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アストの奇妙な一日:アストのお家(で☆)騒動⑬



最後の音声が響き渡った瞬間、私が手を触れていた魔法陣は急速に拡大しはじめる。それはかけられているあの絵画を中心に置くように広がり、人を凌ぐサイズに。



と、そこで拡大は終了。続いて、魔法陣内に描かれた幾つもの円陣術式がそれぞれ回転を始めた。回転方向やスピードはバラバラではあるが、それはまさにダイヤル式の鍵のよう。



それらが外側から次々と動きを止め、放つ輝きの色を変える。どうやら順次ロックが解除されていっている様子。それはそのまま絵画…『地獄ノ辞典における大悪魔之図』の裏へと進んでいき…。



「わっ…! 光った…!?」



絵画の大悪魔の瞳が、妖美な輝きを放った。その直後――。






 ズズズズズズズ…………――






「「おーー…!!」」




私も社長も歓声をあげてしまう。 端から消えていく魔法陣と共に、壁が()()していっているのだ。先程のロック解除と同じ順に無くなっていき…最終的には空中に浮かぶ絵画のみに。



そしてそれも天井近くの壁へと静かに上昇し、目の前には暗黒の洞窟…否、隠し部屋への暗い入り口が…――。





 ボゥッッッ!!





わぁ…! 進むべき道を示すように、その入り口の中に灯りが一斉に並んでついた…! どうやらこれは隠し部屋へと繋がる通路らしく、奥へと歩いてゆかなければならない様子…。



――と、若干不安になっていた私の手を、社長がきゅっと握ってきた。ちょっとびっくりして下を向くと、楽しそうな彼女の笑顔が。



「行きましょう、アスト! 全ての真相を確かめるために!」



「――はいっ!!」












一定間隔で灯りがともされている隠し道を、おっかなびっくり進む。明るいから躓く心配はないし、一本道だから迷う必要もないのだけど……そこそこ距離がある。



それに少し怖いのが、今私の左右に並んでいる鎧群。我が家の衛兵達へ与えられているあの鎧が、列をなしているのだ。




入口から少し進んだところから飾られ出したこの鎧達。手にはそれぞれ武器を持ち、警護の態勢でこちらを見ている…。



勿論中に人はいないが…見るからに魔法がかけられている。恐らく、これも迎撃魔法。ここで悪いことをしたら、全ての鎧が即座に襲い掛かってくるであろう。



まさに秘密を守り通すリビングアーマーのよう。……けどこちらにも、リビングアーマー(守護の騎士)はいる。ぬいぐるみだけど……中身は誰よりも頼りになる…!



というか、別に悪いことをしなければ何も起きないだろうから…。……祖父の隠し部屋に侵入するという悪いことはしてるのだけど…。




「あ! とうとう着いたみたい!」



――そうこうしているうちに、社長がそんな声を。正面を見ると、道の先に扉が。着いてしまった……。












「えっと……。お祖父様、アストです…。 いらっしゃい…ません…か…?」



扉へノックをし、在室の有無を聞いてみる。けどやはり…返答はなし。ただ、もうここまで来て引き下がるわけにはいかない。



ドアノブに手をかけてみると……鍵はかかっていない…! 社長と目配せを交わし……!



「ご無礼をお許しください…!」



扉に力を入れる。すると、ギィイッと音を立て開いた。 失礼します…!!











隠し部屋の中に入り、灯りをつける。 今度はしっかりと機能し、明るくなった。…けど、隠し部屋故か淡めの光な照明である。



まあそれでも部屋の中は見渡せるから問題ない。どうやらこの隠し部屋も、書斎のようになっている様子。



とはいえ、そんなに広くはない。壁には小さめの絵画や写真、端には彫刻や本棚、書斎机や安楽椅子やソファがあるものの、先程までの部屋と比べて大分こじんまりしている。




……さて。社長の勘が正しければ、宝箱はきっとこの部屋のどこ…か……に……――っ!!




「あ……あった…!! あった!!!」














隠し部屋のど真ん中…! そこに設置された机の上…!! 見慣れたあの箱が……今日一日ずっと探していた社長の箱が…安置されている!!



