第七十四話 Sランク
マドラーナやティラミス王女の予想通り、勇者パーティはやってきた。
確かに雷嵐の剣を装備しているようだ。
雰囲気も一か月前とは全然違う……ような気がする。
魔道士は以前と同じくフードを深々と被っている。
こちらも情報通り聖女の杖を持っているようだ。
上級ボスを倒している噂は冒険者の間でも拡がっていたらしい。
みんなが勇者パーティを尊敬の眼差しで見ている。
元々上級者二人は有名だったみたいだしな。
そしてガチャや寿司酒場に目もくれることなく格闘場に参加した。
もちろんSランクへの挑戦だ。
このSランクの報酬である金ガチャ券を五枚取ろうと思ったら五連戦することになる。
途中、ジェルによる回復もなしだ。
まぁ回復については魔道士がいるから問題ないか。
あとは疲労がどれだけあるかだな。
…………あっという間に四連戦が終了した。
強い。
素人の俺が見てわかるほどに強い。
今までの参加者とはまるでレベルが違う。
その中でも勇者の攻撃力がえげつない。
雷嵐の剣の効果が凄いのか?
モンスターをいとも簡単に切り裂いているように見える。
雑魚モンスターではなくSランク認定されるほどのモンスターたちだぞ?
「余裕やで! ウチ強くなりすぎたんかもしれへんな!」
「油断するなよ。と言いたいところだがこの程度の相手じゃな」
「結局ボスは出てこないのか? それならもっと早く来ても良かったな」
「……」
余裕だってさ。
自分でも実感できるほど強くなったんだろう。
間違いなく転移の際になにかの力を授かってるな。
じゃなければたった三か月でこの強さはおかしい。
全ての冒険者の目が大型モニターに釘付けになっている。
勇者はみんなの希望だからな。
一方、モンスター側は静まりかえっている。
Sランクが負けるとなると打つ手がないしな。
明日は自分の領域に攻め込まれるかもと思っている可能性もあるが。
「この調子でいこや!」
「あぁ。では審判、次を頼む」
「……わかりました」
ミアも勇者たちのあまりの強さに驚いているようだ。
カイザーやモッスンも同様に見える。
ミルクとココアは……眠たそうだ。
「では第五戦目のSランクモンスターのみなさん! ご登場ください!」
モンスターが現れる場所にみんなの視線が集中する。
そして間もなくモンスターが現れた。
「これはどっちや? Sランクやから強いほうの亀か?」
「あぁ、間違いない。それも四体か……」
「こいつら硬すぎんねん。時間かかりそうや」
「他はどうだ? ドワーフラビットってことはこいつらも強いほうだな」
「それが五体? やばくねぇか……」
「あのウサギ小っちゃくて可愛いんやけどなぁ」
「ん? あと一体はどこだ? まさかボスか?」
「いや、ボスは後ろにいる。……見たことのないボスだな」
「てことは九体か?」
「……どこかに小さいのが隠れてるかもしれん」
「あり得るな。回復役も見当たらないし」
さすが勇者パーティともなると鋭い。
あと一体は極メタスラーだったはずだ。
「制限時間は五分です! では始めっ!」
ミアの合図で試合が始まった。
「ウサギからいくで!?」
「あぁ、それでいい」
勇者はドワーフラビットの一体に狙いをつけたようだ。
「……くそっ! すばしっこいねん!」
「モタモタするな! 時間がないんだぞ!」
「うっさい! そんなんわかってるっちゅうねん!」
見事なまでに関西弁だ。
……ようやくドワーフラビットを一体倒したようだな。
勇者に比べると上級者二人は少し非力に思える。
攻撃を防ぐのでいっぱいいっぱいに見えるのは気のせいか?
というか連携がめちゃくちゃだな。
「くっ、やはり数が多い」
「おい! 回復を優先してくれ!」
「……」
魔道士は後ろでジッとしている。
だが回復魔法をかけてるようだな。
ここまでの四戦では強さの片鱗はあまり見られなかったが……。
まぁあの勇者が強烈すぎるからな。
「あっ! いたぞ! メタスラーだ!」
「亀の後ろでちょこまかと!」
「ウチがやるわ!」
「魔法は効かないからな!」
だが極メタスラーは必死に逃げ回る。
そしてその間も時間は刻々と過ぎていく。
この戦いは残ってる数が多いほうが勝ちだからな。
極ガナッシュリクガメはガードさえしとけばそれだけで時間が稼げるだろう。
「……遅い」
「はい!? あんた今なんて言った!?」
「だから遅いって言ったの」
初めて魔道士が口を開いたな。
と思った次の瞬間……
…………は?
なにが起こった?
極ドワーフラビットは残り四体全てが跡形もなく消え去った。
ミスリル装備と銀貨だけがその場に残されている。
極ガナッシュリクガメは四体全て瀕死状態だ。
「これは聖魔法ですね」
「聖魔法?」
「はい。私も勉強中なんですがさすがにここまでの威力は……」
カウンターの向こうからティラミス王女が説明してくれる。
聖魔法だって?
そんなに強い魔法が放たれたようには感じなかったぞ?
聖なる光で消滅させたっていうのか?
「その魔法ホンマ反則やろ!」
「あなたが早くしないから」
「わかってるわ! これでええんやろ!?」
勇者は極ガナッシュリクガメにとどめをさしていく。
全て一撃で消え去っていった。
「これで終わりやな!」
「……あと一体」
「はぁ!? どこにおんねん!?」
「あそこ」
魔道士の視線の先には戦士がいた。
その近くには小さいモンスターの姿がある。
「ちっ、メタスラーか。」
勇者は極メタスラーを見つけるとすぐに追い回す。
極メタスラーは逃げ回るので精一杯だ。
「試合終了です!」
結局そのまま制限時間がきた。
「残り三人対一体により、冒険者パーティの勝利です!」
「よっしゃぁぁ! 五連勝やで!」
勇者は喜びを爆発させる。
「早く虹箱ガチャるで!」
「……治療が終わったらな」
「治療ってダメージなんて全然受けてないで?」
「お前じゃない」
そして格闘場から転移で地下一階に戻ってきた。
「なっ!? どうしたんそのケガ!?」
勇者が驚きの声をあげた。
近くには戦士が血を流して横たわっている。
「ぐっ……メタスラーに刺された」
「刺されたって嘘やろ? 鎧貫通されたんか!?」
「あぁ……すまん」
「てかいつの間に退場してたんや?」
「とにかく回復が先だ」
「もうやってる」
魔道士は聖女の杖の先を戦士に向けている。
……回復魔法はジェルのほうが上のようだな。
「……ふぅ、少しマシになった」
「大丈夫なんか!? 明日は魔王城に行くんやで!?」
「……行くさ。足手まといになるようならいつでも捨てろ」
「そんなんできるわけないやん! とにかく帰って寝てや!」
「あぁ。すまんが肩を貸してくれ。お前らはガチャを引いてこい」
戦士はもう一人の上級者に体を支えてもらい、店から去っていった。
あの戦士じゃないほうの人、なんの職業なんだろうか。
俺にはいまいちよくわからなかった。




