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魔法学園  作者: 眼鏡 純
68/88

68話 氷のアイドル

ス「龍空deラジオー!」

シ「テンション高いな。何かあったのか?」

ス「意味はない!ただ上げてみた!」

ヒ「それを俗に言う『暑苦しい』というので止めてください。」

ア「まぁまぁそう言わないで。どう?本編が新章に入ったことだし、この前書きでも新しいことしない?」

シ「ダルい。」

ヒ「作者に労働を増やして過労死させるつもりですか?」

ス「どうせこんな前書きを読んでる奴なんていないだろ。」

ア「ちょっ…!なんてこと言うのスノウ!」

シ・ヒ「スノウに異議なし。」

ア「どんだけしたくないんだよ!」

シ「大丈夫だ。本編がちゃんと出来ていれば読者は文句言わないだろ。」

ア「そりゃあ…そうだけど…。」

ス「よし!じゃあ前書きは前と同じようにグダグダすることで。そろそろ本編をどうぞ!」



ヒ「誤字、脱字、行替えミスがあったらすいません。」

 ポカポカ陽気の4月。3年と2年はいつものように登校し、新1年は新品の制服を身に付けて緊張と不安と期待を持って登校している。そんな中、シャインはいつもと違う感じで登校していた。何かとても不機嫌のようだ。理由は1つだけであった。シャインの周りには新品の服を着た女子、つまり後輩の女子達が沢山いるのだ。どうやら1年女子の間で、頭はスゴく馬鹿だがめっちゃカッコいい先輩がいるという噂が流れたらしい。それにより現在シャインは男達なら一度は憧れるハーレム状態なのである。しかし恋愛に疎いシャインにとってはこの状況はウザい以外何も感じず、

「あーー!お前ら邪魔だーー!」

と、朝から苦情の叫びが空にこだました。


 「たく…嫌がらせかよ…。」

何とか1年女子の包囲網から抜け出せたシャインが教室で自分の席に座ってため息をついていた。

「何だよそのため息は!」

そこにスノウが怒り心頭でシャインの机をバン!と叩く。

「それがさっきまで女子に囲まれた人間の態度か!羨ましい!」

「最後の部分は怒られたのか俺…。」

シャインが苦笑いする。

「何でてめぇの周りにはそんなに女子が集まるんだ!」

「お前そんなこと何話かの前書きでも嘆いていたな。」

シャインがポツリと呟く。

「何でだ!何で俺には来ない!あれなのか!実は超ブサイクなんです的な設定なのか俺は!」

「メタい発言は止めた方がいいんじゃね?まぁフォローをいれるとすると、モデルはFF13のスノウらしいからカッコいいだろ。」

自分もメタい発言をさらりと言うシャインであった。



 1年女子が見ている2年3組の隣のクラス、2年2組にエアルが登校してきた。そしてそのままレビィの席へと直行した。

「おはよーレビィ。何か隣のクラスがスゴいことに……」

エアルはレビィの顔を見た瞬間、話が止まってしまった。レビィがものスゴい不機嫌な顔でいていたからだ。

「こっちもスゴいことになってた……。」

エアルが少し後退りして呟いた。

「ど、どうしたのレビィ…?」

理由はおおむね分かるが、とりあえず尋ねてみた。

「別に。」

どこぞのエリカさんような返事をしてきたレビィの顔はさらに不機嫌なる。

(分かりやすいすくらいの嫉妬ね…。)

