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魔法学園  作者: 眼鏡 純
81/88

81話 命の優先順位(4)

シ・レ・ス・エ・サ・ヒ・ア・サテ「祝!4周年!」

エ「もうこの小説が投稿されて4年経ったのか~。 」

ア「時が経つのは早いものですね。」

シ「しかし、よくまぁこんな黒歴史確定レベルのこと続けているな。」

ス「あれなんじゃね?作者はリアルでぼっ……」

眼鏡「ぼっちじゃないですよ!」

ヒ「おや、作者自ら登場ですか。」

眼鏡「誤報が流れると思ってつい出て来てしまいました…」

サテ「あの、作者さん。」

眼鏡「ん?何かなサテラちゃん?」

サテ「私とサナ姉はいつになったら本編に登場するんですか?」

眼鏡「えっ!?そ、それは………」

眼鏡(言えない…!全然考えてないなんて言えない…!)

サ「ま、考えてなくて当然よね。基本的に見切り発車で書いているから。」

眼鏡「心を読まないでー!」

ス「見切り発車で書くからこの小説は矛盾や説明不足に陥るんだよ。」

眼鏡「うっ…」

エ「そーよそーよ。それに書き終えた後投稿する前にチェックしないから誤字、脱字とかが起きるのよ。」

眼鏡「ううっ…」

ヒ「それに普通はどこか違う所に設定とかそういうのを書き留めておくものなのに、この4年間頭の中で記憶するだけとかするから、フラグ回収とかが出来なかったり、変になったりするんです。」

眼鏡「もう…もう止めてくれー!」




シ「さて、作者が精神攻撃をされているが、ガン無視で進行するか。」

ア「そうだね。──さて、この『~魔法学園~』は細々でありますが4周年を迎えることが出来ました。」

レ「こうして迎えることが出来たのは紛れもなく読んでくれている皆さんのお陰です!そして万が一、この小説を1から見て下さっている人がいましたら、本当にありがとうございます!」

シ「どうやらこの小説はあと何年かかるか知らないが完結はさせるらしいから、まぁなんだ、気長に見守ってくれ。」

レ「ではそろそろ前書きはここまでにして、5年目一発の本編を~………」

シ・レ・ス・エ・サ・ヒ・ア・サテ「どうぞ!」

──刃が人体を貫く音が、桜吹雪の中に鈍く響いた。




──だが、その音はシャインから鳴っていなかった。




 桜色に光る刃がシャインの心臓を貫く寸前、軌道が急激に変化すると『何か』の左肩を貫いたのだ。貫かれた肩からは赤い血が痛々しく流れる。

「シャ…インは…!傷…つけ…させ…ない…!」

瞳の中に光が戻っている。どうやら今は『何か』ではなくレビィ本人のようだ。

「レビィ…お前…」

自分の中の『何か』に抗っているレビィに対して、シャインは何も出来ずただ見守るしかなかった。そしてレビィは必死に抵抗しながらシャインに囁くように告げた。

「お…ねがい…わたしが…だ…れか…を…きず…つけ…る…ま…えに…









 


……………殺して…」











 レビィはこの言葉を最後に中にいる『何か』に体を乗っ取られてしまい、また瞳から光が消えた。レビィの体を奪った『何か』は左肩から刃を抜くとバックステップでシャインから遠ざかり、桜吹雪を止ました。それにより視界が開け、エアルの姿も確認出来るようになった。

【ちっ、しぶとい小娘よ。潔く我に体を渡せば良いものの。】

レビィから発せられた声はレビィの声ではなく、低く少し年老いた男の声であった。

「てめぇ一体何者だ?」

シャインが睨みながら訊く。

【我の名は『千年桜(せんねんざくら)』。今、小娘が携えし刀そのものだ。本来であればここで貴様等を切り刻むが、小娘の無駄な足掻きのせいで無駄な傷が付き思う通りに動けん。故に今夜は見逃してやる。だが、必ずお前達を切り刻む…覚悟しておけ。】

