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魔法学園  作者: 眼鏡 純
75/88

75話 vsホラーレック兄妹(5)

眼鏡「どうも、作者の眼鏡純です。おそらく2014年最後の投稿になると思うのでひょっこり現れてみました。……かと言って何か話す事があるかと言われたら何もないんですけどね。まぁとにかく本編を見て下さい!」



眼鏡「誤字、脱字等があり読みにくい場合はすいません。」

 「行くぜ!閃風波]!!!」

シャインがジャックに向けて三日月型の風の斬撃を放った。

「いきなりですね──[ゴーストウォール]。」

ジャックは己の魔法、幽霊魔法(ゴーストマジック)で壁型の幽霊を形成して斬撃を防御する。

「アシュリー!」

防御した同時に、ジャックは妹であるアシュリーの名を叫んだ。すると、アシュリーは兄の意図を汲み取り、人形魔法(ドールマジック)を発動させ、片手で壁型の幽霊に触れた。

[幽霊人形(ゴーストドール)]。」

壁型の幽霊に触れた手の指を動かすと、壁型の幽霊が姿を変え、狼の幽霊となった。

「ゴー、ウルフ。」

そしてまた指を動かすと、狼の幽霊がシャインに牙を剥き出しながら突進してきた。その時、シャインの前にナイトが立った。ナイトは無言で黒のオーラの刀を構えると、突進してきた狼の幽霊を一刀両断した。

「流石はレビィ…いや、今はナイト先輩ですね。見事な一太刀です。」

ジャックがクスッと口だけ笑った。

「どこか馬鹿にされている感じがするのが気に食わぬな。」

ナイトが少しムッとした顔をした。

「褒めているんですよ。素直に喜んで下さい。」

ジャックがニコッと笑う。

「これは最初からハイレベルな戦いが繰り広げられております!この戦いはBOMの歴史に刻まれそうです!」

実況者が興奮しながら実況する。

[旋風乱舞(せんぷうらんぶ)]!!!」

シャインはそんな実況なんて気にもせず、ジャックに刀の連撃を放った。しかし、ジャックに全て避けられてしまった。

「[ゴーストチェーン]。」

ジャックは避け終えたと同時に、手のひらから半透明の鎖を数本生み出した。そしてジャックはシャインではなく、風砕牙に鎖を絡ませ、シャインから風砕牙を取り上げたのだ。

「なっ!?」

まさか武器を取られるとは思っていなかったシャインが一瞬動揺した。その瞬間を逃さず、ジャックが次なる攻撃をしかけた。

「[シャドーナックル]!!」

ジャックは腕を黒く染めると、シャインに向けて拳を突き出すと、ジャックの拳がシャインの腹を貫いたのだ。そして次の瞬間、シャインは骨の髄まで衝撃を感じたと思うと、そのまま吹き飛ばされた。シャインは数メートル吹き飛ぶと、地面に仰向けに倒れた。

「いっ…て…!まるで衝撃波が体を貫通していった感じだ…!」

かなりダメージがあったらしく、シャインは顔を少し歪め、腹を押さえながら立ち上がった。

「大丈夫は主?」

ナイトがシャインと合流する。

「ああ。戦闘には支障はねぇさ。」

「やはり一筋縄ではいかんようだな。」

「流石に決勝に来るだけあるわな。──とにかく風砕牙を返して貰わねぇと、俺がまともに戦えないぜ。」

シャインは自分の愛刀が今どこにあるか目で探すと、ジャックの手の中ではなく、妹のアシュリーが持っていた。

「私が取り返して来よう。」

ナイトがアシュリーに向かって走り出した。

[剣人形(ソードドール)]。」

アシュリーは持っている風砕牙に魔法をかけ、風砕牙をフワフワと空中に浮かばした。そして指を動かし、ナイトに向かって飛ばした。

「ちっ…!」

ナイトはその場に止まると、迫って来る風砕牙に備えてオーラの刀を構えた。そして、風砕牙はナイトの周りを(ハエ)のように飛び回りながらナイトに斬りかかってくる。ナイトはその刃を防御するが、その場で立ち止まっているため、全くアシュリーに近付けない状態である。

