78話 いざ!修学旅行へ!(1)
ス「お、今日からまた長編か。」
ア「今回は修学旅行編らしいよ。」
シ「久々に学園っぽい話だな。」
ヒ「これでタイトル詐欺と言われるのは避けられそうですね。」
ア「えっ!?そんなこと言われてたの!?」
ヒ「いえ、実際には言われてはないですが、おそらく読者の皆さんの中にはそう思っている人もいるだろうと考えただけです。」
シ「まぁタイトルが『〜魔法学園〜』って言ってんのに、蓋を開けて見れば異世界で神と戦っているとかだもんな。」
ス「いっその事タイトル変えたらいいんじゃねぇか?」
ア「例えば?」
ス「分からん!」
シ「清々しいほど言い切ったな……ま、今更タイトルを変えても中身は変わらねぇんだしこのタイトルでいいだろ。」
ヒ「考えるのも面倒ですしね。」
ア「なんて勝手なキャラ達なんだろう……とにかく読者の皆さんは本編をどうぞ。」
10月のある日、シャイン達は空港にいた。いや、正式には龍空高校魔法科の二年生全員がいる。
「2組の人はここら辺に集まって~!」
「こらそこ!騒ぎ過ぎだ!」
広い空間の一角を借り、教師達が生徒達をクラスごとに集めている。生徒達は言うことを聞きながらも、テンションはかなり高めである。
「……朝からテンション高いな、全体的に。」
大きな鞄を隣に置いてそう呟くシャインは半目状態である。
「そりゃあ何たって『修学旅行』だからな。」
答えたスノウは目がパッチリである。
そう、今日からシャイン達は『修学旅行』である。プランを簡単に説明すると、『自然国:シルフォーニ』の観光名所を3泊4日で巡るという感じである。国境越えはリッチなように感じるが、この世界ではベタな修学旅行である。そして今、シャイン達がいるのはエクノイアにある至って普通な空港。ここからシルフォーニに向かって飛行機で行くのである。ん?魔法で何とかならないのか?確かにテレポートも出来るこの世界。だが、それでは旅行感がないではないか。という校長の方針で、飛行機で行くのである。それに、どうやらテレポートと飛行機では、飛行機の方が圧倒的にかかるお金が安いのである。
「おはようシャイン。」
シャインとスノウの元にレビィが合流した。
「おう。」
半目のまま挨拶をするシャイン。
「ねぇねぇシャイン、この服、どうかな?」
レビィがこの修学旅行用に買った服を見せるためにクルッと一回転した。
「ん?あ〜…」
半目のままレビィの服をジ〜ッと見て、
「まぁ、良いんじゃねぇかレビィらしくて。」
と、感想を言った。
「そう?良かった。」
レビィはシャインに褒められて嬉しそうに笑った。
「レビィ、エアルはどうした?」
大体の確率でレビィとエアルは一緒にいる。だが、今は何故かいない。
「エアルならあそこで先生達の話してるよ。」
レビィが指差す方向で、エアルが教師と何か話している。
「あいつ昨日も職員室で先生と話していたな。」
スノウが思い出す。
「一週間前からずっと放課後は職員室に行ってたらしいよ。」
レビィが補足する。
「何考えてんだあいつ…」
3人が話していると、集合時間となり、バラバラになっていた生徒達は自分のクラスの場所へと戻った。
「お~い!全員注目~!」
体育の教師がメガホンで喋る。
「今から急遽決まったこと説明する。『旅のしおり』に書いてある予定が色々変わるからよく聞いておけ〜。」
そう言って体育の教師がメガホンを渡した相手は何とエアルであった。それにより生徒達がざわめいた。
「えっと、2年2組のエアル・ダイヤモンドです。もう皆知っていると思いますが、私はザファールスの現最高権力者です。つまり女王ですね。そんな地位をちょっと利用させて頂き、今回の修学旅行がより良い旅になるよう、ダイヤモンド財閥が全面バックアップさせてもらう形になりました。」
生徒達が更にざわざわする。
「それにより飛行機は当初予定してたものとは異なり、1クラスに一機、貸し切り状態で用意しました。ホテルも少しですが豪華な所になりました。今から詳細を言いますので皆変更点書いて下さい。」
