第二十二話 王様御一行、ガチャる
もう何十連目だ?
モニターには先ほどの四人の客が映っている。
四人は寿司屋を出た直後、ガチャ屋の開店と同時に入ってきた。
それからもう二十分は十連ガチャを回し続けている。
「お父様! 次は私ですからね!」
貴族っぽい二人は順番に引いている。
騎士の男性はアイテム回収係、魔道士の女性は椅子に座って眺めている。
「装備品は酒場の依頼報酬に回そうか」
「お父様ナイスアイデア! 初級冒険者の方たち困ってるでしょうからね!」
どういうことだ?
なにか酒場に依頼を持ち込むということか?
「ポーションやエーテルは騎士や魔道士で使ってくれ」
「はっ! ありがとうございます!」
騎士や魔道士?
この二人のことをそんな名前で呼ばないよな?
他にも騎士や魔道士がいっぱいいるってことだよな。
大きなお屋敷で複数人の護衛を雇ってるのか?
「あっ! この杖見てください!」
貴族っぽい女性は魔道士のところへ杖を見せに行く。
「ほう。これは使えそうだね」
「私が使ってもいいですよね!?」
「それはやめときな。成長が遅くなるよ」
「えぇ~。同時に何本も使ったら面白そうですのに」
杖を使うと成長が遅くなる?
もしかしてこの女性も魔道士なのか?
「おい、今どれだけ回した?」
「ちょうど十回ですね」
「もっとやりたいが、次の客もいるみたいだからやめとくか」
「はい、そろそろ帰りましょう」
貴族っぽい男性と騎士の二人はやっと帰る気になったようだ。
それにしてもこの四人はお互いの名前をいっさい呼ばないな。
なにか隠してるようにも見えた。
四人はドリンクを大量に受け取ると、足早に帰っていった。
◇◇◇
「なにかおかしな点はあったか?」
「いえ、全くございませんでした。関係ないんですかね?」
「う~ん。でも他にガチャなんてのはなさそうだしなぁ」
「あの価格にしてはいい商品ばかりじゃないか。あそこは優良店だよ」
「そうなんだよなぁ。おかげで安く装備品が手に入ったし」
「みなさん、さっきからなんの話をしてるんですか!?」
ガナッシュ城に戻ってきた四人は歩きながらガチャ屋について話をしていた。
「実はな、モンスターがガチャって言葉を叫んでたらしいんだ」
「えっ!? どういうことなんですか?」
「詳しくはわからんのだが、モンスターにやられた冒険者の中にそれを聞いた者がいてな」
王女はなにも聞かされていなかったようだ。
「……つまりさっきのガチャ屋がモンスター大量発生になにか関係していると?」
「そう思ってたんだがな」
「あやしいところは見当たりませんでした!」
「私も店員と店内をくまなく観察していたがエルフだってこと以外なにもなかったよ」
騎士と魔道士はそれが役割だったようだ。
「じゃあ今日あの町に行ったのはガチャ屋の調査のためですか?」
「そういうことだ」
「あのお寿司屋さんに行ったのは偶然だったんですか?」
「ガチャ屋ができたのは最近、その少し前にできた聞きなれない寿司屋という店、なにか関係があると思うのは普通のことだろう」
「そんな……てっきりお寿司の噂を聞いて行ったものかと……」
「でも美味しかったのは嬉しい誤算だったな」
「私はまたお寿司が食べたいです!」
「あぁ、ワシも食べたいよ。でもしばらくは忙しくなりそうだからまた今度な」
王女はがっかりする。
王様はガチャ屋の当てが外れたことを残念そうにしている。
そのまま四人は会議室へ向かった。
「あっ、王様! どうでした!?」
「あぁ、今から報告する」
そこには二人の姿しかなかった。
当然報告に来ていた冒険者もいない。
四人が座ったところで会議が再開された。
まず王様から寿司屋とガチャ屋の件が報告された。
「シロってことですか……」
「そうなるな」
「でもガチャなんて言葉、他に聞いたことないですよ」
「こやつらもしっかり確認しておる。あのガチャ屋は関係ない」
「まぁモンスターじゃなくて冒険者がガチャって言ってただけかもしれませんしね」
「商品は初級冒険者向けの物ばかりだったから誰か行ってた可能性はあるな」
「もう一度聴取してみます」
「そうしてくれ。で、対策はどうなった?」
「中級レベルの冒険者パーティを複数向かわせることにしました」
「なるほど。ではすぐに実行してくれ」
「もう手配済みです。明日の早朝から討伐に出向くでしょう」
「そうか、ご苦労だった。じゃあ今日は解散」
みんないっせいに立ち上がり、まず王様が部屋から出ていく。
次に王女が出ていったが、他の四人はこの場に残った。
「で、その寿司屋の店員は実際のところどうなんだ?」
「おそらく全くの素人です! ですが……二人とも不気味です」
「不気味だと?」
「なんていうか、底が見えないというか……」
「私も同感だよ。でも敵意はいっさいなかったんだ。それなのにこのバカは」
「ひぇっ! すみませんでした!」
「はぁ~、わかった。寿司屋もガチャ屋も当分は放置でいいだろう」
「そうですね。しばらくは他の国の動向も注視しましょう」
「だな。明日にはモンスターも大人しくなるだろうしな」
四人は会議室をあとにした。
どうやらガチャ屋への疑惑は薄れたようだ。