エアルはレビィの席の隣に座り、

「ほら、そんなに嫉妬しないの。シャインは恋愛に対して疎いんだから大丈夫だって。」

「な、何でシャインが出てくるのよ!」

レビィが顔を赤くして抗議するが、まぁ無理がある。

「べ、別に私はシャインが女の子に囲まれてるから嫉妬しているんじゃなくて…」

「はいはい分かった分かった。じゃあ、何故か分からないけど不機嫌なレビィにはこれをプレゼントしよう。」

エアルはこれ以上イジったらレビィが恥ずか死しそうなので、話題を変えるべく自分のカバンから長方形の紙を取り出してレビィに渡した。

「何これ?」

「アイドル界トップに君臨する『ルコード・グレイシャー』のライブチケットだよ。」

「ライブチケット?」

レビィが確認すると、確かに紙には『ルコルコのスプリングライブ!』という文字が書いてあった。曜日を見ると次の土曜日のようだ。

「どうしたのこれ?」

「向こう側の人がもし良ければ是非来て下さいってくれたの。だから絶対に行くことを条件にレビィ達の分ももらったの。」

「へぇ~流石は王女って感じ。でも私歌とか知らないよ?」

「大丈夫、私もにわかだから。それで、行く?」

「……うん。せっかくだし行こうかな。」

レビィが行くことを了承した。

「よし!昼休みになったらシャイン達にも渡しに行こう。」

「分かったわ。」

その時、チャイムが鳴ったので生徒全員が自分の席に着席した。



 昼休み。お弁当を食べ終えたエアルとレビィは3組のクラスに向かった。

「おや?お二人で何をしているんですか?」

教室に入ろうとした時に、ヒューズと出会した。隣にはアレンもいた。

「あ!2人ともグッドタイミング!一緒に来て!」

エアルはヒューズとアレンも引き連れて教室に入った。中に入って辺りを見渡すと、黄緑の髪と銀の髪なのですぐに見つかった。

「やっほ〜シャイン!モテモテだね〜!」

エアルが挨拶代わりに少し茶化すと、隣でレビィがムッとなったので、エアルはすぐに本題に入った。

「これ、ルコルコのライブチケットなんだけど皆で行こ。」

「断る。」

即答のシャイン。あまりにも早かったのでエアルはその場でズッコけた。

「もうちょっと考えてよ…。」

「興味がないものに行って何が楽しいんだ。」

「楽しいかどうかは行ってみなきゃ分かんないじゃん。」

「それ以前に行く気がねぇんだよ。」

「もう…ノリが悪いんだから。」

エアルがプンプン怒る。

「まぁまぁ、今回はシャインなしで行こうぜ。」

既にチケットをエアルから受け取っているスノウが提案する。

「おう、行ってこい行ってこい。」

シャインが手をヒラヒラさせる。

「分かったわ。ヒューズとアレンは?」

エアルが尋ねる相手を変えた。

「すいません。土曜日はSMCの仕事がありますので。」

「私も少しようがあるので。」

2人がやんわりと行けないと断った。

「そっか~、じゃあ3人か~。」

エアルがわざとらしくため息をついてシャインをチラッと見る。

「人が多い方がライブは楽しいんだけどな~。」

また大きくため息をついてシャインをチラッと見る。

「はぁ~…4人で……」

「あー!分かった!分かった!行きゃあいいんだろ!行きゃあ!」

シャインは半ば強制にライブに行くことになった。

「そうこなくっちゃ!」

エアルがパチンと指を鳴らした。



 というわけで土曜日。大きめのライブ会場の前に私服姿で集まったエアル、レビィ、スノウ、シャイン。まだ暖かいため全員薄着である。

「さて!今日は大いに盛り上がるぞー!」

エアルが拳を上に突き上げる。レビィとスノウはノリノリで、シャインは嫌々で同じように拳を上に突き上げた。

「では開演しますので慌てずお入りく下さーい!」

男性スタッフの声とともに、会場の扉が開いた。すると一斉にルコードファンがゾロゾロと入っていく。エアル達も流れに任せて入場しようとした。そしてチケットを見せたとき、

「あっ!もしやエアル・ダイヤモンド王女でございますか?」

チケット確認スタッフに止められて尋ねられたのである。

「は、はい。」

いきなりの出来事に驚きながらもエアルは頷いた。

「ルコードさんがもし迷惑でなければ是非ともお会いしたいと仰っているのですが、如何なさいましょう?」

「えっ!?ルコルコに会えるんですか!それならこっちからお願いしますよ!」

エアルが逆にウキウキ気分でお願いする。

「そうですか。ではルコードさんにお伝えしてきますので少しこちらでお待ち下さい。」

そう言ってスタッフは関係者以外立ち入り禁止の道を進んでいった。

「やった!ルコルコに会えるよ!」

エアルのテンションが既にMAXである。

「俺らはどうなんだろうな?」

スノウが呟く。数分後、さっきのスタッフがエアル達の所に戻ってきた。

「ルコードさんからの許可が取れたので案内します。そちらのお友達も良いようなので付いて来て下さい。」

「おお、やったぜ。」

スノウも有名人に個人的に会えるということでテンションは上がった。

「では案内します。」

エアル達はスタッフに連れられて立ち入り禁止の所に入っていった。


 「珍しいな。お前が楽屋に人を招くなんて」

ルコードのマネージャー、イアスが鏡の前に座ってメイクしているルコードに話しかける。

「あんたね~、相手はあの王女様よ。そんなとこにコネが入ったら私の評判はうなぎ登りじゃない。」

アイメイクをしているルコードが応える。

「たく…そんなことしか考えられないのかお前は。」

イアスが呆れた時、コンコンとノックされた。

「は~い!」

アイドルスイッチをONにしたルコードがアイメイクを完成させて返事をした。

「失礼しまーす!」

軽い感じで入ってきたのは王女エアルであった。後からレビィ、スノウ、シャインも続いた。

「うわ~!本物だ~!あ、あの!握手いいですか!」

興奮冷めないエアルが握手を求めた。

「こちらこそ。まさかヴァスタリガ王女とこうしてお会い出来るなんて光栄です。」

ルコードが満面の笑みでエアルと握手した。

「そんなに改まらなくていいですよ。王女なんてただの肩書きです。今はただのあなたのファンとして対応して下さい。」

「そう言ってもらえるとこちらも緊張が少しほぐれます。」

ルコードはエアルともう一度握手をしてから、レビィの前に移動した。

「初めまして。あなた達はエアルさんのお友達ね?」

「は、はい。レビィ・サファイアと申します。」

「レビィちゃんね。よろしくね。」

ルコードとレビィが握手を交わしてから隣のスノウの前に横移動する。

「こっちのカッコいいお兄さんは?」

「お、俺はスノウ・シルバー…です。」

正面で可愛らしい人にカッコいいと言われたので、スノウは少し照れながら自己紹介した。

「スノウ君ね。よろしくね。」

ルコードとスノウが握手を交わす。流石のスノウも鼻の下が少し伸びている。そしてルコードは最後のシャインの前に移動した。

「あなたは何てお名前?」

「……シャイン・エメラルドだ。」

自己紹介するシャインの顔は全く変わらない。

(何こいつ…。アイドル界のトップの私が話しかけているのに表情一つも変えないなんて…。)

