ステップ1
明るい日差しがまぶたごしにも感じられる。
ーもう、朝がきたのですね…
そろそろ起きなくては、と、ゆっくりとめを開ける。
ー?
目に入るのは、趣味の良い調度品に囲まれた広く居心地の良い部屋。
初めて見る風景に、目をパチパチさせる。
ー?
そこへ、優しく声をかけられた。
「お目覚めですか、ご主人様?」
声をした方をみると、若く上品な女性が心配そうに覗き込んでいた。
「…あ、の、…わた、し…」
なぜか声がかすれて上手に発音できない。
声をかけてくれた女性は、にっこりほほ笑むと優しくはなしかけてくれた。
「ご無理をなされなくてよろしいのですよ。
そのうちだんだんと話すことがお出来になりましょう。
なぜなら、ずっとずっと、気の遠くなるほどの長い時間を
お休みになられていたのですから」
ーわたし、ずっと眠っていたのかしら…
「そのため、何もかも忘れてしまわれたのだと伺っております」
ー忘れてしまった?何を?
「失礼ですが、ご自身のお名前を覚えていらっしゃいますか?」
たずねられて思い出そうとするのだが、記憶の中に深く埋もれてしまっていて
思い出すことができない。
そのことを言葉に出すと涙がこぼれそうだったので、
首をふるふるさせて意思表示にかえる。
女性は優しくほほ笑むと、己の名前を教えてくれた。
「我が国の最も尊き存在、ルルーカレツィア様ですよ」