エアルが変更点を言い始める。それを聞きながら、
「職権乱用になりませんかこれ?」
1組にいるヒューズが隣にいるアレンに尋ねた。
「う〜ん…双方の了承があるっぽいから大丈夫だと思う…」
アレンも少し苦笑いしながら答える。
出発時間となり、龍空高校御一行はダイヤモンド財閥が用意した飛行機に搭乗して行く。
「スゴいね〜、女王様ってこんなことも出来るんだ。」
レビィが指定されている席に座って隣のエアルに話しかける。ちなみに席は自由という粋な計らいである。
「せっかくだし良い旅行にしたいじゃん。」
エアルがニッコリ笑う。
「フフ、ありがとうエアル。」
珍しくレビィがエアルに抱き付いた。
「ちょっと止めてよレビィ〜。」
2人が戯れ合っていると、
「こらそこ!うるさいぞ!」
担任に怒られた。2人は素直に返事をしてから互いに顔を見ながら微笑み合った。
──楽しい修学旅行が始まった。
約2時間と少々長いの空の旅。普通であれば他の乗客やCAの方々に迷惑にならないよう静かにしなければならないが、この飛行機は貸し切りであるため、龍空高校関係の人以外はおらず、働いているCAもダイヤモンド財閥関係者のため、遠慮は無用だった。生徒達は暴れないというルールだけは守り、楽しい空の旅を堪能していた。
「おい!あれ見ろよ!」
窓際にいた生徒が外を見て叫ぶと、他の生徒が何だ何だと一斉に窓の外を見る。飛行機はそろそろ着陸するため雲の下を飛行中のため、下には広大な大地が見えている。流石は自然国と言われるシルフォーニ。空からでも分かる緑が大地を覆っている。生徒達のテンションが一気に上がる。
「楽しみだな〜♪」
エアルもワクワクが止まらないようだ。そんな龍空高校御一行を乗せた飛行機がシルフォーニの空港に到着した。空港に着くとバスで今夜泊まるホテルへと移動となった。ちなみにこのバスもダイヤモンド財閥のものである。約20分のバス移動の後、ホテルへと到着した。ホテルは、高級ホテルの模範になりそうな豪華なホテルであった。ちなみにこのホテルはダイヤモンド財閥のものではないが、宿泊代等のものは全てダイヤモンド財閥が支払っている。
「おお〜!」
「でけぇ!」
「奇麗〜!」
ホテルを目の当たりにした生徒達が思い思いの感想を述べながら中へと入って行く。広いロビーの一角を借り、色々な準備が終わるまでしばし待機となった。レビィはエアルが教師と共にフロントに行ってしまったため、静かにスマホをいじっていると、周りがいきなりザワザワし始めた。何だろうと周りに目をやると、全員同じ人間を見ていた。その方向を見ると、そこには、若草のような綺麗な黄緑色の髪はツインテールで尾骶骨付近まで伸びており、同じく黄緑色の瞳はまるで宝石のエメラルドのような輝きをしている少女がいた。その少女とは、現在人気急上昇中アイドル、『フウたん』こと『フロウ・アドページ』であった。生徒達は目の前にいる有名人にテンションがまた上がり、写メを撮りまくっていた。フロウはそれに対して笑顔で答え、時折ポーズなどをしてシャッターチャンスを作るなどのサービスをしていた。その時、レビィに気が付き、
「あっ!レビィさん!」
と、名前を呼びながらレビィに近付いてきた。
「お久し振りです!BOM以来ですかね?」
微笑むフロウはまるで天使である。
「そうね。私はテレビ越しだと私は何回も見ているけど。」
レビィが答えるが、フロウは辺りをキョロキョロとして全く聞いていない。その態度に少しイラッとするレビィだが表情には出さす、グッと堪えた。
「おに…シャインさんはどこですか?」
「…シャインならもうすぐ来ると思うけど。」
そう話していると、2年3組がホテルに到着した。その中には勿論シャインの姿もあった。フロウはシャインを発見すると、
「シャインさーーーーーん!」
と、叫びながらシャインに向かって一息で近付き、突撃する勢いで抱き付いた。
「フ、フロウ!?」
