73話 vs天鼠高校(3)
ス「龍空deラジオー。」
シ「おい、何かまた作品増えてるぞ。」
ア「本当だ。名前は~…『堕天使』だって。」
ヒ「『~魔法学園~』『鬼神と人間の子』『堕天使』…どうするのでしょうかね作者は?」
シ「さぁな。ゴチャゴチャになって頭が爆発すんじゃね。」
ア「とりあえずこの小説をメインに書くらしいから、他の2つは気まぐれに投稿するらしいよ。」
ス「てか、作者は『鬼人子』の内容覚えてんのか?」
ヒ「きじんこ?そんな作品ありましたっけ?」
ス「『鬼神と人間の子』のことだよ。長いから省略したんだ。」
シ「……なんかミジンコみてぇだな。」
ス「ミジンコみたいな作者だからいいんじゃね?」
眼鏡「良くないよ!何勝手に微生物扱いしてんの!」
ア(ツッコむためだけに現れた!?)
ヒ「まぁちゃんと完結はすると思いますので気長に読んで下さい。では本編をどうぞ。」
龍空高校控え室。
「なぁ、結局のところ、あのフロウって何の魔法使うんだ?」
シャインがベッドに寝転びながらレビィに尋ねる。
「う〜ん…何だろう?エアルにも聞けなかったし。」
ソファーに座っているレビィが首を傾げる。
「ま、戦えれば何でもいいけどな。」
不吉な笑みを浮かべ、目をギラつかせるシャイン。
「ホント…シャインって戦闘が関わるとイキイキするよね…。」
レビィが苦笑いする。
「そうなのか?」
シャインはムクッと上半身を起こしてきょとんとする。
「……自覚なかったのね…。」
レビィは苦笑いを通り越し呆れるしかなかった。
「そう…か…。」
シャインが小さく呟いたことにレビィは気が付かなかった。その言葉に少し嫌気が入っていることも当然気が付いていない。そんなレビィはこの際だから気になることを尋ねた。
「ねぇ…ずっと気になってたんだけどさ、シャインってどうやって剣術学んだの?」
「ああ?」
「どんだけ戦闘に関して天才だと言われてもさ、基本を知らないと意味はないでしょ?誰かから習ったの?それとも我流?」
シャインはその問いに対して、また寝転んでから答えた。
「あ~…最初は我流だ。母親が死んで、1人途方に暮れていた俺を知らない家族が養子として預かったってのは前に話したな?」
「うん。」
「その家族の家に刀が飾られていたんだ。それを俺は家で1人の時に振り回して遊んでいたんだ。」
「なんて危険な遊びしてんのよ…。」
レビィが再度苦笑いする。
「その遊びがいつの間にか本格的になってな、下級の魔物なら1人で討伐出来るくらいになったんだ。」
(小さい頃からスゴかったんだ。シャインの戦闘の才能って。)
レビィは心の中でシャインの才能に対して再度驚かされる。
「そしてある日、暇潰しがてら魔物を狩っている時、後に俺とミリアとバージェスの『師匠』になる人物に声をかけられたんだ。」
「師匠!?シャインに師匠がいたの!?」
「言ったろ、最初は我流だって。んで、師匠に会ってからは何か色々教えられた。まぁ俺は半ば強制に弟子されたから、師匠のことはあんま好きじゃねぇけどな。」
「へぇ〜そうだったんだ。その師匠さんって今どこにいるの?」
「知らねぇけど、生きてるとは思う。俗に言う『超人』だから。」
「へぇ~…」
(シャインが超人と言う人か…スゴい強いんだろうな。)
レビィが内心で自己解釈する。
「さてと、そろそろ試合だ。いけるか?」
シャインはベッドから下り、レビィに準備完了か訊く。
「うん。頑張ろうねシャイン。」
「おう。」
シャインとレビィは拳をコツンとあて合った。
1位トーナメント第2回戦、龍空高校vs天鼠高校。両校の代表者およびパートナーがフィールドに現れると、歓声が上がった。龍空高校代表者シャインが数メートル先にいる天鼠高校代表者フロウに話しかける。
「アイドルだからって容赦はしねぇからな。」
「はい。そうでなくては面白くないですから。」
天使のような笑顔を浮かべながら意外にも好戦的な返答をするフロウ。そんな返答にシャインは少し片方の口角を上げ、
「へぇ…これは楽しめそうだ。」
目をギラつかせながら早くも風砕牙を抜くシャイン。それを横目で見て少し呆れるレビィ…もとい黒髪に赤い瞳のナイトであった。
「フウたんはこの俺が守る!」
いきなりそう宣言したのはフロウのパートナーであるツイアであった。
