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第11話「虜」

「……で?なんでこの子がいるの?」


 僕は目の前にいる美少女に尋ねる。


 その美少女の隣にはショートカットのクールな女の子が立っていた。


「あれ?言ってなかったっけ?」


 僕はこくりと頷く。


「ごめん!言い忘れてたっ!この埋め合わせはまた今度……」

「や、僕も怒ってるわけじゃないからそこまでは」


 頭を下げる天音に顔を上げさせる。


「でも悲しい顔してる」

「や、それはその…天音と2人で遊べると思ってたから…」


 少し照れ臭くなって顔を背ける。


 天音も顔を背けているようでなんとも言えない沈黙が続いた。


「やー、私はやっぱ邪魔者だったなあ」


 その沈黙を破ったのは志乃だった。


「「そんなことない!」です!」

「あはは、仲良いねぇ」


 その言葉を聞き僕と天音は顔を見合わせた。


「ま、私は天音に近づく男ってのがどんな人なのか知りたかっただけ。君になら安心して任せられそうだ」

「ちょ!何言ってんの志乃ぉ〜!」


 ぽこぽこと叩いている天音も可愛いな。


「それにしても君、私たちと同じ高校だったんだね」

「あ…」


 髪型だけに意識を取られて服装にまで気を遣ってなかった。


 いくら天音の親友だからと言って僕が僕であることがバレるのは非常にまずい。


 だから同じ高校だ、と言う情報を与えてしまうのは極めて危険だった。


「見ない顔だったから驚いたよ。何組なんだ?」


 やばい、この質問はキラーパスすぎる…


 正直に答えては絶対に嘘だとバレるしかと言って中途半端な嘘や振り切れた嘘をついてしまうとすぐにバレてしまう。


 中間のちょうどいい嘘をつかなくては……


「じ、実はこれ兄の制服なんだ!僕の高校は私服なんだけど天音が制服デートしたいって言うから兄から借りてきたんだー!」


 そんなこんなで捻り出した言葉はすぐに嘘とばれそうな何とも苦しいものだった。


「ふーん?そなんだ」


 案外あっさり!?


 意外にすぐに引き下がってくれたことに胸を撫で下ろす。


「ま、私の目的も果たせたことだし後は若いお二人で〜」


 そう言って志乃は去っていった。


 僕らは去っていく志乃の背中を見る。


「なんか嵐のような人だったな」

「あはは、あれでもすごいいい人なんだよ」

「うん、何となくそんな気がした」

「いつか本当の裕涼も知ってもらえればいいね」


 そう言った天音の方を向く。


「だってこんなかっこいい裕涼を知ってるのが天音だけって寂しいでしょ?」

「……いや、僕は天音にだけ見てもらえてればそれでいい」


 自分でも驚くような言葉だった。


 こんな言葉が自分の口から出てくるとは思っていなかった。


 だからこそとっさに天音から顔を背けてしまった。


「そ、それって……」

「ごめん…流石にキモかったよね、忘れてくれ」


 とっさに出た言葉も自嘲するもの。天音には変な風に見られたくない、そう思って出た言葉。


 そうか、


 そうなのか、


 僕は僕自身が思ってる以上に、知らず知らずのうちに天音の虜になっていたのかもしれない。


 そう意識した瞬間とき、頬が熱くなっていくのが自分でも分かった。

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