予想だにしていなかった相手に戸惑うシャイン。周りの非リア充男子生徒達は目の前の光景を見ながら心の中でシンクロした──『羨ましい……爆発しろ』と。
「お久し振りですね!おに…シャインさん!」
シャインから離れ、フロウが満面の笑みを見せた。
「お前、何でここにいるんだ?」
その笑顔には全く反応を見せず、淡々とシャインが尋ねる。
「新しく出る曲のPV撮影です。シャインさんは修学旅行ですか?」
「まぁな。」
「良いですね~修学旅行。はぁ~私も早く二年になりたいな~。」
フロウが羨ましがる。
「お前学校は?」
シャインが尋ねる。
「そこら辺は学校と相談しているので大丈夫です。」
「ふ~ん…お前も大変だな。」
「もう慣れっこですから。」
フロウがえへへと笑った時、
「1から3組の皆さんは準備が出来ましたので事前に決めておいた部屋のメンバーになって担任の先生から指定された部屋のカードキーを受け取って下さ~い。」
3組の担任、ナナリーが指示した。
「ま、お前がそれで良いなら俺は何も言わないさ。」
そう言ってシャインはフロウの隣をゆっくり通り抜けようとした。その時、ポンと優しく頭を叩き、
「だが、無理だけはすんなよ。倒れちまった元も子もねぇんだから。」
と、優しく告げた。フロウはとても嬉しくなり、すぐにクルッと振り返ると、歩き去って行くシャインの背中に向かって、
「はい!」
と、満面の笑みで返事をした。シャインは何も言わず、背を向けたまま少し腕を上げて答えた。
(何あいつ…イケメン………爆発しろ。)
そう心の中で呟く周りの男子生徒一同であった。
部屋は4つベッドがあり、トイレと風呂が付いてある至って普通のホテルの部屋より少し豪華めの部屋である。その部屋に四人一組の形で生徒達が入っていく。荷物は既に運ばれてあった。
「ぃやっほ~!」
部屋に入って即ベッドへとダイブするエアル。
「もう…何やってんのエアル…」
ため息をつくレビィは自分の旅行カバンを開けて、観光をするための準備をする。
「すぐにロビーに集合なんだから早く準備して。」
「はぁ~…少しくらい休ませてくれてもいいのに…」
そうぼやきながらも、ベッドから下りて準備を始めるエアルであった。
1日目の予定は、今いるホテル周辺にあるシルフォーニの観光名所を巡ることになっている。1から3組が一緒に巡り、4と5組が別の順路で一緒に巡ることになっている。シャイン達はバスガイドの女性に案内され、指定のバスへと乗り込み、最初の観光名所に向かって走り出した。
バスが最初に到着したのは『ナチュラルパーク』という公園であった。面積はかなりのもので、自然を活かしたアスレチックや、バーベキューが出来るスペースなどがある。
「ここでお昼まで自由時間にしまーす!パークの外には出てはなりませんよー!」
ナナリーがメガホンで言う。生徒達は素直に返事をすると、各々の仲良しグループが集まり、色々な場所に散らばって行く。
「お~い!スノウ~!シャイン~!」
エアルとレビィが広間で暇潰し程度とは思えない組み手をしているスノウとシャインと合流した。
「もう、あんた達はまたいつでも出来そうなことを。せっかく自然溢れる場所なんだからもっと活用したことしなさしよ。」
エアルがやれやれを呆れる。
「だってもうアスレチック完走したしな。なぁ?」
スノウがシャインに同意を求めると、シャインが無言で頷いた。
「え、もう?確かここのアスレチックって1時間くらいはかかるてことで有名だったはずだけど。」
レビィが言う。
「20分くらいだったと思うぞ。」
シャインがスポーツドリンクを飲んでから答える。
「もうちょっと楽しみなさいよ…」
レビィがハァとため息をつく。
「十分楽しんでそれくらいの時間だったんだよ。」
「もう…何でもいいわ…」
レビィは2人の驚異的な身体能力にツッコむのは時間の無駄と判断した。
「おや、いつものメンバーが揃っていますね。」
そこにヒューズとアレンも合流した。
「ねぇ、せっかく揃ったんだし6人で思いっきり遊ぼうよ!」