「守る…か。ではその志、どれほどのものか見せてもらおう。」
ナイトは黒い夜叉のオーラを右手に集め、漆黒の刀を形成した。
「さー!お待たせしました!今から1位トーナメント第2回戦を始めます!両者がフィルムバリアを展開した瞬間から試合開始です!」
実況者の声に従い、4人が同時にフィルムバリアを展開させた。
「それでは1位トーナメント第2回戦!レディ~…ファイト!」
実況者が開始のゴングを鳴らした。
「さて、始まったのはいいが、相手が両方とも魔法が分からないんじゃどうしようもねぇしな…」
シャインがどう立ち回ろうか考えていると、
「主、相手は待ってくれないようだ。」
ナイトの言う通り、既にフロウとイツアがこちらに向かってきていた。
「……どうやら、俺がアイドル。お前が男のようだ。」
「心得た。」
シャインとナイトは互いに刀を構えて迎え撃つ。
「いきますよシャインさん!」
フロウはグッと拳を握り、シャインにパンチを繰り出した。
(体術か…!)
シャインがパンチを回避すると、フロウは小柄を活かして素早い攻撃を連続で放つ。
(ちっ…結構やりやがるな…。)
回避するシャインは隙を狙っているが、なかなか隙がない。そして攻撃の中、フロウが手刀を放つ時、シャインの耳がキンという金属音を聞いた。
(ヤベぇ…!)
シャインの本能が風砕牙で防御をさせた。その瞬間、金属音が響き渡った。
「へぇ〜、よく止めましたね。」
笑顔で言うフロウの手刀を放った腕がなんと刀になっていた。
「大層な腕だな…!それがお前の魔法か…!」
「う〜ん…あたってますけど、少し違います。だって…」
フロウは反対の手の人差し指と親指を立て、銃のようにした。すると、本当に銃となった。
「銃にもなるんです。」
まさしくハンドガンから弾が放たれた。
「ちっ…!」
シャインが体を捻り紙一重で回避する。
「この距離で避けるとはスゴいですね。じゃあこっちでいきましょう。」
フロウは間合いを空け、ハンドガンからガトリングに変形した。
「なっ…!?」
シャインが驚いたの同時にフロウがガトリングをガガガガガガ!と重音を鳴らしながら発砲してきた。シャインはフロウを中心に円を描くように俊足で走って回避する。
(どうなってんだあいつの体は…!)
シャインは舌打ちをしてから、
「[隼]!」
風を足に纏わせ更に加速した。
「[サーチアイ]。」
ガトリングを放ち続けるフロウの黄緑の瞳に複雑な記号や数式が流れた。フロウの目は高速で走るシャインを確実に追っている。たとえそれが死角だとしても。
「私の目からは逃れられませんよ。」
「なっ!?」
シャインはフロウの死角から斬りかかった。だが、フロウにグッドタイミングで防がれたのだ。
「[ジェットレッグ]!」
シャインが動揺によって起こした一瞬の隙。そこにフロウは踵からジェットエンジンを噴かし、高速の脚でシャインを蹴り飛ばした。
「がはっ…!」
シャインは抵抗出来ずにそのまま壁に激突した。
「これは愛を込めたプレゼントです。」
フロウはガトリングをバズーカに変形させ、ニコッと笑って発射した。砲弾は真っ直ぐシャインに直撃し、砂煙を巻き上げた。そして数十秒後、会場の視線が集まる砂煙の中からシャインの姿が見えた。
「愛を込めた?殺意を込めたの間違えじゃねぇか?」
シャインは刀を地面に刺し、[守護風陣]を展開して砲弾を防いでいた。
「流石ですね。」
フロウの天使のような笑みは、今じゃ少し悪魔寄りである。
「なぁ…そろそろ魔法を教えてくれよ。俺側は知らなくてお前側は知ってんのは対等じゃねぇだろ?」
「………そうですね。私の魔法は『武器化魔法』。自在に体を武器に変形出来る魔法です。」
「へっ……何ちゅうアイドルだ。」
シャインが小さく笑う。
「うう…そんなこと言わないで下さいよ…。私だってアイドルには似合わないって思ったからずっと隠してたんですよ…。」
フロウがしょぼーんと落ち込み、小石を蹴る真似をする。
「なら何でこんな大会に出た?」
「それは…」
何故が口ごもってシャインを見るフロウ。そして、
「秘密…です☆」
と、ウインクをしつつ答えた。
「…そうか、なら別にいい。あんま興味ねぇから。」
そう言ってシャインは風砕牙を地面から抜いて構える。
「あははは…切り替え早いですね…。」
フロウが苦笑いする。
