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少年(?)山田の胃が痛い日々  作者: 夏澄
プロローグ
1/95

1・胃薬が欠かせません

人生初投稿です。まだまだ方向性が定まっていません。

もしかしたら残酷な描写がはいってくるかもしれないので、気を付けてください。

前置きとして言っておこう。


わたしの日常には胃薬が欠かせない。


原因は彼女。


彼女は可愛い。

栗色の腰まで伸びた髪、そこらのアイドルなんて目じゃないくらいに大きくて愛らしい瞳、桜色の唇はプルプルと光り輝き、その声は鈴が鳴るよう。

10人の男がいたとして、3秒見詰め合えば、9人が「是非、お付き合いしてください」と申し込むくらい。因みに、残りの1人は2次元の女性しか愛せない性癖の持ち主か、恋愛に関心のない人種くらいである。


彼女の微笑みは、花が咲いたごとく。容姿は端麗、頭もそんなに悪くない、スポーツだって平均よりずっとうまい。

持ち前の明るさで周囲を虜にすること度々。

あらゆるイケメンは彼女に首ったけ。


いかにも乙女ゲーに出てきそうな主人公タイプの女の子。


それが彼女、相原 桃子。

通称「桃姫ももひめ」だ。


わたしといえば・・・容姿は普通。美容院代がもったいないので、髪は染めないショートカット。

頭はそこそこに良いと思っている。スポーツも部活には入っていないが、結構なんでもこなせる。

苗字は山田。あだ名も山田だ。(可愛げのないあだ名だが、わかりやすくて不便はない。)

まあ普通の17才の女子高生で、生徒会の書記という役職についている。



では、何故わたしの日常に胃薬が欠かせないのか?


もう一度言っておこう。


原因は彼女だ。



先ほど、わたしが生徒会の書記であることは説明しただろう。「書記」と言えば、生徒会の補佐的イメージで重要ポジションではないと思う。

少なくとも、わたしはそう思っていた。


でも違った。

わたしの高校、厳密に言うとわたしの代の生徒会では、「生徒会書記」と書いて「生徒会のおもり」または「生徒会の最後の良心」と読む。


わたしの高校はイケメンが多い。生徒会のメンバーもイケメンが多い。というか、わたし以外は全部男でイケメン。

ただし残念な。


彼らはもともと才能溢れ、仕事だってできる良い男だった。

彼女に、桃姫にメロメロになるまでは。


今では、仕事は疎かにするわ、桃姫に群がる男どもを射殺さんばかりに睨み付けるわ、桃姫以外の女の子はぞんざいに扱うわで学園崩壊するんじゃないかと内心ヒヤヒヤものだ。


私の役目は、そんな彼らの首根っこ捕まえて生徒会の仕事に引っ張ること。


「会長、仕事してください。体育祭まで残り何日あると思っているんです!?」

「離せ山田!せっかくこれから桃姫のところへ行こうと思っていたのに・・・」

今も仕事をさぼろうとしていた会長を捕獲し、生徒会室へと連行中。


「応援団の編成もまだなんですよ!

 応援団長になって桃姫に格好良いところを見せるんじゃなかったんですか?」

「おぉ、そうだった」

さっきまでやる気のなかった会長がスタスタ歩いていく。

「何をしている山田。さっさと歩け」


桃姫の名前を出した途端、この態度。

さっさと前へと歩き出していく会長の後頭部を叩きたい。

(ってか叩かせてください、誰か。)


 ※ ※ ※


「お前ら仕事しろ!」


今日も今日とて「生徒会書記」山田の怒声が校内にこだまする。


・・・とすんなり声に出してしまえば気持ちが良いのかもしれない。

でも、わたしはそんな声を張り上げて怒るタイプではない。

むしろ淡々と説得して相手を納得させて動かすタイプだ。


そして、目立つことが嫌い。

それなのに生徒会書記になったのは、「これで少しは内申がよくなるかも」という下心があったからだ。

でも、そんな下心があったのも最初のうち。

こんな状況、つまり乙女ゲーの主人公ばりのかわいいあの子に、みんなが夢中になって仕事を疎かにし始めるまでのうちは。


今も、体育祭の事後処理があるからと、生徒会役員達をかき集めて(ここにいたるまでに1時間を要しました。)作業に取り掛かっているのに(主に私が)、彼らは仕事もせずに写真を見てニヤニヤしてる。

