7話 契りのキス(2)
レ「ねぇ、気になったんだけど、どうして6月に遠足があるの?結局話の中で言わなかったし。」
シ「ああ、それはな、6月ぐらいに遠足すると、みんな仲良くなれるんじゃない?ってここの校長が計画したそうだ。」
レ「簡単ね…」
シ「それに魔力も上がれば一石二鳥じゃない?とも言っていたな。」
レ「ここの校長って適当ね…」
シ「ま、そんなことより見てくれ。」
サバイバル生活をするはめになったシャイン達は、とりやえず寝れる場所を探すために夜の森を歩いていた。
「キレイ~」
レビィが星が輝く夜空を見上げる。
「ちゃんと探せよレビィ。」
シャインがレビィに注意する。
「ごめんね。」
レビィが素直に謝る。
「おっ!あそこ使えるんじゃね?」
スノウが少し先にあるけっこう大きな洞窟を指す。
「ああいう洞窟って、たいてい何かいるパターンよね。」
エアルが言う。すると、シャインとスノウが洞窟に近付き、中に入っていった。
数分後…
「別に何もいなかったぞ!」
スノウがそう言うので、あとの4人が洞窟に近づく。そして洞窟に入ると明らかに戦闘した形式があった。
(絶対何かいたわね…)
レビィが言おうとしたが口には出さなかった。
「さて、今日はここで寝るしかないか。」
「ちょっと布団は?」
エアルが文句を言う。
「この森には大きな葉があり助かりました。」
ヒューズがおもむろに葉っぱを下に敷く。
「岩の上よりマシですよ。」
ヒューズが敷いた葉っぱに寝転ぶ。そしてエアル以外も葉っぱに寝転ぶ。エアルも観念して葉っぱに寝転び、6人は眠りについた。
昨日とはうってかわって、空は鉛色になっており、今にも雨が降りそうな天気である。
(ふわ〜、嫌な天気ね。)
一番に起きたレビィが洞窟から出て、空を見上げる。
(助け、来るかな。)
「早起きだな。」声をかけられ、レビィが振り返ると、シャインが立っていた。
「いけない?」
レビィが聞くと、レビィに近づきながら、
「いや、別に。」
と、答える。そのまま2人は少しの間何も喋らず、ただ並んで魔高水が流れるのを見ていた。
【その者がお前が認めた主か?】
「えっ!?」
突然声がして、レビィが辺りを見渡す。
「どうしたレビィ?」
シャインが尋ねる。
「ううん。何でもない。」
首を振り、笑って見せる。
(気のせいだったのかな?)
すると、あとの4人が起きてきた。
「さて、全員起きたことだし、食料調達に行きますか。」
スノウが言う。
「でもここを離れたらヤバくない?」
エアルが言う。
「そうね。じゃあ役割を決めましょう。」
そして、スノウとエアルが食料調達、サナとヒューズがこの辺りの調査と水探し、シャインとレビィがこの洞窟の見張りになった。
見張りになったシャインとレビィは別にすることもなく、シャインは葉っぱの上で寝ている。レビィは葉っぱの上に座っていた。
(あの声、何だったんだろ?)
レビィがさっきの声のことを考えていた。
【その者がお前が認めた主か?】
(さっきの声!)
