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魔法学園  作者: 眼鏡 純
84/88

84話 赤の瞳と青の瞳(7)

ス「龍空deラジオー。」

シ「おいおい、作者の野郎夏休みだっていうのに結局1ヶ月投稿ってどういうことだ。」

ヒ「任天堂さんから絶賛発売中の某イカゲームのし過ぎですね。」

ス「あっ、それ知ってるぜ。えっと名前は確か〜…何とかトゥーンだったような〜…」

シ「スプラ何とかだったっけ?」

ア「あの…さらっと名前出ちゃってるんだけど…」

ヒ「では、本編をどうぞ。そしてそのまま流れでゲーム屋に行ってWiiUを購入し、スプラトゥーンをプレイしましょう。」

ア「どんな流れ!?そして露骨なステマはやめて!」

──レビィ・サファイアは、体も魂も妖刀に支配されている。


──だが、レビィにはもう1つの『魂』を持っている。


──レビィの闘争本能が具現化したその魂が


──いつ、妖刀に支配されたと言った?





 何も可視出来ないくらい真っ暗な闇に覆われた心の中に立っている女の2つの赤い瞳が光り、ゆらりゆらりと何処かに移動する。そして辿り着いた所にいたのは、大量の鎖によって拘束された己と全く同じ姿をした女であった。

「主から体を取り戻せと命じられた。すまぬが少々心の中で暴れさせてもらうぞ。」

赤い瞳の女が告げた時、同じ姿をした女がゆっくりと己の光なき青い瞳を見せた。そしてほんの少しだけ笑い、承諾した。赤い瞳の女も少しだけ笑い、クルリと振り返った時には真剣な眼差しになっていた。そして同じ姿をした女を巻き込まさないよう遠くに移動した後、

「妖刀千年桜!どこだ!出て来い!」

何も見えない闇に叫んだ。すると、自分から数メートル離れた場所に桜色の靄が発生した。靄はゆらゆらと揺れながらある形を作り出す。そして完成したのは、赤い瞳の女と全く同じ姿をした(シルエット)であった。手には1本の刀が握られている。

【貴様…一体何者だ?】

妖刀の影が赤い瞳の女に問う。

「私は『レビィ・ナイト』。お前が憑いているレビィ・サファイアの闘争本能そのものだ。」

赤い瞳の女がナイトと名乗った。

【……闘争本能が何故単独で行動しているのだ?】

「確信までとはいかないが、恐らくサファイアが夜叉魔法を無意識に『拒絶』したから私が生まれたと思うのだ。」

【……人間は魔法(ちから)を拒絶すると闘争本能が一人歩きするのか。難儀な種族よ。】

「そんなわけなかろう。基本、魔法が使える人間は生まれた時から魔法が使える故、自然に己に馴染んでいく。だが、サファイアは1年前に唐突に魔法(ちから)に芽生えた。突然己に生まれたの未知の力に対し、サファイア自身が無意識に拒んでしまったのだろう。それにより、サファイアの目覚めた力は半分になってしまった。そして残ってしまった半分の力が、私にきたということだ。」

【つまり、この娘はまだ完全な力を出し切っておらぬということか?】

「そうだな。(ナイト)という存在がいる限り、サファイアが『真の力』を発揮することは無理だろう。」

【ならば貴様をも支配して、我が力の糧にしてやろう。】

自分と同じ姿をした桜色の影が、握る刀を少し構える。それを聞いたナイトがクスッと笑った。

「私を支配する前にまず自分を制御(しはい)するんだな。外部から侵入してきた力なんぞに支配させられている奴が私を支配出来ると思うなよ寄生虫風情が。」

ナイトがニヤリと笑いながら桜色の影を挑発する。顔がない桜色の影だが、ナイトの挑発にピクッと顔が動いたように思えた。そして桜色の影は無言で刀を構えた。

「主の命により、私の体を取り戻させてもらうぞ…妖刀千年桜!」

ナイトは赤きオーラで刀を形成し、柄を強く握った瞬間、桜色の影、妖刀に向かって漆黒の地面を蹴った。




 心の中でナイトと妖刀が激闘する間、外身であるレビィ・サファイアの肉体は今もシャインと戦闘していた。だが、体を動かしているのはレビィの意思でも、妖刀の意思でもない。外部からの力、デビルエルクワタストーンによって動いているようだ。

