幸福
その少年は、今朝もいつもと同じ時間に起き、いつもと同じように、歯を磨き、朝食を済ませ、身支度をして工場に出勤した。
そしていつものように仕事をし、1日の3分の1を無駄にした様な気分で帰路につく途中、少年は1人で呟いていた。
「自分は今幸せなのだろうか、幸せじゃないのなら、何が足りないんだろうか?」
そして少年は、ある事を思いついた。
「よし! 皆んなに幸せについて聴けばいいか!」
少年は、すぐ行動に取り掛かった。
まず、少年は、近所の花屋の店主に質問してみた。
「すみません、少し質問していいですか? あなたにとって幸せってなんですか?」
すると、花屋の店主は、少し悩んでこう答えた。
「そうだねぇ…… 道端なんかで、ふいに綺麗な花を
見つけた時は、心が和んで幸せと感じるなぁ……」
少年は少し感心した。
「なるほどなぁ…… 綺麗な物を見つければいいのかぁ……」
そして次に少年は、隣に住んでいる大学生に、同じ質問をした。
大学生はすぐ答えてくれた。
「僕は最近ゲームにはまってて、特にRPGなんかが好きでね、キャラクターが成長した時なんかは、すごい達成感で幸せだと思うね!」
少年はまたまた感心した。
そして少年は、たまたま会った、いとこのOLのお姉さんにも質問してみた。
「ごめん、ちょっといい? 今、幸せについて聴いてるんだけど、幸せって思うのはどんな時?」
いとこのお姉さんは、突然の質問に少し驚きながらも、答えてくれた。
「えぇ?! うーーんとそうねぇ……最近は、家庭菜園なんかをしててね、これがね家の中で出来ちゃうの、ものすごく簡単で、育てた後には、自分なりに調理して食べるの!」
「なるほどなぁ…… 最後には食べるのかぁ……」
少年は、いろんな考え方を聴いて、頭の中でそれを整理しながら歩いていると、ふいにそこに、小学生か中学生くらいの、綺麗で可愛らしい少女がいた。
そこで少年ははっと、ある考えを閃いた。そして少年はそれをすぐ行動に移した。 素早く少女を抱き抱え、家に連れて帰った。
家に帰った後、少女は何が起こったかわからず唖然としていた。少年はそんなこと気にもせず、冷蔵庫からたくさんの料理を出してきた。
「ほら、食べろ」
そして少女は、恐怖で言われるがまま従った。
数日後、少女が少し肥えたのを見計らって、少年はどう調理して食べるかを考えていた。
すると突然、大きな音とともに、何人もの大柄な男が部屋に入ってきた。
「警察だ! 大人しくしろ!」
少年は捕まり、牢屋に入れられた。そこで少年はあることを考えていた。
「自分は、幸せのために行動していただけなのに、なんで悪いことなんだ?」
そこで少年はある事を思った。
「もしかして、誰かが幸せになるためには、誰かが不幸にならなくちゃいけないのかなぁ……」
そして少年は最後に、そこにいた看守に、今までと同じ質問をした。
すると看守は皮肉たっぷりにこう答えた。
「お前みたいな極悪人を、捕まえた時は幸せだよ!」
よかったぁ、不幸でも幸せになれるのかぁと、少年は、頭の中で呟いて、そして真底安心して、少しの幸福を感じた……。