「さっさと続き戦ろうぜ。」
シャインが目をギラつかせる。
「……そうですね。戦りましょうか。」
フロウはもう話す気はないんだなと解釈し、シャインの望み通り戦闘を再開させることにした。目がシャイン同様ギラついているのは気が付いていないようだ。
シャインとフロウの対戦が始まった時、少し離れた所ではナイト対ツイアの戦闘も始まっていた。
「お前の武器は何だ?」
オーラで形成した漆黒の刀を構えてながらナイトが尋ねる。
「フッフッフッ…俺の武器はこれさ!」
ツイアが取り出したのは緑に光る棒であった。
「これはライブの時持っていて当然アイテム『サイリウム』だ!」
「そ…それで戦うというのか?」
ナイトは予想の斜めだったため、少し困惑している。
「このサイリウムはただのサイリウムじゃないのさ!」
1人で楽しそうなツイアはサイリウムに付いている赤いスイッチを押した。すると、緑に光る部分がギュンと伸びたのだ。
「その名も『サイリウムソード』!」
ヴウォンという音を鳴らしながらツイアはサイリウムソードという名前らしい光る長い棒を華麗に振り回してナイトに見せ付ける。
「………」
ナイトは困惑していた。どんな反応をすればいいのかと。
「決してラ○トセイバーではないぞ!」
誰も聞いていない。しかも著作権に触れるのは止めてほしいものだ。
「と、とにかく…お前がそれで良いのであれば行くぞ!」
ナイトがオーラの刀を構え地面を蹴る。
「[硬化]!」
ツイアがサイリウムソードに何か魔法をかけた。ナイトは何だと思いながらも縦振りの一撃を放つ。しかし防がれてしまった。いや…『何故防げた?』
(バカな!?こちらは刃だぞ!たかが長くなった光る棒で防げるわけが…!)
「[硬化拳]!」
動揺するナイトをツイアは刀の上から殴って吹き飛ばした。
「くっ…!」
ナイトは空中で一回転して着地する。
「お前…何魔法だ?」
ナイトが尋ねると、ツイアは自慢気に答えた。
「俺の魔法は『硬化魔法』!自分および自分が触れている物を硬化させる魔法だ!」
「……成る程、だから私の刃を受け止めれたのか。刀の上から殴って切れていないのも頷ける。」
ナイトが納得する。
「君の刃じゃ俺を傷付けることは出来ないよ。」
ツイアが人差し指を立てて、チッチッチッと指を振る。
「…フフ。」
ナイトが微笑を浮かべる。
「何が可笑しい?」
「いや、相手として不足はないと思ってな。」
ナイトの眼光が獲物を前にした獣の眼光と化す。
「……向こうの緑髪の少年の方がギラついているけど、君も大概だね…。」
ツイアは苦笑いしてからサイリウムソードを構えた。
シャインvsフロウ。
「[旋風輪]!!!」
シャインが風砕牙を振ると、フロウに向けて風属性の斬撃の輪が数個放たれた。
「[ツインソード]!」
フロウは自分のツインテールを剣へと変形させ、舞いながら器用に斬撃の輪を切り刻んだ。
「髪の毛も武器になんのかよ。」
シャインが舌打ちする。
「流石に一本一本は不可能ですが、束にすれば可能です。」
フロウが笑顔で答えながら腕をミニガンに変形させる。
「発射ー!」
ガガガガガガ!と轟音を響かせながら発射される弾をシャインは、
「[隼]!」
足に風を纏わせ、加速して回避した。そしてその勢いでフロウの背後に回り込む。が、
「[サーチアイ]!」
フロウの目はその動きを読み、グルッと反転し、
「発射ー!」
またミニガンを発射する。
「くそっ…!何で俺の動きが分かるんだよ!」
シャインは動きを読まれることに苛つきを隠せない。
「『モーションセンサー』という動きを感知する装置があるんです。私は目をそのモーションセンサーに変形させ、シャインさんの動きを察知しているだけですよ。」
「だけって…それがどんだけ面倒か知ってんのかよ…。」
シャインは舌打ちをして小さく呟いた。
「こんなものもありますよ。[チェーンウィップ]!」
フロウは片腕を長い鎖に変形させ、ブンブンと振り回して遠心力を付けると、サーチアイでシャインの動きを正確に捉え、的確にシャインの片足に鎖を絡ました。そしてグイッ!と自分の元に引っ張った。
「しまっ…!?」
不意を突かれたシャインは抵抗出来ずに真っ直ぐフロウに引っ張られる。待ち構えているフロウはもう一方の腕を鋭い刀に変形させていた。瞳をギラつかせて。
