ステップ4
「レオンファルドさん?
「レオンファルドで結構ですよ、聖女様」
「じや、レオンさんって呼ばせてください。
呼び捨てするのは、何だかなれてなくて…」
「お優しいのですね、聖女様は」
「あ、その呼び方じゃないほうがいいです」
レオンファルドは眉を上げて、ちょっと困った顔をした。
「どのようにお呼びいたしましょう?」
「ええっと…おまかせします」
じぶんの名前さえ忘れてしまうほど眠り続けていたのだから、
聖女なんて呼ばれるがらじやないようなきがしている。
考えあぐねて黙り込んでしまったレオンファルドに申し訳なくて、自分から
提案してみる。
「ずっと眠っていたそうですから、
ねぼすけさん、とか
寝たろう、とか
なまけんぼう、とか…」
「っふ、あははははは。
お姿に似合わず、冗談がお上手でいらっしゃる」
「え?本気ですけれど?」
どこかちぐはぐな会話だが、だんだんと楽しくなってきたのが
とても不思議だった。
ーなぜか、レオンさんなら信じられる。
そう、思えた。
クシュン。
「お風邪を召されるといけません。
今日はこれでおいとま申し上げます。
名前の呼び方は、次回までの宿題とさせていただきますね」
「はい、楽しみにしています」
お互いにっこり微笑み合う。
心が通じた瞬間だった。
しかし、最後に言われた言葉は、不安を残すこととなった。
「けして、世話係の者に心を許しませんよう。
神殿関係者には、十分お気をつけください」