69話 神魔法(ゴッドマジック)
ス「龍空deラジオー。」
シ「おっ、すげぇ久々に1ヶ月内に投稿されたな。」
ヒ「今回はえらく短いのですね。」
ア「何か久々に説明回のようだよ。」
ス「何の説明だ?」
シ「題名にバッチリ書いてんだろ。」
ス「マジレスしなくていいんだよこの緑。」
シ「あ?何だとこの若白髪。」
ス「誰が白髪だ!銀髪だバーカ!」
シ「だったら俺だって黄緑だバカが。」
ス「変わんねぇだろ緑も黄緑も!」
シ「だったら白髪も銀髪も変わんねぇよ!」
ス「これは決着をつける必要があるな。」
シ「上等じゃねぇか。」
ス•シ「勝負だコラーーー!」
ヒ「……何故戦闘が勃発しているのでしょう?」
ア「さぁ…。でも1つ理由を付けるのであれば……」
ヒ•ア「両者ともバカだからでしょう。」
ヒ「ま、馬鹿は放って置いて…そろそろ本編をどうぞ。」
ア「誤字、脱字等があり読みにくい場合はすいません。」
ルコード事件の次の日の昼休み。シャインはいつものメンバーで食堂で食事を取っていた。
「どうしましたシャイン?食事が止まっていますが?」
食後の紅茶を飲んでいるヒューズが二口くらいしかかじっていない焼きそばパンを持ってボーッとしているシャインに話しかけた。
「お前最近悩み続けてんな。」
牛丼をガツガツ食べるスノウも話に加わる。
「なぁヒューズ。」
「何ですか?」
「神魔法について、何か知ってるか?」
「神魔法ですか?う~ん…史料もそれほどないですからね、皆さんと同じ知識量ですかね。」
「やっぱそうか。」
シャインがモグッと焼きそばパンをかじる。
「シャインのくせに珍しく知識を求めてどうしたの?何かあったの?」
コンビニの弁当を食べているエアルも話に参加する。
「くせにって何だ、くせにって。」
シャインはツッコんでから、
「ちょっと気になっただけだ。」
と、答えた。
「だったら直接使える人間に聞けばいいじゃん。あなたには神の魔法を使える幼なじみが2人もいるんだし。」
パクッと玉子焼を食べてからエアルが提案する。
「……だよな。」
シャインはエアルの提案に乗り、焼きそばパンを食べきると、携帯を取り出して電話をかけた。
「よう。お前放課後暇か?……そうか。ならちょっと聞きたいことがあるから……おう。龍空高校の前で待ってる。」
電話相手と放課後会うことを約束してからシャインは電話を切った。
「どっちを呼んだの?」
アレンが尋ねる。
「炎の方を呼べるわけないだろ。」
「だよねー。」
アレンが納得する。
「ねぇシャイン、私も一緒に聞いていい?」
そう聞いてきたのはレビィであった。
「何で?」
「私も神魔法に興味あるから。いけない?」
「別にダメなわけじゃねぇけど。」
「なら決定いね。」
レビィは心の中でガッツポーズをした。
(よし!これでシャインとあいつが2人っきりにならないわ。あいつだけは警戒しとかないとね。)
「ねぇねぇシャイン、この際だから全員で聞こうよ。」
エアルがそう提案すると、レビィは再度心の中でガッツポーズをした後、
「私もその方がいいと思うわ。もしかしたらまだ会っていない神魔法がカルマやハールロッドみたいに敵として出会すかもしれない。その時に皆対策を知っていれば戦闘も優位に立てるはずだと思うし。」
と、その案が通るように後押しした。
「……そうだな。ならちょっとお前等にある真実を告げる必要がある。」
シャインが提案に乗ったことに内心ガッツポーズをしたレビィが首を傾げた。
「ある真実?」
「放課後に話す。」
シャインはそれだけを答え、焼きそばパンを包んでいたラップを捨てに行った。
放課後の正門の前。シャインが待っていると、
「シャーーーーーン!!!」
手を振り、青色のポニーテールを靡かせながらミリアがシャインに向かって走ってきて、そのまま抱き付いてきた。
「まさかシャンから連絡してくれるなんて嬉し過ぎ!……でも……」
ミリアはシャインから離して、シャインの後ろにいるレビィ達な銀の瞳の視線を送り、
「何でハッピーセットが付いてるわけ!しかも多いし!私はシャン単品でいいんですけど!」
と、頬を膨らましてプンプン怒る。
「まぁそう言うなよ。ハッピーセットがなかったら意外と腹減るぜ。」
スノウがワハハハと笑う。
「私は単品だけでじゅ~~~っぶん!お腹いっぱいよ!」
ミリアはスノウに怒鳴ってから、ギロリとレビィの方を見た。
(あんたの仕業ねレビィ~!)
