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凛々命宮シリーズ

人に言われて婚約破棄を決めた男の話。過ちに気づいても、やり直しはできない。もう遅い。

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2021/04/26






 それは皆の価値で僕達の価値じゃなかった。

 皆が決めた不幸は、僕達の不幸じゃなかった。

 それに気づかなかった僕は、過ちを犯した。

 もうやり直しはできない。

 罪に気付くのは手遅れになった後。

 今さらだ。遅すぎた。


 断罪の刃が君に振り下ろされた。







 僕の婚約者は努力が足りない人だと思っていた。


 お嬢様としてのんびり過ごしてきた人だから、きっと苦労知らずなのだろうと。


 それは僕も同じなのに。


 どうして欠点ばかりが目立つのだろう。


 良いところは臆病に隠れてて、探さないと見つからない。

 

 何かあったら「また、失敗しちゃった」って、君は舌を出して謝る。


 僕は毎回「あーあ」って、呆れるんだけど仕方がないんだ。


 料理はおいしくないし、片付けはできないし。


 人見知りだし、知識は少ないし。


 僕の婚約者は全くのダメダメ人間らしいけど。


 仕方がない。仕方がない。


「あれ、どこにやったのかしら?」って、言ってるけどね。

「ほら、そこに落ちてるよ」ほんのちょっと、すぐそばにそれはあるんだよ。


 まったくほんとに、抜けてるなあ。


 仕方がない。仕方がない。


 そんな事を繰り返したから、君の良い所、埋もれていったのかもしれない。







 君が笑う。僕が笑う。時に人が嗤うけど。


 それでも僕たちは笑い続けていた。

 

 嗤い声なんて、笑い声でかき消して。


 いたのにな。


 いつのまにか、のみこまれていた。







 あの頃君は、


「私ができないのは私の努力が足りないせいなんです」っていつも下を向いてた。


 その頃僕は、


「君が出来ないのは、君が頑張らなかったせいなんだろうな」って鵜呑みにしてた。


 嗤う。嗤う。皆の声が、君と僕を惑わして。背中を押してくる。


「何もできない」って嘆く君を、


「同情かいたいんだろう」さげすむ僕を。


 君が、迷い込んだのは『袋小路』、出口のない迷宮。


 そんな君に僕が手渡したのは、天国への『片道切符』。


 僕は、他人なんかに構ってられないって、『忙しい』を口にしてた。


 だけど、


 段々何かがねじれてく。どんどん何かが歪んでいく。


 気づいた時には「もう手遅れなのね」って聞きながら、皆と同じ嗤い声をあげていた。


 君は『一人』、『一人』、『一人きりきりきりきり』小さく切れて、なくなって……


 いったっけ?







 今はうまくやってる。


 君の欠点を補う僕が。『出来ない』を『出来る』僕がやってるから。


 逆に僕の『出来ない』を君が『出来る』に変えてくれるから。


 そうだね。僕に人を魅了する力はない。


 誰かに笑いかけて安心させてあげる事もできない。


 あんなにも『愚鈍で要領の悪い』君に惹かれて、この関係が始まる時に一緒になった僕らなんだから、僕は君の良い所には、確かに気付いていたのに。


 僕と君は二人の始まりの日に、確かに何物にも負けない一対の羽になれると思っていたというのに。


 皆と一緒になって嗤い声をあげて、君をなじった事もあったけど。


 今はうまくいってる。


 君の手を放して、あまつさえその手で君の白くて柔らかい頬を叩いてしまったけれど。


 慈しむようにそっと口づけをしたあの頬に、赤い跡をつけてしまったけれど。


 今はうまくいってる。


 やりなおして、君と分かり合って、謝罪して、僕の隣には君は寄り添ってくれている。


 白い頬を、ほんのりと赤く染めて、笑みを浮かべていてくれる。









 君は『独り』、『独りきりきりきりきりきり』になって、みじんになった。


 容赦なく鉄の刃で跳ね飛ばされた、君の一部が僕の足元に転がってきて。


 虚ろな瞳で「やっと目が合ったね」と見つめてくるんだ。


 僕は「そうだね、あの日以来君と目をあわせていなかったからね」と、かつて君だったものを拾い上げる。


 ああ、あんなに白くて柔らかかかった君の頬が赤く染まってて、照れているのかな。


 大丈夫。


 今はうまくやっている。


 さあ、一緒に帰ろうか。


 なんて、そう誤魔化せなくなる日まで。


 うまく、やっていたんだ。

 



ここまで読んでくださってありがとうございます。

諸々の事情で感想に返信ができません。


すみません。

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