(動きが少し変わった…。妖刀(こいつ)の中で何か起こっているようだが確認は出来ねぇな……信じるしかないか…ナイトを…)

シャインはもう『何とも呼べない化け物』からの攻撃を防御しながら心の中にいると信じているナイトに託した。




 真っ暗な闇の空間に刃と刃がぶつかり合う音が響く。

[烈火輪(れっかりん)]!」

妖刀と間合いを空けたナイトが赤き刀を横振りすると、燃える輪が3つ放たれた。

【無駄だ。】

自分に飛んできた炎の輪を、妖刀は刀で切り消した。

【次はこちらから行こう……[桜狼狩(おうろうがり)]。】

妖刀が刀を漆黒の地面に指すと、妖刀の左右に桜色の魔法陣が展開され、桜色の影の狼が召喚された。召喚された二匹の狼はガウガウ!と牙を剥き出しにしながらナイトに襲いかかってきた。

「ちっ…!」

ナイトは刀を構え、迫ってくる狼を迎え撃つ体勢となる。しかし、狼はナイトに攻撃することなく、左右を通り過ぎたのだ。

(背後からの攻撃か…!)

ナイトは反射的に狼の方に振り向いた。だがその時、先程まで自分が見ていた方向、つまり妖刀の方から気配を感じた。ナイトは180度回転で止まらず、プラス180度加えて元に戻った。するとなんと、妖刀が残り数歩の位置まで接近していたのだ。

(狼は囮か…!)

ナイトは妖刀がくる前にギリギリ防御体勢になれた。だが、迫ってくる妖刀の後ろの方に『もう1人の妖刀』を発見した時、理解した──今迫ってくる妖刀は『幻』だと。そして案の定、自分に迫ってくる妖刀は桜の花びらとなって消滅した。

(こっち)が囮ということは…まさか…!)


 その時、背後から感じた──獣が獲物を狩る際の殺気を。


 ナイトが振り返るよりも速く、二匹の狼の鋭い爪がナイトの背中を切り裂いた。ナイトはうつ伏せに倒れそうになるが、何とか踏みとどまり、振り向いて狼達を斬ると、桜の花びらとなって消滅した。しかしダメージが大きく、ナイトは方膝をつき、刀で支える状態になってしまった。現在のナイトは肉体ではなく魂そのもの。故に流血はしないものの、切り裂かれた傷の部分が分解されるように粒子となって空間に溶けていく。

【ほう…魂に直接傷をつけるとこうなるのか。】

妖刀が薄ら笑いする。ナイトは無理矢理体を起こし、妖刀の方を振り向いた。

【どうした?随分と苦しそうだな。】

妖刀が余裕を見せながら煽る。

「これくらいの傷…虫に刺されたのと変わらぬ…」

強がりであるくらい重々承知だ。だが強がりでも言わなければ一瞬にして妖刀(やつ)の力に飲まれてしまう。

【我に支配されれば楽になるぞ?】

「だから…まず自分の体を…支配しろと言っているだろ馬鹿が…」

【……減らず口が。体なんぞ貴様達の『真の力』とやらを手に入れれば簡単に取り戻せる。】

「…そうか。だとしても…快く承諾する気は毛頭ない。」

【お前の承諾なんぞいらぬ。勝手に支配するだけのこと。】

妖刀が刀を構える。

「…ちゃんと許可はとるものだぞ、寄生虫風情が。」

ナイトも赤き刀を構えた。武器を構えた2人は無言のまま睨み合い、互いに相手の動きを警戒する。

(正直、このまま正面衝突を繰り返しても私の方が先にジリ貧になる……ならば賭けるしかないか…!)