と、言わんばかりにレビィを睨み付ける。
(あなたとシャインを2人っきりになんてさせてたまいますか。)
と、答えるかのようにレビィも睨み返した。
「はぁ…。で!シャン!私に何の用?」
ミリアはシャインの方に向き直し、キラキラした眼差しを送る。
「お前の魔法について知りたいんだ。」
シャインが答えると、ミリアの目から輝きがなくなり、
「何だ~、告白じゃないのか…。」
と、ガックリと肩を落とした。
「……とにかく、お前のその魔法、神魔法がどのよう使えるようになるとか、そういう詳細を話してほしいんだ。」
「まぁシャンの頼みなら断る理由はないけど、どうして突然知りたくなったの?」
「訳は後で話す。」
「絶対だよ?」
「ああ、分かってる。」
「じゃあ話してあげる。でも公共の場で話すのは…ちょっとね…。」
「それもそうだな。なら俺の家で話そう。多分全員入れるだろ。」
そう言ってシャイン達はシャインの家である『龍空マンション』へと移動した。
マンションに到着すると、入口でマンションの大家のおばちゃんが数人のおばちゃんと話していた。
「あら珍しい。シャイン君が友達連れてくるなんて。」
大家のおばちゃんがシャイン達に気が付き話しかけてきた。
「別におばちゃんには関係ないだろ。」
「そう冷たいこと言わんの。あら?今回は女の子もいるようやね。しかも結構べっぴん揃いやない。」
大家のおばちゃんに褒められた女子3人は照れた動作をするが、満更でもない顔をしている。
「もういいかおばちゃん?」
「あらあらごめんなさい。ではでは、ハメを外し過ぎんように楽しんで。」
「……おばちゃんも早く洗濯物入れなよ。」
シャインは大家のおばちゃんとの会話が終わると、レビィ達を連れて自分の部屋へと向かった。
「お邪魔しま~~~す!」
シャインが部屋のドアを開けた瞬間、人の部屋に初めて来た時の恒例(?)の物色タイムがミリア、エアル、時々レビィの手によって始まった。
「……変なところあさったらぶった斬るからな。」
家の中を自由奔放に動く3人に忠告のような脅しを言ってからシャインは男3人を先にリビングに移動させた。
「もう!せっかく面白そうなもの探してあげているんだから一個くらい出て来なさいよ!」
エアルが持っていたシャインの衣服を地面に叩き付けた。
「どこに怒りを覚えてんだよ。そしていい加減こっちに来い。」
シャインがリビングからツッコミをいれた後、女3人をリビングに呼んだ。しかし、流石に7人が同じリビングにいるのは狭く、一人の範囲は小さかった。
「さて、本題に入る前に、何でシャインが柄にもなくいきなり神魔法の知識を得ようとしているのか教えてくれ。」
スノウの言葉により、全員の視線がシャインに向けられた。
「…まぁ昨日の話をすればいいだろ。」
シャインは昨日起きたルコード事件について話した。その話を聞いて、一同が驚いたのはやはりルコードの魔法が神魔法である氷神魔法であったことである。
「………そして、その氷騎士イアスに知りたければ自分で調べろって言われたから、こうやってミリアに聞こうと思ったんだ。」
シャインが話を終える。
「俺達どんだけ神魔法と縁があんだよ…。」
スノウが自分達の経歴を振り返って苦笑いする。
「このことは他の人間には言うなよ。ルコードにそう言われてるから。」
「シャインは思いっきり僕達に話しているけどね。」
アレンが呟く。
「……マジレスはしなくていい。……とにかく、さっさと教えてくれミリア。」
シャインは話を本題に戻した。
「そんなに急かさないでよ。私だってシャンの頼みだから教えたいけど、そんなに簡単に話して良い事でもないの。『神様』から許可を得なきゃ。」
「神?そんなのどこにいるんだよ?まさかエデンに行くのか?」
スノウが尋ねる。
「そんな訳ないでしょ。『私の中』にいる水を司る神、『ウンディーネ』に許可をもらわないと。」
そう言うと、ミリアはゆっくり目を閉じて、自分の中にいるという神に話しかけた。
(ウンディーネ、さっきまで話聞いてた?)
