71話 BOM開催!(1)
シ・レ・ス・エ・ヒ・サ・ア・サテ「祝3周年ー!」
ス「…てっ!おせーよ!もうとっくに4年目始まってんぞ!」
レ「作者は前の話を投稿してしばらく経ってから6月8日が過ぎていたことに気が付いたんだって。」
サ「バカね、バカ。」
ア「ま、まぁ4年も続いているんだし良いじゃないですか。」
ス「しぶといな〜。」
ア「しぶといって…。」
エ「とりあえず完結はしてほしいね。」
レ「それに関しては大丈夫だと思うけど。」
サ「それよりこの小説はいつ完結を迎えるの?」
レ「作者的には大学中に終わらしたいらしいわよ。」
サテ「間に合うんでしょうか?」
ヒ「無理だと思いますね。」
レ「即答は止めてあげてよ…。頑張っているんだから…。」
シ「ま、とにかくだ。ここまで続いてんのは紛れもなく読者の皆のおかげだ。これからも『〜魔法学園〜』の応援、よろしく頼むぜ。」
シ・レ・ス・エ・ヒ・サ・ア・サテ「では!見て下さい!」
ヒ「誤字、脱字、行替えミス等で読みずらかったらすいません。」
2ヶ月が過ぎ、ギラギラ太陽が照りつける光が降り注ぐ真夏となった。日にちは8月1日。この日は魔法科がある12校の高校が繰り広げる年に一度の大イベントが開催される。その名は『Battle of Magic』、通称『BOM』である───
「また来ちまったなこの日が。」
机に座り、団扇で扇ぎながらスノウがその机の主、シャインに話しかける。
「早いくらいだ。飛ばし過ぎじゃねぇか時間をよ。」
「さらっとメタいことを言うな。」
スノウはツッコんでからシャインの服装を見て言う。
「そう言えば今年は去年みたいな背中に龍が描かれている服じゃなくて制服なんだな。」
「何か今年から服は制服オンリーになったらしい。」
「へぇ~。でも制服に強度なんてないだろ。」
「どっちにしろフィルムバリアを展開させるから服自体の強度は関係ない。あと理由があるとすれば、各々が好き勝手に服を着てたら区別がしにくい。だから区別をしやすくするためだろうな。」
「なるほどね~。」
シャインとスノウがそんな会話をしていると、担任のナナリーが教室に入ってきた。生徒達は自分の席に着席する。
「さて、いよいよこの日が来ました。代表者は去年に続き…シャイン君、頼みましたよ。」
ナナリーが言うと、皆の視線がシャインに向けられる。
「おう。」
シャインが短く応えた。
「それでは今から転送装置に向かいますので皆さん廊下に並んで下さい。」
ナナリーの言葉で生徒達がゾロゾロと廊下に出る。他のクラスの生徒も廊下にいるため廊下はちょっとしたお祭り状態である。
「シャイン!」
お祭りの中、シャインに会いに来たのはレビィとエアルであった。
「頑張ってねシャイン。」
エアルがエールを送る。
「言われなくても分かってら。」
「ねぇシャイン、バージェスって出てくるの?」
レビィが尋ねる。
「さぁな。去年あんなことしちまったからな。出場は無理なんじゃねぇか。」
「やっぱりそうなるよね。じゃあ誰になるんだろう?」
「あいつより強いってことはないんじゃねぇか。」
「おーい!2組行くぞー!」
レビィとエアルのクラスの担任が叫ぶ。
「あっ、行かなくちゃ。また後でね。」
レビィとエアルが自分のクラスの列に戻り、そして転送装置に移動していった。その数分後、3組も転送装置に移動した。
転送装置により真っ白な異空間に転送されたシャイン達。その異空間にそびえ立つは新しくリニューアル…はされていない会場があった。そんな会場に入ると、去年と同様、人型ロボットが働いていた。
「オハヨウゴザイマス。ドコノコウコウデスカ?」
受付に行くと、受付ロボットが聞いてきた。
「龍空高校の2年3組です。」
ナナリーが答える。
「コノナカニダイヒョウシャハイマスカ?」
「俺だ。」
「ナマエハナンデスカ?」
「シャイン・エメラルドだ。」
「……カクニンシュウリョウ。デハ、コチラノロボットニ、ツイテイッテクダサイ。」
案内ロボットがシャイン達に近付いてきた。
