62話 起源の神オリジン(13)
ス「はぁ…。」
シ「ん?どうしたスノウ?」
ス「いやさ、現実の世界の学生はまた学年が1つ上がるんだな~っと思ってさ。」
シ「そうだが、それがどうした?」
ス「……俺らはいつ高2になれるんだろうか。」
ヒ「それを言ってしまいましたか。」
ス「だってよ、俺らまだ高1だぜ。」
ア「この『エデン編』が終わるとちゃんとなるんじゃない?」
ス「どうだか。」
シ「ま、今はとりあえず俺はエデン編を全力で頑張りゃいいんだよ。」
ス「お前今エデンにいねぇじゃん。」
シ「あっ……。」
ヒ「では、本編をどうぞ。」
ヴィーナス死亡の時、男チームはオリジン領土上空をプテラドンという翼竜に乗って飛行していた。ちなみにプテラドンをくれた男は別の場所に行きもういない。
「なぁ、俺らって一体どこに向かってんだ?」
プテラドンを操縦しているスノウがアレンが操縦しているプテラドンの後ろにいるヨゼルに尋ねる。
「ちょっとしたレストランだ。」
「レストラン?」
アレンが操縦したまま聞き返した。
「ああ。」
「またどうして?」
ヒューズが理由を尋ねる。
「知人が営業しててな。良い隠れ場所になる。」
「その人もトレイタなのですか?」
「いや、善良な国民だ。でもちょっと関わりがあってな、だからちょくちょく協力はしてくれている。」
「そうですか。」
そんな会話をしていると、スノウ達のまだ上から光の矢が何本も降ってきた。操縦していたスノウとアレンはプテラドンをうまく操作して矢を回避した。
「何だよ一体!?」
スノウが見上げると、そこには大量の天使がこちらを見下していた。その中にはドラゴンらしき魔物もいた。
「ちっ…もう追ってが来たか…。」
ヨゼルが舌打ちする。そして、この一部隊の隊長の命令により、天使達が武器を携え向かってきた。スノウとアレンは初めてとは思えないプテラドンさばきで回避する。そしてスノウの後ろにいるヒューズが弓矢を構える。
「[レインアロー]!!」
放たれた矢は分身し、雨のごとく天使達に降り注ぐ。
「[烈空斬]!!」
ヨゼルはアレンの後ろから飛び上がり、縦回転しながら天使達を斬り、元の場所に着地した。2人の攻撃でかなり倒したのだが、向こうの数は減っているようには見えなかった。その時、
「ガァァァァ!!」
3メートルくらいの赤鱗のドラゴンが上空から2組に突進してきた。スノウとアレンは急いでプテラドンを操るが鋭い爪がプテラドンに当たってしまい消滅してしまった。足場を失った3人と1匹は真っ逆さまに落ちていく。ドラゴンは再度突進してくる。アレンはドラゴンに向かって銃を撃つが焼け石に水であった。半ば諦めかけた瞬間、
「[ベルフェックチェーン]!!」
ドラゴンの囲むように光の鎖が現れて拘束した。自由を奪われたドラゴンはスノウ達と同じように落ちていく。
「[ホーリーランス]!!」
落ちていくドラゴンに一本の光の槍が貫き、ドラゴンは消滅した。ヒューズが落ちながら発動者を探すが当然見つかるはずがなかった。
(今の魔法……)
スノウはどこかで見たことがある魔法だと一瞬思ったが、すぐに自分の置かれている状況に意識を向けた。
「誰かこの状況打破出来る技持ってねぇのか!」
スノウが2人と1匹に聞くが、無言と言う答えが返ってきた。
「誰もねぇのかよーーーー!!」
スノウの虚しい叫びが響いてから、全員の姿が下にあった森に消えていった。
ほぼ死を覚悟していたスノウ達は何故か今地面に倒れているだけで、生きていることに不思議がっていた。
「なんか…生きてるみたいですね。」
ヒューズは立ち上がって服の汚れをパンパンと落とす。
「流石に焦った…。」
アレンが同じく立ち上がり、苦笑いする。
「今の攻撃誰だったんだ?」
と言うスノウだが、やはりどこかでさっきの魔法を見たことがあった。
「とりあえず追ってが来る前にこの場から逃げるぞ。」
ヨゼルを先頭にスノウ達は急いで森の中に逃走した。
スノウ達が逃げた先は森が開けており、小さくキレイな川が流れていた。その近くには木で建てている一軒の店があった。
「こんなところに店が…。」
アレンが呟く。
「ここに看板がありますよ。」
ヒューズは近くにあった看板を見た。そこには『エスポワール』という字が丸文字で可愛らしく書いていた。
「ここってお前が言っていたレストランか?」
スノウが横にいるヨゼルに尋ねると、ヨゼルはバウと一吠えしてからレストランに歩いていく。3人はとりあえずヨゼルの後を付いて行くことにした。
レストラン『エスポワール』のドアを開けると、チリンチリンと人が入って来たことを伝える鈴が鳴る。
「おっ、無事に逃げれたようだね。」
その音に気が付いたらしく、奥の厨房から女がこちらに言ってきた。だがまだ姿は見えていない。
「やっぱりさっきの攻撃はお前だったか。」
ヨゼルは女と話しながら店の中に入っていく。スノウ達も中に入っていく。
「スープの仕込みしてたらなんか上空がうるさいから覗いてみるとあなた達がピンチだったんだもん。そりゃ助けるわよ。」
「ありがとうな。」