エアルが楽しそうに提案する。
「私は構わないけど…皆は?」
レビィが男4人に尋ねる。
「私も構いませんよ。」
ヒューズも同意する。
「僕も大丈夫です。」
アレンが答える。
「俺も大丈夫だぜ。シャイン、お前は?」
スノウは答えてからシャインに尋ねる。
「……楽しまなきゃ損だろ。」
そう言ってシャインが少し微笑んだ。そこから6人は昼食まで遊び尽くした。
昼食の時間になり、生徒達はバーベキューのスペースに集まり始めた。
「お皿に入っているのが一人前なので1人1枚持って行って、自由な所で焼いて食べて下さ〜い!でも時間は守ってね〜!あと譲り合いはしてね〜!」
ナナリーがメガホンを使って説明している。そんなナナリーの前から肉や野菜が乗った皿を持って行くシャイン達。
「さてと、食いますか!」
場所を確保して、スノウが肉を焼き始めた。
「ちょっとスノウ場所取り過ぎ。僕の焼くスペースがなくなるじゃないか。」
アレンが怒りながら強引に場所を確保する。
「あれ?ちょっと火が弱くない?」
エアルが火が少し弱いことに気が付いた。
「だったら新鮮な風を送れば強くなりますよ。シャイン、お願いします。」
ヒューズが隅の方で黙々と食材を焼いていたシャインにお願いする。
「………」
モサモサとトウモロコシを食べながらシャインが風を発生させると、一気に火が強くなり、スノウが焼いていた肉が消し炭と化した。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!俺の肉がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
スノウがその場でガックリとうなだれ、絶望に浸った。周りの生徒達はその姿を見てケラケラと笑う。
「てめぇ今わざと火力高くしただろ!」
スノウが半泣き状態でシャインをビシッと指差す。
「いやーわざとじゃないよー。」
完全に棒読みのシャイン。
「てんめぇ〜!食い物の恨みは恐ろしいぞ!」
スノウが戦闘体勢になる。
「お、やるかこの野郎。」
シャインがトウモロコシを上にポンと投げ、抜刀すると同時に真っ二つに切って戦闘体勢になる。そして一戦始まるかと思ったその時、
「こらそこー!何やってるのー!」
ナナリーが気が付いてメガホンで怒った。それによりハウリングが発生し、生徒達が耳を塞いだ。
「喧嘩はいけません!そして早く食べないと時間がなくなりますよ!」
ハウリング混じりで注意するナナリー。
「分かった!分かったからもう止めてくれ先生ー!」
シャインが必死に声を上げる。
「よし!はい皆も早く食べて下さーい!」
ナナリーが周りの生徒達にも言う。
「シャイン、大丈夫?」
レビィがシャインを心配する。
「ああ…何とかな…」
耳鳴りに苦しみながらもシャインが答えた。
昼食の時間が終わり、龍空高校一同はナチュラルパークを離れ、バスで次の観光名所に向かった。バスは快調に進み、どんどん山の奥に入って行き、山の中の駐車場に到着すると、全員バスから下りた。ここからは徒歩で移動のようだ。そして山の中を歩くこと数十分、観光名所に到着した。
「はーい!ここが『ビュティフルの滝』でーす!」
数百メートル上から落ちてくる大量の水は幻想的な光景を作りながら滝壺に落ちていき、水飛沫を上げている。生徒達は自然の迫力にただ感動していた。ちなみに水飛沫は落下防止も合わせて張られている結界によって見学出来るエリアには飛んで来ないため濡れる心配はない。
「すっげぇ〜な〜!」
スノウが滝を眺めながら率直な感想を述べる。
「ああ。」
隣にいるシャインが相づち程度の返事をする。そんなシャインの耳にある会話は聞こえて来た。
「なぁ…今なんか滝壺に人影が見えなかったか?」
双眼鏡で滝壺を見ていた男子生徒が2人の友達に訊く。
「ああ?別に見えてないが。」
「俺も〜。」
2人の友達が答える。
「あれ~?気のせいだったのかな?」
尋ねた男子生徒が首を傾げる。
(滝壺に人影だと?)
