【短編】情火炎星
ごめんなさい……本当に、ごめんなさい。
燃え盛る炎の中、私は夫に頭の中で訴え続けた。
何度も何度も謝り、訴え続けた。
事の始まりは数分前、私はコンロの火を誤ってつけっぱなしにしてしまっていた。
ただ、それだけだ。
それだけでこんな酷い有様にもなる。
今未明、この時間を巻き戻すことなど不可能。
今は、夫と交際して生んだ我が子をただ抱きしめていることしかできない。
覆い被さって守るように包んでいるが、それがどれほどの影響をもたらすかは分からない。
持って二・三分、それくらいだろう。
何も身動きが出来ない状態で救助を待っている。
動けない。
足を尋常ではないくらい火傷してる。
叫べない。
火は、大事な声の源の喉までもを燃やし始めてる。
泣けない。
流そうとした涙も、落ちる前に蒸発してしまう。
その頃にはすでに子供は動かなくなっており、熱い炎の中のはずなのに硬直し冷たさも感じられた。
赤いはずの炎も見えない。
――ついには、目をも溶かす炎だ。
「…………」
この感情は絶対に誰も分からない。
分かるのは、これを体験したことがある人間のみだ。
それ以外に、いることはない。
母は子供と共に崩れた家の下敷きとなった。
ちょっとした事でこんなにも酷い大惨事にもなる。
火を扱う時は、絶対に気を付け無くてはならない。
何事にも、注意が大切だ。
『――で、住宅三棟が焼ける火災事故が発生しました。
火元とみられる住宅では女性一人とその子どもと思われる遺体が発見され、子どもは体中全身火傷で、現時点では性別が確認できていません。
現在、消防署が駆け付け、警視庁などが出火の原因を調べています。
以上、速報でした』
その事をたまたまニュースで知った夫は、ニヤリと口角を高く上げた。
この事件、必然的に仕組まれたものだったのだろうか。
それは、後日、捕まった夫にしか分からない」。
ご清聴ありがとうございました。
次の短編を書く時の参考にしますので、正直な評価を頂けると嬉しいです。
実はこれ、昨日の深夜に書いたものをそのまま投稿したものなので見返すと色々とあれでした……。