ドラゴンゾンビ?
「ルーク、どうした?」
黙り込んだ俺を不思議に思ったのか、ガエルが声をかけてきた。こんな時だけどうして気付くんだ? う~ん、後味悪くなるのも嫌だし、後で様子見に行ってくるか。そう言えばガルアはルダーを知っているだろうか。
「それで、ゾンビはどれくらい迫ってるんだ?」
ルダーは後でいい。それよりもゾンビがどの辺にいるのかが問題だ。近くに迫っているなら街を守る必要もある。
「それが……隣の行政区に現れたのは確かめたが、その後は行方が分からないんだ」
「わからない?」
「ああ、この辺は辺境だし、山も木が多いからな。隠れられると見つけるのは至難の業だ。俺たちは奴らみたいに飛べないからな」
「まぁ、確かに」
図体がでかくてもこの辺の山は樹海みたいなもんだから身体がでかいドラゴンでも身を隠せる。上空からならまだしも、人の足で歩いて探すなんて湖の底に落とした砂粒を探すようなもんだろう。
「小さな集落が襲われて村ごとやられたところもある。それで俺たちハンターがこの周辺を回っていたんだ。他にも多数のハンターが捜索している」
行き先不明か。それはそれで厄介だな。ずっと警戒し続けるのも大変だし。
「そうか……俺たちは、街の皆はどうしたらいい?」
アンザさんがディオに尋ねた。他の街はどうしているんだろう。ここでも出来ることがあるならやっておきたい。
「そう、だな。出来ればこの地を離れて欲しいが、そうもいかんだろう?」
「ああ、やっとここに移住してようやく落ち着いたところだ。離れるのはさすがにな」
「だろうな。だったら……出来る限り森に入るのは避けてほしい。行くとしても複数人で。見つけたらとにかく逃げろ」
「逃げろって、どこに?」
「……遭遇したハンターの話では、奴は図体がでかいから小回りが利かん。左右どっちでもいいから散開して逃げた方がいいらしい」
「散開か……」
「ああ。だが、詳しいことはわからん。前代未聞のことだからな。弱点なども火を嫌がるってことくらいで……」
どうやらハンターもよくわかっていないんだろうな。まぁ、小回りが利かないのは確かだろう。ゾンビなら空を飛べないだろうし、森の中だと木が邪魔するから追うにも素早くは動けないだろうし……ゾンビなら光属性が効くのか? その辺はデルかアンザさんが詳しそうだ。一度話を聞きに行くか……
「ルゼ、頼みがあるんだけど」
「何だ?」
「この辺でドラゴンを見ても攻撃しないでほしいんだ」
「何だと?」
うわ、眉間に深い皴が出来た。まぁ、ドラゴンハンターに狩るなって言う方が無理筋か。でも今は避けてほしいんだよなぁ。
「言葉が通じるブルードラゴンがいるんだ」
「何だと?」
反応したのはガエルだった。強面の顔が一層険しくなっている。
「そのドラゴンは俺の知り合いだ。魔石を探している時に知り合って仲良くなった。色々助けて貰っている」
「ドラゴンが助けるだと? そんな馬鹿な!」
ガエルが顔を歪めて怒気を露わにしたけれど、ここは譲れない。
「この街を造る時に原資になったのはブルードラゴンに貰った魔石だ。お陰で食料や資材も手に入れられたし、他の街から職人を呼べた」
嘘は言っていない。そのブルードラゴンが俺ってだけで。それに町の人にもどうしてそんなに魔石が取れるのかを聞かれたからそう答えておいた。そうしておけばこの近くでブルードラゴンの姿を見られても敵意を持たれることも少なくなるから。
「馬鹿な! ドラゴンがそんなことをする筈が……」
どうもガエルはドラゴンを相当恨んでいるらしい。顔を赤くしてその感情を俺に向けてきた。ドラゴンを庇う俺が許せないか。
「ルークの言う通りだな」
「なっ!!」
同意したのはガルアだった。まぁ奴は元々ドラゴンだったんだから当然か。でもこんなところで同意するような気を利かせられるようになったとは意外だった。少しは社交性が身に付いたか?
「そのブルードラゴンには我も助けて貰ったことがある。恩人だ」
「ああ、ルークの言うことが本当なら俺たちもだな。あの魔石がなきゃ今頃何人生き残っていたか……」
すかさずアンザさんも援護してくれたけど……あれ? もしかして正体、バレてる?
「馬鹿な! ドラゴンがそんなことするわけ……!」
「落ち着けガエル。ルークと言ったか、そのドラゴンは信じられるのか?」
「ああ」
ディオが念を押すように尋ねてきたけれど、俺自身だから間違いない。そこは約束する。真意を探るように俺を見ていたディオが目を閉じた。どうすべきか考え込んでいるのだろうか。




