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闇ガチャ、異世界を席巻する  作者: 白井木蓮


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第十五話 次期魔王

 営業が終わり、地下一階へ行った。

 するとジャスミンは落ち込んだ様子で静かに泣いていた。


「もう泣くなって」

「……うぅ……だって……知り合いが一人」


 減ってしまったって言いたいのか?

 これくらいでいなくなるなら元々たいした仲じゃなかったんだよ。

 だって損失は銀貨五枚くらいだけだぞ?


「ジャスミンはなにも悪くないだろ? 悪いのはあの人の運だ」

「そうですけど……」


 思ってたより弱いんだな。

 これじゃ先が思いやられる。


「そうだよ。ジャスミンはちゃんとやることはやったよ?」

「うん。ジャスミンは普通」


 アイリとレファもジャスミンを励ます。

 レファもガチャ屋をこっそり覗いてたのか。

 でもレファ、普通って言葉はどうなんだ……


「そうですよね。私はガチャ屋として普通のことをしただけですよね」


 ……そうだよな、ガチャ屋としてはジャスミンの振る舞いは普通のことだったよな。


 知り合いに十連を勧めて、結果爆死しようがガチャ屋だから仕方ないよな。

 欲を出したほうに責任があるもんな。

 それに銀貨十枚以上の価値の物が当たってたら喜ぶに違いないもんな。

 それがギャンブルであってガチャだもんな。


「地下一階はしばらく様子を見よう」

「うん、それでいいと思う」

「だね」

「……はい」


 明日は地下二階のオープンも控えてるからな。

 当面の本命はこっちだ。


「じゃあアイリとレファは最終チェックに入ってくれ」

「任せて!」

「うん」


 二人は地下二階へ行った。


「ジャスミンは今日はもう休んでいいぞ」

「……はい、掃除だけはしておきます」


 後片付けはジャスミンに任せ、俺も地下二階に行く。


 するとそこには見慣れない女性がいた。


「あっ、ヤマト来た。紹介するね」


 なるほど、ホール担当の従業員だな。

 マドラーナがやってくれるものだと思っていたが。


「リリアンヌ。明日から働いてもらう」

「……よろしく」

「あぁ、よろしく」


 見た目は人間ということはこの子も魔族か?

 レファと同い年くらいかな。


「レファ、魔族だよな?」

「うん、妹」

「そうか」


 やっぱり俺には人間と魔族の違いはわからないらしい。

 魔力で見分けるそうなんだが。


「……ん? 妹!?」

「え? そうだけど?」


 てことはこの子も魔王の血を継いでるんだよな!?

 こんな身近に次期魔王候補が二人もいるんだぞ!?

 人間と魔族は敵対してるらしいんだぞ!?

 俺、いつ死んでもおかしくないよな……。


 さっきからアイリがなにも話さないのはそのせいか。

 完全に固まってしまってる。

 このリリアンヌって子がレファと同じとは限らないもんな。

 レファは神様の力が効いてるだろうし。


 俺たちはどう接したらいいんだ?


「ヤマトもアイリも大丈夫」

「えっ?」

「リリアンヌはここでは誰も傷つけない」

「本当に?」

「うん。もし変なことしようとしたらその前に私が消すから」


 …………消す?

 今、消すって言った?

 妹を?


 明らかに場の空気が変わった。


 アイリは震えているようだ。

 俺だって今すぐここを立ち去りたい。


「姉様、なにを言ってるの?」

「そ、そうだよレファ? せっかく手伝いに来てくれたんだし!」

「ヤマトだっけ? 人間ごときが私と姉様の会話の邪魔をしないで」


 こわすぎる。

 俺は二人の仲を取り持とうとしただけなのに。


「冗談。リリアンヌがここにいるのは営業時間中だけだから」

「……リリアンヌちゃんはそれでいいのかな?」

「姉様が言うなら仕方ないじゃない」


 レファのほうが権力は上ってことでいいんだよな?

 襲ってきたりしないんだよな?


「ヤマト、リリアンヌに毎日ご飯作ってあげて」

「ご、ご飯? 俺たちといっしょのでいいのか?」

「うん。仕事前と仕事後の二食お願い。それが条件」

「そんなことでいいんならいくらでも」


 次期魔王にバイト代程度の金は必要ないはずだもんな。

 人間のご飯が食べたくて引き受けてくれたのか?


「まずはお寿司を作りなさい」

「寿司? 寿司でいいの?」

「姉様が美味しいなんて言うの初めて聞いたし」


 レファは寿司以外もなんでも美味しいって言ってくれるぞ?

 ……もしかして魔族の国では美味しいものが少ないのか?


「えっと、リリアンヌ……って呼んでもいいか?」

「……普通の人間だったらすぐに消滅させてたところだけど姉様に免じて許すわ」


 俺、今消される寸前だったの?

 やっぱりこの子はやめようよ。


「……ありがとう。リリアンヌがここの案内係を担当してくれるのか?」

「なんで私がそんなことしないといけないのよ。私は座ってるだけ」

「座ってるだけ?」

「そうよ。仕事はマドラーナと他の下僕に全部やらせるから」


 下僕……。

 マドラーナが可哀想になってきた。

 でもそれってリリアンヌがここにいる意味あるのか?

 疑問に思った俺はレファを見る。


「私は顔を見せるわけにはいかないから」


 確かにレファがここにいることはバレないほうが良さそうだ。


「リリアンヌは顔が見られてもいいってことか?」

「むしろそのほうがみんなリリアンヌが暇つぶしにやってると思うはず」


 そういうことか。

 名前も顔も知られてるであろうリリアンヌを利用するわけだ。


 これは面白くなってきたな。

 こわいけど。

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