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冤罪で異界に流刑されたのでスローライフを目指してみた  作者: 灰銀猫


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ゾンビについての考察

 移転先で飛んだのはデルの家から少し離れた場所だった。懐かしい。結局ギギラの街で暮らすようになってからは戻っていなかったし。属性的にもここの湖は性に合う。


「なんじゃ、珍しい組み合わせじゃな」


 現れたのは老婆姿のデルだった。最近は美少女の方ばかり見ていたので違和感が……


「デルミーラ様、ちょっとご相談があって参りました」

「そうかそうか、まぁ入れ。ああルーク、せっかく来たんだから後で碧雲石を取って来てくれ」

「あ~はいはい」


 そうなるだろうなぁと思っていたら案の定そうなった。まぁこれからまた協力してもらうことになりそうだからいいけど。デルに茶を淹れてくれと言われたので三人分のお茶を淹れて配る。なんか、ここに来ると使用人扱いじゃないか俺? まぁデルの淹れるお茶は余計なものが入っていそうで怖いし、ネイトさんは直ぐに酒を入れたがるからいいんだけど。茶を淹れている間にネイトさんが事のあらましをデルに話してくれた。


「ゾンビドラゴンのう……」

「心当たりはあるのか?」

「ないな」


 茶をすすりながらデルが即答した。ないって……もう少し何というか、ないか? 可能性がある事象とか……


「そもそもゾンビ化などあり得んだろう。あるとしたら……いや、だがあり得ないな……」

「何だよ、あり得ないって」


 そう言われると気になるじゃないか。今は小さなことでも可能性として知っておきたいんだけど。


「あり得ないと思えることでも教えてくれよ。もしかしたら答えに繋がるかもしれないし」


 知り合いの中で一番物知りなのは『業焔の魔術師』なんていう二つ名を持つ天才魔術師のデルなんだ。


「……可能性があるのは、他属性の取り込み過ぎだろうな。あとは……魔石の上乗せなら、あるいは……」


 皴だらけの顔に皴を増してデルがそう言った。


「デルミーラ様、さすがにそれは……」


 ネイトさんもその可能性をやんわりと否定する。その様子からも殆ど可能性がないように見えるけど……


「何だ、その魔石の上乗せって?」


 俺は初めて聞く言葉に首を傾げた。


「ルーク、魔石の上乗せってのは魔獣に本来持つのとは別の魔石を与えることを指すんだ」

「ああ、それで上乗せって……でも、そんなこと……」

「ああ、不可能だろう? 魔石は魔獣が身体の中で年数をかけて作るある意味命そのもので、一つの個体に一つしかない。なんせ魔石は身体であり魔力の塊だからな」

「ああ」


 それくらいなら俺にもわかる。魔力ってのは一人ひとり違うから魔石も決して同一の物は作り得ない。そりゃあ、他人の魔石を身体に取り込むなんて不可能だよな。でも、待てよ……


「まさかとは思うけど、そういう研究をする馬鹿がいたら……」

「そういうことじゃな」


 デルの答えにネイトさんが頷いた。


「世の中には研究馬鹿が存在する。しかも普通はやらないような訳の分からない研究をする者も一定数存在するからな……」


 それって怪しげな研究をしているデルに言われたくないんだけど……いや、何の研究をしているのかは絶対に教えてくれないんだけど。


「まぁ、他人の魔石を死にそうな者に代替えとして……という研究があるのは噂で聞いたことがある。ただ、倫理的な問題から禁忌扱いされていると聞くが……」

「いるのかよ……」


 禁忌って言われたら余計にやりたがる馬鹿が出てくるんじゃないのか?


「魔力は完全に一致することはないから理論上は出来ても実際にあり得ないんだ。それよりも他属性の溜め込み過ぎだな」

「そうじゃな。その方が現実的じゃな」


 ネイトさんの言葉にデルが同意したけど……


「何だよ、他属性の溜め込みって」

「言葉通りじゃ。自分が持たない属性の魔力を必要以上に溜め込み過ぎると起きる。普通はいくら溜め込もうとしても許容量以上は流れ出るから起きることはないんじゃ」


 それだってやろうと思って出来ることじゃないだろう。身体を壊してまでやろうとする理由もないし。


「今のところ可能性としてありうるのは他属性のため込みじゃな。だが魔道具を作り出す人間ならまだしも、ドラゴンにそんな力があるとは思えない」

「だったら……」

「どこぞの魔術師が絡んでいるやもしれんな」


 その可能性は俺も考えていた。ドラゴンは力技を好むから魔術を使おうという発想もない。あるとしたら彼らが持つ秘術くらいだろう。それだって伝え聞いたものしか知らないし出来ないらしいし。


「そのゾンビには多分魔術師が付いているのだろうな。だとしたら厄介だ。そういう魔術師はどこにも所属せずに己の願望を叶えるために動く者が多い。倫理観や常識が欠落している可能性もあるからな」

「それじゃ、人に被害が出ても気にしない可能性も?」

「あるじゃろうな」


 ちょっと待てよ! だったらハンターがどうこう出来る範囲を超えているんじゃないか?


「まぁ、そうであれば中央の魔術師も気付いておるじゃろう。奴らが解決に乗り出している可能性もあるぞ」

「だったら……」

「ハンターは場所の特定と監視じゃろな」


 それなら心配する必要はないのか? そもそもゾンビが街に近付いているとも限らないし……でもルダーの知り合いなんだよな。それを知ったら放っておくのも薄情な気がするし……とりあえず街の守りは強化した方がいいかもしれない。





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