シャインは少し気になり、滝壺の方に目を向けた。しかし、何も見えなかった。
(やっぱあいつの気のせいか?)
シャインがそう思った時だった。一瞬だが人影が見えた。それと同時に、魔力察知が出来る教師達、アレン、ヒューズ、そしてレビィの心の中にいるナイトが高い魔力を感じた。
【サファイア!近くに強大な魔力を感じる!】
レビィの心の中でナイトが叫んだ。
「えっ!?どういうことナイト!」
突然心の中から叫ばれてビックリするレビィ。それ以上に驚いたのは隣にいたエアルであった。
「ビックリした〜!どうしたのレビィ?」
エアルが尋ねる。
「何かナイトが強い魔力を感じたって。」
「魔力を?」
エアルが首を傾げた瞬間、突然地震が発生した。それにより、周りの生徒達がパニックになる。そして地震が収まると、
「龍空高校の生徒の皆は急いでバスの方に移動してくれー!」
体育教師がメガホンを使って叫ぶ。生徒達もただ事ではないと察し、急いで移動を始める。他の観光客も次々に避難していく。
「アレン!」
スノウがアレンと合流する。
「一体これは何の騒ぎだ!」
魔力察知が出来ないスノウは状況を把握出来ていない。
「強い魔力が急に現れたんだ!とにかく戦闘準備を!」
「お、おお!分かった!」
スノウが頷く。
「シャイン!何をやっているんだ!」
アレンが滝壺を眺めているシャインの背中に叫ぶ。
(さっきの人影は気のせいなのか?)
どうやらシャインは先程見えた人影が気になって聞こえていないらしい。
「シャイン!」
再度呼ぶ声でようやくシャインが気が付いた。それと同時に滝壺の水がボコボコと盛り上がってきて、魔力の正体が姿を現した。蛇のように長く丸太のように太い水色と白色を基調とした体は30メートルはあり、太陽の光で鱗が輝いている。背中からは背びれに似た二本の羽が生えており、龍の腕も生えている。そして顔はどう見ても龍であった。
「な、何だこいつ!?」
シャインがバックステップで一瞬にしてアレンとスノウの元に合流する。
「『ドラゴンフィッシュ』!確かビュティフルの滝の守り神と言われていたはずです!」
「ドラゴンフィッシュって、こいつ魚類なのか!?」
スノウが驚く。
「研究者によるとそうらしい…」
アレンが苦笑いしながら答える。その時、ドラゴンフィッシュがアレン、スノウ、シャインに向かって攻撃をしかけてきた。だが、結界によって攻撃は弾かれた。
「あっぶねぇ…!」
スノウが安堵する。
「だが次の攻撃で確実に破壊されるな。」
いつの間にかレビィと交代していたナイトの言う通り、結界には罅が入ってしまい、次の攻撃で壊れるのは目に見えている。
「シャイン、スノウ、レビィさんは前線を。僕とヒューズで援護は援護に回る。エアルさんは回復中心でお願いします!」
アレンが適切な指示をする。
「了解。」
シャインがニヤッと笑うと抜刀する。
「ガアァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
ドラゴンフィッシュが咆哮する。そして龍の爪で結界を切り裂くと、結界が破れた。
「来るぞ!」
全員が構える。最初に動いたのはシャインであった。能力解放したと同時に、ドラゴンフィッシュの顔の前までジャンプした。
「[烈風波]!」