【ええ、聞いておりました。】
応えた声はとても美しく透き通った声であった。
(そんなことだからさ、話してもいいかな?)
【……この者達はエデンとアースを救ったため信用出来る人間と認識しているため大丈夫かと思いますが、もしも今から話すことをこの場にいる誰かが他の者に話してしまった場合、皆様の命で償ってもらいますよ?】
(……分かった。)
「おいミリア、何やってんだよ?」
ミリアとウンディーネの会話は周りにいるシャイン達に聞こえていないため、シャインが目を閉じて黙ったままのミリアに声をかけるが、反応はなかった。
【では私が直接あなたのお友達にお話ししましょう。少しの間、体をお借りしますね。】
(えっ!?ちょっ…!)
ミリアの反論を聞かず、ウンディーネはミリアの体を乗っ取り、閉じていた両目をゆっくり開けた。
「皆さん初めまして。」
突然ミリアの声が変わり、シャイン達がビクッ!と大きく驚いた。
「だ、誰だてめぇ!?」
シャインが風砕牙の柄を掴んで尋ねる。
「私の名前は『ウンディーネ』。起源の神オリジン様の力により生み出された水を司る神であります。」
とても美しく透き通った声でウンディーネが自己紹介した。しかしシャイン達はまだ呆気にとられていた。
「あなた方が我々の力、神魔法と称されている力に興味をお持ちのようなので、少しの間ミリアから体を借り、私が直接ご説明しようと思いまして。」
「……ま、まぁ説明してくれんなら別に誰でもいいんだが。」
シャインは柄から手を離し、ふぅと深呼吸をして心を落ち着かせた。
「しかし、先程ミリアに言いましたが、今からお話しすることがもしもどこかに流れてしまった場合は、誰が犯人であろうと全員の命で償ってもらいます。」
「分かりました。」
こちらもようやくビックリ状態から落ち着いたレビィがコクッと頷いた。
「それではお話ししましょう…神魔法について。」
ウンディーネがニッコリと微笑んだ。
「さて、どのようにお話ししましょうか?」
ウンディーネがシャイン達に尋ねる。
「順に話してくれると嬉しいですね。」
答えたのはヒューズであった。
「それもそうですね。ではお話します。」
ウンディーネが説明を始めた。
「我々は起源の神オリジン様が、あなた方が今生きているこの世界、『アース』を造り出すべく生み出された存在です。最初に生み出されたのは『地を司るノーム』、『水を司るウンディーネ』、『風を司るシルフ』の3体。この3体により地面、海、空を創りました。その後に『火を司るイフリート』、『氷を司るセルシウス』、『雷を司るヴォルト』の3体が生み出されました。そして最後に『光を司るルナ』により朝を、『闇を司るシャドウ』により夜が創られました。そして今はアースに存在する8つの属性を維持するために生きています。つまり逆に言うと、我々が死んでしまったらその死んだ神の属性がアースから消えてしまうのです。」
「どういうことだ?」
スノウが首を傾げる。
「例えば私が死んだ場合、アース中の海や湖など水という水が消えるのです。」
「魔力は消えないのですか?」
ヒューズが尋ねる。
「それは大丈夫です。魔力は我々神が作り出したわけではないので。」
「じゃあどうやって魔力って生まれたの?」
エアルが尋ねる。