千年桜と名乗ったレビィの中にいる『何か』はそう言い残すと、自分の周囲だけに先程の桜吹雪を発生させた。

「待ちやがれ!」

シャインは逃がすまいと桜吹雪に向かって地面を蹴った。しかし、一歩及ばす、桜吹雪は止んだ時にはレビィの体を持つ千年桜の姿はなかった。

「……くそっ…」

シャインは小さく舌打ちしてから風砕牙を鞘に戻した。

「シャイン、この状況って…」

近寄ってくるエアルの顔はどんより曇っている。

「ああ、俺達の頭を過った嫌な予感が的中したようだな。」

シャインとエアルが思った嫌な予感、それは正しく今の状況であった。

「たく…的中しなくていいんだよこんなことは…」

シャインはそう言いながら千年桜を見上げた。そして脳裏を走ったのはレビィの最後の言葉であった。

(殺して…か…悪いがその願いを叶える気はないぞ…レビィ……)

「……イン!………シャイン!……シャイン!」

エアルがぼーっとしているシャインを呼ぶ。シャインはハッ!と我に返ると、

「な、何だよ?」

と、エアルに尋ねた。

「何だよじゃないわよ。今からどうするの?レビィを探すの?」

エアルがこれからの行動を尋ねる。

「そうだな…とにかく一旦ホテルに戻ろう。俺もお前も魔力察知が使えないから探せないしな。」

「分かった。」

エアルが頷いて賛成した。




 ホテルに戻ってきたシャインとエアルは、自分達が出た窓からホテル内に入ろうとしたが、ホテルの従業員が閉めたのであろう、開いていなかったので仕方がなく正面玄関からホテル内に入った。時刻は深夜1時、流石に誰もいないだろうと思っていたが、

「こんな夜中に2人で何をしていたんですか?」

ロビーの待合室から眼鏡をかけた茶髪の男、ヒューズが現れたのであった。そして隣には緋色の髪を頭の後ろで三つ編みにしているアレンもいた。

「はぁ…一国の王女と不純異性行為とは国際問題になりますよ。」

ヒューズが呆れ顔でため息をつく。

「ちげぇよ!」

シャインがすぐにツッコみを入れる。

「てか、逆に何で2人はここにいるの?」

エアルがヒューズとアレンに尋ねる。

「かなり邪悪で強力な魔力を感じたから起きてきたんです。」

アレンが答える。

「それに、その魔力の中にとても覚えのある夜叉の魔力が混ざっているのも気になりましてね。」

ヒューズがアレンの返答に補足する。シャインとエアルは特に隠す意味もないので、待合室に移動して2人にレビィに起きた事件について話した。

「妖刀か…随分と物騒なことになっているね…。」

アレンが呟く。

「このままではこの小説のヒロインが永久離脱してしまいますよ。そうなると炎上は免れません。」

ヒューズがサラッとメタい発言をする。しかも内容が知っている人は知っている事件を臭わす感じであった。

「その発言はちょっと危険だぞ……」

シャインが苦笑いしながらツッコむ。

「ちなみに昨日私が買ったこのストラップの値段は1300ゴールドでした。」

いきなりヒューズが桜の花びらをイメージにしたキャラクターのストラップを見せながら説明する。

「お前…完全にワザとだろ…」

シャインはげんなりした顔でツッコんだ。

何のことか分からない人は『テイルズ ヒロイン 離脱』と『テイルズ ヒロイン 1300円』を検索してみよう。

「さて、冗談はここまでにして、今からの行動をどうするか考えますか。」

ヒューズが何事もなかったように話を戻した。

「レビィを探す。それ以外ないだろ。」

たシャインがいち早く提案する。

「ですが私やアレンの魔力察知出来る距離の範囲にはいないようですから探すには骨がいりますね。ま、先程の強力な魔力を妖刀が放ったら何処にいようと察知出来ますが。」

ヒューズが言う。

「それにこの人数じゃ流石に少ないからはなり時間がかかる。」

アレンも言う。

「う〜ん…だったら一旦朝になるの待とうよ。それの方が動きやすいし。」

エアルが提案する。

「その間にレビィに何かあったらどうすんだよ?」

シャインの反論に少し怒りが混ざっていた。

「それはないでしょう。」

ヒューズがキッパリ否定した。

「何でそう言い切れるの?」

エアルが尋ねると、ヒューズが答えた。

「仮に自分が取り憑く体が誰でも良かった場合、その妖刀はいつでも復活出来たはずです。ですが妖刀はそれをせず、レビィの体をピンポイントで狙った。つまり、妖刀にとってレビィの体はかなり都合が良い体ということです。そんな体をみすみす捨てるとは考えにくいでしょう。」