そんなことを思いつつ、

「シャイン君ね。よろしくね。」

レビィ達と同じようにシャインと握手を交わした。その瞬間、シャインはピクッと何かを感じ取った。その反応に気が付いたのはマネージャーのイアスのみであった。

「ルコードさん。そろそろ準備お願いします。」

そこに女性スタッフがルコードを呼びに来た。ルコードは分かりましたと元気に答えた。

「では、私達も会場の方に行きますので。今回は楽しませてもらいますね。」

「はい。こちらも頑張ります。」

このエアルとルコードの会話を最後に、エアル達は楽屋を後にしてライブ会場に向かった。

「ん?どうしたシャイン?」

通路の途中、何か考え込んでいるシャインにスノウが気が付いた。

「いや、別に何もねぇ。」

シャインがそう答えたので、スノウはそれ以上問うことはしなかった。

「あ~、これで私の評判はうなぎ登りね。」

楽屋のルコードがニコニコと嬉しそうに言う。しかしマネージャーのイアスのいつもの冷ややかな返しがこなかったので、

「どうしたのイアス?」

と、ルコードが尋ねた。

「いや、お前が最後に握手した黄緑の髪の男…あいつ何か感づいたような反応をした。」

「そうなの?よく分かったわね。」

「他人事のように言っているが、仮にバレていたとして、その内容はお前の魔法に違いないと思うぞ。」

「………それはヤバいわね。」

流石のルコードも事の重大さに気が付いた。

「とにかくあの黄緑髪は俺が見張っておくから、お前はライブに集中しろ。」

「……分かったわ。」

ルコードは頷くと、登場準備のため楽屋を後にした。



 ライブ会場に入ったエアル達。別にVIP扱いで呼ばれていないため一般客に紛れて始めるのを待っていた。最前列には、同じはっぴを着て、頭に『I♡ルコルコ』と書かれた鉢巻きを結んだ男達がスタンバイしている。他にも多くのファンがまだかまだかと待っている。そして数分後、ライブ会場全体が暗転し、ルコードの売れるきっかけとなったシングル『やっぱりあなたが好き』のイントロが流れ、ファンがざわめく。そして歌が始まると同時に会場がパッ!と明るくなり、ルコードがステージで歌い始めた。ファン達のテンションは最初からMAXになった。エアル、レビィ、スノウのテンションも上がり、ファンと同じように盛り上がっているが、シャインだけは先程ルコードに対して感じ取ったものは何だったのか悩んでいた。


 2時間半に渡って行われた『ルコルコのスプリングライブ』は大成功で幕を閉じた。ぞろぞろと会場から退出して行く。エアル達は邪魔にならない所に集合した。

「あ〜!楽しかった!」

満足顔のエアルが背伸びをする。

「うん!私ライブなんて初めて来たけどこんなに楽しかったんだね!」

こちらも満足顔のレビィである。

「また来ようね!次はヒューズやアレンも一緒に!」

「うん!」

未来の約束をするエアルとレビィを眺めていたスノウがやはり何か浮かない顔をしているシャインに気が付いた。

「どうしたシャイン?楽しくなかったのか?」

「えっ?シャイン楽しくなかったの?」

スノウの声に反応して、レビィも同じように尋ねる。

「別にそうじゃねぇよ。ライブは楽しかった。」

「じゃあ何でそんな顔なんだよ?」

「気にすんな。」

シャインが曖昧な答えをするが、本人がそう言っているので、スノウとレビィは問いたてるのを止めた。

「さてと、明日はのんびり休んで、また月曜からの学校で会おうね。」

「何だよエアル、お前電車じゃねぇのか?」

「ちゃっかりお迎えを用意しておいたのよ。」

エアルがそんなことを言っていると、一台の白いリムジンが4人の近くで停車し、運転席から執事らしき老人がエアルの方に深々と頭を下げた。この光景にはスノウは苦笑いするしかなかった。

「じゃあね皆!また月曜日!」

エアルは3人に手を振ってからリムジンに乗り込み、そのまま走り去っていった。残された3人も各々の家に帰ることにした。



 次の日の日曜日。一人暮らしのシャインが自分の家の布団で目を覚ました。時刻は午前9時。特に用事はないが家にいても暇だなと思ったシャインは財布とケータイだけを持って外に出た。


 休日とあって町は人や車で溢れており、人の声や車の音で賑わっている。そんな中をのんびり散歩するシャインは本屋やゲームセンターなどにふらっと入ってふらっと出てを繰り返し、今はコンビニのおにぎりを食べながら歩いている。

(何か暇つぶしになる事起きねぇかな。)

そんな願いはすぐに叶った。ただちょっと面倒そうだが。

「ようようネーちゃん。昼間っからパチンコかよ。」

シャインがいる歩道から車道を挟んで反対側の歩道にあるパチンコ屋の前で帽子を深く被りボーイッシュな格好をしている女性が20代後半くらいのチャラチャラした男3人に囲まれていた。