「ん?サポーターは決めないのか?」
「ノチホドシマス。」
「ふ〜ん…まぁ何でもいいけど。」
シャインは自分を案内するロボットに付いて行く。
「頑張れよシャインー!」
スノウがエールを送ると、シャインは背を向けたまま、手をヒラヒラさして応えた。
応援席に到着した3組の生徒達。応援場所は指定されていないので、生徒達は仲良しグループで集まっている。スノウも既に集まっているレビィ達と合流した。
「おい…あれ前に暴れた奴じゃねぇか?」
少し時間が経ったとき、龍空高校の応援席がある3人の登場でざわめいた。その3人は真っ直ぐスノウ達に近付いてきた。
「ようお前等。」
「あらら、やっぱり出場は禁止されてたか。バージェス。」
スノウが言った通り、龍空高校の応援席に現れたのはバージェス、レイン、クラウドの3人であった。
「バージェスが出ないなら、今回はシャインの圧勝で終わりそうだね。」
エアルがそう言うと、
「いや、そう簡単には行かないと思うぞ。」
レインが眼鏡を上げながら否定した。
「どうして?」
「それは…おっと、そろそろ開会式が始まるな。」
バージェスは何かを言いかけたが止め、ドサッとその場にあった席に座った。両隣にレインとクラウドが座る。
「自分の学校の席で見ろよ。」
スノウが一応注意する。
「どこで見ようと同じだろ。」
当然バージェスは聞いてはくれなかった。スノウ達も諦め一緒に見ることにした。
「モウスコシデカイカイシキガハジマリマス。」
楽屋のソファーでくつろいでいたシャインにロボットが呼びに来た。
「ああ、分かった。」
シャインが返事をすると、ロボットは楽屋を出て行った。
「さてと、行くか。」
シャインは戦闘が楽しみなのか、少しニヤリと笑って楽屋を出た。
楽屋を出たシャインはフィールドに出るための薄暗い少し長い通路に来た。そこには先に到着している他校の代表者が集まっていた。
(やっぱりバージェスの奴はいないか…。なら虎神高校の代表者は誰だ?)
シャインがキョロキョロと虎神高校の制服を着た人間を探していると、誰かが走ってくる音が遠くから聞こえた。しかもその音がドンドンとこちらに迫ってきている。そして、
「シャーーーーン!」
足音の張本人は特有の呼び名を叫ぶと同時にシャインに抱き付いた。まぁ、シャインを『シャン』と呼ぶのは1人しかいない。
「ミ、ミリア!?何でお前がここに!?」
そう、銀の瞳に青色のポニーテールのミリアである。シャインは突然現れた幼なじみに驚く。
「何でって、私が蛇帝高校の代表者だからだよ。」
ミリアが離れる。
「お前が代表者だと?」
「うん。学校の方に私の魔法が神魔法だってバレちゃって。そしたら周りの人達が出ろ出ろって…。」
「何でバレたんだよ?」
「魔法実技の授業の時にちょっとイラついてね、水神系の攻撃をしちゃったの。」
ミリアがテヘヘと舌をペロッと出して照れ笑いする。
「何やってんだよ…。」
シャインはため息をついて呆れるしかなかった。
「てことだから、もし戦うことになっても手加減なしでね。」
ミリアがニッと笑う。シャインもフッと笑って、
「当たり前だ。」
と、応えた。
「そう言えばバージェスの姿がないんだけど。」
「あいつは去年暴れたから出場停止になったんだろ。」
「そっか。じゃあ虎神高校は今年ダメっぽいね。」
「代わりの人間の能力次第だが……」
その時、
「それでは今から開会式を開始しますので代表者の皆さんはフィールドの中央に集まって下さい。」
女性のアナウンスが入り、代表者は一斉にフィールドに出た。代表者の登場により、会場が盛り上がる。
「ん?確か去年は観客が見えなかったはずだが、今年から見えるようになったのか。」
シャインが歩きながら言う。
「マジックウォールは両方ともガラスにすると強度が下がるから片方を壁にしていたと思うんだけど、両方ガラスでも強度が下がらないようにしたんだって。」
ミリアが説明する。そうこうしているうちに中央に集まった代表者達。
(あれ?11人しかいない。一校遅れているのかな?)