ナイトがチラッとある方向を見た。妖刀はナイトの視線が違う所に向いたことを見逃さず、攻撃に転じてきた。

[花飛羅(はなびら)]!】

妖刀が刀を振ると、1枚1枚斬撃を纏っている無数の花びらが放たれた。ナイトは斬撃花びらをサイドステップで回避してから一歩で妖刀に斬りかかった。

【無駄だ。】

ナイトの攻撃を軽々と刀で防御する妖刀。このまま鍔迫り合いになるかと思いきや、ナイトは妖刀の刀を捌くと、ある場所に走り出した。

【何だ?】

妖刀は自分から遠退いていくナイトの姿を見た。



 妖刀を置いてある場所に向かったナイト。その場所とは、鎖に拘束された自分と同じ姿をした女、レビィ・サファイアの元であった。

「はぁ…はぁ…起きろサファイア。」

ナイトが声をかけると、サファイアが光なき青い瞳をナイトに見せた。

「……やはりな…お前、まだ『自我』が残ったおるな。でなければ私の声を聞いて、目を開けたり、微笑を浮かべるなんての『反応』は出来ないからな。」

ナイトは微笑を浮かべてから真剣な顔に戻して続ける。

「私の声が届いているなら聞け。お前のその僅かな自我で自分を取り戻せとは言わぬ。その自我で『私を受け入れろ』。そうすれば……」


──ドシュ!


ナイトの背中に1本の刀が突き刺さった。急所は外れているようだが、ガクッと方膝をついてしまうナイト。

【何を企んでいるか知らぬが、思い通りにさせる気はないぞ。】

刀を投擲(とうてき)した当人、妖刀千年桜が冷酷に告げる。だが、ナイトは妖刀を無視し、且つ刀が刺さったままサファイアを見上げて話を続けた。

「私の予想が正しければ…私が生まれた理由は…お前が魔法(わたし)を無意識に拒絶したからだと思う。ならばお前が(まほう)を受け入れれば…私と融合出来るはずだ。」

必死にナイトが叫ぶが、サファイアは光なき青色の瞳をナイトに向けるだけである。

「頼む!お前の中で私を受け入れるだけで良いんだ!だから早く…!」


──突如、横腹に衝撃が走った。


──何だ?何が起きた?体が勝手に横へ飛んでいる?


 漆黒の地面に倒れた際に見えた光景──自分が先程のまで膝をついた所に桜色の影、妖刀が立っている──成る程、私は妖刀に蹴り飛ばされたようだ。

【言っただろ?思い通りさせる気はないと。】

妖刀がゆっくりとナイトに近付いてくる。ナイトは立ち上がろうとするが、体がそれを拒む。それもそうだ。自分にはまだ刀も刺さっているのだから。妖刀はナイトの近くに寄ると、ナイトを背中から貫いている刀を躊躇なく引き抜いてから、ナイトの首を左手で掴み、持ち上げた。

【貴様が企んでいることは理解した。『真の力』とやらを発揮しようとしているのだろう?ならば我が手助けしてやろう。──支配した後にな。】

次の瞬間、ナイトの首を掴む妖刀の腕から紫のオーラが放たれ、ナイトの頭の中に激痛が走った。

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ナイトの口から勝手に叫び声が上がる。

【苦しかろう…だがもうすぐだ…もうすぐに楽になる。】

妖刀が更に紫のオーラをナイトに注ぐ。それによりナイトの叫び声がまた心の中に響く。


ナイトと妖刀を光景を、光なき青い瞳でただ眺めているレビィ・サファイア。その時────




……ろ…!───1本の鎖が千切れる。




……めろ…!───2本の鎖が千切れる。




……止めろ…!───次々と鎖が千切れる。




──止めろ!───全ての鎖が千切れる。




──もう、彼女を拘束するものはなくなった。




 ナイトを掴む妖刀の左腕が肩から空中に舞い、花びらとなって消滅した。妖刀から解放されたナイトは漆黒の地面に倒れる。

【ぬっ!?】

いきなり自分の腕が切り飛ばされたことに流石の妖刀も少しの動揺が走りながらも、右手に持つ刀で背後に左腕を落とした犯人に向けて横薙ぎした。しかし手応えはなく、逆に自分が犯人に蹴り飛ばされた。飛ばされた妖刀はクルクルと空中で回転してから地面に着地し、犯人の姿を見た。