「すいません通してくれませんか?」

女性が顔を隠したまま言う。

「そんな固いこと言わないでくれよ~。な?」

金髪の男が女性と肩を組む。

「私はあなた達に用はないんです。」

女性が男の手を払いのける。

「てか持ってる缶、ジュースかと思ったら酒かよ。」

黒のモヒカンが女性の片手に持っている缶がビールだと気が付いてケラケラ笑う。

「私は二十歳なのでお酒は飲めます。あの、もういいですか?」

女性が男達を無視してパチンコ屋に入ろうとしたのを、茶色のロン毛が肩を掴んで止めた。

「まぁまぁネーちゃん。1人でパチンコしながら飲むくらいだったら、俺らと楽しく飲もうぜ。」

男達が下品に笑う。

「……離して下さい。」

女性が冷ややかに言った瞬間、ロン毛の手がパキパキと凍ったのだ。

「冷てぇ!」

ロン毛は反射的に離して、凍った自分の手の手首を掴んだ。

(あいつ、魔法が使えるのか。)

反対側で様子を見ているシャインが気が付いた。

「この女!魔法使えるのか!」

男達も当然気が付いた。

「いい加減にしなさい。さもなくば3人とも氷付けするわよ?」

女性が3人を脅す。しかし男達はヘラヘラを笑う。

「何が可笑しいの?」

女性が少し気味が悪いと思った時だった。女性の背後に伸びるパチンコ屋の隣の狭い路地から男達の仲間であろう男が現れ、女性の口元に布を押さえ付けたのだ。

(しまった…!)

気が付くのが遅かった女性はそのまま眠らされてしまった。持っていた缶ビールは手から落ちて地面を転がっていった。

「ひゅ~、かなりの上玉だな。」

女性を眠らしたドレットヘアーの男が下品に笑う。

「さて、俺達のアジトでたっぷり遊んでやるか。」

ドレットヘアーが女性をおぶって、男4人はどこかに行ってしまった。騒動が起きた後のパチンコ屋の前にシャインは来た。道の隅に転がっている缶ビールを拾い、

「全て目撃しといて知らんぷりは…流石に冷酷だよな。」

と、ポツリと呟いてシャインはトコトコと歩いて行った。



 「う…ん…」

女性が目を覚ますと、そこは見たことのない大きくて汚い倉庫であった。

「ここは…?」

女性は動こうとしたが動けなかった。当たり前である。両腕は左右に伸ばされ鎖で縛られ、両足は揃えて同じく鎖で縛られていて、張り付け状態だからだ。

「な、何!?」

女性がガシャガシャと音を立てて外そうとするが、そんな簡単に外れることなんてない。

「おはよう。アイドル界トップの『ルコード・グレイシャー』ちゃん。」

その声で、女性は自分の前に先程の男4人と10人以上の男の仲間が自分を見ていることに気が付いた。

「帽子を取った時驚いたよ~。まさかアトップイドルのルコードちゃんなんて。」

ドレットヘアーがルコードに近付き、顎を上げて顔を寄せる。

「触るな!汚らわしい!」

ルコードが顔を振って抵抗する。

「おいおい、自分が置かれてる状況が理解出来ていないのか?」

「ふん!あんた達なんて魔法で……」

ルコードは氷魔法を発動しようとしたが、何故か発動しない。

「あれ!?何で!?」

慌てるルコードを男達はニヤニヤしながら見ている。

「あんた達…何かしたわね。私に何をした!」

ルコードが声を張り上げる。

「へっへっへっ、鎖を見て見ろよ。」

金髪の言われた通り、ルコードは自分の両腕両足を縛っている鎖を見た。その鎖には何か文字が刻まれているのに気が付いた。

「それは『魔封呪(まふうじゅ)』と言われる魔法を封印する文字だ。魔法が使える人間がその文字を刻んだ物に触れると魔法が使えなくなるのさ。」

金髪がヘラヘラを笑いながら説明する。

「そんなものがあるなんて…。」

ルコードは初耳だった。

「さて、そろそろトップアイドルを味わうとしますか。」

どうたらドレットヘアーがこの集団のリーダーらしく、ドレットの言葉の後に他の連中が下品に笑う。

(ヤバい…このままじゃ犯される…!)

ルコードの心に恐怖が宿る。

(どうしよう…。力を『解放』したら多分こいつらを皆殺しに出来る…でもこんな奴等に使うのは…でもこのままじゃ女として汚される…!)