「ナイト!」

シャインがナイトに加勢するべく走り出そうとすると、前にジャックが立ち塞がった。

「あなたの相手は僕ですよ、シャイン先輩。」

「おいおい…俺はあんま体術得意じゃねぇんだぞ…。」

シャインは少し苦笑いする。

「相手が万全な状態ではないところを攻撃するのは卑怯ではないですよね?」

ジャックが口だけで笑う。

「……ごもっともだ!」

シャインは拳に風を纏うと、ジャックに向かって走り出し、

[剛閃風拳(ごうせんふうけん)]!」

その風を纏った拳をジャックに繰り出した。

「無駄です──[ドッペルゲンガー]。」

ジャックが体を影に変えると、シャインの拳はジャックの体をすり抜けた。そしてジャックは完全に影となるとその場から姿を消し、またすぐ現れた。シャインの背後に。

「[鬼火]!」

ジャックは手のひらに青く燃える火の玉を出現させ、シャインに喰らわした。

「あっつ!!!」

全身青い炎に包まれたシャインは地面に倒れて、陸に上がってしまった魚のようにのたうち回る。

「鬼火は地獄の業火ですから、消火するのはふか……」

ジャックが説明しようとしたその時、シャインの髪が黄緑一色に染まり、能力解放状態になった。それと同時に、鬼火がシャインの体から吹き飛んだ。

「……まさか力の解放を利用して鬼火を吹き飛ばすとは…見事な判断です。」

ジャックは素直にシャインの行動に関心した。

「はぁ…はぁ…バリアがなかったら丸焼けだったぞ…。」

能力解放状態となったシャインが呼吸を整えた。

「この野郎…覚悟しろよ。」

シャインがスッと戦闘体勢になる。

「本当に戦闘狂ですね。」

ジャックが少し呆れ顔となった。

「……あんま自覚はねぇんだけどな、周りから見たらやっぱそうなるのか。」

シャインが黄緑一色の髪をクシャクシャする。

「そこまで活き活きされると自然と思いますよ。」

「…そうか。」

「ま、そんなことはさて置き、せっかくシャイン先輩が強化してくれたのですから、僕も強化しましょうか。」

ジャックはそう言うと、一匹の幽霊を召喚した。

憑依剛化(ひょういごうか)]。」

次の瞬間、幽霊はジャックの体に吸い込まれた。すると、ジャックの赤き瞳がギラッ!と悪魔の如く恐ろしい目付きになり、漆黒の髪が逆立った。

(魔力察知がなくても分かる…!こいつの今の魔力は…!化け物だ!)

シャインの額から冷や汗が流れた。

「さぁ…試合(ゲーム)の続きをしましょう。」

ジャックが不気味に笑う。

「……勝てんのか…こんな化け物に…。」

シャインは苦笑いするしかなかった。






 ナイト、アシュリーの戦闘は一方的な状態であった。アシュリーが風砕牙を遠隔操作して攻撃してくるのを、ただ防御するしかないナイトであった。

(くそ…!まるで切りがない…!このままではただジリ貧になるだけだ…。)

ナイトが風砕牙の刃を防ぎながら、どう打破するか思考していると、

【…おかしい。】

ナイトの心の中で戦いを見ていたレビィが呟いた。

(…?どうしたレビィ?)

ナイトが心の中のレビィに尋ねた。

【太刀筋が読まれ過ぎている。】

(太刀筋が…だと?)

【うん。さっきからナイトが風砕牙を払ってからアシュリーに近付こうとすると、決まって回り込まれている。こう攻撃をしたらナイトはこう防御する…ナイトにこう払われたならばナイトがこう自分に近寄って来る…そういう全ての動きが先読みされているのよ。】

(…その話が真実のであればどのタイミングで私の太刀筋は読まれた?仮に天鼠との戦いと見られていても、完全にまでは読めないぞ。)

レビィは記憶を遡るとある記憶を思い出した。今大会のブロック分けの前、つまりジャックに初めて会った時、自分はジャックと握手を交わしている。そして忘れていたがジャックは『魂察知』が使える。魂察知は魔力察知より、より情報を得れる力。その力を使い、『ジャックが自分の太刀筋を知り、その情報をアシュリーに教えた』のであれば、少々強引だが自分の太刀筋がアシュリーに読まれているという辻褄が合う。そう考えたレビィはナイトにそのまま説明した。

(成る程な……そうであれば打破する方法はある。)

【ホント?どうするの?】

(奴等が知らない動きをするまでだ!)