まさか本当に祖父が持っていたなんて…!! それもこんなところに隠していたなんて…!!!




弾かれるように、宝箱に吸い寄せられるように、すぐさまその元へと近づく…! 間違いない…!本物の社長の箱…!!



色々と思うところ、やらなければならないことはあるけども…とりあえずはいつもの社長に戻ってもらわないと。……ちょっと名残惜しい感じはあるかも?



いやいや、もう時間でもあるし。ともかく箱を開けて、社長を中に………――




「――あれ…? なにこれ?」







宝箱の蓋をパカリと開けると、中に何かが入っていた。 裏返しになったこれは……写真?



三枚ほど入っているそのうちの一枚を拾い上げてみる。後ろに撮影したと思しき日付が書かれていた。つい最近みたいだけど…。



もしかして、祖父はこの箱を写真入れにしようと? けどそれにしては雑な…。数枚だけ裸で入れてあるなんて…。これ、一体どんな写真……――。





―――……えっ






えっ……えっえっ……? えぇえっ……!? えええっ……!?!?






え、なぜ、ちょっ、えっ、どうして、えええぇっ…!? ええええええっ!?







いや待って……! 本当に、どうして…!? 見間違い……じゃない!?





嘘……! 信じられない……!!  だって……だって…どうして――!!!






「どうして……!! お祖父様方皆(家族全員)と、()()()()()()()()()()()()()()()と…………()()が、一緒に写ってるの!?!?」













―――正直、自らの口から出た引きつった声の事実も、上手く消化しきれてない…! 反射的に目が取れんばかりに勢いよく擦り、写真を伏せるようにひっくり返す…!!



……うん。改めて日付を見てみると、本当に最近。ネヴィリーと市場で会った時よりも後……。



…………胸の鼓動が全身へと響くのを息を呑むことで抑えようとしつつ、ゆっくりと、震える手で写真を表返しに……!




……――やっぱり、見間違いじゃない! お祖父様お祖母様、お父様お母様に囲まれる形で…! 姿隠しの御衣を羽織っておられない、素の姿の魔王様と…! 恥ずかしがられている魔王様を半ば無理やり抑えつけている社長が写っている!!!











………………落ち着いて……。落ち着いて…私……。 深呼吸を……すぅ……はぁ……。……ふーっ……。




もう一回、写真を食い入るように見る。お祖父様もお祖母様も、お父様もお母様も、間違いなく本人。そしてそれは良い。



問題は……魔王様と社長。お二人とも可愛ら……コホン、美貌溢れるご尊顔であるのだが…。…とりあえず、魔王様から。





先も言った通り、この写真の魔王様は身を隠す御衣を纏っていらっしゃらない。今の愛くるし……素敵な御姿では魔王の威圧が出せない(恥ずかしい)と、他の者の前に姿をお見せになる際は巨躯の身となる魔法の御衣をお羽織りになっているのだけど…。



……この情報、実はとんでもない機密事項。市井の者はおろか、近衛兵でも知らないことなのだ。 私はこの間、社長の紹介で魔王様と同席させて頂いた際に初めてその事実を知った。



そしてその時の魔王様達の口ぶりから、それは当代の魔王様の腹心(グリモワルス)には知らされており、秘匿すべきトップシークレット事項であると判明したのである。



つまり魔王様の本当の御姿を知っているのは、お付きの一部使用人達を除けば…当代グリモワルス当主陣と……魔王様の盟友である社長とサキュバスのオルエさんぐらいなのだ。




だから、お祖父様方が魔王様の御姿を知っているのは間違いない。現魔王様がそのことを口にしていたし、先代魔王様(現魔王様の父)にもお仕えしていたお祖父様お祖母様と、当代当主であるお父様お母様なのだから。



だからだから、こうして顔を揃えて写真を撮っているのも、問題はない。勿論その写真は全てをかけてでも守り通さなければいけない代物だが……こんな隠し部屋に置いてあるならば安心であろう。




だからだからだから……! 最も問題なのは、この写真に()()()()()()()()点!!