「成る程、ではエアルさんの提案でいきましょう。一度部屋に戻り、午前5時となったらまたここに集合して下さい。」

アレンがそう言うと、3人は頷いて賛成した。




 シャイン達が会議している時と同じ時刻。

【やはり『夜叉族』の体はしっくりくる。】

そう呟くのはレビィ……ではなく、レビィの体を乗っ取った妖刀千年桜である。現在千年桜は自分と同じ名である桜の木の頂上からシャイン達がいるホテルを眺めていた。

【あの建造物に強い魔力を持つ者達がやたらと集結しておるな。しかも先程会ったこの娘の友人らしき者達と同じかなり強力な魔力を持っている者もちらほらとおるな。】

千年桜の記憶は約千年前で止まっているため、『ホテル』という存在を知らないのだ。

【しかしこの辺りも変わったものだ。村や里が消え、都が栄えるとは。ま、どうでも良いがな。】

そう言いながら千年桜は自分の本体である桜色に鈍く光る刃を持った刀を現在乗っている太い枝に刺した。

【流石に千年も我の魔力を吸っていただけあって異常なくらい成長しているな。根がシルフォーニ中に広がっている。】

千年桜がレビィの顔でニヤッと笑った。

【さぁ…我のために働いてもらうぞ。】

次の瞬間、刀が刺さっている所を中心に巨大な魔法陣が展開したと思うと、ゴゴゴゴゴゴ!と大きな地震が発生した。





 「な、何だ!?」

部屋に帰ろうとしたシャイン達は突然の地震の発生に驚く。しかも地震はかなり長く続き、夢の世界に誘われていた人々を現実に戻すには十分な時間であった。そしてシルフォーニのほとんどの人々が起きた頃に、ようやく地震が収まった。

「で、でかい地震でしたね…」

アレンがホッと一安心する。

「びっくりしたね〜。」

エアルもふぅと安心する。


───だが、そんな安心は一瞬で終わった。


「お、おい!何だあれ!」

ホテルに地震の影響がでていない調べていたホテルの従業員が窓の外を差しながら叫んだ。その声を聞いたシャイン達は従業員が差す窓の外を見た。すると、ウネウネと動く太くて長い巨大な影が見えたのだ。シャイン達が警戒している次の瞬間、巨大の影が窓を突き破ってホテル内に侵入してきた。そしてホテル内に侵入したことによって灯りに照らされて正体が分かった。

「根っこ!?」

エアルが侵入してきたものに驚いた。そう、ウネウネと動いていた影の正体は木の根っこであった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

根っこはウネウネとタコの足のように器用に動き、ホテルの従業員達を次々と捕まえていく。そして悲鳴はロビーだけでなく色々な部屋から聞こえてきた。どうやら根っこは部屋ごとに襲撃しているようだ。

「シャイン!エアル!ヒューズ!各自根っこに襲われている人を助けてこのロビーに誘導して下さい!僕はSMCに連絡した後にこのロビーの防衛に徹します!」

アレンが今すべきことをシャイン達に命令した。シャイン達は承諾すると散り散りに救出に向かった。



 「きゃあぁぁぁぁ!」

レビィとエアルと同じ部屋だった茶髪モブ生徒と金髪モブ生徒の所にも根っこは襲撃していた。そして根っこが2人を襲おうとした瞬間、部屋のドアを蹴り壊してシャインが入ってきて、一瞬にして根っこをバラバラに切り刻んだ。

「おい、無事か?」

風砕牙を納刀すると同時にモブ生徒2人がシャインに涙を流しながら抱き付いた。

「え〜ん怖かったよ〜!」

「ふえぇぇぇ〜ん!」

「分かった!分かったから離れろ!」

シャインは2人を無理矢理離すとロビーに行くように言って他の場所に救出に向かった。


 「おら!」

スノウが窓から侵入して自分に襲いかかってきた根っこを殴り返した。根っこはウネウネしながら後退りするがダメージは喰らっていないようだ。

「くそっ…やっぱこういう敵には打撃より斬撃か…おい!どっちか斬撃系の風を放てるか?」

スノウがドア側に避難している同じ部屋で寝ていたモブ男子生徒2人に尋ねた。モブ生徒2人は目に涙を溜めながらふるふると首を横に振った。スノウは少し残念な顔をしてから根っこの方に向き直す。