「覚悟して下さい!」
フロウが刀を構えたその瞬間、サーチアイがこちらに向かって急速に近付いてくるナイトを感知した。ナイトは主に絡んでいる鎖を断ち切ろうとしている。
「[硬化]!」
ナイトの刀がシャインに絡まった鎖を切ろうした時、ツイアが魔法をかけ、強度を上げた。それにより、鎖は断ち切れることなく、ガキン!という鈍い音だけを響かせただけであった。
「ありがとうございますツイアさん。」
フロウはシャインを離してツイアに礼を言う。
「フウたんを守るのは当然さ。」
ツイアがニコッと笑う。
「大丈夫か主?」
ナイトが尋ねる。
「ああ、何とかな。たく…厄介な魔法だぜ。」
掴まれた足の具合を確かめてからフロウとツイアを睨むシャイン。
「もうレビィさん、怖いことしないで下さいよ!鎖は私の腕です!もしもツイアさんが魔法がなくて鎖を切られていたら、私の腕は切り落とされていたんですよ!」
フロウがプンプンとナイトに怒る。
「ツイアの魔法がなくともフィルムバリアを張っているから切り落とすことは不可能だ。精々切り落とされた痛みだけが走るくらいだ。」
ナイトが冷静に言い返す。
「それでも痛いのは嫌です!」
フロウが言い返す。
「戦場で戦っているのに痛みから逃げているようでは、勝利を掴むのはほど遠いな。」
ナイトが冷酷に告げる。フロウはぐぬぬとなり言い返すことは出来なかった。
「さてと、じゃあそろそろ第2ラウンド行くぞ!」
勝手に再戦をしたシャインがフロウに向けて走り出す。
「ホント、戦いがお好きなんですね!」
フロウがシャインの刃を受け止め、鍔迫り合いの状態で小声で話す。
「そういうお前もな…!」
シャインが口角を上げる。そして同じように口角を上げるフロウがこう告げた。
「……そうですね。否定はしません。このようにまともに闘ったのは初めてですが、どうやら私も…『血には逆らえない』ようです…!」
『血には逆らえない』…この言葉の真意がシャインの頭の中に一瞬過った。
(まさか…!こいつと俺には…『同じ血』が… !?)
だがすぐに否定した。ありえない…そんなことは万に一つもないはずだと。
「主!」
ナイトの叫びでハッ!と我に返ったシャインの目の前には、硬化魔法により硬くなった光る長い棒のサイリウムソードであった。
「もらったー!」
シャインはツイアの一撃を顔面に喰らって吹き飛んだ。
「主!!」
ナイトが無意識にシャインの方を向いてしまった。その瞬間にフロウが背後をとった。
「あなたも吹っ飛んで下さい。[エアインパクト]!」
フロウの掌にキュイィィンと穴が開き、空気を吸い込み溜めていく。そして溜められた空気が一気に放たれた。
「ぐっ…!」
背中からゼロ距離で強烈な空気の衝撃波を撃たれたナイトはシャインと同じ方向に吹き飛ばされた。そしてシャインとナイトは互いに近い所に倒れ込んだ。
「おい…ナイト…。」
小声でシャイン。
「何だ…?」
ナイトも小声で返す。
「『全力』で行くぞ。」
「良いのか?あまり全力でやるとすぐに終わってしまうから少し加減をした方が楽しめるだろうと試合前に言っていたのに。」
「構わない。あの女にちょっと聞かなくちゃならねぇ事ができたからな。」
「……?心得た。」
少し疑問は残ったが、ナイトは主の命に従い、立ち上がると同時に魔力を上げる。
「な…何…!?この魔力は…!?」
フロウがナイトの魔力に対して少し震えた。
「悪いがお2人さん、お遊びはここまでだ。勝たしてもらうぞ。」
シャインも立ち上がり、魔力を上げると、髪の色が黄緑一色に染まる。能力解放だ。
「能力解放ってやつですか…。」
フロウが瞬時に理解する。
「シャインさんが強くなっているのは分かりますが、何故レビ…ナイトさんが強くなっているのですか?」
フロウが質問する。
「夜叉魔法は主が強くなれば比例して己の基本能力が上昇するのだ。」
ナイトが説明する。
「……そうですか。」
フロウの発した言葉には何故か不満が籠もっていた。
「本気で行くぞ…天鼠高校!」
シャインが風砕牙を構えると、ナイトもオーラの刀を構える。
「そうですか…ならこっちも全力で行きます!」
フロウは腕を剣に変形させて構える。隣でツイアもサイリウムソードを構える。そして数秒の睨み合いから、先に動いたのはシャインであった。
(速い…!)