社長と魔王様は竹馬の友。だから魔王様と写っていることは問題ない。 ……私の家族と写っていることが問題…!!



この写真が示すこと。それはつまり、お祖父様方と社長が()()()()であるということ。……ただの魔王様の友達として認識している可能性もあるが…。



わざわざアスタロト家二代に挟まれて、そっと魔王様の手を握り足を捕え隠れないようにしている社長を、普通の友達と認識するはずはあるまい。…というかこれ、どういう流れでの撮影…?




仮に社長が魔王様の友人として写真を欲しがったのならば二人だけで撮るだろうし、こんな隠し部屋に写真があるわけがない。逆に魔王様が写真を……というのも恐らくない。だって見るからに写真恥ずかしがってるのだから。



なら、お祖父様方が写真を頼んだと考えるのが妥当だが……わざわざ社長を巻き込んで、魔王様を拘束して? 魔王様にお仕えする身として有り得ぬ行動である。




となると…残された可能性はただ一つ。社長とお祖父様方が結託して…恐らく魔王様も賛成して、この撮影を行ったということ。



よく見るとお祖父様方、笑顔だけど少し申し訳なさそうな顔でもあるし。魔王様も頑張って堪えてらっしゃる感じだし…。









――では何故結託したか。何故こんな写真を撮ったのか。何故その写真がこの宝箱に雑に入れてあったのか……。



……ここは、社長とお祖父様方に焦点を当てるべきであろう。 正しくは、その関係に。




片や、魔王様の友人。片や、魔王様の腹心。関係しているのは魔王様ではあるが、ともすれば他人同士のままでもおかしくない。魔王様の酒飲み友達と部下なのだから。



ならば、何故繋がりが出来たか。社長とお爺様方、その間を繋ぐ関係は…――。……もう一つしか思い浮かばない!




双方を言いかえるならば……『私の』上司と…『私の』家族……! つまり……『私』、ア…――






「アスト・グリモワルス・アスタロト。 私の可愛い秘書。 そう、あなたも関係しているのよ」















「――!? しゃ、社長……!?」



突如として狭い書斎内に響き渡った社長の声に、戦慄を覚える。……普段の声とは全く違う、私の心の内全てを見透かした上に、妖艶で神秘的な…身をゾクッとさせるような声風(こわぶり)のそれに…!



そして…この声の響き方…! まるで社長の手中に…あるいは箱の中に包み囚われているかのような感覚…。どこから声が聞こえてきているか、全くの判別がつかない……!




ゆっくりと、視線を下に向ける…。…やっぱり…! ぬいぐるみの中に、社長の姿はない…! 目の前の宝箱に移ったわけでもない……!



私が写真に驚いている間に、すり抜けてどこかに身を隠した…!! 恐らく、この隠し部屋のどこかに……!!




「――それって、どういうことですか…!? それに、『も』って…!!」



写真と、抜け殻となったリビングアーマーぬいぐるみをゆっくりと机へ置き、何処かにいる社長へと問う。すると――。



「ふふふ…。とうとうこの日が……この時が来てしまったのね……! 感慨深いわ…!」



全く答えになっていない、謎に訳知りっぽい台詞が。もう……!



……けど、神経を集中させていたから、今の出社長の居場所が予測がついた。伊達に社長の秘書を…仕事から逃げる彼女をとっ捕まえる役をやっているわけじゃない!



「本棚ですね…!」



急ぎ本棚へ近づき、社長を探す。と――。



「流石アスト。やるわねぇ」



上…!? ハッと見上げると、本棚の上に社長が寝ころび、顎杖をしながら見下ろしてきていた。 大まかな場所こそ頑張れば当てられそうだが…そのどこに潜んでいるかまでは……!



そう唇を噛んでいると、社長はその体勢のままクスリと笑った。



「ご褒美に、質問に答えましょうか。 私と、アスタロト家の皆さんとの関係について」









「え…! ……ぜ、是非…!」



その提案に、驚きながらも頷く。すると社長は優しく微笑み、本棚の奥…壁際へとコロンと転がり……えっ、消え…!?