ミリアがそんなことを思っていると、代表者の前に朝礼台が地面が開いて下から現れ、台の両隣に大会委員が並び、台の上に50代前半の大会委員長が立った。
「これより!『BOM』、『Battle of Magic』を開催する!」
大会委員長が開会宣言を告げた瞬間、会場の盛り上がりがMAXに達した。
「では今から、新しい大会ルールを説明する前に、天鼠高校の代表者によるミニライブを始めます。」
「ミニライブ?」
シャインとミリアがハモる。その時、各高校の応援席の最前列に同じパッピと鉢巻きをした男達がズラリと集結した。他の生徒達が何だ何だとざわめく。その時、会場全体にある曲のイントロが流れ始めた。
「皆ー!こんにちはー!」
そして、長い通路から元気な挨拶とともに1人の女子が現れた。
「こんにちはー!」
応援席の男達が野太い声で応える。
「今回は私の闘いを見に来てくれてどうもありがとー!」
黄緑の瞳を持ち、同じく黄緑のツインテールが印象的な少し小柄な女子は応援席にいる親衛隊に手を振る。
「あっ!『フウたん』だ!」
応援席にいるエアルが少し興奮する。
「フウたん?」
スノウが首を傾げる。
「今人気急上昇中のアイドル!『フウたん』こと『フロウ・アドページ』だよ!」
エアルがスノウにズイッと顔を寄せて力説する。スノウはお、おうと圧倒される。
「アイドルが代表者だと?天鼠高校は勝つつもりがあるのか?」
席に荒々しく座っているバージェスがアイドルが代表者のことに少し不満気である。
「学校にとってもこの大会は宣伝効果として大いに使えるため大事にするはずですから、そんな大事なことにフロウさんを選んだってことは、それほどフロウさんに実力があるということでしょう。」
ヒューズが自分のデビュー曲を歌っているフロウを見ながら推測する。
「ねぇエアル、フロウって何の魔法使うの?」
レビィがエアルに尋ねるが、エアルは応援隊に匹敵する応援をしていた。レビィはこれは終わってからしか無理そうねと悟って、今はミニライブを楽しむことにした。
10分くらいのミニライブが終わり、会場に拍手が響き渡る。
「フロウ・アドページさんありがとうございました。では今から今大会から新しくなったルールを大会委員長からご説明があります。」
女性アナウンサーガ話し終えると、再度大会委員長が台の上に登り説明を始めた。
「大会の大まかなルールには変更はありません。これから代表者の皆さんにくじを引いていただき、Aブロック、Bブロック、Cブロック、Dブロックの4ブロックに3人ずつに分かれて『予選リーグ』をしてもらいます。そしてブロックごとの順位と同じ順位トーナメントに出てもらいます。しかし、この大会に順位タイというものは存在しません。例えば、1位トーナメントの1回戦で負けた場合でも、1回戦負けた同士で戦ってもらい、3位と4位を決めます。ここまでは昨年と同じであります。変更されるのは『サポーター』の立場です。昨年までサポーターは代表者に対して指示を出したりアドバイスをするだけでありましたが、今大会からは『サポーター』とではなく、『パートナー』として大会に出てもらいます。」
「パートナー?」
シャインとミリアがハモってオウム返しした。
「つまり、今大会から『タッグ戦』で試合をしてもらいます。」
会場が新しいルールにざわめく。
「パートナーの条件としては、『人間である』『他校の生徒ではないこと』『中学生以下、高校生以上ではない』。この3つを守っていただければ、代表者が決めてもらってよろしいです。」
「はい、少し質問いいでしょうか?」
代表者の中で手を挙げたのは、虎神高校の制服を着た『爽やか少年』であった。スラリと長い身長で清潔感漂う漆黒の髪に赤い瞳を持っている。そして何より顔面が爽やかである。
(こいつが虎神高校の代表者か…。スラリとした体型からしてスピードタイプってとこか。)
シャインが横目で爽やか少年を観察する。
「部外者の人でもパートナーとして選んでもよろしいですか?」
声も爽やかの少年が尋ねる。
「条件を満たしていれば構いません。」
大会委員長が答える。
「分かりました。」
爽やか少年が頷く。