「人類が生まれた時に一緒に生まれたのです。人類は我々が創っておりませんので、魔力は自然に生まれたものとカテゴリーされます。まぁ我々には寿命というものはないので自然死ということは絶対にありません。しかし、我々は魔力そのもの。なので『実体』というものがないのです。ですので何か『入れ物』がない限り、我々神は消滅しまいます。その入れ物に値するのが『契約者』です。我々神は自分に適した人間を探し、その者に自分の契約者となってもらい、その者に憑依して生きています。そして我々の契約者となってもらう代わりに、我々神の力を契約者に与えます。その力が『神魔法』です。」
「あの、ちょっといいですか?」
質問を投げかけたのはレビィであった。
「神様に実体はないと仰っていましたが、『BOM』の時にバージェスが暴走のようなことをした瞬間、人間ではない姿に変わりました。あれは一体何だったのですか?」
「BOM……ああ、あの大会の時のですか。あれは『神の暴走』と言われる状態です。契約者の体が我々の力に耐えきれなくなった時に起きます。起きた時の姿は契約者の心によって決められるのです。つまり、バージェスさんが野獣のようになったのは、バージェスさんの心に野心が多かったからとなります。」
「その暴走はお前等神で止められないのですか?」
アレンが尋ねる。
「不可能です。暴走中は私達も意識を失っているため何をしているか分かっておりません。」
「絶滅魔法の『闇落ち』のようなものですか?」
ヒューズが尋ねる。
「間違ってはいません。」
ウンディーネが頷く。
「なぁ、話を完全に変えて悪いが聞いていいか?」
シャインが質問を投げかけた。
「何でしょう?」
「ルコードには『守護者』がいた。守護者は何のために存在している?」
「簡単に言うと契約者を危険から守る者です。そして守護者は我々の魔力を使って作り出したものです。つまり魔力が具現化したものなのです。それに人間とは限りません。別の生き物という可能性もあります。我々は互いの守護者までは認識おりませんので、セルシウスの守護者が『騎士』ということは初めて知りました。」
「てことはイアスの奴は人間じゃないのか。」
シャインがポツリと呟いた。
「じゃあウンディーネにも守護者がいるの?」
エアルが尋ねる。
「いえ、以前の契約者にはいたのですが今はいません。守護者を付けるか付けないかは契約の時に契約者が決めます。守護者がいらないと言った場合、自分の力を上げることが出来ます。」
「つまり、契約者は契約時に『自分の力を底上げする』か『自分の力を削って守護者を召喚する』かを選べるってことですね?」
ヒューズがまとめると、ウンディーネがそうですと頷いた。
「じゃあバージェスやハールロッド、カルマの野郎も守護者を召喚するんじゃなくて自分の力を底上げしたのか。」
シャインがそう言うと、
「おそらくそうでしょう。」
と、ウンディーネも頷いた。
「あの、私も1ついいですか?」
次にレビィが質問を投げかけた。
「契約って何か条件とかあるのですか?」
「単純なところを言えば我々の力を制御出来るかとかですが、一番重要なのは、契約者の『心の中』に自分が求めている心があるかどうかです。」
それを聞いた時、シャイン達は一斉に首を傾げた。
「例えば私であれば、契約者の心に『純粋な心』があるかどうかを求めます。純粋とは即ち一途、つまり何かに一途になっていれば私の要求はクリアすることとなります。」
「じゃあミリアはそれをクリアしたんだね?」
エアルが尋ねる。
「はい。ミリアの心には1人の人間を愛し続けている『純粋な愛』がありました。その一途は過去の契約者と比べてたらかなりの一途でした。」
ウンディーネがクスクスと笑う。
「へぇ~…1人の人間を愛し続ける心ね~…」
エアルの言葉と共に、全員の視線がシャインに集中した。