 倒れているナイトに手を貸して起こす犯人の姿は、ナイトと全く同じ姿形をしていた。異なっている箇所を言うのであれば、瞳の色が赤ではなく青、髪の色が黒ではなく紺、そして名字が『サファイア』だというところだろうか。

【ナイトを支配するのに力を使い過ぎたか…。本物の方の支配力が弱まってしまったらしいな…】

冷静に目の前で起きている事を分析する妖刀をキッ!と睨みつけるサファイアが告げた。

「私の『友達』を傷付けないで。」

ナイトは自分の耳を疑った。


──今、サファイアが自分の事を『友達』を言った?


──友達?


──私はお前の闘争本能、つまり私はお前の感情の1つなんだぞ。


──自分の感情を『友達』と言うなんて……どういうことだ?


 【『友』だと?そいつはお前の本能、つまり貴様自身みたいなものだぞ。友なわけなかろう。】

これに関しては妖刀の言っていることは正論である。

「ナイトが私の本能だってくらい流石に分かっているわ。でも、違う魂に違う魔力、違う感情に違う思考…よくよく考えたら私とナイトの共通点って肉体だけなの。だから私はずっと、私とナイトは『別人』だと思っていた。別人だからこそ、私はナイトを『友達』と呼ぶ。」

サファイアがナイトを見てニコッと微笑む。

【はははは!これは傑作だ!自分の感情が別人だと?なかなか面白い冗談を言うじゃないか小娘!】

サファイアの言っていることが馬鹿馬鹿しいと、妖刀が声を出して笑った。しかし、サファイアは冷静に答える。

「他人にどう思われようと、私はナイトを『友達』と呼ぶのは変えないよ。だって私は私で、ナイトはナイトだから。」

サファイアの言葉を聞いて、次はナイトが少し笑った。

「私は私で、ナイトはナイトか……まさかそんなことを言われるとは思いもよらなかったな。」

「やっぱり…変…かな…?」

ナイトに笑われたことにより、少し信念が揺らぐサファイア。そんなサファイアを、ナイトは優しく抱きかかえた。

「嬉しい…私はとても嬉しいぞ。」

ナイトの頬を一雫の涙が流れる。

「えへへ、良かった。」

サファイアが満面の笑みを浮かべた。だがその時、ナイトは殺気を感じ、サファイアを勢いよく突き飛ばした。すると2人の間の空間を妖刀の刀が切り裂いた。

【戦闘中に余所見をするとは…随分舐められたものだ。】

左腕を失っている妖刀がナイトに向かって連続で斬りかかる。

「ちっ…!」

ナイトは瞬時に赤きオーラの刀で防御するが、蓄積されたダメージと妖刀の猛攻撃によって反撃に転じれない。



──ドス!