「では、今から1時間のパートナー決定の時間を与えますので、パートナーが決まった代表者から大会委員の方にパートナーの登録をお願いします。1時間以内に全員のパートナー登録が終了した場合は早めに始めたいと思います。では、じっくりとパートナーをお選び下さい。」
女性アナウンサーの声を最後に、開会式は一時中断された。代表者達はフィールドを後にする。
「パートナーか〜誰にしようかな〜?」
ミリアが長い通路を歩きながら頭を悩ませる。
「シャンは良いよね〜。もうパートナー決まってるから。」
ミリアが羨ましそうに言う。
「まぁ今のところあいつにするつもりなんだが、あいつ今武器持ってないからな。」
2人がそんな話をしていると、
「あなたがシャイン先輩ですよね?」
2人の背後から爽やかな声で呼び止められた。振り返ると、そこには虎神高校の代表者が立っていた。
「そうだが。何か用か?てか俺のこと先輩って…ということは1年か?」
「はい。僕は虎神高校1年であり代表者の『ジャック・ホラーレック』と申します。」
ジャックと名乗った爽やか少年がスッと握手を求めてきたので、シャインはそれに応えるべく握手を交わした。
「良い魂をお持ちで。」
握手を終えた後、ジャックがにこやかに告げる。
「お前、『魂察知』が使えるのか。」
シャインが言うと、ジャックが少し驚いた顔になった。
「おや、知っていましたか。」
「ああ。知人に使える奴がいるんだ。」
「そうでしたか。ではシャイン先輩、あなたとの戦いを楽しみにしております。」
ジャックは礼儀正しく頭を下げ、2人を追い抜きどこかに行ってしまった。
「敵対心燃やされているね~。」
ミリアが笑う。
「はぁ…。とりあえず早くパートナーを決めようぜ。」
シャインとミリアはパートナーを決めるべく各々の応援席に向かった。
「レビィ、お前がパートナーになれ。」
応援席に入ってきてすぐシャインがレビィに言った。
「でも私、刀持ってないから戦えないよ。」
「夜叉魔法でどうにかならないか?」
「どうにかって言われてもな…。」
レビィがう〜ん…と悩む。
「別にレビィに拘らなくてもいいんじゃない?戦闘ならスノウやアレンだっているんだし。」
エアルが提案する。
「まぁ今回はそう思っている。とりあえず聞いてみただけだ。どうだレビィ?」
「どうって…ちょっとナイトに聞いてみる。」
レビィは目を閉じ、自分の心の中にいるもう1人の自分、ナイトに話しかけた。
(ねぇナイト、私って刀なしでも闘えるの?)
【他人事のような質問だな…。自分のことだろう。】
(だって私、戦闘は不慣れだから…。)
【…まぁその質問に答えるのであれば、夜叉のオーラで刀を形成するのは可能だ。ただその分体力の消耗が増えてしまうがな。それでも良ければ闘える。】
(そっか…なら、お願いできる?)
【フフッ…自分のもう一つの人格に頼む奴がいるとはな。私はお前の闘争本能の化身だ。お前が闘いたいと願うならば、私は全力で応えよう。】
(ありがとう。)
レビィはナイトに礼を言って目を開けた。
「シャイン、私闘うよ。」
レビィが決心した顔で答える。
「……そうか。ならよろしく頼む。」
シャインは少し笑いながら手を出す。
「うん。」
レビィは笑顔でシャインと握手を交わした。
「よし、お前の登録しに行くぞ。」
シャインとレビィはパートナー登録をするべく応援席を後にした。
登録をしに行く途中、ミリアと鉢合わせた。ミリアの隣には去年の蛇帝高校代表者である、白色の髪に水色の瞳を持った『ルーク・バリュウ』の姿があった。
「これはこれはシャイン君。」
「やっぱりあんたが出て来ましたか。」
シャインがフッと笑う。
「去年のリベンジをさせてもらうよ。」
「……臨むところっす。」
シャインとルークは簡単に握手を交わした。
「で、そっちは結局レビィなのね。」
ミリアがレビィを見る。
「何か不服でも?」
レビィが挑発的に言う。
「ううん、別に。良い闘いをしようね。」
(シャンのパートナーになったからって良い気にならないでよね。)
「そうね。」
(嫉妬は見苦しいわよ。)
笑顔で話す2人だが、どこかギスギスした感じであった。シャインとルークはそれを察し、黙ったままであった。
パートナー登録が終わり、いよいよ大会が始まろうとしていた。会場の盛り上がりも時間とともに上がっていく。