その写真とは、体育祭で桃姫に頼んで撮ったツーショット写真だ。

しかも各自それぞれの分がある。


「はぁ、胃が痛い」


日々、生徒会役員達の首根っこを摑まえ、時には叱咤激励し、なんとか無事に体育祭は終了した。


準備までは本当に苦労した。

なかなか進まない仕事に、各委員会のトップに頭を下げては「大変ね」といった生暖かい目で見つめられ、

先生方に「作業が遅れてすみません」と頭を下げては「山田さん、一人で大丈夫?」と生暖かい目で見つめられた。(すでに先生方の中では、彼らは生徒会役員ではないですよね。会長・副会長・会計・書記、すべて山田の仕事だと思っていませんか?)


生徒会顧問の先生はわたしと一緒に作業に追われ、残業の日々。

「最近、嫁の視線が痛い」

と呟いていた。

この顧問の先生は新婚ほやほや。もうすぐ第一子が誕生する予定。

「すみません、わたしの力不足で」

一応謝っておいた。


そんな努力のたまものか、体育祭のほうは、なんとか無事に終了した。なんとかね。

「なんとか」って便利な言葉だ。


桃姫が周りの空気読まずに

「みんな頑張ってね。私、応援してるから」

と言ってくれたものだから、みんな頑張ったよ。特に彼女を恋い慕っている男共がな。

体育祭は、運動部、陸上部をメインにバスケ部・サッカー部が表に立った状態でVS生徒会役員、といった戦況となった。


(みんな分かってる?この体育祭は個人が頑張るものではなくて、あくまでクラス対抗だからね。

頼むから仲良くして下さい。)


そんなわたしの心境も無視して乱戦が続いた。

100m走では、足を掛ける、腕をつかむは当たり前。

普段から桃姫を挟んだ奪い合いをしている者同士が二人三脚をすれば、足踏みがそろわず転倒。

借り物競争で「好きな人」「かわいい人」の札が出れば、みんな桃姫のもとへと猛ダッシュ。

(誰だ?そんな札作った奴。そういえばうちの副会長が担当していたような。・・・あいつめ。後で靴に画鋲いれてやる)


結局、体育祭で優勝したのはわたしのクラスだった。

事前に

「みんなで協力して、このクラスだけでも体育祭を乗り切ってください」

と頭を下げたのが良かったようだ。桃姫のいるクラスだが、男子生徒達も穏やかな気質が多いので、地道に点数かせぎをしてくれたのが勝因だ。


だから、誰がなんと言おうが、なんとか体育祭は無事に終了したのだ。

多少、負傷者が出ようが気にしない。桃姫に良いとこ見せようと思って戦った彼らにとっては、名誉の勲章なのだ。


それに体育祭の後、桃姫に「みんな頑張ってたね」と褒めてもらっっていたようだし。


 ※ ※ ※


少し体育祭までの流れに意識が飛んでいた。

さあ、お仕事、お仕事。まあ、無意識のうちでも作業をする手は止めてないけどね。

あとは資料をファイルに閉じていくだけだ。


「そういえば、最近、忙しくて目安箱のチェックしてなかったな」

わたしは休憩がてら立ち上がり、生徒会室の前においてある目安箱を取りに行った。



沈黙。



「誰だ。目安箱にラブレター突っ込んだ奴は」


そこには生徒会への意見書ではなく、生徒会役員達へ向けたラブレターが投函されていた。

大量に。

蓋を開けるまで気づかなかったが、手紙は目安箱いっぱいに詰まっていた。


(これをわたしに分類しろと?各役員ごとに)

燃やしたいけど燃やせない。残念な彼ら宛なのがシャクだが、この一通一通には乙女達の想いが詰まっているのだ。


「そうだ胃薬取りにいこう」

思いもよらない追加の仕事に、わたしは現実逃避したくなった。



ファンタジーとしておきながら、しばらくファンタジー要素でてきません。

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