 妖刀の背後から青きオーラで形成された刀が貫いた。青き刀の所持者の名は…レビィ・サファイア。

【小娘…!】

「私の友達を傷付けないでって言ったでしょ。」

サファイアの言葉に怒りが籠っている。サファイアの攻撃により妖刀の動きが一瞬止まった時、ナイトも赤き刀で妖刀の頭を貫くと、妖刀の動きが完全に停止した。

「あなたは私が…いや、私達が成仏されてあげる!だから私の(なか)から出て行きなさい!」

サファイアとナイトが妖刀に魔力を注ぐと、妖刀の体が消滅し始める。

【この…!小娘共がぁぁぁぁぁぁぁ!!!】

怒号を最後に、妖刀がレビィの心の中から完全に消滅した。その瞬間、レビィの心を覆っていた闇が晴れ、辺りがサファイアの瞳と同じ鮮やかな青色となった。

「ふふ…やはりお前の心は綺麗だ。」

ナイトが周りを見てからサファイアに微笑んだ。

「ナイト…本当にありがとう。」

サファイアは全ての意を込めて礼を言った。青い瞳から涙を流しながら。だが、顔は満面の笑みで。

「自分の感情に礼を言うのは、この世でお前だけだろうな。」

小さくほくそ笑むナイト。

「もう!私は友達だって言ってるじゃん!」

サファイアが少し頬を膨らませて怒る。

「ふ…そうだな。だが、どれほどお前が友達を言ってくれても、私がお前の感情である真実は変わらない。 」

ナイトの正論に、サファイアが少し落ち込み、顔を下に向けた。

「だが、その真実から背くのも悪くない。」

ほくそ笑むナイトの優しい言葉に、サファイアは顔を上げ、明るい顔をナイトに見せた。

「サファイア…」

「ん?」

サファイアが少し首を傾げると、ナイトが満面の笑みを浮かべて告げた。

「お前は私の最高の友だ。故に信じているぞ、妖刀(やつ)を倒すとな。」

「うん!」

サファイアも満面の笑みで大きく頷く。そしてサファイアの中で、ナイトという存在を──夜叉魔法の力を受け入れた。その瞬間、ナイトの全身が赤く光り始めた。そして輝く赤いオーラとなったナイトはサファイアの中に吸収された。




 妖刀がレビィの中から消滅した時、心の外でも異変が起きた。デビルエルクワタが操るレビィの体がピタリと止まったのだ。

「はぁ…はぁ…止まっ…た…?」

レビィを傷付けるなんて出来るはずもないので、ずっと防御に徹していたシャインが息を切らしながら動かなくなったレビィとの距離をあけ、天空化(スカイモード)を解除する。

(なか)で何かあったようだな。」

レビィとシャインの戦闘を遠くで傍観しているフォーグが呟く。

「…………」

フォーグの隣にいるクルデーレは何も言わずただ傍観している。

 巨大な桜の下に生まれた静けさは、ほんの数分で終わりを迎えた。レビィがガッチリと掴んでいた妖刀の本体、『千年桜』を離したのだ。離された千年桜が地面に刺さる。そしてレビィはいきなり力がなくなったかのように倒れる。

「レビィ!」

レビィが地面に触れる寸前にシャインが抱きかかえた。

「おい!レビィ!しっかりしろ!」

シャインがレビィの体を揺するが反応はなく、目を瞑ったままである。その時、地面に刺さる妖刀がカタカタと動き始めると、ズボッと地面から抜け、フワフワと宙に浮いたのだ。浮いた妖刀が桜の根元付近まで後退すると、舞い落ちている花びらが刀の周囲に集まる。そして花びらが形成したのは(シルエット)ではなく、肉体があるレビィであった。だが、髪と瞳が桜色のため、偽物だとすぐに分かった。


 「あれが…妖刀の本体?」

クルデーレが呟くと、聞いていたフォーグが勝手に答えた。

「妖刀の本体はあくまで刀。だが刀だけでは動けるわけがない。だからレビィ・サファイアの体をベースに幻の体を作ったのだろう。」


 【我を弾き出すとは…なかなかやりおる小娘じゃ。】

妖刀がレビィの声で呟く。その時、シャインに抱きかかえられているレビィの目がゆっくりと開いた。

「レビィ!だいじょう…ぶ…か…?」

シャインはレビィの顔を見た瞬間、目が丸くなった。そんなシャインを無視し、レビィは一人で立ち上がる。シャインも合わせて立ち上がる。

「シャイン、あいつは私がやるから手は出さないで。」

シャインに背中を向けたまま告げるレビィ。

「……大丈夫なのか?」

シャインが尋ねると、レビィがクルッと振り返り、『赤色の右目』と『青色の左目』でシャインのことを見つめながら答えた。

「大丈夫、勝てるから。」

「…………おう。」

シャインは薄く笑うと、レビィの言葉を信じてこの場を託すことにした。レビィはニコッとシャインに微笑んでから視線を妖刀に戻し、生まれて17年間の中で一番の睨みを妖刀に向けた。