ルコードが葛藤している間に、ドレットがカッタ―ナイフでルコードの服を切り裂こうとしていた。そして刃がルコードの服をほんの少し切った時、

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

悲鳴とともに見張りをしていた男2人が吹き飛ばされてきた。

「何事だ!?」

ドレットおよび他の男達は突然の出来事にルコードを置いて倉庫の入り口を見た。すると、こちらに近付いてくる人間を発見した。

「誰だてめぇ!」

モヒカンが声を上げる。

「あ~、さっきそこで女の名前を聞かなかったら通りすがりの正義のヒーローだったんだが、名前を聞いたらその女の知人になった男だ。」

乗り込んできた男がそう言う。

「名前を言え!名前を!」

ロン毛が正論を言った。

「名前か?俺の名は『シャイン・エメラルド』。何の縁だが知らないが、とりあえずその女、返してもらうぞ。」

シャインが風砕牙の刃先をドレットに向けた。あと刀を持つ反対の手には缶ビールを持っていた。

「あんた…王女様の友達の…」

ルコードは記憶を巡ってシャインが誰か思い出した。

「ハッ!ガキが刃物振り回して正義気取りかよ!てめぇら!ガキだからって容赦すんじゃねぇぞ!」

ドレットが命令を出し、仲間の3人が殴りにかかってきた。だが結果は見えている。

「[疾風斬]!」

シャインは缶ビールを上に投げて、疾風のごとく3人をノックアウトさせた。しかし斬られてはいない。

「峰打ちだ。無駄な殺生はしたくねぇからな。」

投げた缶ビールをキャッチするシャインが言う。

「な…なかなかやるじゃねぇか。なら数で押せ!武器も使え!」

ドレットの命令により、金髪、ロン毛、モヒカンを除いた奴等が一斉に襲いかかってきた。

「やれやれ…。」

シャインはまた缶ビールを上に投げて、落ちてくる前に倒した。しかし全員峰打ちであるため斬られてはいない。

「な…何だこいつ…。」

モヒカンがシャインに対して恐怖が生まれた。

「て、てめぇ!俺達に何の恨みがあるんだ!」

ロン毛がシャインに尋ねる。シャインは缶ビールをキャッチしてから、

「初めて会った連中に恨みも何もあるわけねぇだろ。」

と、答えた。

「なら何故俺達を襲撃した!」

ロン毛がまた尋ねる。

「女が目の前で被害に遭ったんだ。だったら男は女が誰であれ助けるもんだろ。」

シャインがロン毛に刃先を向ける。

「けっ、ガキの大層なもんだな。」

ドレットがけなすような笑みを浮かべてから、金髪、モヒカン、ロン毛に行けと命令する。3人はシャインを三角に包囲する。

「幹部の登場ってわけか。」

シャインの顔はすっかり舐めきっていて、余裕を持って缶ビールを地面に置いた。

「さっき強さは見せたはずだが?」

シャインが少し脅してみたが、3人は動じることはない。その時、ドレットが何か違うところに命令を出したのをルコードは見逃さなかった。

「緑髪!その場所から離れなさい!早く!」

ルコードがシャインに向かって叫んだ。しかしシャインが声に気が付くと同時に、ドレットの策略が遂行された。それはシャインの頭上から鉄網で捕獲するというものであった。

「なっ!?」

予想外のことにシャインは何も出来ぬまま鉄網に捕まりうつ伏せになった。

「こんな網…!」

シャインは鉄網を魔法で斬ろうとしたが、それは叶わなかった。

「あれ!?魔法が…発動しねぇ!?」

そう、鉄網にもルコードを縛る鎖同様に魔封呪が刻まれていたのだ。


 「たく…調子に乗って格好付けているからこうなるのよ。」

ルコードが隣にいる鉄網でグルグル巻きにされて横たわっているシャインを馬鹿にする。

「止めてくれ…結構恥ずかしいんだ。」

シャインは少し顔を赤くする。

「はははは!結局ヒーローも魔法を封じられたらこんなものさ!」

ドレットが動けない2人の前で嘲笑う。

「へっ、こんな小賢しいことでしか戦えない奴等が粋がりやがって。」

シャインが毒づくと、

「その小賢しいことにまんまと引っかかった奴がほざくな。」

と、ドレットに毒づけ返された。

「さて、少々邪魔が入ったが、そろそろ味わうか。」

ドレットがルコードの方を見てニヤリと笑う。

「何だお前、犯されるのか?」

シャインが真顔で隣のルコードに尋ねる。

「あんたそれ今にも犯されそうな人間に聞く?」

ルコードが睨みながらツッコむ。その時だった。倉庫全体がポカポカ日和から一転、真冬のように寒くなり倉庫の一部が凍るくらいであった。

「今度は何だ!」

ドレットがイライラしているのか声が荒い。

「あいつだ!」

モヒカンが寒さで震えながら指差す先には、水色の髪に黒の瞳を持ち、スーツ姿で髪と同じ色をしたメガネをかけた男がこちらに向かって歩いてきている。その男が地に足がつくごとに地面が凍っていく。

