3/216
ステップ2
「ルル…レ?」
どこか聞き覚えのある名前。
でも、まだうまく発音できない。
「ルルーカレツイア様、ですわ。
喉がおかわきでしよう?
何か飲み物をお持ちしましょう」
優しく語りかけていた女性が席を外すと、体の緊張が一気に解け
力が抜けて瞼を閉じた。
ー私、自分の名前を忘れるほど眠っていたなんて、
一体どのくらいなのでしょう?
考えるのも億劫で、思考を手放し、またまどろみ始めた矢先に、
何やら言い争う声が聞こえてきた。
「私は、ルルーカレツィア様をお世話するよう神殿長様から申しつかっているのですよ!
護衛など、必要ございません。」
さっき席を外したばかりの女性が、声高に相手を拒絶している。
それに対し、相手は落ち着いた重低音で答えている。
「これは、王代行を任せられた宰相殿のご命令です
我が国の至宝ともあろうお方に、護衛がつくのは当然のことです」
相手の抗議にたいし、揺るぐことなく堂々と答えている。
なぜか、その声を聞いているだけで、護られた心地になってくる。
ー何だか、…安心…でき…る…
そうして、重いまぶたがさらに重くなり、
また、眠りへと落ちていった。