巨大な風の斬撃を放つと、ドラゴンフィッシュの顔に直撃した。だが、一切喰らった感じはなかった。
「ちっ…!なんつう硬い鱗だ…!」
舌打ちをするシャインが地面に着地する。次に動いたのはドラコンフィッシュであった。鋭い牙が生えている口を天に向けて開けると、魔力が口の中に集中する。そして魔力が溜まると、口をシャイン達に向け、水のレーザーを放ってきた。
「全員退避!」
アレンの号令と同時に全員が水のレーザーを回避した。回避された水のレーザーは土産屋を木っ端微塵に吹き飛ばした。
「なんて威力だ。」
ただの木片の山となった土産屋を見てアレンが呟いた。
「また来るよ!」
エアルが叫ぶ。ドラゴンフィッシュがまた水のレーザーを溜めている。
「させません![サンダーアロー]!」
ヒューズが雷を纏った矢を放ち、ドラゴンフィッシュの右腕に刺さった。ドラゴンフィッシュは全身が痺れ、水のレーザーを溜めるのを止められた。
「やっぱ雷が効くのか…」
スノウは拳に雷を纏う。
「シャイン!」
スノウはシャインの名前を叫んだと同時にドラゴンフィッシュに走り出す。シャインは一瞬で意図を読み取ると、風の玉を作り構える。そしてスノウがジャンプする瞬間に足下に風の玉に投げた。そして爆風が発生すると、スノウが加速した。
「[雷昇拳]!」
スノウは雷の如く速さでドラゴンフィッシュの顎にアッパーを喰らわした。それによりドラゴンフィッシュが大きく仰け反った。
「追い撃ちだ![闇狩り]!」
サファイアからナイトに入れ替わると、夜叉のオーラで作った刀でドラゴンフィッシュを斬った。
「私だって![エンジェルフェザー]!」
エアルも追い撃ちと魔法を唱えた。魔法陣から放たれた無数の天使の羽がドラゴンフィッシュに全て刺さる。
「これで最後だ![デスヴァイルフレイム]!」
アレンが二丁の拳銃から火属性の銃弾を大量に発射した。弾は全弾ヒットし、黒煙が舞い上がると、ドラゴンフィッシュの姿が見えなくなった。
「やったか!?」
スノウが叫ぶ。
この言葉は分かる人には分かる、見事なフラグ立ての言葉である───『やったか』は『やっていない』のがお決まりだ。
黒煙の中に見えた2つの赤い光がギロッとシャイン達を睨んできた。そして黒煙が消えると、殆どダメージを受けていないドラゴンフィッシュが現れた。しかし、どうやらかなりお怒りのご様子である。
「ガアァァァァァァァァァァァ!!!!」
ドラゴンフィッシュが咆哮した瞬間、衝撃波が発生した。その衝撃波は速く、シャイン達は防御などの対策が出来ずにまともに喰らってしまった。そしてシャイン達は喰らった瞬間、これが普通の衝撃波ではないと分かった。
「な、何だこの衝撃波…!?」
スノウは体の随まで衝撃が走った。それにより体から自由が失われ、その場に倒れ込む。
「これは……『気合』か…!」
片膝と風砕牙で体を支えるシャインが言う。
「き…あい?」
初耳だったナイトが苦しそうな声で訊く。
「詳しいことは…知らねぇが…そういう力が…あるんだ…」
答えるシャインも苦しそうだ。
「てかさ…この状況…ヤバくね…」
スノウの言う通り、今の状況は非常に危険である。全員が動けない状況でドラゴンフィッシュが水のレーザーを溜めている。
(どうする…!)