そもそも本棚の上のスペースなんて微々たるもの。少女姿の社長が寝転がるだけでもいっぱいだったのに、コロンと動けるのもおかしい…! 慌てて羽を動かし宙に浮き、上を確認してみるが…やはりいなくなっている……!



「私とアスタロト家を繋ぐのは想像の通り、あなた自身よアスト。 アスタロト家の御令嬢であるあなたの、今の勤め先の社長。それが(ミミン)



声の元が、またも場所不明に…! 今の一瞬でどこかに移動したらしい…! 社長の言葉の内容を噛みしめ、潜伏先を特定するために耳を最大限にそばだてて…!!




「――けど、それだけではただの事実。これもまた、状況によっては繋がらないこともあるわ。 特に、アストの置かれている特殊な状況なら猶更。 私の事、皆さんへ詳しくは伝えてないでしょう?」



「それは……はい。 社長の存在こそ伝えてありますが……」



どこにいるかわからない社長にそう頷く。流石にミミック派遣会社で秘書業務をしていることは家族には伝えてある。…けど、実は社長については詳しく話してないのだ。



ただでさえイレギュラーの中、社長が見た目だけとはいえ少女姿なんて説明できない。だから、社長の容姿や性格などは出来る限り家族に秘密にしてきたのである。




……最も、我が家は大公爵アスタロト家。権力を活かせば幾らでも調査は可能。だから、社長の姿はバレているかもしれないが…。




「……いつの間に、あんな仲良くなったんですか…?」



机の上に置いた写真の方を見ながら、その問題の問いを口にする。そう、問題なのはそこ。両者が互いの存在を把握していたのはこの際良しとしよう。



だが……。姿を晒した魔王様を交え集合写真を撮るほどに仲が良いなんて聞いたこともなかった。一体、いつから…――




「いつから、いつの間に。良い着眼点ね、アスト」









クスクスと小さく笑う社長。恐らく、今いる場所は…――!



「彫刻…!」



惹かれるように部屋の端に飾られている彫刻像へ。すると……。



「じゃあ…いつ頃からか、推測できるかしら?」



彫刻におんぶするような形でひょっこり顔を出してきた。 い、いつ頃…?



「最近……ではないですよね。あの写真の様子だと…。ネヴィリーと市場で会った時よりも…?」



「そうね。もっと前ね」



とりあえず適当な出来事を挙げ探りを入れると、ヒントが。 もっと前……。



「…なら、魔王様へ拝謁させて頂いた時ですか…? それとも、グリモアお爺様の一件で…?」




――ふと思いついたのは、この間のこと。聞くところによると魔王様は、グリモアお爺様を助けたことを私の手柄として家族へ報告してくれたらしい。



また、晴れて私が魔王様のご尊顔を拝謁させて頂いたことを、魔王様ご自身が話していてもおかしくないかもしれない。同席者(社長達)の話も合わせて。



だから、そのタイミングで何らかの関係が構築されていても不思議ではない……が……――



「いいえ。もっともっと前よ」





返って来たのはそんな言葉。 もっともっと…? となると…―。



「社長が、私を呼んで二人だけで酌み交わしたあの時…。我が社のバーでのあの夜…?」



次に思い至ったのは、とある日の夜。社長が突然に私を我が社のバーへ呼びつけた時の事。貸し切りとなったそこで、社長はいずれ来る未来…私がアスタロト家に帰る時を想像して泣いたのだけど…。



今思えば、突然だった。 ならもしや、その時に何か――!!




「…忘れなさいとは言わないけど……。あんまり思い出して欲しくないわねそれ…。 あと、もっともっともーっと前よ……」



あ。社長、恥ずかしそうな表情を浮かべ、彫刻の隙間にスッと逃げ込んだ。違うっぽい。 ……更に前?




それも違うとなると……パッとは思いつかない。魔王軍のダンジョンに呼ばれた時とか? 特に初心者向けダンジョンに赴いた際、社長と魔王様の関係を始めて知ったのだけど……。



因みに我が社が得た危険物素材の買い取り大半は、最初から魔王様が行ってくれていたみたいなのだが…。それに関しては社長が主に動き、私は取引リストや請求書の作成等に終始していたから知らなかったのだ。まさか相手が魔王様だったとは……。




それにしても、それならば最初から明かしてくれればよかったのに。入社したての頃なんて、勝手を何一つ知らない、種族すらも全く違う魔物の会社だからドギマギしてたのに……―





―――ッ…! ―――ッッまさか!