(どうする?あと効くとすれば炎か…だが着火なんてするとホテルごと燃えちまう…)

根っこはスノウが良い案を思い付くまで待ってくれずまた襲いかかってきた。だがその瞬間、何かが窓の外を下から上に高速で動いた。するとなんと根っこはスノウの目の前で停止し、ズシンと重量感のある音を鳴らして地面に倒れたのだ。

「スノウ、無事か?」

そこに窓から根っこを外で斬って倒したシャインが入ってきた。

「シャイン!何だよこの状況は!」

スノウが怒鳴る勢いで尋ねる。

「それは俺も聞きたいさ。分かることは、今このホテルは謎の巨大根っこに襲撃されているということだ。」

「さっぱり意味が分からないぞ。」

スノウの頭では理解出来なったようだ。

「とにかくスノウは後ろにいるそいつ等を連れてロビーへ行け!そこにアレンがいるから適切な行動はアレンから聞いてくれ!」

シャインはスノウに指示した後、入ってきた窓から外に飛び出し、そのまま空中を駆けるように上へ飛んでいった。スノウは理解は出来ていないからとにかくシャインの指示に従うことにした。



 ホテルの屋上へと到着したシャインは驚愕の光景を目の当たりにした。それは自分達を襲ってきている根っこがコンクリートや家などお構いなしで無数に生えており、このホテル以外の民家などにも襲撃して人々を捕まえている光景だった。

「どうなっているだ……」

シャインは辺りを見渡していると、千年桜の様子がおかしいことに気が付いた。何やら木の頂上に巨大な魔法陣が展開されているのだ。

「何だありゃ…」

シャインがそんな光景を眺めていると、いつの間にか周囲が根っこに包囲されていた。

「ちっ…!」

シャインが風砕牙を構えたその時、ホテルの下から何やらエンジン音が聞こえてきた。音はどんどんと近付いてくる。そして音を出す正体が屋上の陰から飛び出してきて、2つの赤い炎を噴かしながら周囲の根っこを全て切り倒した。

「大丈夫ですかシャインさん!」

根っこを倒したのは黄緑ツインテールでアイドルのフロウだった。2つの赤い炎の正体はフロウが足の裏をジェットエンジンに変化させていたようだ。フロウは足と剣していた腕を元に戻してシャインの近くに着陸した。

「フロウか。よく俺も場所が分かったな。」

「私のモーションセンサーの目があれば居場所特定なんて簡単です。」

お忘れの方に補足しておきますと、フロウの魔法は武器化魔法(トランスマジック)。体の一部を武器に変化することが出来る魔法である。

「そんなことより!これは一体何の騒ぎですか!」

「俺だって知りたいぜ。だが、おそらく原因はあれだろう。」

シャインが千年桜の方を指差した。フロウは差された千年桜の方を見て仰天した。

「ど、どど!どうなっているですかあの桜!?」

「俺だって知りたいぜ。だが、千年桜からあんなことになっているから今がこうなっちまっているということは分かった。」

「ちょっと見てみます。[スコープアイ]。」

フロウは両目をスコープレンズに変化させると、倍率を上げてぐっと視界だけ千年桜に寄った。

「うわわ~…千年桜の根元にはこの周囲の倍以上の根っこが生えていますね。」

フロウが見えた光景をシャインに報告する。

「あの魔法陣が何か分かるか?」

「調べてみます。」

フロウが視点を魔法陣の方に変えた。

「かなり大きいですね。千年桜を完全に被さるくらい展開されてます。──ん?」

フロウは魔法陣の上に人影を発見した。フロウは気になりその人影にズームアップしていく。そして人影が徐々に分かっていき、誰か確認出来た瞬間、

「レビィ…さん?」

正体が分かった人影の名前を思わず呟いた。

「あの…シャインさ…」

フロウがシャインに尋ねようとした時だった。なんと魔法陣の上にいるレビィと目が合ったのだ。偶然ではない、はっきりとこちらを見ている。そしてレビィはそのままニヤッと笑ったのだ。その瞬間、フロウの背筋が凍った。この感覚──攻撃がくる!