「何故全員で俺を見る…。」
シャインはう…っと後退りする。
「シャイン以外にミリアが想う相手がいるわけないでしょ。てか、そろそろミリアにちゃんとした返事をしなさいよ。じゃなきゃミリア、恋に焦がれて過ぎて炭になっちゃうよ。」
エアルが言うと、
「………んなこと言われてもな…。」
と、シャインからは歯切れの悪い回答が返ってきた。
「……他の神はどのような心を求めているのですか?」
ヒューズが話の軌道を戻した。
「そうでね…火を司るイフリートは闘争心を求め、風を司るシルフはサバサバした心を求め、氷を司るセルシウスは冷酷な心を求めます。他の神も各々違う心を求めます。」
「当たっているな。契約者の性格と。」
シャインが呟く。
「ちょっと待って!ルコルコは間違ってるよ!だってルコルコは元気いっぱいで明るいじゃん!」
と、反論していてきたのはエアルであった。
「お前は知らないだけだ。あいつの本当の性格を。」
シャインはエアルの反論にさらっと答えた。
「とにかく、これで我々の神についての話は終わりです。最後にもう一度言っておきますが、くれぐれもこの場にいない人間に話さないで下さい。神の存在というのは普通は隠密にしておくことなのですから。まぁ…イフリートの契約者は赤裸々に公開していますが…。」
ウンディーネが苦笑いする。
「気にすんな。あいつが契約者なら仕方がない。」
シャインが呟いた。
「では皆様、私はこの辺りで。」
「おう。話してくれてありがとな。」
シャインの礼にニッコリと微笑んでから、ウンディーネは目を閉じた。そして次に目を開けた時には、
「はっ!やっと体戻って来たよ~!」
ミリアに戻っていた。
「皆、神魔法について理解は出来たの?」
「何とかな。」
ミリアの質問にシャインが答える。
「さてと!話も終わったことだしそろそろ帰ろっかな。ルコルコの新曲のCDも買いたいし。」
エアルはよっこいしょと立ち上がって背伸びをする。
「ヴァスタリガ王女だって言ったらタダで貰えるんじゃねぇか。」
スノウが笑いながら玄関に向かうエアルの後を追った。
「私達も失礼します。貴重な話を聞けて良かったです。」
ヒューズも続いて立ち上がり、玄関に向かう。
「僕もSMCの仕事があるから帰るね。」
アレンも続く。
「ほか、レビィも帰るよ。」
玄関で靴を履きながらまだリビングにいるレビィを呼ぶ。
「えっ、私は…」
レビィが何か言おうとした瞬間、
「ささ、用が済んだら帰るのが普通だよ~。」
ミリアがレビィの背中を押して無理矢理玄関の方に向かわせた。エアルはレビィが来るとドアを開け、廊下に出た。
「じゃあねシャイン。また明日。」
エアルが言う。
「おう。」
シャインが返事をすると、エアル達は廊下を進み、階段で龍空マンションを3階から1階まで降りていった。そしてマンションを出た時、ふとヒューズが気が付いた。
「あれ?ミリアの姿がありませんね。」
「えっ?」
全員が辺りを見渡すと、確かにミリアは見当たらなかった。
「はっ!まさか…!」
レビィはバッ!とマンションの方を向いた。
レビィ達を見送ったシャインが部屋に戻ろうとした時、
「シャン。」
ある一定の人物しか呼ばない呼び名で声をかけかられた。その方向に振り向くと、そこには予想通りミリアが立っていた。
「どうしたミリア?忘れ物か?」
シャインが尋ねるが、ミリアは黙ったままツカツカとシャインに近付いてきて、部屋の中へとシャインを押し込み、鍵を閉めた。
「何なんだよ?」
シャインは少しイラついた顔になる。
