「俺が行って来るよ。皆は食事を続けてて」


 ガルアの術を解いてから俺はフィンを追った。この街に始めてきたフィンが行く先なんて決まっている。


「マルガさん、紅髪の冒険者の子帰ってきた?」

「ああルーク。今帰ってきたところだよ。何だかえらく慌てていたけど、どうしたんだい?」

「う~ん、姉妹喧嘩かなぁ」

「姉妹喧嘩? あの子の妹がこの街にいたのかい?」

「うん、まぁ、そんなとこ」


 今は詳しく話すよりもフィンが心配だったので適当に言葉を濁してフィンの部屋に向かった。まぁこの街には訳ありの人が多いからマルガさんもわかってくれるだろう。


「フィン? いるか?」


 ドアをノックして声をかけたが返事はなかった。帰ってきているのは確かだから……今は誰とも話したくないのかもしれないな。少し自分の気持ちを落ち着かせる時間が必要かもしれない。


「また来る。あんまり思いつめるなよ」


 もう少し気の利いたことが言えたらいいんだけど……そんな言葉しか出てこなかった。




 家に戻るとリューンとガルア、ステラはまだ食事をする部屋にいた。三人は既に食べ終えていたから俺を待っていてくれたんだろう。その気持ちが今は妙に嬉しく思えた。一人でリューンを探していたフィンのことを思うとそう感じるのかもしれない。一人きりは気楽だけど、同時に耐え難い寂しさも付き纏うから。


「ああ、すまない。片付けてくれたらよかったんだけど」

「そんなわけにはいきませんよ。それに……フィンさんは?」


 ステラも気になっていたのか心配そうに尋ねてきた。ステラは帝国から追放されているから家族には二度と会えないって思ってる。だからこそ会える距離にいるのに離れてしまわないかと心配しているのだろう。


「う~ん、話しかけても返事がなかったから帰って来たよ。フィンも気持ちの整理をする時間が必要かなって」

「そう、ですね」

「まぁ、落ち着いたらまた話が出来るだろう。家族のこともまだ話していないんだし」


 そう、今日話したのはリューンが駆け落ちした話でリューンたちの両親のことまでは話していない。そこまで行けなかったんだよな。


「ルークさん、家族のってどういうことです?」


 怪訝そうに尋ねてきたのはリューンだった。そう言えばリューンは知らなかっただっけ。え? どうしよう。これ、俺から話しちゃってもいいのか?






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