「では今からブロック分けのくじ引きをしてもらいます。ブロックが決まった代表者から速やかにブロックごとの会場に移動して下さい。」
最初の高校が呼ばれて、くじ引きが始まった。
「流石に予選からミリア達とは当たりたくないね。」
レビィがシャインに話しかける。
「あのジャックとかいう奴もな。」
シャインがジャックを横目で見る。
「あれ?あの人パートナーがいないよ。」
レビィも同じくジャックを見て、パートナーがいないことに気が付いた。2人がジャックを見ていると、向こうが視線に気が付き、こちらに近付いてきた。
「僕に何か用ですかシャイン先輩?」
ジャックが微笑んで尋ねる。
「パートナーはどうしたんだ?」
「パートナーは外部から呼んだので今こっちに向かっている状況です。」
「高校内からは選ばなかったの?」
レビィが尋ねる。
「はい。高校内で戦力になる人は2年のバージェス先輩くらいでしたが、出場禁止のようなので…。それで泣く泣く外部から呼ぶことにしたんです。」
「ふ〜ん…。」
「ところであなたはシャイン先輩のパートナーですか?」
「ええ。2年のレビィ・サファイヤよ。」
「レビィ先輩ですね。よろしくお願いします。」
ジャックが握手を求めてきたので、レビィは咄嗟に手を出して握手を交わした。
「龍空高校の代表者の方、くじを引いて下さい。」
その時、ちょうどアナウンスが入った。シャインはくじを引くため台に置いてある立方体の箱に空いた穴に手を入れて、中にある紙を引き抜いた。そいてその紙を大会側の人に渡した。
「龍空高校、Bブロックに決定しました。」
ブロックが発表されたため、龍空高校の生徒達は会場の外に出現した予選用会場に移動を始めた。
「良かったねシャイン。私達がBブロックの最後の枠だったみたいだから虎神と蛇帝と当たらないよ。」
「そのようだな。とりあえず俺達も移動するぞ。」
シャインとレビィはBブロック会場に移動を始めた。
最後の高校がくじを引き、予選リーグが下記のようになった。
Aブロック
・蛇帝高校
・犬白高校
・猪里高校
Bブロック
・龍空高校
・牛島高校
・羊雲高校
Cブロック
・虎神高校
・火兎高校
・鳥崎高校
Dブロック
・天鼠高校
・猿山高校
・馬原高校
Bブロック会場に移動したシャインとレビィ。試合まで少し時間があるので応援席でスノウ達に会っていた。
「あ~緊張してきた~。」
ソワソワと落ち着きがないレビィ。
「落ち着けよちょっとは…。」
ペットボトルのジュースを飲んでいるシャインが苦笑いする。
「だってこういうの慣れていないんだもん。」
「楽しめばいいんだよこういう大会は。」
そんな話をしていると、
「それでは今からBブロックの予選リーグを始めます。最初の試合は龍空高校vs牛島高校です。代表者とパートナーの人はフィールドに集まってください。」
というアナウンスが入った。
「よし、行くぞレビィ。」
「う、うん!」
シャインと少々緊張しているレビィがフィールドに向かった。
「さー!Bブロック最初の試合は龍空高校vs牛島高校からです!龍空高校の代表者は、去年に引き続き2年連続出場、シャイン・エメラルド君!そのパートナーは、去年のサポーターをしていたレビィ・サファイアさん!対する牛島高校はこちらも2年連続出場のリグーン君!そのパートナーは同じ草魔法が使えるドミリ君だ!」
元気いっばいの男の実況者の紹介の後、フィールドに4人の選手が睨み合った。
「予選リーグはフィールドの属性が変わります!では最初のフィールドは~~…この属性だー!」
実況者の声を合図にフィールド全体がジャングル化した。
「草…でいいんだよね。」
レビィがキョロキョロと辺りを見渡す。
「何かデジャヴのような感じがするんだが…気のせいか?」
シャインがポリポリとうなじをかく。
「フッフッフッ…神は俺を見捨てなかった!こうやってお前にリベンジが出来る日が来るなんてな!」
リグーンがビシッ!とシャインを指差す。
「フラグ立ってんぞリグーン先輩。」
シャインがツッコむ。
「今回はこのドミリ様も参戦するため、お前達の敗退は決まったものだ。」
「だからフラグ立てるなって…。あとメタいこと言うと、容姿を描写されてない時点で察しろよ。」
シャインがハァと呆れる。
「それでは両チームがフィルムバリアを張った瞬間からバトルが開始します!両チームフィルムバリアを展開して下さい!」