【我を追い出した程度で粋がるなよ小娘が。】

妖刀も桜色の瞳で睨む。

「その小娘の体に寄生しなきゃ何も出来ないくせに、あんたも粋がってんじゃないわよ。」

レビィの安っぽい挑発に反応する妖刀。

【調子に乗るなよ小娘…!】

妖刀が自分(かたな)を構える。レビィは目を閉じて大きく深呼吸し、集中力を高める。

(私のせいで皆に迷惑をかけた…。その分、頑張らないと…じゃなきゃナイトに怒られちゃうしね。)

クスッと笑ってから、赤色の右目と青色の左目を見せる。そして漆黒のオーラで形成した刀を構えた。


 睨み合う両者──数秒の膠着から、地面を蹴ったタイミングは──同時。

 そして互いに刀を振るうタイミングも──同時。

 強烈な一撃と一撃のぶつかり合いにより、衝撃波が発生する。それにより互いに後方へ吹き飛ばされ、地面に倒れる。だがすぐに立ち上がり、2人はまた地面を蹴った。そして2度目の衝突から激しい攻防が始まった。



 妖刀とレビィの戦闘を傍観中のシャインの元にスノウとヒューズが到着した。

「おいシャイン、これはどういう状況だ?」

スノウが尋ねる。

「色々あってレビィと妖刀が戦闘中だ。」

「加勢しなくても?」

今度はヒューズが尋ねる。

「手出し無用と言われたからな。」

「…そうですか。」

「じゃあよ、俺達は今から何をすればいいんだ?」

スノウがシャインに聞くと、シャインは桜の方を見て口を開いた。

「桜の木の暴走を止めるか。」

「暴走を?どうやって止めるのですか?」

ヒューズが尋ねる。

「知らねぇ。」

清々しいくらい言い切るシャイン。スノウとヒューズは呆れるしかなかった。

「でもよ、今妖刀が桜の木を操っていないのに暴走しているってことは、デビルエルクワタによって勝手に暴走しているってことだろ?てことは桜の木の何処かにデビルエルクワタが埋められているっつうことにならないか?」

シャインが推理すると、スノウとヒューズは確かにと納得した。

「じゃあ今から3人で桜の木を調べまくったらいいんだな。」

スノウがバシッと掌に拳をあてる。

「そしてデビルエルクワタを発見次第破壊……ということでよろしいですね?」

ヒューズの言葉に、シャインとスノウが頷いた。

「よし!行くぞ!」

シャインの合図で、3人は桜の木に向かって走り出した。だが、すぐに足は止まった。いや、正式に言うと『止められた』のだ。スノウは地面にうつ伏せに、シャインとヒューズは方膝をついた。

「な、なんだ!?いきなり体が重く…!」

地にうつ伏せに倒れているスノウが必死に起きようとするが、体は一切地面から離れようとしない。

「面白くなってきているのに水を差すんじゃない。」

3人に掌を向ける白い髪の男、フォーグが薄く笑う。もう片方の掌はクルデーレの方を向いており、クルデーレはシャインとヒューズのような格好になっていた。どうやら先にクルデーレの動きを封じたようだ。

「フォーグ…!」

シャインがフォーグを睨みつけると、フォーグはゴミを見るような視線をシャインに返した。




 シャイン達がいる場所から離れた場所でも戦闘は行われている。『アレン&フロウvsカギスタ』である。

[属性変換(アトリビュートチェンジ)(アクア)]。」

アレンが二丁ハンドガンの銃弾の属性を水に変える。

「[アクアイーグル]!」

水属性の銃弾が鷲の形となってカギスタに放たれた。

[鳥落(ちょうらく)]!」

カギスタは縦型の抜刀術で水の鷲を叩き落とした。そしてそのままアレンに斬りかかる。その時、2人の間にフロウが割り込み、武器化魔法(トランスマジック)によって剣に変化させた腕でアレンを守った。