「うちのルコードと面会したければ、この俺を通してからにしてくれないか。」

スーツ姿の男が眼鏡をクイッと上げる。冷静な感じであるが、目の奥深くは怒りに満ちているように見える。

「遅いわよイアス。」

そう言っているルコードの顔は安心した面持ちであった。

「たく…パチンコは諦めたが誘拐なんてされるなよ。」

イアスがハァと大きくため息をつく。

「あいつって確かこいつのマネージャー。」

シャインが思い出す。シャインの言葉を聞いていたドレットが、

「ほう、今度はマネージャーさんかよ。堂々と魔法を使いながらの登場とはよっぽど自分の力に自信があるのだな。」

と、イアスを挑発する。だが、イアスはドレットを完全に無視をして、

「お前は確かヴァスタリガ王女といた緑髪。何でこんな所で捕まっているんだ?」

ルコードの隣で転がっているシャインに尋ねる。

「……色々事情というものがあってだな…」

シャインがあやふやにしようとしたので、

「カッコつけて助けに来て無様に捕まったの。」

ルコードが簡潔に説明する。

「……馬鹿なのか?」

イアスが表情を変えないまま尋ねる。

「うるせぇ!」

シャインが顔を赤らめて叫ぶ。

「とにかく俺の鉄網を切ってくれ。」

「命令出来る立場か。自力で抜け出せ。」

イアスがシャインの頼みを断ったが、

「待ってイアス。こいつも解放してあげて。」

次はルコードが頼んだ。

「何故だ?」

「こいつ、頭は残念だけど戦闘は強いのは確かよ。」

「おい、余計な言葉が付いてるぞ。」

シャインがムッと怒るが、2人は見事にスルーした。

「おい!俺達を無視して話すんじゃねぇよ!」

もっとスルーされていたドレットが遂に声を出した。

「舐めやがって!お前ら!やれ!」

ドレットの命令により、他の連中が魔封呪が刻まれた鉄網やパイプなどの武器を持って襲ってきた。

「気を付けろ!その文字魔法を封じられるぞ!」

シャインがイアスに伝える。

「なるほど。だから『セルシウス様』も本気を出さなければ魔法が使えないのか。」

イアスは誰にも聞こえない声量で呟いてから、氷の玉を頭上に打ち上げた。

[氷河期(アイスエイジ)]!」

そして氷の玉が弾けた瞬間、今度は一部ではなく、倉庫全体が凍りついた。ドレット、モヒカン、金髪、ロン毛を除いた男達も凍ってしまっていた。

「事が済んだら溶かしてやる。それまでそうやって冷却保存されていろ。」

イアスは氷が張った地面を淡々と歩き、幹部の3人とドレットに近付いていく。

「ば、化け物だ…!」

モヒカンが無意識に呟いた。

「怯むな!たかが氷魔法だろうが!」

ドレットが3人に攻撃するように命令するが、

「もうお前なんかに付いて行けるか!」

モヒカンがそう言い残して倉庫から逃げて行った。それに釣られて、金髪とロン毛も逃げ出して行った。

「見捨てられたな。ま、ちゃんとした絆がない集団なんぞこんなものか。」

イアスがフッと嘲笑う。

「ちっ、役立たず共め。まぁいいさ、ここまできたら何が何でもトップアイドルを味わってやる。そのためにはお前が邪魔だマネージャーさん。」

ドレットヘアーがイアスと向かい合った。

「お前人気だな~。」

シャインが他人事のように言う。

「ふん、あんな奴に好かれたくないわ。キモいだけよ。」

ルコードが汚らわしいものを見る視線をドレットヘアーに送る。

「俺の名前は『フレガー』。炎魔法の使い手だ。」

フレガーと名乗ったドレットヘアーの体がメラメラと燃えだした。それにより地面の氷が溶けている。

「なるほど、魔法が使えたのか。」

イアスが少しだけ身構えた。

「そうさ。しかもお前にとっては最悪の相性だろ?」

「最悪の相性かどうかは…()ってみなければ分からないものだ。」

イアスがいよいよ戦闘体勢になった。

「邪魔なんだよ!マネージャーさんよ!」

フレガーがイアスに向かって突進する。イアスはそれを向かい撃ち、2人の戦闘が始まった。

「あいつ、相性悪いが大丈夫なのか?」

2人の戦闘を見ているシャインがルコードに訊く。

「普通の炎と普通の氷の場合わね。大丈夫よ、あいつの氷は『普通じゃない』から。」

ルコードが口だけニッ笑う。

「普通じゃ…ない?」

シャインは意味が理解出来なかった。

「どうした!どうした!さっきから逃げてばかりだぞ!」

フレガーが炎の球を連発する。それをイアスはただ回避するだけである。

「相手の情報が不足したままで突っ込むのは馬鹿がすることだ。だが、そろそろお前の力も分かった。こちらも反撃させてもらうぞ。」

イアスがフレガーとの間合いを空けた。

「これで終わりだ![紅蓮乱舞(ぐれんらんぶ)]!」

フレガーが炎の球を無数に放った。

[氷気(ひょうき)]。」

イアスが眼をカッ!と開けた瞬間、炎が一瞬にして凍り、地面に落ちてバリン!と割れたのだ。

「なっ…!?て、てめぇ今何をした!」

フレガーが混乱したままとにかく攻撃しようとしたが、

「か、体が動かねぇ!?」

自分の体が動かなかった。

「勝負あったな。」

イアスが氷の剣を作り出す。

「ま、待ってくれ!もうルコードには手を出さないから!」

「……『分かった許してやる』と言った奴が前にいたのか?」

イアスが動けないフレガーを見下しながら刃を向ける。

「ま、待って!待ってくれ!」

「じゃあな。」

イアスが剣を振り上げた。

「止めてくれーーー!」

命乞いをするフレガーにイアスは無情な一撃を喰らわした。まともに喰らったフレガーはバタッとうつ伏せに倒れた。しかし、傷もなく血も流れていない。

「おい、あいつ斬れてないぞ。」

シャインは自分に近付くイアスに言う。

「無駄な殺生はしたくないからな。」

イアスは刃の所を手で触って斬れないことを見せた。

「そんなことより早く助けてくんない。流石にずっとこの態勢は疲れたわ。」

ルコードが解放してと催促する。イアスは剣に刃を形成し、ルコードを縛る鎖を断ち切った。

「はぁ~!動けるっていいわ~!」

ルコードが腰などを回す。

「おい、俺も助けてくれよ。」

シャインがクネクネと動く。イアスは小さくため息をついてから鉄網を切った。シャインは動けるようになると立ち上がって背伸びをし、サンキューと短く礼を言った。

「なぁ、お前さっき何をしたんだ?」

シャインは先程イアスが使った技が気になり尋ねる。

「『気合』に氷の魔法を乗せて放っただけだ。」

氷の剣を水に戻してイアスが答える。

「気合?」

シャインが首を傾げる。

「全ての人間に存在する力だ。だが魔法と同様、使えるか使えないは血が関係する。使えない人間は魔法と同じくどんだけ足掻いても使えるようにはならない。そしてここからが魔法と違うところだ。魔法は使える人間は簡単に発動出来るが、気合はたとえ使える血が流れていようと、使えるかどうかはその人間の努力次第なんだ。そしてもし気合が発動出来るようになったとしても、魔法を乗せるのは別の話。気合に魔法を乗せられるのは生まれ持った才能で左右されるんだ。」

