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冤罪で異界に流刑されたのでスローライフを目指してみた  作者: 灰銀猫


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コルナガへ

 デルに話を聞いて街に戻った。ディオにゾンビのことを詳しく聞きたいと思っていたが、家に戻ると留守の間にディオが訪ねてきたと言った。


「ディオが? 何の用だろう」

「そこまでは私も……戻ったら宿屋に顔を出してほしいと言っていましたよ」

「そうか」


 そういうことなら顔を出してくるか。何の用なのかも気になるし、デルの言っていたゾンビの詳細や魔術師の関与があるのかも聞いてみたい。それがこっちに向かってくるなら対策をしなきゃいけないけど、何をどうしたらいいのかもわからない。ディオたちがどんな指示を受けているのかをもう少し深く聞いてみたかった。


 宿屋に向かうとディオはガエルと一緒に出かけたと出迎えてくれたルゼが言った。


「出かけたって、どこへ?」

「詳しい場所までは聞いていないが……多分周りの哨戒だろう。いつもこの時間はそうしているから」

「そうか。ルゼはどうして街に?」

「武器が傷んだので修理が出来ないかと相談していた」

「ああ、それで?」

「ここでは無理だと言われた」

「そっか」


 そうなるよな、ここには鍛冶師がいないから。ここで食っていけるほどの需要もないし。行くならコルナガ辺りだろうな。歩いていくとかなり時間がかかるけど、魔道具なら一瞬だし。


「どうするんだ?」

「武器がなければ戦えないから……一度修理が出来る街まで戻る」

「戻るって、どこへ?」

「ここなら……一週間もあれば鍛冶屋がいる街がある。そこまで行けば……」


 一週間か……片道でそれなら戻ってくるのは一月後か? それで間に合うのか? いや、それはゾンビ次第だけど……


「だったら……コルナガに行くか?」

「コルナガ?」

「ああ、あの街なら魔道具で一瞬だし」

「本当か? 助かる。こいつがないと戦いようもないんだ」


 珍しくルゼが口の端を上げた。こいつ笑えたんだな。今まで無表情か疑う表情くらいしか見たことがなかったから意外だった。ディオたちが戻るにはまだ時間がかかるというので、ルゼを連れてコルナガに飛んだ。ルゼは初めての経験だったらしく無表情なりに戸惑っているようにも見えた。


「そう言えば……フィンはどうしたんだ? もう一緒に行動していないのか?」


 あれから二人がどうなったのか知らない。ネイトさんもあれから会っていないと言っていたし。


「フィンはコルナガにいる」

「コルナガに? じゃ、ハンターは……」

「ハンターは続けているが、今回は危険すぎるから連れてこなかった。今は知り合いのところで暮らしている」

「そうか」


 確かにゾンビ相手じゃドラゴンハンターでも危険だよな。フィンの腕は知らないけれど、身体も小さいし腕力はなさそうに見えた。属性は火と聖だけど魔力量が少なそうだからそっちも当てに出来ないし。


「会っていくか?」


 不意にそう問われて考えてしまった。会って……特に話すことはないけど、そう言えば妹を探していたんだっけ。その妹はどうなったんだろう。


「探していたとかいう妹は見つかったのか?」

「よく覚えていたな。まだ見つかっていない」

「そうか」


 ルゼの見立てでは死んでいるってことだし、簡単じゃないか。俺は運よく兄さんに再会出来たけど、あれは本当に運がよかったんだな。フィンの妹が見つかるといいんだけど。俺の街にも行商人が来るし、名前や特徴だけでも聞いておくか。なにかの手掛かりになるかもしれないし。


「そう、だな。久しぶりに会ってみるか」


 フィンはブルードラゴンを家族の仇として追っていたけれど、ルゼの話では犯人は街の行政官と騎士だという。彼らの不正をフィンの父親が知ってしまったため、口封じのため襲われたのだろうとも。それをフィンは受け入れたのかが気になった。


「フィンはまだブルードラゴンが仇だと思っているのか?」

「いや、今はそれよりも妹を探している」

「そうか……」


 そうなるよな。行政官の不正を暴くのは簡単じゃない。それよりも妹を探したいと思うのが普通だ。


「それで、妹は……」

「今のところ手掛かりなしだ」

「そうか……」


 やっぱり簡単じゃないよな。俺なんか本当に運がよかっただけだ。小さな偶然が一つでもなかったらきっと兄さんを見つけることは出来なかっただろう。フィンもせめて妹だけでも見つかって欲しいと思う。


「ルークさん!?」


 外で水汲みをしていたフィンが目を丸くして声を上げた。フィンが匿われていたのはコルナガの町外れの小さな教会だった。随分廃れた感じで屋根や壁の一部が崩れかかっているし、敷地を囲う柵なんかもあちこちが朽ちてなくなっていた。


「フィン、久しぶりだな」

「ルゼ? どうしてルークさんと?」

「ゾンビを追っていた先で会った」


 相変わらず説明が足りないルゼだったから俺からフィンに説明すると、フィンは懐かしそうな目をして笑った。笑えるならいい、元気に暮らしているのが何よりだからな。


「何もないところですけど、中へどうぞ。シスター! お客様よ!」


 教会のドアを開けながらフィンが中に向かって呼びかけた。




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