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ユイス公爵領 1

 領地を快適にしてずっと優雅に引きこもっていましょう。


 こころ晴ればれとそんなことを思う・・・そんな時期がわたくしにもありました。

 ええ、たった2週間ばかり前の事ですけどね。


 ごきげんよう皆様。名ばかり側妃 兼 新米ユイス公爵 ことレティシアです。


 王宮を辞してからこのユイス公爵領の領都についたのが1週間前。海を見下ろす小高い丘に建てられた城館に着き、皆が落ち着いたところを待って使用人の皆から挨拶を受けました。


 もうずっと領主不在だったのに城館が荒れ果てている感じではなく、豊かではないなりにきちんと掃除と補修は行き届いていることから、使用人の人柄と能力は高いと思われます。

 特に家令のジョルジュは、高い実務能力といい、ダンディな外見といい優雅でそつのない立ち居振る舞いといい、よくぞこのような人材がこの辺鄙な領地に仕え続けてくれていたというものです。

 年齢は去年40になったところだとか。


 わたくしのお母様がユイス公爵領を持参金として嫁いだ時に、ジョルジュのお父様が家令として任命され、ジョルジュはその補佐をずっと続けて5年ほど前に先代の隠居とともに代替わりをしたとか。

 わたくしが領地に来た今、不都合のないように色々と整えてくれています。おかげで快適に過ごせていますね。


 さて、わたくしの優雅な引きこもり生活にあたっては原資 もといそこそこ裕福な財源と平和が欠かせません。


 そこで、領地についてさっそくジョルジュに今までの領地の収支表や産業一覧、行政の組織図と業務内容の一覧を用意してもらいました。

代々の当主の執務室に割り当てられた部屋で3日かけてじっくり読み込み、疑問に思ったところをジョルジュに質問するなどして、ざっくりとですが現状を把握できたと思います。


 で、結論としては。

 現状では思った通りのさびれた田舎領、という感じです。



 領地はフルール王国の南東に位置し、王国の中央に位置する王都から馬車で3日で領地入り。そこから南端にある領都まで1週間といったところです。


 どちらかというと平野は少なめ、丘とか山とか湖とかで構成されている部分が多いですね。ええ、穀倉地帯は無理そうです。また、どうも鉱山がいくつかありますが、全体的な財政不足と人口不足で手が回っておらずたいした開発もできていないようです。


 半面、領地の南側は海に面しているため漁獲高はそれなりにあります。海岸線も広く、領都が面している港はそれなりに大きいので整備をもう少しすればよい貿易港に出来そうなポテンシャルはありそうです。


 うーん、そこから王都までのアクセスがもっと良ければね〜。


 考えにふけっていると、ドアをノックする音が聞こえました。

 入室を許可すると、ジョルジュと、マリーが入ってきました。


「ありがとう。忙しいところを悪いわね」

「いえいえ。当主は妃殿下なのですからいつでもお呼びくださいませ。」

ジョルジュが答えます。


 マリーがお茶の支度をしている間に、ソファにジョルジュに座るようすすめました。辞退しようとするところを大事な話をするからと、やや命令気味に押し切ります。

 ついでにわたくしも対面のソファに腰を降ろします。


 お互いお茶に口をつけたあたりで話をはじめました。

「用意してもらった書類をひととおり読み終えました。」

「そうですか。お早いですね。普通ならもっとかかりそうな量かと思っておりましたが。

で、いかがでしたでしょうか?」

「そうね。まず改めてあなたの能力の高さに感心したわ」

「…と仰るのは?」

「この領を絶妙に寂れされているところよ。本当に民を困窮させるほどではなく、中央に目をつけられるほど活気づけるほどでもなく。このようにするのは細心の注意と情報収集力、運営能力が必要だわ」

「…」

「あなたのお父様、先代の家令は元々辺境伯の3男だった方。負傷で騎士を引退後はお母様の故国で文官としても手堅く優秀だと評価されていたと聞いています。あなたはその薫陶を受けて育ったのだもの。さすがというべきですわね」

「それは身にあまるお言葉ですね。ですがありがたく存じます」


「ええ。そしてここからが本題よ。これからは領を発展させていきたいの。」


もちろん、取り上げられないようにしつつね。

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