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ノルンとふしぎなものがたりたち

ノルンとふしぎなゆめの花

 ノルンは、お花が大すきな女の子。

 赤いお花も、黄色のお花も。

 白いお花だって。

 クンクン、いいにおい。

 お花にかこまれると、おひめさまになったきぶん。


 おともだちのジャックと、学校から帰るとき。


「ジャック、あっちにきれいなお花があるわ!」

「ノルン、こっちにもあるよ!」


 ふたりはより道ばかり。

 ジャックが走れば、ノルンも走ります。


「まって、ジャック!」


 ジャックは、学校で一番足がはやいので、おいつくのがたいへん。


「ほら! こんなにきれいなお花がいっぱい!」

「ほんとだぁ!」

「マイヤーおばさんにあげたらどうかな?」


 マイヤーおばさんは、ノルンといっしょに住んでいます。

 ノルンは、マイヤーおばさんのことが大すき。


「うん!」


 ノルンは、一本だけ、つみました。


「もうちょっと、はやく帰ってきなさい、ノルン」


 いつもはやさしいマイヤーおばさん。

 でも、帰りがおそいと、やっぱり心配のようです。


「ごめんなさい。でも、ほら」

「まあ! かわいいお花」

「おばさんに」

「ノルン、ありがとう」


 えがおのマイヤーおばさんに、ノルンもにっこりとわらいました。



 ある夜。


「ノルン、おやすみ」

「うん。おやすみなさい、マイヤーおばさん」


 ノルンは、お星さまにおねがいします。


「ゆめの中でも、いっぱいのお花が見られますように」


 ベッドにもぐりこみ、ノルンは目をとじました。


「あれ?」


 ノルンが目をあければ。


「うわぁ!」


 まわりには、お花がいっぱい。

 赤、黄色、白。

 青に、むらさき。

 見たことのないお花もあります。


「すごぉい!」


 ノルンはお花畑を走りました。

 すると、小さなかげがとびだしました。


「わぁ!」

「きゃっ!」


 ノルンと小さなかげは、ごっつんこ。


「いたたぁ……」

「ご、ごめんなさい! だいじょうぶ?」


 ノルンは、小さなかげに手をさしだしました。


「こちらこそ、ごめんね。あら? あなた、見たことないわね」

「うん、はじめてここにきたの。わたしは、ノルン」

「ノルン、はじめまして。わたしは、エメ。ここを守るようせいなの」

「えっ⁉ ようせいさん!」


 エメは、キラキラとノルンのまわりをとんで見せました。


「ノルンは、お花がすきなの?」

「大すき! いいにおいがするし、かわいいもの」

「じゃあ、わたしがここをあんないしてあげる!」

「ほんと⁉ エメ、ありがとう!」



 どこまでもつづく、お花畑。

 あまいかおりが、ふわりとまって。

 キラキラ花びらが光っています。


「ずっとここにいたいなぁ」


 ノルンが、お花畑にごろんとねっころがったとき。


「あれ?」


 とおくのお空が、くらくなっていることに気づきました。


「エメ……なんか、へんだよ?」

「ときどき、あの黒いくもが見えるの……」

「なんだか、こっちに近づいて来ているよ」

「ほんとだ……!」


 ふたりがお空を見ていると、黒いくもがぐるぐると。

 まっ黒なオバケとなって、お花畑におりてきました。


「ワハハハッ! ここもオレさまのものにしてやる!」


 まっ黒なオバケが、ふぅっと息をはくと。

 お花の色が、まっ黒になってしまいました。


「なんてことするの!」


 エメがおこると、まっ黒なオバケはこわい顔。


「オレさまは、きれいなお花が大きらいなんだ! おまえも、こうしてやる!」

「きゃあ!」

「エメ!」


 エメは、まっ黒オバケの息で、まっ黒になってしましました。


「にげないと!」


 ノルンは、エメを手のひらにのせます。

 そして、まっ黒オバケにせなかをむけて、走りました。


「まてぇ! おまえもまっ黒にしてやる!」


 おそろしい声が、きこえます。

 ノルンは、いっしょうけんめいにげました。



 やっとまっ黒オバケが見えなくなって。

 ノルンは、エメをお花の上におろしました。


「だいじょうぶ? エメ……」


 エメはまっ黒のまま。


「ノルン……にじ色のお花をさがしましょう」

「にじ色のお花?」

「うん……にじ色のお花なら、また色をとりもどしてくれるわ。でも、それがどこにあるのか……わたしにも、わからないの」


 ノルンは、エメに葉っぱのおふとんをかけてあげました。


「エメは、ここでまっていて。にじ色のお花は、わたしがさがしてくる!」

「ノルン……ありがとう……!」



 お花畑は、どんどんと黒くなっていきました。

 まっ黒オバケの息が、ビュゥビュゥ。


「はやくしないと、お花がぜんぶまっ黒になっちゃう……」


 ノルンは、まっ黒オバケに見つからないように、そろり、そろり。

 お花にかくれながら、にじ色のお花をさがしました。


「どこにあるのかしら?」


 下を向いて、にじ色のお花をさがしていると。

 またまた、ごっつんこ。


「きゃッ!」

「いだッ」


 ノルンは、しりもちをつきました。


「ごめんなさい……! 前を見てなかったから……」

「ううん、ボクも……」

「えっ⁉ ジャック!」


 顔を上げたノルンは、ビックリ。

 そこには、おともだちのジャックがいたのですから。


「ジャック? ちがうよ? ボクは、ジェック」

「……ジェック?」