「シャインさん逃げましょう!」

フロウが両目を戻してシャインの方を向いて叫んだ。

「どうした突然?」

いきなりフロウが叫び始めたのでシャインは少し戸惑った。

「攻撃がきます!」

「攻撃が?」

その時、突如千年桜の方から風が吹き始めた。それにより千年桜の花びらが美しく舞い落ちる。その舞い落ちる花びらは風に乗ってホテルの方にゆっくりと飛んできた。そして徐々に風が強くなっていき、花びらが空中を流れる速さが速くなっていく。


[桜斬雨(おうざんう)]。】

桜の木の頂上にいる千年桜がレビィの体でニヤリと笑って呟いた。


次の瞬間、風が突風へと変わり、花びらが暴風雨の際の横殴りの雨のように吹き荒れる。

「くっ…!」

「きゃあっ!」

シャインとフロウは飛ばされないように踏ん張る。花びらがシャインの頬をかすめた時、す~っと紙で切ったような傷を付けていった。

「これはヤバい!」

シャインは付いた傷から血を流しながら天空化(スカイモード)になると、刀を地面に刺し、

[守護天風陣(しゅごてんふうじん)]!」

ホテル全体を囲むように銀色に輝く風の壁を展開させ、桜の花びらを防御した。そして斬撃の花びらの舞いが終わると、シャインは風砕牙を抜いて天空化(スカイモード)から戻った。

「フロウ!大丈夫か!」

そう尋ねるシャインは頬以外にも体の至る所を花びらに切らている。

「な…なんとかです…」

答えるフロウの体も至る所に花びらに切られた傷がある。

「とりあえずアレン達と合流しよう。どうやら根っこどもの襲撃も一旦落ち着いたようだしな。」

「分かりました……」

シャインとフロウは一度ロビーにいるアレン達と合流すべくホテル内に戻った。




 ロビーにはエアルやヒューズなどに助けられた龍空高校生徒や他の宿泊客、ホテルの従業員が集まっているが、ほとんどが先程の花びらにやられて血を流している。エアルはそんな人々に1人ずつ治癒魔法をかけていた。

「シャイン。」

アレンがシャインに話しかけてきた。

「さっきの風の壁、シャインだよね?ありがとう、あれがなければ多分死者がでていたかもしれない。」

礼を言いながらアレンはシャインとフロウに応急処置魔法をかける。

「そんなにヤバかったのか。」

「根っこに千年桜側の窓を全て割られてね、そこから花びらが大量に入ってきたんだ。」

「……賢い戦い方しやがる。」

シャインとアレンが会話していると、そこにフロウが割って入って尋ねた。

「あの〜…今の状況に付いていけないんですけど…」

フロウからしてはレビィの件や妖刀の件を知らないため、突如根っこに襲われたようなものである。

「俺にも説明してくれよ。」

そこにスノウも現れた。そう言えばスノウは根っこ襲撃まで爆睡していたため、現在フロウと同じ立場になっている。

「そうですね、2人には話しておきましょう。」

アレンがフロウとスノウにこれまで起きた事を話した。

「おいおい、かなり洒落にならないことになっているんじゃねぇか。」

スノウが言う。

「レビィさんが妖刀に…じゃああの魔法陣の上にいたのはレビィさんの体を乗っ取った妖刀だったんですね。」

フロウが言った言葉に、シャインが反応する。

「レビィがあそこにいたのか?」

「はい。人影が見えたのでズームしたらレビィさんだったのでビックリしましたよ。」

「……薄々は思っていたけど、どうやら妖刀が千年桜を操って僕達を攻撃していたようだね。」

アレンの中で予想が確信に変わった。

「てことは、俺達を襲ってきたあの根っこは千年桜の根っこってことか?」

スノウが尋ねるとアレンは頷いた。

「そもそもあんなに木って育つものなのでしょうか?」

フロウが疑問を抱く。

「妖刀の魔力を千年間ずっと吸い続けていたんだ。だからあんなに育ったんだよ。」 

アレンが閃いた。

「魔力を吸うとあんな突然変異並の成長をするのか?」

シャインがアレンに尋ねると、アレンが頷いた。

「SMCの科学部隊がいたって普通の花に一週間魔力を注入し続ける実験をしたんだ。すると花は異常な成長を見せたんだ。それと同じことをあの桜の木は千年間妖刀から魔力を吸い続けた…しかも妖刀の魔力だからかなり邪悪で強力な魔力をだ。」