「へぇ~、分かったよ何となく。」

「……本当に頭は残念なんだな。」

イアスが小さく呆れた。

「なぁ、気合って魔法を乗せなきゃ意味ないのか?」

「そんな訳あるか。ちゃんと効果はある。」

「効果って何だ?」

「……これ以上ほぼ初対面の人間に教える義理はない。」

イアスがクルッとシャインに背を向ける。

「何だよ、教えてもいいだろ。減るもんじゃねぇし。」

シャインの顔がムスッとなる。

「何でも教えてもらえると思うな。ちょっとは自分で調べてみろ。」

「ちっ…!何だよそれ…。」

シャインは露骨な舌打ちをした。

「何話してんの?」

2人のとこにいつの間にか姿を消していたルコードが合流した。

「お前今までどこに行っていたんだ?」

イアスが尋ねる。

「こいつ等の財布から服代と慰謝料をもらってきたの。あとあんたが持ってきてくれた缶ビール。イアスの力でキンキンに冷えてたわ。」

ルコードの片方の手には大量のお札が握られていた。もう片方の手にはもう既に開いている缶ビールを持っていた。

「凍り付けの奴等からよく財布抜けたな。」

シャインが言う。

「私だって氷魔法使えるから一部解凍の仕方くらい知ってるわよ。」

「ああ、氷神魔法だろ。」

「そう。氷神魔法だから……」

さらっとシャインが言ったことに反射的に答えようとしたが、内容を理解した瞬間ピタッと止まり、数秒の沈黙が起きた後、

「やっぱりそうか。」

と、シャインがニヤリと笑った。

「あ、あんたその事をどこから…!?」

突然当てられたことに困惑しているルコードの前にスッとイアスが立った。

「何故分かった?返答の内容によってはただでは済まないぞ。」

イアスが氷の剣を再度作り、シャインに向ける。

「勘。」

シャインはたったそれだけを答えた。

「……ふさげているのか?」

イアスの警戒度が上がった。シャインは髪をクシャクシャとしてから、

「……冗談だよ。」

と、訂正した後、話を続けた。

「でも根拠はなかったんだ。俺にあったのは直感と経験だけだ。」

「どういうことだ?」

イアスは刃を下ろしてくれたが、まだ警戒している証拠として剣を持ったままである。

「直感はルコードと初めて会って握手した時だ。あの時ルコードに対して、どこかで味わった普通の人間からは感じない独特な雰囲気を感じた。俺の幼なじみ2人と、俺そっくりな異世界の人間と同じ雰囲気をな。その3人の共通点は…『神魔法(ゴッドマジック)』。そんな3人と同じ雰囲気を漂わせているお前は、神魔法(ゴッドマジック)を使える。……という推測をしたんだよ。」

シャインが話し終えると、イアスは氷の剣を溶かして、

「嫌な予想が的中するとはな。」

と、何か納得した顔になった。

「何だよその反応は?」

イアスの反応が思っていたのと違うのでシャインが首を傾げる。

「気になっていたんだ。お前がイアスと握手した時に妙な反応を見せたのをな。」

「ふ~ん…そうだったのか。」

訊いたわりには薄い反応のシャインであった。

「はぁ…まぁそんだけ分かられていたら隠す必要もないわね。いいわ。あんたには話してあげる。でもその前に…」

ルコードが辺りを見渡してから、

「こいつらの処理をどうすんの?」

と、シャインとイアスに尋ねた。

「仕方がない。解凍してやるか。」

「いや、その必要はねぇよ。」

凍結を解除しようとしたイアスをシャインが止めた。

「何故だ?」

「処理のスペシャリスト達を呼ぶ。」

そう言ってシャインは携帯電話である人物に電話をかけた。


 「もう…何で僕達が後処理をしなきゃならないんだ。そしてせめて解凍して縛り上げといて欲しかったよ。」

シャインに呼ばれた人物、緋色髪のアレンがブーブーと文句を言いながら部下達に命令を出した。



 人気のない広間に移動したシャイン達。

「改めて言うわ。私が使う魔法はあんたが言った通り『氷神(ひょうじん)魔法』よ。あんたの幼なじみと~…その~…異世界のそっくりさん?まぁよく分からないけどその3人は何の神魔法(ゴッドマジック)?」