「たまには2人っきりで話したいな~なんて思って。迷惑…だったな…?」
少し下を向いてモジモジするミリアを見ているシャインがハァとため息をついてから、
「……飲み物は茶でいいだろ。」
と言ってキッチンの方に向かっていった。ミリアは顔を上げて、
「うん!」
と、満面の笑みで返事をした。
さっきまで7人もいたのでギュウギュウだったため、今はとても広く感じられる。ミリアは小さいテーブルに置いてあるお茶が入ったコップの前にペタンと女の子座りで座り、シャインは壁にもたれかかって座っている。
「で、何の話すんだ?」
シャインが携帯に視線をおとしたまま尋ねる。
「う~ん…決めてない。」
両手でコップを持っているミリアがハハハと笑う。そしてお茶を少しだけ飲んでコップをテーブルに置いた。
「…とにかくシャンと2人っきりで話したかったの。」
「……何でそこまで話したがるんだ?」
シャインは目線そのままで尋ねた。しかしミリアから返答が返ってこないため、視線をミリアに向けると、こちらをジッと睨んでいた。
「な、何だよ?」
「……シャンは私と会えなくて寂しくないの?」
「は?お前何言って…」
シャインが応える前にミリアはスッと立ち上がってシャインに近付き、そっと胸に顔をうずめてきた。
「ちょっ!?ミ、ミリア!?」
シャインが顔を赤くして慌てふためいていると、
「私は寂しいよ…。」
ミリアが顔をうずめたまま呟いた。それを聞いたシャインはとりあえず慌てるのを止め、ミリアを受け入れた。そして少しの沈黙があった後、ミリアが話し始めた。
「……私は小学生の時、学校に行く理由は…シャンに逢えるからだったんだよ。だからいつも学校が楽しみで仕方がなかった。そして平日も休日も、私とシャンとバージェスで遊ぶのがホントに楽しかった。でも中学生になって、シルフォーニに引っ越して、シャンにもう逢えないと思った時、心にポッカリと穴が空き、大事なものを失ったようだった。でもね、BOMでシャンを見た瞬間、何か救われたようだったの。ああ、また私はシャンに逢えるんだって。そうしたら心に空いた穴がいつの間に塞がれていた。これでもう空くことはないだろうなって思ってた。でも最近…また空き始めている…。ねぇ…シャンの中に私はいる?」
ミリアは顔を上げると、銀色の瞳には透明な涙が浮かんでいた。
「どういう…ことだ?」
シャインは困惑していて訳が分かっていなかった。その時、ドン!ドン!ドン!とドアが叩く音がしたと思ったら、
「ミリアー!そこにいるんでしょー!大人しく出て来なさーい!」
と、レビィが中に犯人でもいるのかばりに叫んでいる声が聞こえた。それを聞いたシャインとミリアは顔を見合わせ、ミリアがクスッと笑うと、シャインも釣られてクスッと笑った。
「ゴメンねシャン。変なこと訊いちゃって。」
涙を拭いたミリアは立ち上がり玄関の方に歩いて行く。シャインはガバッと立ち上がる。
「…おいミリア!さっきの……」
「気にしないで。別に何かあるわけじゃないから。」
先程の質問を訊こうとしたが、ミリアが背中を向けたままシャインの言葉に被せるように応えた。
「……分かった。」
シャインは腑には落ちないが、コクッと頷いた。
「分かってくれてありがと。」
ミリアはクルッと振り返って満面の笑みを浮かべる。
「ミリアー!いるんでしょー!」
まだレビィが叫んでいるようだ。ミリアが目でシャインにどうする?とアイコンタクトを送ると、シャインが俺が行くとアイコンタクトで返すと玄関に向かい、ガチャリと開けた。
「あっ!?シャ、シャイン!?」