ナイトは風砕牙が横斬りしてきた瞬間、払うのではなくジャンプして刃を踏んづけたのである。それにアシュリーがピクリと反応した。どうやらナイトが自分の知らない動きをしたことに反応したのだ。ナイトは踏んづけたことにより風砕牙の動きを封じると、風砕牙の鞘を掴んだ。

「くっ…!」

アシュリーは慌てて風砕牙を操作しようとしたが、ナイトがガッチリと掴んで離さないため思うように操作が出来ない。ぐんぐんと迫ってくるナイトに恐怖を感じたアシュリーは両方の手のひらをナイトに向け、

[操作人形(パペット)]!」

と、唱えた。それによりナイトの動きはまるでフリーズした動画のようにピタッと停止した。

「はぁ…はぁ…最初からこうすれば良かった…」

アシュリーがふぅと一息する。

「くっ…!」

ナイトは何とか動こうとするがどうも動けない。その代わり、あることに気が付いた。

(ん?『風砕牙が動いていない』。いや、『操られていない』のか。)

自分が今握りしめている風砕牙、先程まではアシュリーが操ろうとしていたため活きの良い魚のように暴れていた。しかし、今は全く動く気配がない。

(そうか…そういうことか。見抜いたぞ…人形魔法(ドールマジック)!)

ナイトが何かを理解した。





 シャイン対ジャック。互いに強化された状態でかなり高レベルな肉弾戦が繰り広げられていた。2人の拳が交わるたびに会場が盛り上がる。

「くそが…マジで強いじゃねぇか…。フィルムバリアがなきゃ俺の体ボロボロになってるぞ…。」

一旦ジャックから距離をとったシャインが呟く。例えフィルムバリアを装備しているため外傷はないとしても、痛みとダメージは蓄積されるので体力が削られているのは確かである。