フィルムバリアとは、この大会で使われているバリアであり、体のどこかに装備すると体を包むようにバリアが張られ、攻撃を受けた際、『痛覚』だけを通し、『外傷』は付かないという何とも都合の良いバリアである。例えば、バリアを張った状態で刃物により切られたとき、切られた痛みはあるのだが、切り傷はないということである。
「それではルールを簡単に説明します!攻撃を受けしまうとモニターに映し出しているHP1000がドンドンと減っていき、0になったら負けとなります!では両チームフィルムバリアが展開されましたので、レディ~~……!ファイトーーーー!」
実況者の合図とともに試合が開始された。
「行くぞレビィ…いや、ナイト。お前はあのドミリっていう奴を頼む。俺はリグーンだ。」
シャインは風砕牙を抜いてレビィに指示する。
「心得た…我が主。」
レビィの髪が紺から黒に、瞳が青から赤に変化してナイトとなった。
「死ね!シャイン![プラントソード]!」
リグーンが周りの草を操り、大量の剣を作り放ってきた。
「死ねって…感情出し過ぎだろ…。[隼]。」
シャインは少し苦笑いしてから足に風を纏わせ、正に風のような速さで走り、草の剣を避けながらリグーンに迫る。
「タッグ戦だということを忘れていないか!」
シャインがリグーンを斬ろうとした時、側面から草のハンマーを持ったドミリが攻撃をしかけてきた。
「その言葉、そのまま返してやるよ。」
シャインが横目でドミリを見つつ言った瞬間、ドミリは自分の背後にとてつもない殺気を感じた。ドミリが視線を後ろに向けると、そこには獣の眼光で睨んでいるナイトがいた。
「夜刀、[破月]!」
ナイトは夜叉のオーラで形成した漆黒の刀でドミリを吹き飛ばした。
「ドミリ!」
リグーンが吹き飛んだドミリに視線を向けてしまった。
「ダメだぜリグーン先輩、余所見しゃあ。」
この声でリグーンはハッ!と自分の正面に視線を戻した。そこにはこちらも鋭い眼光で睨んでいるシャインがいた。
「[爆風斬]!」
シャインが風砕牙を振ると、技名の通り、爆風が生じてリグーンをドミリと同じ方向に吹き飛ばした。牛島高校の2人のHPが共に400減った。
「……斬ったのか?」
シャインがナイトに尋ねる。
「いや、峰打ちだ。」
「甘いじゃねぇか。」
「主も風で吹き飛ばしただけではないか。」
「いや、何かこれで斬ったらこの試合が終わりそうでな。それじゃあ盛り上がりに欠けるだろ?」
「去年に大会最短記録を叩き出した人間が言う台詞ではないな。」
「あれはあれで盛り上がっただろ?」
「流石にあれは早すぎだ。」
シャインとナイトが会話していると、リグーンとドミリがよろよろと立ち上がった。
「この野郎…!もう許さないぞ!」
リグーンの苛立ちが頂点に達する。
「別に許してもらおうなんて思ってねぇからさっさとかかってきな。」
シャインがちょいちょいと人差し指を動かし、来いよと挑発する。
「舐めるなよ!俺はこの1年間で強くなったんだー!」
リグーンは挑発にのり、草の斧を構えてシャインに向かって突進してきた。
「リグーン先輩よ…それってさ…」
シャインはリグーンの後ろに回り込んだ。
「俺にも言える事だぞ。」
シャインはリグーンの背後で風砕牙を構えた。
「[龍巻風]!!!」
シャインが風砕牙を下から上に振り上げると、リグーンの足元から斬撃の竜巻が発生し、リグーンは切り裂かれながら上昇して、地面に叩き落ちた。
「リグーン先輩!この野郎ー!」
ドミリが再度草のハンマーで攻撃をしかけてきた。しかし、ナイトが間に入った。
「えーい!お前も邪魔だ!」
ドミリはナイトに標的を変え、ハンマーを振り下ろした。しかしナイトのオーラの刀によってハンマーを弾かれ、無防備になってしまった。それをナイトは逃さなかった。
「[無月乱舞]!!!」
華麗な連続斬りをまともに喰らったドミリはその場で倒れた。牛島高校の2人のHPの表示が0となっていた。
「試合しゅーーーりょーーー!Aブロック最初の試合は、完封を遂げた龍空高校の勝利でーーす!」
実況者が試合結果を告げる。シャインとナイトは、会場が完封試合に少し驚いている中、悠々と控え室に戻った。
