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第1話「優しい人」

 え…今なんて言った?


 さらゆ。っていうのは僕のペンネームであって決して七海さんの口から出るような単語では無い。


 そっか、聞き間違いか。


 その可能性が一番高いもんな…


 思い上がった僕が恥ずかしい。


「もどったぞー…、ってなんでそんな難しい顔してんだ?」


 トイレから戻ってきた柊優が話しかけてきた。


「えー、ちょっと色々」


 そして僕は少し誤魔化すように伝える。


「あー、そっか。悩みならいつでも聞くからな」


 優しい柊優はそう言ってくれる。


 でもこればかりは柊優には言えない。


 そもそもwebで小説を書いてるってことすら言ってないのにあの七海さんにそれを見てもらってるかもなんて口が裂けても言えない。


 ま、ほぼ勘違いみたいなもんだから悩みも何もないんだけどね。


「ありがとう」


 僕はそれだけ言って柊優に感謝を伝える。


「あ、そうだ、ノート貸して」

「やだ」

「なんでだよぉ、さっき貸してくれるって言ったやんー!」


 柊優は俺の腕にしがみついて嘆く。


「アイス一個で」

「えぇ……分かった」


 少し悩んだ挙句渋々了承した柊優だったが僕ははなからからそんなつもりはないのであっさりネタバラシする。


「冗談だよ、僕が人に奢らせるようなヤツだと思う?」

「思う」

「奢りで」

「冗談じゃーん!」

「いいから早くテストの勉強しなよ」


 僕らはそうやって笑い合う。


 いつもの日常を、いつもと変わらぬ景色で過ごす。


 これが幸せだということを僕は知っている。


 だから現状維持のままでいい。


 第一陰キャの僕にこの現状を改変する術なんて持ってないから——この時まではそう思ってたんだ。





♢♢♢


「疲れたぁ…」


 7時間目までの授業が全て終わり、柊優は机の上に上半身を預けて倒れた。


「お疲れ柊優。ほら、この後背番号発表あるんだろ?」


 机に突っ伏してる柊優が元気を出しそうな話題を口にする。


「あ!そうだった!行かなきゃ!じゃーね裕涼また明日!」


 すると柊優はそそくさと荷物をまとめて去っていった。


「う…うん、じゃーね?」


 正直あそこまで元気が出る話題とは思ってなかった。


「まぁ元気が出たならなんでもいっか」


 誰もいなくなった放課後の教室で1人呟く。


 今日も平凡で平和な1日が終わった。


「明日も頑張りますかーっと」


 大きく伸びをして僕も帰るために荷物をまとめるのだった。




♢♢♢


 教室の外からこっそりと中を窺う。


 こんなことしちゃダメだってことはわかってる。


 でもそうせざるを得なかった。


 教室の中で1人呟く彼をこっそり見る。


「はぁ、やっぱり優しすぎる…好き……!」







〜〜〜〜〜


おやおやおやぁ?

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