「う~ん…実に残念です。」

漆黒の髪が逆立ち、悪魔の如く目付きをしたジャックが少しため息を付いた。

「大層強いと聞いていたのて楽しみにしていたのですが、この程度でしたか。せっかく決勝という舞台まで用意したのに。」

「……癇に障る言い方だな。」

シャインが少し苛ついた顔をする。

「だから、『本気』を出して下さいよ。」

ジャックがニヤリと口だけで微笑む。

「本気…だと?」

「あなたにはその能力解放の上の力があるじゃないですか。」

「……!何でその事を知ってやがる?」

「一度シャイン先輩の学校でなったじゃないですか。」

「……!」

シャインは思い出した。ジャックの言う通り、確かに自分は変身している。ジトジトとした梅雨の時期、雨の中で。

「そう言えばそうだったな。確か70話くらいだっけか。」

メタ発言をするシャイン。

「あの時、空に偵察用のゴーストバットを飛ばして見ていたんです。そして是非あの力と戦いたいなと思いまして。」

「……へっ、てめぇもなかなかの戦闘狂じゃねぇか。」

シャインが同じく口だけで笑った。

「違いますよ。実際、戦闘が好きではないのは嘘ではありません。」

「じゃあ何で戦いたいなんて思う?」

シャインが尋ねると、ジャックは少し間を空けてから、

「どうしても最強状態のあなたを越えなければならない理由があるんです。」

と、真剣な顔で答えた。

「…どういうことだ?」

シャインが訊いたがジャックは答えなかった。

「……答えられない理由…か。───なら、とやかく掘り下げる気はねぇ。お前は俺を越ええたい──それだけ理解していれば良いだろ?」

「……そう…ですね。」

歯切れの悪い返事にシャインは少し引っかかったが、これ以上訊こうとはしなかった。

「じゃあリクエストもあったことだし、お望み通りなってやるよ。能力解放の上の力にな。」

そう言うとシャインは魔力を一気に上げた。どんどん魔力が上がるにつれ、シャインの髪は白に変わり、周りから放たれているオーラも白へと変化する。

「はっ!!!!」

そしてシャインが叫んだ瞬間、能力解放の上の力─『天空化(スカイモード)』となった。

「さて、これになったのは良いが、『本気』と言われるとまだ足りない。だから……」

シャインは一瞬にして動きを止められているナイトの近くに移動した。

「主!」

「ありがとなナイト。刀取り返してくれて。お礼として今からその状態から解放してやろう。」

そう言うとシャインはナイトから風砕牙を取るとアシュリーの方を向き少し笑い、風砕牙を振り上げた。瞬間、ジャックは直感がヤバいと告げ、ゾワッと背筋が寒くなった。

「 逃げろアシュリー!」

ジャックが慌てて叫んだ。だが遅く、シャインが風砕牙を一気に振り下ろした。すると、巨大な白き斬撃がアシュリーめがけて放たれた。

「[ゴーストチェーン]!」

ジャックは半透明の鎖を放ち、アシュリーの腕に絡ませ、自分の方に引っぱり斬撃を紙一重で回避させた。白き斬撃はそのまま壁に激突すると、(えぐ)るように壁を破壊した。その破壊力に会場がざわめいた。

「これがお前が望んだ『本気』だ。」

シャインが楽しそうに口だけで笑みを浮かべながらホラーレック兄妹を見る。

「……結構えげつないことしますね。仮にアシュリーに直撃していたらフィルムバリアをぶっ壊して体が真っ二つになっていましたよ。」

ビックリして体を震わすアシュリーを優しく抱きしめたままジャックが苦笑いする。

「この大会はタッグ戦だぜ?仲間が危険だから助けたまでだ。ただ、ちょっと加減が出来なかっただけだ。」

シャインが真っ白となった髪をクシャクシャしながら応える。

「すまない主、助かった。」

ナイトがシャインに礼を言う。

「気にすんな。──それより、人形魔法(ドールマジック)の攻略は出来るのか?」

「心配無用だ。」

「そうか。なら妹の方は完全に任せるぞ。俺は兄と()る。」

シャインが風砕牙を構える。

「心得た。」

ナイトは了承すると黒きオーラの刀を構えた。

「大丈夫かアシュリー?戦えるか?」

ジャックが尋ねると、

「うん、大丈夫。」

震えが止まったアシュリーが力強く頷いた。

「よし、行くか。」

ホラーレック兄妹も戦闘体勢となった。


──フィールドに数秒静寂が広がる─そしてそれを破ったのは───シャインだ。


シャインは体勢を低くし、まるで地面が縮んだかと錯覚するほどの速さでジャックの目の前に移動した。

[峰打地(みねうち)]!」

そしてジャックの顎を刀の峰の部分でとらえ、そのまま空中に飛ばした。

「にぃに!」

追撃をしようとしているシャインの動きを封じるべく、アシュリーは[操作人形(パペット)]を発動した。が、

[闇壁(あんへき)]!」

突如目の前に闇の壁が出現し、術がシャインに喰らわなかった。

「お前のその術は、相手が『自分の前方におり』、かつ『自分が相手を視界にとらえておかなければならない』…のだろ?」

アシュリーの背後から壁を出現した当人─ナイトが囁いた。ハッ!とアシュリーが後ろを振り向いたその時、ナイトの蹴りが腹部に見事ヒットし、そして闇の壁に叩きつけられた。その間にシャインはジャックに向けて跳び上がった。

[廻龍墜(かいりゅうつい)]!!!」

そしてジャックと同じ高さになる少し手間でグルグルと前転するように高速回転し、遠心力を加えて峰でジャックを地面に向けて叩き落とした。矢の如く一直線に地面へ落ちたジャックが土煙を上げる。その様子をシャインはそれを空中で当然のように浮きながら見ていた。すると、土煙の中から勢い良くジャックがこちらに向かってきた。その手には漆黒の鎌が握られている。