「次の試合は1回戦の勝者と残っている高校の戦いとなります。つまり2回戦は龍空高校対羊雲高校となります。15分間の休憩がありますのでしばらくお待ち下さい。」
実況者がアナウンスをすると、応援席の生徒達は各々の行動を始めた。
「ま、当然の結果だったな。」
スノウはポケットに忍ばせておいた携帯ゲームをしており、途中から応援をしていない。
「これはトーナメントまで見てても暇そうだね。」
エアルが退屈そうにあくびをする。
「他のブロックからはどこが来るでしょうか?」
アレンがスノウ達に問いかける。
「まぁAブロックは蛇帝高校が確実に来るだろ。Bブロックもシャインで決定。問題はCブロックとDブロックだな。」
スノウが答える。
「別にどこでもいいんじゃない?どうせ1位トーナメントの決勝は龍空高校と蛇帝高校なんだから。」
エアルが言う。
「いや、そう簡単に行きますかね。虎神高校のジャックの力がまだ未知数ですし、天鼠高校のフロウも、誰も魔法を知らないのなら未知数です。その2人がダークホースになる可能性はありますよ。」
ヒューズが予想する。
「つまり、どこが優勝してもおかしくないってことだな。」
スノウがまとめると、ヒューズがそうですねと頷いた。
「お待たせしましたー!それでは予選Bブロックの2回戦、龍空高校vs羊雲高校の試合を始めます!」
実況者がアナウンスすると、フィールドにシャインとナイト、羊雲高校の代表者とパートナーが現れ、会場が盛り上がった。
ちょうど同じ頃、Cブロックでも2回戦が始まった。対戦カードは虎神高校vs1回戦勝者の火兎高校である。しかし、この試合は始まってすぐ火兎高校の棄権いう形で虎神高校の勝利となったのだ。
「こ…これは何が起きたのでしょうか?火兎高校の代表者とパートナーがジャック君の攻撃を受けた瞬間その場に立ち止まり、ブルブルと体を震わせたかと思うと棄権を宣言しました。と、とにかく虎神高校の勝利です。」
実況者も何が起こったのか分からず困惑している。会場もザワザワと戸惑っている様子である。
「おい!どうした!大丈夫か!」
大会委員が部屋の隅で座り込んで震えている火兎高校の代表者に声をかける。
「………い…!」
火兎高校の代表者が何かを言ったが、声が小さくて聞こえない。
「何だ?」
大会委員が再度尋ねる。
「………怖い…!」
「怖い?」
「あ…あの…お…男がこ…怖い…!」
「あの男って虎神高校のジャック・ホラーレック君か?」
大会委員がジャックの名前を口にした瞬間、代表者はひぃぃぃぃ!と悲鳴を上げて更に縮こまってしまった。
「一体何をされたんだ?おい、パートナーの子は?」
大会委員が同じく部屋の隅で座り込んで震えているパートナーを見ている他の大会委員に尋ねる。尋ねられた大会委員は首を横に振って、
「こっちも同じようになってます。」
と、答えた。
「ジャック・ホラーレック…どんな魔法を使ったんだ…。」
大会委員が呟いた。
虎神高校の控え室のソファーにジャックは座っていた。そのジャックに寄りかかるように、赤と黒を基調としたゴスロリを着て、漆黒のロングヘアーに赤の瞳を持った中学2年くらいの女の子がいた。
「『にぃに』、あの技もう使わないで。」
細い声で女の子がジャックに怒った。
「ごめんごめんごめん。まさかあんな簡単に精神操作が効くとは思わなかったんだ。」
ジャックが女の子の後ろから手を回し、優しく女の子の頭を撫でた。
「次の試合は私、ちゃんと闘いたい。」
「分かったよ。『実の妹』の頼みとなれば断れないからね。」
そんな話をしていると、
「では今から予選リーグCブロック!3回戦を始めたいと思います!」
実況者のアナウンスが聴こえた。
「それじゃあ行こうか『アシュリー』。」
ジャックがアシュリーという名の女の子を見ながら言う。
「うん、にぃに。」
アシュリーがジャックを見上げながら微笑んだ。そして2人は控え室を出て、フィールドに向かった。
眼鏡「はい皆さんどうも!作者の眼鏡 純と申します!いや〜、自分でもこんなに続くとは思いませんでした。これも読者の皆様のおかげです。ありがとうございます。そして、今後も『〜魔法学園〜』頑張っていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします!では、次回をお楽しみに!」