フロウはちゃんとサーチアイを展開していたはずだった。だがサーチアイが反応した頃には既に背後をとられていた。
(サーチアイの反応速度を越えた…!)
フロウが振り向くとシャインは攻撃に入っていた。
「[疾風斬]!」
シャインが素早い攻撃を浴びせた。
「く…!」
フロウが怯む。
「フウたんは俺が守るんだ!」
ツイアがサイリウムソードを構える。シャインは気が付いていないのかツイアの方を見ていない。ツイアは内心もらった!と思いソードを振り下ろす。しかし、その攻撃はヒットしなかった。
(なに!?)
何故だ。サイリウムソードの長さ的には確実に当たるはずなのに。戸惑うツイアにシャインがニヤッと笑って見せた。
「タッグはお前等だけじゃねぇんだぞ。」
その言葉を聞いた瞬間、ツイアは後ろを振り返ると、無表情のナイトがオーラの刀を振り抜いた後の状態でいた。足元にサイリウムソードの半分を落として。
(切られたのか!)
何故当たらなかったのか理解した。どうやら振り下ろす瞬間に背後からナイトに切り落とされたようだ。
「すげぇだろ?うちのパートナーは。」
シャインは自慢気に言いながら腕に風を纏わせる。
「[剛閃風拳]!!!」
シャインは強烈な一撃をツイアの顔面に喰らわした。ツイアはぶべら!とアホらしい声を出して吹き飛んだ。
「くそ…!」
フロウは一旦距離を空けてから腕を大砲に変形させて発射した。放たれた砲弾にナイトは野生の猫よりも俊敏に反応し、スパッと真っ二つにした。そしてそのままフロウに向かって走り、消えたと錯覚するくらいの速さでフロウを通り過ぎた。
「[影狩]!」
数秒後、時間差でフロウの腹部に斬撃が浴びせられた。フロウは斬撃の衝撃で体が後ろに流れるように浮いた。それを待っていたようにナイトが抜刀術を構えていた。
「終わりだ…フロウ・アドページ!」
抜刀の一撃がフロウに深く入った。フロウの意識が薄れていく。
(この女にだけは負けたくない…!私にとって…この女は邪魔なのよ!)
意識が薄れる中、フロウの感情がある1つのものに絞られた。
───『嫉妬』
「フウたん!!!」
ツイアがフロウに走り出す。しかし、それを遮るのは黄緑髪の少年、シャインであった。
「どこに行くんだよ?俺と遊ぼうぜ。」
完全にシャインの顔が悪人面である。
「そこをどけ![硬化]!」
ツイアが折れたサイリウムソードに硬化魔法をかけ、突きを放つ。
「それじゃあ俺には勝てないぜ。」
シャインはツイアの突きを最小限の動きで回避してから反撃に入った。
「[龍牙閃]!!」
シャインは刀の刃と光の斬撃の二連撃をツイアに浴びせた。ツイアの意識は薄れ、そして地面に倒れた。
「終了。」
シャインは能力解放から戻り、風砕牙を鞘に納める。これで試合は終わったとシャインは思った。だが終わらない。
(試合が終わらない?何で…)
シャインはナイトの方を向いた。そして目撃した光景は信じられないものであった。
「うっ…!」
ナイトが小柄のフロウに首を絞められたまま持ち上げられていた。
「ナイト!」
シャインがナイトを助けるべくフロウに走り出す。その動きを感知したフロウがシャインの方を向いた。
「なっ…!」
シャインが見たフロウの顔は、縦に半分は人間であり、半分は完全に機械化されていた。そして体からは紫のオーラを放っていた。
(あいつ『闇落ち』してやがるのか?てか、武器化魔法って絶滅魔法だったのか…!)
