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闇ガチャ、異世界を席巻する  作者: 白井木蓮


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第五十二話 ばあさんが二人

 営業終了後、地下一階飲食エリアにてばあさん二人が向き合っていた。


「アイリちゃん! ビール追加お願いね!」

「こっちもビールね! あっ、刺身盛り合わせも!」

「はい! 少しお待ちください!」


 ……この二人、ばあさんのくせに飲みすぎじゃね?

 くせになんて言い方は失礼か。

 いや、ちょっとくらいはいいだろう。

 とっくに営業時間は過ぎてるんだからな。


 従業員たちは地下二階の飲食エリアで食事をしている。

 初日だから打ち上げも兼ねてだいぶ豪勢にしたつもりだ。

 量も相当作ったし、今日は酒も飲んでもいいことにしている。

 みんな楽しんでるだろうな。


 アイリと俺以外のみんなはな。


「本当にすみません」

「いいんですよ。お二人とも楽しそうですし」


 そしてなぜか王女も残っている。

 王様と騎士の二人は閉店と同時に帰ったっていうのに。

 このばあさんは王女の護衛をしなきゃいけないんじゃないのか?

 そんなんで城まで帰れるんだろうか。

 そういや王女は一人でも来てたんだっけ……。

 でもさすがにこんな時間に王女と酔っぱらいのばあさんを帰すのは気が引ける。

 ジャスミンにどこかホテル……宿屋か、今から探してこさせるか。


「刺身」

「あっ、はい!」


 アイリは刺身とビールを持ってばあさんたちのテーブルへ行く。

 そしてこれまたなぜか王女は椅子を持ってきて俺の前に座っている。

 ばあさんたちの邪魔をしないでおこうという配慮だろうがなぜそこなんだ。

 一応カウンターにはなってるから飲み食いはできるが。


「まだ作られるのですか?」

「……ここの従業員たちの賄ですよ」


 俺は寡黙な大将。

 王女に興味があっても今の俺は話しかけてはいけない。


「少し多すぎません? そんなに従業員の方いましたっけ?」

「……仲間モンスターたちの分も頼まれてますので」

「あっ! そうでしたね! モンスターさんの分ですか!」


 嘘は言ってない。

 下では仲間モンスターたちも食べてるだろうからな。

 仲間だが仲間じゃないモンスターもいっぱいいるが。


 結構な量を作ったつもりだったがまだ追加を要求してきてるからな。

 来客中を考慮してわざわざ端末で注文してきてるし。


「ここのオーナーさんてどんな方なんですか?」

「……」

「めったに顔出さないんですよ~。だから詳しくは知らないんです」


 ちょうどアイリが戻ってきたようだ。


「なぜここでお店を出されることにしたんですか?」

「オーナーがお寿司を気にいったようなんです。どうしてもと頼まれまして」

「なるほど。お寿司以外のメニューを出すことについての抵抗はなかったんですか?」

「もちろん悩みましたよ。でも大将はお寿司以外の料理も凄いですからね」

「確かに以前からお肉のお寿司も出されてましたもんね!」

「こう見えて大将はお肉が大好物なんです」


 アイリが適当に話を繋いでくれている。

 早く帰ってくれないかな~。

 俺はアイリに目配せで合図を送る。


「それよりもう遅いですけど時間は大丈夫なんですか?」

「う~ん、今日はどこか宿を探そうと思います」

「よろしければこちらでお探ししましょうか? もちろん安全なところを」

「いいんですか? 実はこの町の地理にあまり詳しくなくて」

「王女様なんですからこの町のことを知らなくても当然だと思います」

「あははっ……さすがにバレてましたか」

「あれだけ派手なことをされれば気付いてくれと言ってるようなものですよ」


 俺とアイリは彼女たちの身分を今日知ったことにしている。


「さて、昔の話はこれくらいにして本題に入ろうじゃないか」

「あぁそうしようか。聞きたいことが山ほどあるよ」


 ばあさん二人が急に真面目な話をしだした。


「ここへなにしに来たんだい?」

「それはこっちのセリフだよ。なんでここにいるんだい?」


 似たような口調だからどっちのばあさんが話してるかわからなくなるな。


「ワシはここのオーナーに頼まれて格闘場の管理人になっただけだよ」

「そのオーナーってのは何者なんだい?」

「気のいい奴だよ。どんな種族にも差別しないしね。人使いは荒いが」

「どんな種族にもか……。確かにここには全種族がいたね。あんたらも含めて」


 魔物使いを人間とは見ていないような発言だな。

 クレアばあさんやミアはこういう扱いをずっと受けてきたのか。

 この二人仲がいいのか悪いのかわからないな。


「アイリちゃん! ビール! あとイカ刺し!」

「こっちもだよ! それと牛肉の柔らかい部分を焼いておくれ! レアでな!」


 こいつら……。

 しかもあのばあさん部位と焼き方まで指定してきやがった。


「あの……大将……すみません」

「……いえ」


 危ない危ない、顔に出すところだった。

 王女の申し訳なさそうな顔を見て少し気持ちが落ち着いた。


 アイリはすぐに追加のビールを持っていく。


「……どうぞ」

「え? いいんですか?」

「サービスです」


 ついでだから王女にもイカ刺しを出した。


「しかもあいつはモンスターにも好かれるんだ」

「ほう? 人間かい? 魔物使いじゃないだろうね?」

「普通の人間だよ。冒険者ですらない。変わってるんだよあいつは」

「ふ~ん、悪い奴じゃなさそうだね。一度会うことはできるかい?」

「あんたは無理だね」

「そうかい。まぁ仕方ないか」


 あっさり引き下がるんだな。


「はいよ」

「はぁ~い!」


 アイリはイカ刺しと肉を持っていく。


「食べますか?」

「はい! ありがとうございます!」


 ついでだから肉も出しといた。

 王女は凄く喜んでくれている。


「それより前来たときも思ったがあの大将、なかなかいいねぇ」

「あぁ、目の保養になるよ」

「寿司も肉も美味いし、酒も美味い。毎日通おうかね」

「ふん。仕事の邪魔はするんじゃないよ」


 ばあさんたち、聞こえてるぞ。

 まぁ王女といっしょならたまには来てもいいけどな。

 でも毎日はやめてくれ。

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