シャインが頭の中で打開策を考えまくるが、思い付く前に水のレーザーが放たれてしまった。
──死ぬ。全員がそう思った。
──だがその時。1つの人影がいきなり現れたと思うと、水のレーザーが反射してドラゴンフィッシュに直撃したのだ。それによりドラゴンフィッシュが大きく怯んだ。
何が起こったのか誰も分かっていない。だが、1つ分かることがある──自分達は生きているということだ。
「何が……どうなった……?」
スノウが問うが、解答が返ってくるわけがない。誰もこの状況を理解していないもの。全員が呆然としていると、シャイン達の真ん中に誰かが着地した。その者は下駄を履き、ムキムキの体に空手着を着た老人であった。
「わっはっはっはっは!小童共がようやったわい!」
白髪の頭に白い髭、そして仙人のような長く白い顎髭が生えた老人が豪快に笑った。
(だ、誰だ…?)
全員の心の呟きがシンクロした。いや、1人だけしていなかった。シャインだけ何か知っているような顔をしている。
「おま…!」
シャインが老人に話しかけようとした時、
「話は後じゃ。今はあやつを仕留めよう。お主等はそこで見ておけ。」
老人が遮る形で言い、ドラゴンフィッシュへ歩み寄って行く。ドラゴンフィッシュは近付いてくる老人に向かって吠えて威嚇するが、老人は一切怯むことはなかった。ドラゴンフィッシュはまた水のレーザーを溜め、そして放った。次の瞬間、老人はカッ!と目を見開き、飛んで来た水のレーザーを素手で跳ね返した。レーザーはまたドラゴンフィッシュに直撃して大きく怯んだ。そして老人はドラゴンフィッシュの顔の所までジャンプした。
「[手刀絶]!」
老人が腕を振ると鎌風が発生し、ドラゴンフィッシュの首を切断した。ドラゴンフィッシュはそのまま滝壺に落ちていった。
「マジかあの爺さん…!」
開いた口が塞がらないスノウ。
「さてと、小童達を元気にせねばな。」
老人はグッと握り拳を作ると魔力が集まる。
「[根性治癒]。」
そしてシャイン達に向けて手を開けると、シャイン達のダメージが回復した。
「あ、ありがとうございます。」
アレンが少し警戒しながらも代表で礼を言う。
「わっはっはっは!別に構いはせんわい!」
老人がまた豪快に笑う。そしてシャインの方に振り向いた。
「久し振りじゃのうシャイン。」
ニヤリと笑う老人に対して、シャインはとても嫌気な顔をしている。
「何じゃその顔は。せっかくの再会だというのに。」
老人が少し落ち込む。
「あの…シャインとお知り合いなんですか?」
ナイトからサファイアに戻っていたレビィが老人に尋ねる。
「ん?知り合いも何も、儂はこやつの『師匠』じゃからのう。」
老人がシャインの頭をガッと掴んで髪をわしゃわしゃする。シャインの嫌気な顔が更に増した。
「「「「「し、師匠!?」」」」」
レビィ達が声を揃えて驚いた。
「儂の名は『シュロム・アームストロング』!よろしくのう!」
シュロムがニッと笑った。
レ「修学旅行が始まったね。」
サ「でももう既に脱線しそうな雰囲気よ。」
レ「作者はすぐ事件起こすから嫌い。」
サテ「作者さんは平和な描写が苦手なようですね…」
サ「心でも病んでんじゃない?」
エ「精神科でも紹介してあげた方がいいかな?」
サ「その方が作者のためよ。」
レ「あの…勝手に作者を心の病気持ちするの止めてあげて…元気だから…多分…」
サテ「何で最後自信なくなっちゃったんですか!?」
エ「では!次回をお楽しみに!」