「てことは、あの桜の木も妖刀の一部みたいなものか。」

シャインが言う。

「そう考える方がいいかもね。」

アレンが頷く。

「では、桜の木の成長理由が分かったところで今からの私達の行動について話しますか。」

ヒューズが話の話題を変えた。

「そうだな……とにかく今は休みながら対策を練ろう。攻撃に移るには人数も少ないし対策もないから危険だ。」

「その間にレビィの身に何かあったらどうするんだ?」

ほんとシャインはレビィが関わると熱心だな、とスノウ達は心の中で思った。

「推測だけど、妖刀はレビィに何もしないと思うよ。」

アレンがシャインに答える。

「何でそう言い切れる?」

「妖刀はレビィの体を自分にとって都合が良いから乗っ取ったんだと思う。ただ体を欲していたのならそこら辺にいる人の体を乗っ取ればいい。でも妖刀はそれをせず、レビィの体をピンポイントで乗っ取った…そうする理由があるから。」

「つまり、特別な理由があるからレビィを乗っ取ったと?」

ヒューズがまとめると、アレンはそういうことと頷いた。

「……本当だな?信じるぞ。」

シャインは一旦アレンに従うことにした。

「怪我人の回復終わったよ。」

そこにエアルも合流した。

「ありがとうございます。今からは少し休みますのでエアルさんも休んで下さい。」

アレンが礼と今後の行動を言う。

「そうなの?じゃあ休ませてもらうね。流石に結構魔力使ったから疲れちゃった。」

そう言ってエアルは待合室にあるソファーに移動し、ボフッと倒れ込むように寝そべった。

「さて、僕達も休もう。もう少ししたらSMCからの増援も来るし。」

アレンの言葉を最後に、シャイン達は各々の休み方で休息をとることにした。



 【流石に桜の木での攻撃は燃費が悪いのう。続けていると我の魔力が尽きる。】

千年桜が自分の本体である刀を太い枝から抜くと、巨大な魔法陣が消えた。

【うっ…!】

レビィの最後の抵抗である左肩の傷が痛む。

【小娘め…面倒な傷を付けてくれたわい…。これは一度回復に専念するかのう。】

千年桜はズブズブと沼に沈んでいくように桜の木に入っていった。



 シャイン達が休んでから20分くらい経っただろうか。ホテルロビー内にいくつもの魔法陣が展開され、魔法陣1つにつき1人ずつ武装した人間が出現した。

「第三戦闘部隊到着しました!」

武装した1人の兵士がアレンに敬礼する。

「よく来てくれた。早速会議をすると皆に伝えてくれ。」

アレンが命令るすると、兵士は、はっ!と返事をする。

「あと1つご報告があります!」

「報告?何?」

「実は『あの方』も今回参戦すると!」

「あの方?」

アレンが首を傾げていると、また魔法陣が展開された。数は1つ。そして現れた人間が誰かと分かった瞬間、アレンに緊張が走った。華麗で水色のセミロング髪、細身の体型で、身長は170くらいだろう。腰には一本のレイピアを携え、髪と同じ色の瞳はとても冷たい目をしている女性であった。