[死神鎌(デスサイズ)]!!!」

(くう)を切り裂くようにジャックが鎌を横振りをしてきたのをシャインは容易く風砕牙で受け止め、そしてそのまま空中で攻防を始めた。白のシャインと黒のジャックは、まるで光と闇──決して交わることない2つの空中戦に、応援席はただただ圧倒された。




 ジャックとシャインが空中にいる時、地上でも戦いは行われていた。

[箱人形(ボックスドール)]!」

アシュリーは先程ナイトが出現させた闇の壁を正方形の漆黒の箱に変化させ、ナイトを中に閉じ込めた。

「無駄だ!」

ナイトは箱を内部から切り裂き、一瞬にして外に脱出した。その時、アシュリーは何やら片腕をグッと後ろに引いた。

「『パペット』は、手や指で操る人形…。『マリオネット』は、『糸』で操る人形…。その糸は…『武器』になる…!」

そう呟くアシュリーが後ろに引いた片腕の掌からは何かが伸びていた。しかしとても細くてなかなか見えない。そのよく見えない何かが1つに束ねられた時、ナイトは理解した。アシュリーの掌から伸びる何かを。これは──『糸』……『糸の束』だ。

[槍糸一線(そうしいっせん)]!」

ナイトが理解した瞬間、アシュリーが槍の如く先端が鋭くなった糸の束を放ち、寸分狂うことなく回避しようとしたナイトの右肩をとらえた。普通であれば風穴が空く威力であるが、フィルムバリアの『外傷を防ぐ』という能力によって空くことない。

──と、思っていた。

最初に異変に気が付いたのは実況者であった。実況者がいる所には非常事態を防ぐため、対戦中の者達の体調などをフィルムバリアを通して表示しているモニターがある。そのモニターのナイトの表示にノイズが走ったのだ。どんどんノイズ回数は増えていき、そして遂にナイトの表示が消えてしまったのだ。

モニターの表示が消えた──それが意味するのは1つ──『フィルムバリアの破損』である。この現状が起こす現実とは──

「がはっ…!!?」

──ナイトの右肩を槍と化した糸の束が『本当』に貫いたのだ。溢れる赤き血潮、流石のナイトも顔を歪ました。

「くっそぉぉぉ!」

ナイトは左手にオーラの刀を持ち替え、糸の束を両断した。切り落とされた糸の束は消滅した。

「くっ…バリアが壊れたのか…。」

刀を消し、右肩の風穴を左手で押さえながら状況を把握した。


 「こ、これはなんと!フィルムバリアが壊れてしまったー!こんなこと今までありましたでしょうかー!」

実況者が状況を説明すると、会場がざわめいた。

「おいおい、ヤバいんじゃねぇか?そして俺等出るの久々じゃね。」

応援席で横になっていたスノウが体を起こしながらメタ発言をする。

「おそらく一旦試合が中止するのでしょう。」

スノウの言葉を見事にスルーしてヒューズが言う。

「でも…あれを止められるの?」

エアルが空で起きている光と闇の攻防を見上げて苦笑いした。

「……無理があるだろうな──てか、あのジャックって野郎もすげぇな。シャインの本気と渡り合っているんだぜ。」

スノウはシャインと戦っているジャックに対して感心する。確かに感心するのも無理もない。シャインの今の状態、天空化(スカイモード)は、嘘であったとしても『神の王』を追い詰めた力、その力と現在渡り合っているジャックの力は相当であると確信出来るからだ。

「でもあの戦い、もうそろそろ終わると思うよ。」

シャインとジャックの戦いを見上げながらアレン。

「何でだ?」

スノウが問う。

「あんな大会側も想定外の戦いをされて、バリアが『壊れない』なんて有り得ない。」

見上げたままアレンは答えた。


 アレンの言葉は現実となった。互いに一歩も引かないシャインとジャックは未だ上空で激しい交戦をしている。そんな2人のフィルムバリアも遂に限界に達した。ナイトの時と同じく、モニターに映している2人の体調表示にノイズが走り出し、それがどんどん悪化していく。そして、消えた。即ち、フィルムバリアが壊れたのだ。2人同時に。