「幼なじみが水と炎、異世界の俺が風だ。あっ、今思い出した。闇の神魔法(ゴッドマジック)を使える奴も知ってる。」

「あんたどんだけ神魔法(ゴッドマジック)に会ってるのよ。このままだと全員に会うんじゃない?」

「別に俺は望んじゃいねぇよ。それより俺はこいつの存在が気になるんだが。」

シャインがイアスの方を向き、

「お前、ただの魔法が使えるマネージャーじゃないだろ?」

尋ねられたイアスはルコードに話していいかアイコンタクトで尋ねる。ルコードは小さく頷いた。

「……俺はルコードの中にいる氷を司る神、『セルシウス』様の守護者『氷騎士イアス』だ。」

「守護者?氷騎士?さっぱり意味が分からん。それにセルシウスって誰だよ?」

「あんたもしかして神魔法(ゴッドマジック)の仕組みを知らないの?」

ルコードが訊くと、シャインは何の迷いもなく首を縦に振った。

「でもま、無理もないか。契約方法なんてどの史料にも載ってないことだし。」

「じゃあ教えてくれよ。神魔法(ゴッドマジック)の仕組み。」

シャインが頼むと、

「さっきと同じだ。ほぼ初対面のお前にこれ以上教える義理はない。」

イアスが断った。

「そういうこと。知りたきゃ幼なじみの2人にでも訊いたら?」

ルコードも教えてくれないようだ。

「何だよお前等。冷たいな。」

シャインがチッと舌打ちをする。

神魔法(ゴッドマジック)のことと、イアスの正体を教えた時点で私達とっては異例中の異例よ。」

そう言ってルコードはどこかに行こうとした。

「おい、どこ行くんだよ?」

シャインが行き先を訊く。

「私の休日は酒とパチンコって決まってんのよ。いい?今日あんたに話したことは絶対に外部に言うんじゃないわよ。あと……」

ルコードは釘を刺した後、

「……助けられてないけど、助けにきてくれてありがとう。あと、缶ビールもありがとね。」

と、照れくさそうに礼を言ってからパチンコ店へ向かうべくシャインに背を向けて去っていく。イアスはルコードの少し後ろを付いて行く感じで同じく去っていった。シャインは2人の小さくなっていく背中を見送ってから自分の家へ帰っていった。


 「良かったのか?あいつにあんなに話してしまって。王女の友達だとしても、もしかしたら悪人かもしれなんだぞ。」

前を歩くルコードにイアスが尋ねる。

「ん~…別に大丈夫でしょ。」

ルコードが曖昧な返答をするので、

「………根拠は?」

と、理由を尋ねた。するとルコードはクルッとイアスの方を向き少し微笑んで、

「女の勘。」

と、だけ答えまた進行方向に体を戻した。

「……それは一番の根拠だな。」

イアスはフッと微笑を浮かべた。




 次の日の学校。

「な、何~!?昨日ルコルコと話しただ~!?」

スノウがまた席に座っているシャインの前で怒り心頭である。

「どうして!お前は!そんなに!女と!絡む!頻度が!高いんだー!」

なかなかの荒れっぷりである。

「お前にはエアルがいるだろ。」

「エアルは違う!あいつは守る存在だから違うんだ!俺が望んでいるのはどこぞの結城○トのようなハーレムだー!」

「……せっかく前半はカッコ良かったのにな。後半の心の叫びで台無しだよ。」

シャインが冷静にツッコむ。

「なになに~?シャイン、ルコルコと話したの?」

そこにクラスの女子が数人近付いてきた。

「町中でちょっとだけな。」

シャインが簡単に答える。

「いいな~!ねぇ!どこらへんで会ったの?」

違う女子が尋ねてきた。

「パチンコ店の前。」

「パチンコ?ルコルコがパチンコしてたの?」

「いや、その前で会っただけ。」

パチンコ店に入ろうとしていたとは言わなかったのはシャインのちょっとした気遣いであった。

「ふ~ん…どこのパチンコ店?」

シャインが女子達にパチンコ店の場所を教えた。

「あ~あそこか。じゃあさ、今日帰り寄ってみようよ。」

女子達がそんな約束をしているのをシャインは興味ゼロの視線を送る。

「てかさ、あれだよね?シャインの髪って『あのアイドル』に似てるよね?」

少しギャルい女子の発言に他の女子達もそうだねと賛同した。

「あのアイドル?」

シャインが首を傾げる。

「何、知らないのシャイン。」

ギャル女子が自分のスマホで画像検索をしてシャインに見せた。

「名前は『フロウ・アドページ』。今人気急上昇中のアイドルよ。」

「ふ~ん…フロウ・アドページ…か。」

シャインは自分と同じ色の髪と瞳を持っているフロウの画像を見つめて呟いた。

エ「龍空deラジオ〜!そして緊急事態発生!」

レ「どうしたの?」

エ「サナとサテラちゃんがエデンに行っちゃったから後書きが私達2人だけなのだ!」

レ「あっ!そうか!それは大変だね!」

エ「でしょ!どうしようかレビィ〜。」

レ「う〜ん…でも後書きも前書きと同じでのんびりしてるだけだから別に困ることはないけどな〜。」

エ「そうだけど淋しいじゃん!」

レ「そうよね〜。やっぱり淋しいわよね。」

エ「あ〜、サナ〜!サテラちゃ〜ん!帰って来て〜!」

サ「呼んだ?」

エ「えっ!?サナ!?」

サテ「お久しぶりです!エアルさん!レビィさん!」

レ「サテラちゃんまで!何でここに?」

サ「どうやらこの後書きと本編は別物という扱いのようね。」

レ「じゃあ2人はこの後書きには継続して出てくるのね?」

サ「そのようね。」

エ「良かった〜!良かったよ〜!」

サテ「ちょっとエアルさんそんなに抱きしめないで下さい〜。苦しいですよ〜。」

サ「なにイチャイチャしてんのよあんた達…。」

レ「フフ。では皆さん、次回をお楽しみに。」

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