「『クルデーレ』隊長!」

敬礼するアレンには緊張が走っている。頭から噴き出ている嫌な汗がその証拠である。

「その堅苦しいの止めて。ウザいから。」

少し声量の低くく、透き通るような綺麗な声でクルデーレが敬礼を止めさせた。

「アレン、この人はどちら様?」

シャイン達も集まってきて、エアルが代表でアレンに尋ねた。

「こちらの方は『第二戦闘部隊隊長』のクルデーレ隊長です。」

アレンがクルデーレを紹介する。

「クルデーレさんね…」

エアルはクルデーレに近付いて、

「私、ヴァスタリガ王女のエアル・ダイヤモンドです。よろしくお願いしますクルデーレさん。」

と、スッと手を差し出した。

「……よろしく。」

短く返事をしたクルデーレは差し出された手を握ってエアルと握手を交わした。しかしすぐに離し、

「こんな挨拶どうでもいいからさっさと状況報告と今後行動について話すわよ。」

淡々とアレン達に指示をしながら緊急会議に使えると判断した待合室に歩いていった。

「………何あれ、ちょっと冷たくない?」

エアルはクルデーレの背中を見ながら口を尖らせる。

「あははは…すいません。ああいう人なんで我慢して下さい。」

アレンが苦笑いしながら謝ると、腑に落ちていない顔をしながらもエアルはとりあえず納得した。

「アレン、早くして。」

クルデーレがアレンを呼ぶ。

「はっ!」

アレンは呼ばれたことに敬礼しながら返事をしてクルデーレの走っていった。

「……何かあの人感じ悪~い。」

エアルがムッとした顔で言う。

「……あの女、かなり強いな。」

シャインがクルデーレを見ながら呟いた。

「ん?シャイン、あのクルデーレって人と戦ったことあんのか?」

シャインの呟きを聞いたスノウが尋ねた。

「いや、ないさ。でもなんか分かるんだ。」

シャインがクルデーレを見たまま答える。

「ふ~ん…直感ってやつかね。」

スノウもクルデーレを見ながら言った。

「シャイン達も来てくれ。」

アレンに呼ばれ、シャイン達もSMCの緊急会議に参加することになった。



 「レビィ・サファイアという女子生徒が妖刀に体を乗っ取られ、シルフォーニ最大の観光名所である千年桜が妖刀に操られ暴走状態…正直関わりたくない状況ね。」

ソファーに座るクルデーレはアレンから現状を聞いて、率直な感想を述べた後に話を続ける。

「あの桜の木をどうにかするにはかなり骨がいりそう……だったらやっぱりレビィって子を殺す方が早そうか。」

「……!おい…今何つった?」

一番早く反応したのはシャインだった。

「レビィを殺す?ふざけんな!そんなことさせてたまるか!」

シャインの言葉に怒りが混じる。

「じゃあどうするの?まさかレビィって子を助けるとか言うんじゃないわよね?」

冷酷な眼差しでシャインを見詰めるクルデーレ。

「ああそうだ。俺はレビィを助ける。」

シャインが睨みながら言い切ると、クルデーレが大きくため息をついた。

「はぁ…あなた、命の優先順位が全く分かっていない。」

「…どういうことだ?」

「今のレビィって子は殺人鬼と同等。下手に近付けば殺されるだけ。いや、近付かなくても向こうから殺しに来る。そんな殺人鬼同様となった人間を、あなたは死者を出さずに助けることが出来ると思っているの?」

「でもSMCは軍みたいなものだろ?自分の命くらい自分で守ること出来るだろ。」

「SMCの人間ならね。じゃあ一般人はどう?突然こんな事件に巻き込まれた一般人は自分の命を守りきれる?私は無理だと思う。そして案の定、既に死者が出ているらしいじゃない。あなたはそんな死んでしまった人の親族にどう説明するの?仲間を助けるための仕方がない犠牲だったんだとか言うの?そんなこと言ったら親族は確実にキレるよ…そんなこと知るかって。だってその親族からするとレビィの命より断然死んでしまった人の命の方が大事だったから。」

「………」

何も言い返さないシャイン。

「つまり、全員が全員、レビィの命を優先するわけないの。私からするとレビィの命の重さは一般人と全くの平等。たった1つの命を捨てることによって多くの命が救えるのなら、私は何の迷いもなくその1つの命を捨てる。だから私は何の躊躇もなくレビィを殺す。」