 「「なっ!?」」

2人は同じタイミングでバリアの破損に気が付き、互いに距離をとった。

「はぁ…はぁ…あ〜あ、壊れちまった。」

息を切らしたシャインは天空化(スカイモード)から戻り、まるで他人事のようであった。

「はぁ…はぁ…これは一旦大会側が中断するでしょう……仕方がないですね。」

こちらも息を切らしたジャックが強化状態から戻った。その時、シャインがニヤッと笑り、問いた。

「お前、『本当に』仕方がないと思ってるか?」

「え?」

「むしろ『チャンス』だと思ったんじゃね?」

シャインの問いにジャックが答える。

「……そんな訳ないじゃないですか。この大会は魔法科高校が集って行うイベント、言わば『お祭り』ですよ。そんな場所で血を流す戦いなんて……」

ジャックの言葉を聞いて、シャインがふむふむと頷く。

「確かにその通りだ。ただ…お前はそれで『満足』出来るのか?」

不気味な笑みを浮かべながらシャインが訊く。

「え?」

「お前はこんな『お祭り』で俺に勝って、満足出来るのかって聞いてんだ。」

「それは……」

ジャックは答えられなかった。妙な沈黙を生まれ、それを殺したのはシャインであった。

「……なぁ、何でお前はそんなに俺を越えたがる?」

シャインがずっと気になっていた事─それはジャックがここまで戦う『動機(モチベーション)』だ。バージェスのように『力こそ全て』を謳いたい、ただ純粋に己が一番最強だと証明したい、そういう理由ならここまで戦うのもまだ納得出来る。しかし、それはジャックの性格に合わない。ジャックは自分で戦闘は極力したくはないと主張している。その言葉が真実なのであれば、力が関係する動機を持つとは思えない。ならば何故、このジャック・ホラーレックという男は初対面のシャインにこれまで執着するのか。その答えとは──

「あなたを越えなければ…『あなたの先の人間を越えられない』。」


──『俺の先の人間を越える?』


「……何をいってやg…」

シャインが尋ねようとした時、己の直感が『ある人物』を頭の中に浮かび上がらせた。根拠はない。だが何故か確信出来た。そして言葉は脳が考える前に口から出た。

「お前、───出身か?」

その瞬間、ジャックはピクッと反応し、そして眼が泳いだ。声には出して答えてはいないが、シャインが聞いた事が『真実』だと確信するには十分な反応であった。

「そうか…だから俺を越えようと思ったのか…これでスッキリしたぜ。」

シャインはずっとモヤモヤしたものが晴れて微笑を浮かべた。

「だったら尚更こんな『お祭り』で決着をつけるのは無理じゃねぇか?お前の最終目的は『あいつ』なんだろ?」

「……ではどうしろと?」

ジャックが尋ねる。

「『死闘(デスマッチ)』と洒落込もうじゃねぇか。てか、お前もバリアが壊れた時、そう考えただろ?」

そう答えるシャインの笑みはもうただの悪党である。

「……そんなこと、大会側が認めてくれるとは思いませんが?」

「ま、とにかく下に降りようぜ。」

シャインは先に地面にいるパートナーの近くに降りて行った。ジャックも後を追うように地面にいる妹の近くに降りた。

「ん?大丈夫かナイト?」

地面に降りた時、シャインは自分のパートナーが傷を負っているのに気が付いた。

「大丈夫ではないかな…。」

パートナーのナイトが顔を少し歪ませながら答える。

[治癒風(ちゆかぜ)]。」

シャインはナイトの右肩に治癒の風をあてる。

「応急措置くらいだが、少しはマシになったか?」

「ああ、十分だ。」

ナイトは右肩を回して大丈夫だとアピールする。

「にぃに、平気?」

こちらは妹が兄を心配している。

「ああ、ちょっと疲れたけど平気さ。」

兄が妹の頭を優しく撫でると、妹は気持ちよさそうな顔となった。

「さてと……ジャック・ホラーレック、さっき空中で話していた事、お前は乗るか?」

シャインが尋ねる。

「……仮に僕が乗ったとしても、大会側が許してくれるとは思いませんが?」

ジャックが尋ね返す。

「無視すれば良い。」

「無視って…そんなことしたらフィールドに入ってまで止めに来ますよ。」

「なら入れなければ良い。」

全ての問いに即答するシャインが話しを続ける。

「ただし条件はある。そのためにはナイトとお前の妹は戦闘から外れてもらう。」

「…?どうしてですか?」

「大会運営共がこのフィールドに入れないようにする人間が必要だ。」

4人が戦闘しているこのフィールドに入るための出入り口は2ヵ所しかなく、そこを封鎖すれば外からこのフィールドに入る手段がなくなるのだ。何でこのような構造にしたのか、それは謎である。