も…もしかして……! もしかして……!!!





「……私が、社長の秘書になった時ですか…!?」













――今更ながら、私がミミック派遣会社に勤めることとなった経緯を話そう。あれは今よりか少し若い頃。ずっと屋敷に囚われていることに流石に辟易し、我慢の限界となった時。



沢山読んできた本やグリモアお爺様のお話、他のグリモワルスの友達との女子会が起爆剤となり、とうとう吹っ切れたのだ。『家ではなく、外で社会経験を積んでみたい』と。



当然、家族全員はおろか、使用人達にまで反対された。それでも諦めきれなかった私はあの手この手……具体的に言うとごねにごねまくったり(魔法で脅したり)、グリモアお爺様に無理やり後ろ盾になってもらったり。



そしてなんとか許可を得、いざ職場探し!と勇んでいたのだが……。どこにすればいいか全くわからなかったのだ。



自分のスキル…次代大主計としてのスキルを活かし学べもするところ。私の名前を聞いても驚かず、出来る限り普通に接してくれるところ。そして家族や使用人の介入を阻止するために、そこそこ遠いところ――。



通したい条件は中々にあり、且つ両親が納得するような場所でなければならない。色々と悩んだ挙句、とりあえず一番叶えやすい、『そこそこ遠いところ』を探しにとある市場へこっそり赴いてみたのだ。




それが…ミミック派遣会社に近い、今は手に入った素材を卸しに行く、あの市場なのである。そこで、その……屋台に興奮して食べ歩きとかに興じていたら……社長と出会ったのだ。




思い返すも懐かしい…! あの時も社長は私の内心を…目的を見透かしたように話しかけてきたのだっけ。聞きかじりで用意したレディーススーツに身を纏っていたのもあるのだろうけど。



そして新入りミミック達を面接するあの酒場に連れられ、色々と話を聞いた。 業務内容についても、手が足りなくて困っているということも。そして仕事の都合上、各地のダンジョンへ赴くことになるということも。



世界を見ることもできるまさに打ってつけの職場に、私は一も二もなく就職を希望したのだ。その際に私の家の事も話したのだが…社長は驚きこそすれ怯む様子はなかった。今となってはそれも納得だけど。




……ふと思えば、そんなひょいひょいと話に乗っかるのは危険だったかもしれない。けど、社長が嘘をついている様子やあくどい事を考えている様子はなく、もしそうだとしても魔法で吹き飛ばせばいいかなと考えていたから……。




まあ結果的に無事に済み、社長秘書として就職内定。勝手な決定ではあったが、家族全員にはどうにか納得して貰えた。あとは半ば説明から逃れるように、会社へと移り住んだ訳で。






――――――そこまで思い返して、ふととある疑念と推測が稲妻のように走った。街中でスカウトしてきた怪しい職場を、よく家族が許したと。



しかしもし、社長がその時からアスタロト家と知り合いであったならば……あるいは私の内定直後に魔王様経由でコンタクトを取り繋がったのであれば……その疑念は解消できるかもしれない…!




そう思考を巡らせての、社長へのアンサー。すると、それを受け社長は……。




「だいぶ良いところまではいったわね。 それじゃ……箱に入っている、二枚目の写真を御覧なさい」




妖艶な笑みを残しつつ、そう促す。それはつまり、ハズレを意味する気が……。






とりあえず従い、宝箱の元へと。中のもう一枚を手に取り、日付を……ってこれ…。




「だいぶ前ですね……。 私がまだ子供の頃…?」



少し古ぼけたその写真の撮影日は、私がミミック派遣会社に勤めていないどころか、庭園でぬいぐるみ抱えて遊んでいた時だが…。



……思い切って……写真を表に!! えいっ!  ――――なっ……!!





「お祖父様方皆と……魔王様と、社長と、オルエさん!?!?」




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