69 大喜を案ず
69話です!
よろしくお願いします!
薄暗く、誰もいない旧校舎の教室。
俺はそこに一人でぼうっと佇んで、どうするべきか、とさっき聞いてしまった大喜の話について考えていた。
少し前まで「文化祭マジック」なんて言葉に踊らされていた頭はいつの間にかどこかへ行ってしまった。
俺は、基本的には友人の恋路は素直に応援したいと考えるタイプだ。でも、今回は大喜の恋心の向かっている先が杏実さんだというのだから難しい。
俺は杏実さんに幾田碧という『想い人』がいるのを知っているし、その恋路を今まで手伝ってきた。だから俺はどうしても杏実さんが碧と結ばれる方を願ってしまう。
でも、幼馴染に恋する同志として大喜の想いも無下にはできない。幼馴染に想いを寄せる気持ちは痛いほど分かるから。
今の状況で大喜が杏実さんに告白しても成功する確率は限りなく低いだろう。多分、振られてしまう。
だからといって、それが分かっているからといって、大喜を説得して告白するのを止めさせるなんてことは絶対にしてはならない。それは恋心の侵害だ。
杏実さんの想いも大喜の想いもどちらも取りたい、どちらも捨てられないという優柔不断さに思わず乾いた笑いが漏れる。
俺は、何もできないのだと。
やってくるだろうと分かっているけれど、手の出しようがない未来を案じ、頭を重くするのと同時に、この旧校舎に来た理由を思い出し、俺は資材を取りに足を動かした。
色んな事を考えすぎて重くなった頭を抱えたまま、俺は旧校舎を少し回り、先輩から依頼された資材を見つけた。そしてそれらをひとまとめに持つと作業をしている三年七組の教室へと戻った。
教室に戻り、資材を先輩の元へ届けると、感謝されると同時に、戻るのが少し遅かったのではないかと訝しまれた。遅くなった理由をちゃんと説明すると大喜の話に触れてしまうかもしれない、たとえ大喜のことを知らない人が相手でもあの話は絶対にしてはいけない、頭が重くなっているせいでそんな極端な思考に陥っていた俺は「たまたま友達に会って……」と言葉を濁してその場を乗り切った。別にそんな言い訳なんか要らないはずだったが。
話は一転するが、俺達の『展示』は「鬼」をテーマに何かしよう、という考えから始まり、最終的には様々な文献などの資料を元に教室全体を使って鬼の集落を作ろうという結論に至った。
今は絶賛それの製作中で、教室には様々な道具が散乱している。
そんな教室を眺めていると、俺を見つけた舜太と直紀が何やら話しながらこちらにやってきた。
「なあ佑! 俺が作ったこの金棒めっちゃリアルじゃないか?!」
「いやいや、俺の面の方がすごいって!」
正直、今のメンタル的にそんな風に楽しげな会話を繰り広げるほどの気力は無かったが、疲れたり悩んだりしている素振りをみせて変に勘繰られる方が明らかに面倒だったので「ん〜、舜太の面かな」といつもの調子で返しておいた。
そして、そのままの流れで俺も鬼の集落用の小物の製作に取り掛かろうとすると、後ろから声をかけられた。振り返ると、『展示』のリーダーをやっている航先輩だった。
「あー、ごめん佑。生徒会から受け取らないといけない資料があるんだけど取りに行ってくれないか。本来は俺が受け取りに行って説明を受けないといけないやつなんだが、生憎と今の作業は手が離せなくて。リーダーの俺の代わりに受け取りに行くなら一年のリーダーをやってくれてる佑に頼みたい」
まだ作業に取り掛かる前だったし、何より先輩がちゃんと俺を頼ってくれている事を誇りに感じ、「了解です!」とすぐに返事をした。大喜の件で頭は一杯だが、それに囚われたままではいけない。
「じゃあ、頼むよ佑。生徒会室ね」
「はい!」
もう一度声をかけてくれた先輩に返事を返すと、俺は足早に生徒会室へと向かった。
ただ、『展示』のためにしっかり動こうと意欲的に考える頭の片隅には未だに大喜の話がこびりついて離れなかった。
読んでいただきありがとうございました!
現在テスト期間につき、少し短めになりました。
また、この重要な場面で焦った執筆をして作品のクオリティを下げることはしたくないので、もしかすると投稿ペースが下がるかもしれないと断っておきます。なるべく両立できるように頑張りますが。
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