レビィが辺りを見渡す。
「ねぇ!あなたは誰なの!姿を見せて!」
シャインを起こさないように小さな声で言う。
【やれやれ、お前が早く『契り』をすれば私が出てくることはなかったんだ。】
「契り?」
【自分の魔法も把握しておらんのか。】
「ねぇ、ホントにあなたは誰なの?どこから言っているの?」
レビィが困惑している。
【質問が多いな、まあいい、言わなければうるさいからな。私の名はレビィ、『レビィ・サファイア』だ。】
「わ、私…」
【そして私はお前の心の中だ。】
「心の中…」
レビィが自分の胸に手をあてる。
【さて、もういいだろ。少しの間お前の体を借りるぞ。】
「えっ!?あ、え、ちょ、どういうこと!」
すると、レビィは突然意識が遠のき、倒れてしまった。その音にシャインが起きた。
「おい、大丈夫か?」
シャインが倒れたレビィに近付く。すると、レビィが何事もなかったように起き上がる。
「大丈夫。」
笑顔で答える。
「そうか。」
シャインが元いた場所に戻ろうとするのを、レビィが腕を掴む。
「待って、シャイン。」
「な、何だよ。」
少しシャインが照れる。するとレビィが立っていたシャインを強引に倒し、上から四つん場に乗る。
「レ、レレレレ、レビィ!?」
シャインが困惑と興奮の狭間の気持ちで、今の状況を必死に整理しようとする。
「じっとして…」
レビィがシャインの顎をクッと上げる。
「レ、レビィ…」
何も抵抗できないシャインにレビィの顔、いや、正式に言うと唇が近付いていく。そしてシャインとレビィの唇が間近になった瞬間、
「あれ~2人とも何やっているの?」
エアルとスノウが帰ってきた。
「ちっ。」
レビィが舌打ちした瞬間に、フッと気を失い、シャインに倒れこむ。それをシャインが受け止める。その数秒後にレビィがハッと目を覚ました。そしてシャインの顔が目の前にあるのに気が付き、顔を真っ赤にして、
「な、何してんのよ!」
思いっきりビンタした。
「いってーーー!何すんだ!」
シャインが怒るのを無視して、レビィはシャインから離れる。
(ど、どうなってるの!なんで気が付いたら目の前にシャインがいるのよ!)
ドキドキしている胸を押さえながら、レビィがアワアワしている。
「おいおい、恋愛に興味ないと思ったら以外といけるじゃないか。」
スノウがシャインをバシバシ叩きながら茶化す。
「ち、ちげーよ!どう見たって俺が襲われていただろ!それより食料はどうなったんだ?」
シャインが話を変える。
「それは大丈夫だ。マンモスピッグがいてな、3匹ほど狩ってきた。」
スノウが指を指す方向に、3匹のマンモスピッグが倒れていた。
「あら、みんな帰ってきていたんですか。」
そこに、サナとヒューズが帰ってきた。
「これを、向こうに川が流れていたからくんできました。」
ヒューズが1人ずつに、水が入っている竹の水筒を渡していく。
「あれ?レビィどうしたんですか?」
ヒューズが洞窟の奥にいるレビィを見る。
「あー気にしないでくれ。」
シャインが言う。
「とりやえず、ご飯にしよ。私お腹へった〜」
エアルが言うので、6人はマンモスピッグの肉を焼いて、昼食を済ました。
そして別に何も起こることなく、夜になった。
5人が寝たのを確認してから、レビィは1人で魔高水の近くにあった少し大きい岩に座り、流れるのを眺める。
(私、どうしちゃったんだろ…)
レビィがため息をついていると、
【何をしている。早くあの主と契りを交わさないか。】
もう1人のレビィが現れた。
「あんたでしょ、シャインに何しようとしたの?」
もう驚かなくなったレビィが自分の心の中に尋ねる。
【お前が早く契りをせんから、私がしようとしただけだ。】
「自分でやってよ。」
【言っただろ、私はお前だ。】
「私の体よ!私の許可とりなさいよ!」
2人(?)が言い合っていると、
「1人で何言ってんのよ?」
サナが近付いてきた。
「え、あ、別に何にもないよ。ただの独り言。」
レビィが誤魔化す。
「ふ~ん…誰かと言い合っているとしか見えなかったけど?」
サナが茶化す。
「それは…」
レビィが言い訳を考えていると、
「別に隠さなくてもいいわよ。」
「えっ?」
サナの言葉にレビィがキョトンとする。
「出てきなさい、私はあんたと話したいの、レビィのもう一つの人格さん。」
サナの挑発ぎみの言葉で、レビィの人格が変わり、さっきまでレビィの心の中にいたレビィになった。
「なぜこの女にもう一つ人格があると分かった?」
「本で読んだの。あと、悪いけどあんたがシャイン襲っているところ見ちゃったし。」
サナが理由を説明する。それを聞いたレビィがニヤリと笑い、、
「なるほど、正解だ。だが、このことをあの男に言われると困るのだ。」
「言うわけないじゃない。さっさと契りなさいよね。」
サナが帰ろうとするとレビィが後ろから、
「私も『言わない』方がいいか?」
と、耳元で囁く。
「な…あんた…『気が付いた』わね。」
「大丈夫だ、お前達が知っているレビィは知らない。知っているのはこの時のレビィ、つまり私だけだ。」
レビィが意味深な微笑をうかべる。
「言われたら困るわね。」
サナが微笑で返す。
「わかった。」
そう言ってレビィは先に洞窟に戻った。サナも後を追うように洞窟に戻った。
サバイバル生活2日目、やっぱり最初に起きたのはレビィであった。
(何で私…洞窟にいるんだろ?)
