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ハイパー桃太郎

作者: 五歛子

 子供の姿が一人も見当たらない、寂しげな公園。最近の子供達は外で遊ばず、ゲームやネットばかりしているといった、偏見にまみれた言葉を投げかけられそうな光景である。

 危険だという理由で、ありとあらゆる遊具が根こそぎ撤去されたこの場所で、一体何をすればという疑問はあるが、今はそれは問題じゃない。


 その人気のない公園に、二つの人影が現れた。否、それは人間ではない。鬼だ。

 安物の塗料を、筋肉よりも贅肉が目立つ肉体に塗りたくっている。所々に塗り忘れやムラが確認できる。パーマのかかった頭には、手作り感満載の角。金棒は重いためか、手には代用の野球のバット。そして、これ見よがしな虎柄パンツ。

 彼等は本当に鬼なのだろうか?どう見ても、安っぽいコスプレをした変なオジサンにしか見えない。鬼として退治される前に、変質者として通報されるだろう。


「オニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニッ!」


 赤鬼が鳴き声をあげた。


 これ以上の証拠があるだろうか。ほら、正にこれこそ鬼の鳴き声!やはり、彼等は鬼だった。間違いなく鬼なのである!誰がなんと言おうと鬼なのである!


 青鬼が宣言する。


「今日からこの公園を、新たな鬼ヶ島とするオニ!」


 語尾までオニにする念の入れよう。もはや誰も彼等を疑わないだろう。皆が彼等を鬼と認めるだろう。

 公園の時点で島ではないのでは?その他様々な疑問が湧くが、このままではこの公園は、彼等に支配されてしまう。色々な意味で大変な事になる。誰かが、ヒーロー的な存在とかが、駆けつけて来ないだろうか。


「待てぃ!そこの鬼共!退治してくれる!!」


「誰オニ!?」


 突然の声の響いた方に鬼達が振り向くと、そこに一人の男が立っていた。


「お前ら鬼共を退治すると言えば、この私に決まっているだろう?」


 その男は上下共に、びっしりと桃の絵がプリントされた服を纏った、奇抜さ溢れる姿。額には桃の意匠の鉢金という、これでもかという桃アピール。腰には流石に刃物はまずいと思ったのか、桃とほってある小汚い木刀が見える。兎にも角にも桃、桃、桃。


「なんだ!変な格好の奴オニ!」


 自分達を棚に上げ、鬼達が言う。


「私はハイパー桃太郎だ!」


 ただの桃太郎ではない、ハイパーである。ハイパーってだけで何だか凄そうである。ハイパー!ハイパー!ハイパー!!


 しかし、ハイパー桃太郎は見たところ一人である。お供はどうしたのだろうか?桃太郎と言えば三匹のお供、とかいう固定観念に縛られるつもりはないが。いるといないとでは、イメージの強さが段違いだ。それに答えるかの様に、ハイパー桃太郎は叫ぶ。


「出でよ!しもべ達!モモモモモモモモ!!」


 桃をイメージした気合いの声を上げる。するとハイパー桃太郎から桃色の光が放出される。オーラ、漫画やアニメでよく見るあれである。


「ワオーン!」


「ウキー!」


「ケーン!」


 オーラが形を作り、犬、猿、雉が出現する。


「鬼共を滅ぼせ!」


 ハイパー桃太郎の掛け声と同時に、お供達は鬼に飛びかかる。犬は赤鬼に噛みつき、雉は空から青鬼に突撃し、猿は手を叩いて敵を煽ったり、味方を応援したりしていた。猿、必要か?


 ハイパー桃太郎は少し離れた所で、腕を組んでその様子を静観している。真の強者とは自らの手を汚さないものである。


「ちょっと、これは洒落にならないって!」


「訴えてやる!」


 キャラ作りも忘れて、鬼達はドタドタと公園から逃げ出した。その後、警察官に職務質問されていた。


「ハイパー桃太郎がいる限り、この世に鬼は栄えない!」


 勝利したハイパー桃太郎は、馬鹿笑いをする。今日もハイパー桃太郎の活躍で、この世の平和は守られた。しかし、鬼はきっとまたやって来る。頑張れ!ハイパー桃太郎!負けるな!ハイパー桃太郎!平和は君の手に掛かってる!!多分!

 因みにハイパー桃太郎の正体は、実は浦島太郎だというのはここだけの秘密だ。

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