「………お前、冷酷って言われたことあるんじゃねぇか?」

シャインのクルデーレを睨む眼が一層鋭くなる。

「陰で言われていてもおかしくない。でも、それが一部隊の隊長を任される者が辿り着く思考だから。」

クルデーレは最後まで冷たい眼のまま、住人を避難させるため、アレンの部下達を連れてホテルの外へ行った。クルデーレがいなくなった待合室の空気は重く息苦しい。

「………絶対させねぇぞ…!」

重い空気の中、シャインはそう呟くと何処かに行ってしまった。

「あっ!待って下さいシャインさん!」

その後をフロウが追いかけていった。待合室に残ったのはアレンにエアル、スノウとヒユーズの4人である。

「……ごめんね、重い空気にして。」

アレンが他の3人に謝る。

「別にお前が謝る必要はねぇよ。空気を悪くしたのはあの女だ。」

スノウはいなくなったクルデーレに対して舌打ちをした。

「そうだよ。アレンは悪くないよ。」

エアルがアレンを励ます。

「あはは…ありがとうございます。」

アレンが申し訳なさそうに礼を言った。

「さて、実際どうするんですか?このままではあの冷酷女にレビィが殺されてしまいますよ。」

ヒューズがアレンに尋ねる。

「そうだね…ここから僕は君達と行動は出来ないからな……」

アレンが顎に手をあてて考える。

「何で俺達と行動出来ないんだ?」

スノウがアレンに尋ねる。

「今までは僕以上の地位の人がいなかったから自由に動けたけど、今回はクルデーレ隊長がいるからクルデーレ隊長の指揮下の元で動かなくちゃならないんだ。」

「え〜、無視出来ないの?」

エアルが訊く。

「残念ですがそれが組織というものです。」

アレンが苦笑いしながら答える。そしてその時、

「アレン隊長!」

アレンの部下がアレンを呼びながら走ってきた。アレン達の視線が部下に集まる。

「どうした?」

「クルデーレ隊長が至急アレン隊長を呼ぶようにと!」

「早速か……分かったすぐに行く。」

アレンが頷くと、兵士はクルデーレの所に戻っていった。アレンは他の2人の方を向き、申し訳ないという顔をしてからホテルの外へ走り去った。アレンもいなくなり、待合室にはスノウとエアルだけとなった。


──あれ?スノウとエアルだけ?


「あれ?ヒューズは?」

エアルが辺りを見渡すが、眼鏡をかけた茶髪のヒューズが何処にもいない。

「あの野郎何処に行ったんだ?」

スノウも探すが、最初からいなかったのではないかと錯覚するくらい何処にもいない。

「…ま、いずれ戻ってくるだろ。俺達だけでどうするか考えようぜ。」

「うん!」

スノウとエアルは2人で作戦会議を開いた。






 時刻は深夜2時になろうとしていた。シャインはホテルの屋上で満天の星空を眺めていた。

「シャインさん…」

シャインの後ろからフロウが声をかけたが、シャインは空を眺めたままであった。

「1つだけ気になることがあるのですが……」

まだフロウの声に反応しないシャイン。

「どうしてレビィさんの事になるとそこまで必死になるんですか?」

ピクッ…シャインの耳が反応した。しかし、口は開かない。

「シャインさんとレビィさんの間に、一体どんな過去があったんですか?」

フロウがもう一押しする。だが、シャインは全く振り向かない。フロウはいけない事を聞いたかなと思い、

「ご、ごめんなさい!触れられたくない事だって人間ありますよね!あはははは~……」

と、少しでも場が変わるかとちょっと明るめに謝ってみたが、シャインの反応からして無駄に終わったようだ。フロウはしゅんと落ち込んで下を向いてしまった。だがその時、

「……11年前、俺が6歳だった頃……」

シャインがようやく口を開いた。フロウは顔を上げると、シャインが自分の方を向いていた。そしてシャインが言った言葉に、驚愕する以外選択肢がなかった。




















───「俺は一度…レビィと出会っているんだ。」


眼鏡「はい!皆さんおはようございます!こんにちは!こんばんは!作者の眼鏡純です!この度『~魔法学園~』は4周年を迎えることが出来ましたー!それを記念して(本当は偶然だけど)新キャラを登場させました!」


眼鏡「あっ、そうだ。勢いで触れてしまった『あの事件』について説明しないと。えっとですね、本編中で触れた『ヒロイン事件』、これはバンダイナムコさんから発売されている『テイルズオブシリーズ』の20周年タイトル『テイルズオブゼスティリア』で起きた事件なんですね。いや~、1テイルズファンとしてあの事件は誠に残念でした…。ちなみに私自身はゼスティリアを2周しております。詳細は皆さん各々で調べた方が分かると思うので、気になった方は調べて見て下さい。」


眼鏡「さて!何だかんだ『~魔法学園~』は5年目に入りました!ここまで続くとは自分でも思っていませんでした…。でも!ここまで来たら絶対完結させるんで!皆さん応援よろしくお願いします!」


眼鏡「では!次回をお楽しみに!」

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