「ナイトとお前の妹に出入り口を塞いでもらうと、大会側は入ることは不可能となる。そしたら俺等が自由に出来るってわけだ。」

「つまり、僕とシャイン先輩の一騎打ち死闘(デスマッチ)…てことですか。」

「そういうことだ。」

シャインとジャックの話を黙って聞いていたナイトであったが、流石に割って入った。

(あるじ)、全く話が見えないのだが…一体どういうことだ?」

「……悪いが話すことがは出来ない。でも、お前が俺を信じてくれるなら…何も聞かず従ってくれないか?」

真剣な眼差しでシャインが頼む。ナイトはシャインと数秒見つめ合ってから、

「……私は(あるじ)の夜叉…そして(あるじ)に従うのが夜叉だ。」

と、答えた。

「……サンキュー、ナイト。」

シャインが言葉の意味を汲み取り、礼を言った。

「にぃに、どうするの?」

アシュリーがジャックを見上げながら尋ねる。

「……アシュリー、お兄ちゃんに託してくれる?」

ジャックがアシュリーに尋ねる。

「……にぃにのこと、信じてるよ。」

妹からの笑顔の返事に、

「ありがとう。」

兄も笑顔で礼を言った。そして2人は龍空高校の2人の方を向いた。

「話しは終わったか?」

シャインがジャックに尋ねる。

「はい。」

返事をするジャックの目を見て、

「良い覚悟だ。」

と、シャインがニヤッと笑った。

「じゃあ頼むぜナイト。」

「心得た。」

「アシュリー、頼む。」

「……うん。」

シャインとジャックの言葉により、ナイトとアシュリーが2ヵ所の出入り口にそれぞれ移動した。すると、ちょうど予備のフィルムバリアを用意出来た大会運営がこちらに向かって来ていた。

「[闇壁]。」

「[グランドドール]。」

そんな連中を見ながらナイト、アシュリーが無感情で出入り口を塞いだ。

「おい!何をしている!」

大会運営が壁の向こうで叩きながらナイトに叫ぶ。

「主の命令なのだ、しばし待っていてくれ。心配いらぬ、死ぬまではいかないさ。」

ナイトはそれに対して少し笑いながら答えた。

「さっさとこの壁をどけなさい!」

アシュリーも同じようなことを言われていた。

「にぃにの邪魔…させない。」

アシュリーが淡々と答えた。



 「さてさて、優秀なパートナーのおかげでどうやら実現可能のようだな。」

シャインがおもむろに能力解放となる。

「そのようですね。」

ジャックも自分の背後に幽霊を召喚する。

「じゃあ…行くぞ!ジャック・ホラーレック!」

シャインが風砕牙を構えると同時に天空化(スカイモード)となる。

「僕は…あなたを超える!」

ジャックも体に幽霊を吸収し、憑依剛化の状態となり、死神の鎌を構えた。



──刹那。2人の刀と鎌の刃は衝突し、爆発的な衝撃波を生んだ。

眼鏡「最近、投稿遅いくせに内容が少ないし薄っぺらい感じで……すいません…。」



眼鏡「さて!2014年もあと1ヶ月!皆さんはどう過ごされるのでしょうか?私はおそらく例年と変わりない感じになると思います。クリスマス?あれ?確か中止になったって知らせが…………書いていて悲しくなりました…。皆さんは良いクリスマスを迎えて下さいね…。」


眼鏡「では皆さん!良い年を迎えて下さい!来年も『~魔法学園~』の応援よろしくお願いします!では!次回をお楽しみに!」

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