シャインはそんなことを思いながらナイトを掴んでいる腕を抜刀で切り落とそうとした。その瞬間、危険を察知したフロウはナイトを離して抜刀を回避した。
「げほ…!げほ…!すまない主…!」
咳き込みながらナイトが礼を言う。
「気にすんな。てか何でこいつ闇落ちしてんだよ?」
「知らぬ。奴の中で何かの負の感情が勝ってしまったのであろう。」
「目標…ナイト・サファイア…滅する!」
フロウが腕を大剣に変形させてナイトに突進してくる。それをナイトは真っ正面から受け止めた。
「ナイト!」
シャインは風砕牙を抜いて助けに入ろうとすると、
「来るな主!」
ナイトに叫ばれ、シャインはピタッと止まった。
「どうやら私にだけに用があるようだ…!しばし手出し無用を願う…!」
鍔迫り合いをしたまま言うナイトの目が真剣だったため、
「……分かった。頼んだぞ。」
シャインはその目を信じ、風砕牙を鞘に納めてフィールドの隅へと移動した。
「…さて、分かるなら答えろ。何故お前は闇落ちをした?」
ナイトは大剣を弾いて間合いを空ける。
「闇…落ち…?」
(自分が闇落ちしたことに気が付いていないのか…)
「質問を変えよう。私に何か用か?」
その質問を聞いた瞬間、フロウはピタリと動作を止め、ギリッと歯軋りしてから答えた。
「……邪魔なんだよ…!」
言葉を発したと同時にまた大剣で攻撃をしかけてきた。
(邪魔だと?)
ナイトは戦いよりフロウのことを知りたいため、反撃せずに防御に回る。会場には大剣とオーラの刀が交わるたびに響く金属音のせいで会話は聞こえていない。
「シャインの周りにいる女全員邪魔なんだよ!」
かなり怒りが籠もっていた。
「主の周りの女?エアルやミリアもか?」
防御しながらナイトが尋ねる。
「ああそうだ!特にお前が一番気に食わない!」
攻撃が一層強くなる。
「何が夜叉だ!何が主だ!自分がシャインにとって特別な存在になってさぞ嬉しいだろうな!」
(何だ…話が見えない。)
ナイトは防御したまま思考するが話の真意が理解出来ない。
「シャインの近くにいる女は私だけでいいんだ!シャインの…『お兄様』の隣には私だけで十分なのよ!」
「【お、お兄様!?】」
ナイトと心の中で会話を聞いていたレビィが口に出して驚愕した。
もう1人耳を疑った人物はいた。それはフィールドの隅にいたシャインであった。
(なん…だと…!?)
最悪だ。万に一つもないと頭の中で否定したのに。その万に一つが的中するなんて。
【ホント…シャインって戦闘が関わるとイキイキするよね…。】
控え室でのレビィの言葉が脳を過ぎる。
『血には逆らえない』──
──その言葉の真意は──
──『シャインとフロウは同じ血が流れている』
確信まではいかない。だがきっとそうだ。だって『あいつは俺と同じで目をギラギラさせて戦闘をしていた』のだから。
(たく…聞きたくないことも聞こえる耳だ…。)
シャインは自分の耳の良さを恨んだ。
エ「龍空deラジオー!」
サ「ねぇ、ふと思ったんだけど、私とサテラって後書きにはいるけど本編ではもう登場しないの?」
サテ「えっ!?そうなんですか…?」
エ「う~ん…そういうのは作者しか知らないからな~…どうなんだろ?」
レ「う~ん…新章に入る時に描写があったから再登場するとは思うけど。」
サ「ま、何でもいいわ。出たら出たで面倒だし。」
レ「あまり登場人物がそんなこと言うのはダメだと思うな…。」
サテ「では、次回をお楽しみに。………私は本編に出たいです。」