スタンバイ
きらびやかな光が織りなす極彩色の風景の中を、一人の若者が進んでいく。
目指すはその風景の中心に位置する本日の主役がいる場所。
ただ前を向いて進む横顔は、緊張しているせいか厳しい顔つきとなっている。
どこか人を寄せ付けない雰囲気もさることながら、
ここ数ヶ月で身につけた大人びた表情が、一層精悍さをまし、
女性たちの注目を集めている。
「ねえ、あの方ですわね!」
「ええ、今話題の…」
「まだお一人でいらっしゃるのでしょう?」
「剣の腕も極上らしくてよ!」
「私を守ってくださらないかしら❤」
噂されていることさえ気付かない鈍感さはあいかわらずで…
無理もない。
彼にとって心にあるのは、想い人ただ一人。
今宵は、エスファルディア王国の戴冠式を終えた王女さまのお披露式。
鮮やかな微笑みを振りまきながら、
かのひとは、まるで、別人のように
上品で、優雅で、美しく輝いている。
ようやく、想い人のもとにたどり着き、じつとみつめる。
相手がようやく彼の視線に気づき、一瞬無表情になる。
二人な張り詰めた雰囲気に、自然と人々な輪が広がり、
二人だけの空間が広がる。
見つめ合うこと、しばし。
想い人の顔をじっとみつめたまま、若者はすっと片膝をおり
てを差し出してつげる。
「Shall we dance,with me?」