レビィが洞窟を見渡す。
(! またもう1人の私ね。)
【よく分かったな。】
(やっぱり、また何かしたんじゃないでしょうね?)
【また何かして欲しかったか?】
(やめて。)
2人が話していると、
「ガルルルル…」
どこからか野獣の唸り声が聞こえてきた。その声にあとの5人が起きてきて、6人は警戒体勢にはいる。
「何だ今の唸り声?」
シャインが刀を抜きながら、洞窟の外に出る。それに続き、あとの5人も外に出る。すると、森の奥からバキバキと木が折れる音がし、突然何かが飛び出してきた。そして、洞窟の入り口を破壊した。
「洞窟が!」
そして破壊された洞窟の前にいた黒く、赤い目をした魔物を見て、シャインとスノウがガクガクと震えていた。
「どうしたのシャイン、スノウ?」
エアルが尋ねる。
「な、何でこいつが現実世界にいるんだ?」
「俺こいつのG級で負けた。」
「だから何なのあの魔物!」
2人だけで話しているシャインとスノウにエアルがイライラする。
「あ、あいつはモンスターハンターに出てくるモンスター、『ナルガクルガ』!」
「ゲームのモンスターが何でここにいるのよ?」
エアルが尋ねる。
「さしずめ、このモンスターをモデルにしたんでしょ。」
サナが答える。
「しかしそっくりだな。」
シャインが感心する。
「で、こいつは強いんですか?」
ヒューズが尋ねる。
「まあな。」
すると突然ナルガクルガが襲いかかってきた。6人は紙一重でかわす。
「[爆風刃]!!」
シャインが刀を振った瞬間、爆風がおこり、ナルガクルガを吹っ飛ばした。
「[ライトニング]!!」
サナが唱えると、ナルガクルガの頭上から一本の雷が落ちた。すると、ナルガクルガの目付きが変わった。
「キレた!」
ナルガクルガの尻尾がスノウに直撃し、吹っ飛んだ。
「スノウ!」
シャインがスノウを助けようとすると、ナルガクルガの腕により地面に叩き付けられた。
「がっ…」
シャインの意識が飛びかける。
「シャイン!」
レビィが助けようとすると、
【待て。】
もう1人のレビィが止める。
「何よ!早く助けないと…」
【落ち着け、この場面でナルガクルガを倒せるのはお前だけだ。】
「どういう意味?」
【私に体を貸せ!そうしたら6人とも助かる!】
「え、え、」
レビィの許可を待たずに、もう1人のレビィは体を乗っ取った。そしてレビィはシャインに近付いた。だが、ナルガクルガが2人に向かって突進していく。
「[ストライクアロー]!!」
ヒューズが放った矢が、ナルガクルガの足を射ぬいた。するとナルガクルガが標的をヒューズに変えた。
「大丈夫シャイン?」
その隙にレビィが尋ねる。
「あ、ああ…骨何本かやられたがな…」
シャインがヨロヨロと起き上がる。
「シャイン、ナルガクルガは私1人で倒す。」
「バカ言うな…」
「そのためには、『本来の力』を目覚めさすしかない。」
「お前…何言ってんだ?」
シャインが不振に思う。
「じっとして。」
レビィはシャインの顎をクッと上げる。
「レ、レビィ!?」
すると、シャインの唇に柔らかいレビィの唇があたった。両方のファーストキスだった。その瞬間を見たあとの4人が戦闘中だが完全に固まった。
キスをした瞬間、レビィの体から今まで見たことない黒いオーラを纏っている。青空のような青い瞳は、薔薇のような赤い瞳となっており、髪も綺麗な紺から黒へと変化していた。
「さがっていろ。」
そう言うレビィの目は、獲物を狩る獣のような鋭い目付きになっていた。
「レ、レビィ…?」
シャインが困惑する。
サ「あれ?今回は私達がやんの次回予告?」
ヒ「そのようですね。」
サ「そう…じゃあさっさとしましょ。」
ヒ「そうですね。次回は覚醒したレビィの説明が中心ですね。戦闘はそんなにありませんよ。」
サ「次回をお楽しみに。」
ス(2人がやると静かだな~)