 顔はよくにていましたが、どうやらジャックではないようです。


「わ、わたしは、ノルン」

「ノルン、よろしく」


 ジェックは、ノルンをおこしてくれました。


「ここは、どうなってしまったんだ? どんどんまっ黒になってしまって……」

「まっ黒オバケが、お花の色を黒くしちゃったの」


 ノルンは、ジェックににじ色のお花のことを話しました。


「ボクもいっしょにさがすよ!」

「いいの?」

「ひとりより、ふたりでさがした方が、見つかるって!」

「ジェック、ありがとう!」


 ふたりは、またそろり、そろり。

 まっ黒オバケに、見つからないように、にじ色のお花をさがします。

 ビュゥ、ビュゥ。

 どんどんお花が黒くなっていきました。

 すると。


「ジェック、あそこを見て」


 お花畑の中で、少しだけ、高くなっているところ。

 そこが、キラキラ、キラキラと。

 にじ色に、かがやいているではありませんか。


「きっとあそこだわ!」

「じゃあ、ボクがまっ黒オバケをひきつけるよ!」

「えっ⁉ あぶないわ!」

「ボクは足がはやいから、だいじょうぶさ」


 ジェックは、走りました。


「やい! まっ黒オバケ! ボクをまっ黒にしてみろ!」

「んん? なまいきなヤツだ!」


 ビュゥビュゥ!

 まっ黒オバケの息が、さっきよりもつよく。

 ビュゥ!


「へへっ! 当たらないよ!」

「ぐぬぬぅ! これならどうだ!」


 ビュゥビュゥ!

 まっ黒オバケは、ノルンに気づきません。


「今のうちに、にじ色のお花を……!」


 ノルンも、まっ黒お花畑を走ります。

 少し高くなったところへ向かって。


「にじ色のお花! 見つけた!」


 キラキラしているところの、ちょうどまん中。

 にじ色のお花は、さらにキラキラと光っていました。


「にじ色のお花さん、おねがい! このお花畑をもとにもどして!」


 ノルンのことばに、にじ色のお花からたくさん色がとび出しました。


「なんだッ⁉ うわぁ……わああああ!」


 赤、黄色、青。

 オレンジ色、みどり。

 白に、むらさき。

 いろいろな色が、まっ黒オバケをつつみました。


「おぉ……オレさまの色が……」


 まっ黒はあっという間に、にじ色。


「ノルン! ありがとう!」

「エメ!」


 とおくから、もとのすがたにもどったエメが、とんで来ました。


「あっ、あなたは!」

「エメ? どうしたの?」


 にじ色のかんむりをかぶって、にじ色のお洋服。

 りっぱな白いひげをたくわえたおじいさんが、まわりを見まわしています。


「わしは……いったい……」

「ゆめの王さま!」


 そう。

 まっ黒オバケのしょうたいは、ゆめの国の王さまだったのです。


「えぇ⁉ 王さま!」

「なんで王さまが、まっ黒オバケに?」


 ノルンとジェックは、顔を見あわせました。


「あぁ……わしは、たのしいゆめをわすれてしまっていたのだ……」


 王さまは、自分の手を見て、話します。


「みな、ゆめの中でも、こわいことや、くるしいことばかり。それを、たのしいゆめにかえることが、わしのやく目だったのに……もうしわけない……」


 エメは、王さまの大きな手に、のりました。


「もうだいじょうぶですよ、王さま。にじ色のお花が、たのしいゆめを、思い出させてくれました。このお花畑のように、キラキラしたゆめを、みんなにとどけましょう」

「あぁ、ああ、そうじゃな」

「ボクもおてつだいしますよ!」

「それは心づよい」


 ノルンも、手をあげようとしたときです。


「あれれ?」


 シャボン玉のような光が、ふわふわ。

 ノルンのまわりをとびはじめました。


「ノルン、ここはゆめのせかい」


 エメが、にっこりとわらっています。


「ありがとう。ノルンは、ここのゆうしゃよ」


 ノルンが、みんなに手をのばすと。

 みんなの手が、ノルンにふれました。



 あたたかな光が、ノルンをつつみます。


「ノルン、おきなさい」

「んん……」


 目をあけると、マイヤーおばさんがほほえみました。


「おはよう、ノルン」

「おはよう、マイヤーおばさん」

「どんなゆめを見ていたの?」


 マイヤーおばさんがたずねます。


「お花がいっぱいさいている夢! そこで、わたし、ゆうしゃになったのよ!」

「あら、おひめさまじゃなくて」


 クスッとわらったマイヤーおばさんは、ノルンをだきしめてくれました。

 ノルンも、マイヤーおばさんにだきつこうと手をひらいたとき。


「たね?」

「まあ、小さなゆうしゃさんへのお礼かしらね」


 ノルンは、ゆめのたねを、にわにうえました。

 どんなお花がさいてくれるのでしょう。


「また、みんなに会えますように」


 今日も、ノルンは、たねに水をあげます。

 そこには、いつも小さなにじが、かかっているのでした。




 ~おわり~

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「冬の童話祭」から参りました。 色とりどりのたくさんの花が咲いているなんて素敵な夢ですね。 突然現れたオバケで大変なことになってしまいましたが、虹色の花を見つけて、回復してよかったです。…
[一言] 可愛らしいタイトルだなぁと思っていたら、 お話も可愛らしかったです。 ノルン、頑張りましたね!
2024/01/20 15:58 退会済み
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