「ホント、嬢ちゃん強いね〜。」

鍔迫り合い中にカギスタがフロウを少し馬鹿にした感じに褒める。

「お褒めの言葉どうもです。」

素直に礼を言うフロウ。だが、感謝の心は含まれていない。そして両者はバックステップして間合いを空けた。

「なぁ嬢ちゃん、少し気になることがあんだけどよ。」

「……何ですか?」

「嬢ちゃん、何か閃風の坊ちゃんと似ているっぽいんだけど…何か関係があるのか?」

「……!」

フロウはバレないくらいの反応を見せてから、

「…髪の毛の色が同じくらいじゃないですか?」

誤摩化すような返答する。

「いや、外見じゃなくてよ、その〜…雰囲気っつうか、放つオーラっつうか…そんなんが似ているんだ。」

「曖昧過ぎて理解に苦しみますね。」

バッサリと告げるフロウ。

「だよな〜…」

カギスタがハァと溜め息をつく。

「もういいですか?さっさと戦闘の続きをしましょう。」

フロウが構える。

「おう!そうだな!」

カギスタが調子を取り戻し、刀を構える。

(この2人…実は気が合うんじゃないか?)

そう心の中で呟くアレンも、カギスタの意見には正直なところ賛成であった。フロウ・アドページは大人気アイドルだ。アイドルがここまで戦闘出来るこの事実はおかしい。このような言い方はフロウに悪いが、たかが魔法が使えるだけのアイドルが、世界を変えようとする組織の幹部と渡り合えるなんて、よっぽどの戦闘の才能がなければ不可能だ。それも才能の中でもかなりの才能…そう…シャイン級の才能がなければ。

(戦闘の才能に外見の髪の毛…そして戦いに対する姿勢…やっぱりシャインに似ている…)

「アレンさん!」

アレンが1人悩んでいると、フロウに声をかけられ、ビクッと体を反応させた。

「何ボーッとしているんですか!来ますよ!」

フロウに言われ、現在何が起きているか思い出した。

(そうだ、今は目の前にいるカギスタをどうにかしないと。)

アレンは二丁のハンドガンを構え、フロウと共にカギスタとの戦闘を再開した。








 シルフォーニとエクノイアの国境にある樹海、『グゼット樹海』。その樹海の中にはある湖がある。名前は『時空の湖』。時空の歪みがあり、その歪みに入ると別世界にいけるという伝説が語られている湖が一瞬だけ、2つの影が湖から飛び出してきた。影は上空で停止する。ボーイッシュな服装をした者の背中には真っ白な天使の翼が生え、黒が基調なゴスロリの服装をした者の背中には青色の炎で形成された悪魔の翼が生えていた。

「久々に遊びに来てやったのに、ホントに騒ぎに巻き込まれるのが好きな連中ね。」

金色のショートヘアーに赤いヘアピンを付けた女が、驚異的な範囲の魔力察知でシャイン達の場所を特定し、呆れ気味に呟く。

「皆さん大丈夫かな…」

髪の色が『紫:黒=8:2』の割合の少女が不安な顔をする。

「あんたね〜…あいつ等よ?そう易々と死ぬような連中だと思っているの?」

金の瞳をゴスロリの少女に向け、少しだけ笑みを浮かべた。ゴスロリの少女は嬉しそうにふるふると首を横に振った。

「とりあえずあいつ等の所に行くわよ。」

「うん!」

金髪の女は天使の翼を、紫髪の少女は悪魔の翼を羽ばたかせ、シャイン達がいるシルフォーニ中央部へ飛び去った。

エ「龍空deラジオー。」

サ「はぁ…どうせ世界一暇な大学生の夏休みなんだからもっと早く投稿したらいいのに。」

エ「どうやら最近PSVITAの方でも新しいゲーム買ったらしいよ。確か名前は…何とかロンパだったような〜…」

サテ「あっ、それ私も聞きました。ダンガン何とかって名前のゲームでしたよ。」

レ「なに…このデジャヴ感…。で、では、次回も楽しみにしていて下さいね。」


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