レビィはミリアが出てくる予定を立ててたらしく、いきなりシャインが現れ慌てふためく。レビィの少し離れた所にはスノウ達が傍観していた。
「何か忘れ物か?」
シャインが半目でレビィを見つめる。レビィはアワアワとなりながらも、
「ミ、ミリアがいなかったから、もしかしたら戻ってきてるかな~っと思って。」
と、照れくさそうに訳を話した。すると、シャインの後ろから、
「私に何か用?」
ニヤニヤしながらミリアが現れた。
「ミリア、あなたシャインと2人っきりで何してたの?」
「何でそんなことあなたに言わなきゃならないの。ねぇシャン~。あんな事やこんな事は2人の秘密だもんね~。」
ミリアがギュッとシャインの腕にしがみついた。
「おい…何かその言い方誤解を生む可能性が…」
シャインがミリアに注意しようとした時、前方にいるレビィの頭に血管がピキッと浮き出た。そして殺人鬼とでも対峙しているかと錯覚するくらいの殺気を感じられた。
「シャ~イ~ン~!そのあんな事やこんな事…キッチリ話してくれないかしら~!」
レビィの殺気に比例して、夜叉の黒いオーラがユラユラとレビィから放たれている。
「ま、待てレビィ!ミリアの奴が勝手に言ってるだけで!お、俺達はただ話していただけで!……」
「問答無用!」
レビィは夜叉のオーラを纏った拳をシャインに放った。シャインはそれを紙一重に回避する。
「あっぶねぇ~!そもそも何でお前そんなにキレてんだよ!」
この言葉はレビィの怒りの炎に油を注いでしまったようだ。
「う~~…!シャインの……バカーーーーー!!!」
レビィが怒りのままに殴りかかってくる。シャインはそれを回避し続けていると、どんどん傍観していたスノウ達の方に移動していた。
「おいおいおいおい!俺達は関係ないだろ!」
スノウ達は完全に巻き込まれた。
「シャイン、君が犯した過ちなんだ!自分だけで解決してくれよ!」
必死に逃げながらアレンが怒る。
「知るか!ミリアのバカが変な言い方するからこうなっただけだ!」
(シャン…今のあなたの心の中には私の存在は薄くなっているはず。だって今のあなたの心にはレビィの存在が占めているから…。でもねシャン。それだけで私は諦めないわよ。いつか必ず、私に振り向かせてみせるから!)
ミリアはシャイン達が必死にレビィから逃げていく光景を見ながら決意を固めると、シャイン達を助けるべく急いで走り出した。
エ「龍空deラジオー!」
レ「う~ん…神魔法の説明、あれで読者の皆さんは理解してくれたかな?」
サ「別にニュアンスで分かってたら大丈夫でしょ。」
レ「う~ん…もしも理解に苦しむのだったらすいません…。あれが作者の限界です…。」
エ「そんなことより!唐突に恋愛要素が入ってきたね!」
サテ「エアルさん、楽しそうですね。」
エ「こういう話は楽しんだもん勝ちよ!」
サ「あんな反応されたら、普通の人間なら自分に気があるって気が付くはずだけどね。」
サテ「恋愛に関してのシャインの鈍感力は一流です。」
サ「ホント、the•主人公の性格ね。」
エ「フフフフ、ミリアとレビィの恋愛バトルの今後が楽しみね。」
サテ「エアルさん、笑顔が怖いです…。」
エ「てか、ここに本人いるんだし聞けばいいじゃん!ねぇレビィ………って、あれ?レビィは?」
サ「何か察したのかさっき逃げて行ったわよ。」
エ「ええー!?じゃあ追いかける!待てー!レビィー!」
サテ「……行っちゃったね。」
サ「はぁ…読者を置いて何やってんだが。」
サテ「では皆さん、次回を楽しみにして下さい!」