近所の公園に現れた謎サーファーにちょっぴり恋をしてみたい
近所の公園には池がある。
大きさはだいたいテニスコート三つ分くらい。
足の着く深さ。
そんな池にサーファーが現れた。
サーフボードに乗って池の上を漂うその人は、白いズボンに黒いシャツに白いチョッキと、冗談みたいな服装をしている。
性別は女性……かな?
ショートカットでボーイッシュな見た目なんだけど、遠めだと男女の区別がつきにくい。
胸もあるし、おそらくは女性かと。
「ねぇ……由美子。またあの人見てるの?」
「うん」
「あんたも飽きないねぇ……」
「うん」
公園に来ている私は、友達の理沙に呆れられる。
彼女がこの公園に現れてからというもの、毎日のようにここへ足を運んでいるのだ。
彼女は優雅に公園の池を操る。
なぜか突然現れた波に乗って、あっちへこっちへ。
不思議なことに波は池の縁にたどり着くと勝手に消える。
「あっ……こっち来た」
「え? マジ⁉」
私が言うと、理沙は持っていたスマホを落としそうになる。
「ねぇ、良かったら一緒に乗らない?」
彼女はそう言って耳元をかき上げて、ほほ笑む。
私はすっかり虜になってしまった。
「……はい」
「ちょっと由美子⁉」
理沙が止めるのも聞かず、私は彼女の元へ。
「あの……優しくしてください」
「なにか、変な勘違いしてない?
まぁいいけど……。
ほら……こっちへ」
彼女が差し出した手を取ると、不思議なことに身体がふわっと浮く。
そのままお姫様だっこされてしまった。
サーフボードはまるで意思を持ったかのように動き、池に現れた波を制して勢いに乗る。
私は彼女に抱きかかえられたまま、波のエネルギーを肌で感じた。
飛び散るしぶきが私のほほに。
なぜかちょっとしょっぱい。
彼女は私を抱き替えながら、悠々と公園の池を遊覧する。
波は進んだ先から次々に現れ、その都度、方向転換を迫られた。
右へ、左へと翻弄されているうちに、私の視界はぐるぐるぐるぐる。
気づいたら意識を失ってしまっていた。
「由美子! 起きなよ!」
「……はっ」
「あっ、気づいた?」
理沙が言う。
「アンタ、ずっと寝てたよ。1時間くらい前から」
「そんなにぃ⁉」
うっかり、私は転寝をしてしまっていたらしい。
今日は学校が早く終わったので、理沙と二人で公園に遊びに来て、ベンチに座ってそのまま……。
「帰ろうか」
「ねぇ、どんな夢見てたの?」
「……秘密」
そう言いながら立ち上がる。
ふと、ほほにしずくが付いていることに気づく。
なめてみるとちょっと塩辛かった。