「どう致しまして。あ、ちょっと待ってね、このスープの仕込み終わったら行くから。」
女の声がどこかで聴いたことがあるなと思いながらもスノウ達は待つことにした。そして数分後、仕込みを終えた女が奥から出てきた。その姿を見た瞬間、スノウは唖然とした。そして、ある名前を呟いた。
「エアル…?」
赤い瞳にオレンジのショートヘアーで、どこからどう見てもエアルだった。ヒューズとアレンも唖然としているがヨゼルはどういう状況か理解出来ていない。それよりも、一番驚いたのはエアルらしき女の行動だった。女はスノウ達以上に驚いた顔になったかと思うと泣き顔に変わっていく。そしてポロポロと涙を流しながらカウンターから出てきて、スノウに抱き付いた。
「ちょっ!?あの…!えっ…!?」
女子、まして自分が知っている人間にそっくりな女子に泣かれながら抱き付かれたスノウは完全にパニック状態である。
「判ってる…あなたは私が知っているスノウじゃないって…。でも…もう…少しだけ…こうさせて…。」
泣き声となっていくにつれ抱き付く力が強くなっていった。スノウはまだ何がなんだか判らないが、そっと女を包み込んだ。
数分泣いた女は落ち着いたらしく、スノウにゴメンね謝りつつ涙を拭いた。そしてスノウ達にカウンター席に座るよう促す。スノウ達は素直にカウンター席に座った。
「さっきはゴメンね~、いきなり泣かれたら誰だって困るよね~。」
さっきとは打って変わって、とても陽気な調子で謝りながら3人の前に飲み物を置いた。床にいるヨゼルには犬皿で出した。
「いや、別にいいんだけど…それよりお前…エアルだよな?」
スノウが尋ねると、女はそうだよっと笑顔で答えた。
「私は『エアル•ファベラ』。このレストランを経営している普通の国民よ。」
「僕は…」
「知ってるよ。あなたアレンでしょ?」
アレンが自己紹介しようとすると何故かファベラに当てられ驚いた。
「な、何で知ってるんですか?」
「だって『ソルージュ』にそっくりなんだもん。」
「ソルージュ?それは『イスラ』の名字だろ。」
ヨゼルが突然反応した。
「あれ?ヨゼルは会ったことなかったっけ?イスラさんの弟だよ。」
「あの女に弟がいたのか。」
「あの~、説明お願いできますか?」
アレンは理解不能なので説明を求めた。
「あ~ゴメンゴメン。簡単に言えばこっちのアレンに会ったことがあるの。こっちのアレンの名前は『アレン•ソルージュ』。女々しく頼りのない男よ。」
「トレイタではないのですか?」
「戦い方すら知らない善良国民よ。でもね、アレンの姉『イスラ•ソルージュ』はこのオリジン領土班の『指揮官』なの。」
「へぇ、こっちでもちゃんと姉弟なんですね。」
ヒューズが言うとファベラがそうなの!っとヒューズを一度見てからアレンに戻る。アレンはコクッと頷いた。
「でも僕の方の姉は戦いは出来ませんが開発に関してはスゴいですよ。」
「へぇ~なんか同じ人物なのに違うって面白~い!」
ファベラが笑っていると、ヒューズが尋ねた。
「あの、一ついいですか。さっき会話に出てきた『指揮官』とは何なのですか?」
「あっ、それは…あ、えっと…どちら様?」
ファベラは説明しようとしたが、ヒューズの名前が判らず首を傾げた。
「ヒューズ•クォーツです。」
ヒューズが簡単に自己紹介する。ファベラは判ったわと言ってから話を戻した。
「トレイタはこの国中にいるから領土別に分けられて行動しているの。それで、ここはオリジンの領土だからオリジン領土班が主に動いているわ。そのオリジン領土班のトップを指揮官って言うの。」
「ではこっちの僕の姉はオリジン領土班のトップってことですか?」
「そういうこと。」
「成る程、ご説明ありがとうござまいます。」
「どう致しまして。」
話が一段落し、一瞬沈黙が起きた後、スノウが口を開き気になっていた事を尋ねた。
「なぁ、こっちの俺はどこにいるんだ?」
ファベラはその質問を聴いた途端、顔が曇って下を向いた。そして、簡単に答えた。
「殺されたの…魔戦天使団に…。」
辺りの空気が重くなるのが判った。ファベラは顔を上げてから何があったか話し始めた。
「こっちのスノウの名前は『スノウ•ホワイト』。優秀なトレイタの戦闘員だったの。だけど一年前、ここから森を抜けて東に向かったところにあるオリジン領土首都『ジマリハ』で抗争が起して、それに私巻き込まれちゃったの。私は抗争の中で魔戦天使団にトレイタと間違えられて殺されそうになった…その時偶然スノウが居合わせて…私をかばって……」
話がここで途切れた。そしてファベラはハハハと笑って、
「ゴメン、やっぱこんな空気になるよね。」
と、明るい感じで謝った。
「いや、俺が聞いたんだから気にすることはねぇむしろ話してくれてありがとよ。」
スノウが何か強がっているファベラに優しく笑って礼を言った。その笑顔を見てファベラも安心したのか、笑顔で答えた。その時、ぐぅ~と情けない音が床に寝ていたヨゼルから聞こえてきた。
「お前、よくこの雰囲気で鳴らせたな…。」
スノウがため息をついて呆れる。
「うるさいな。こちらかと、朝飯食べる前にお前等を助けろと駆り出されたんだぞ。」
ヨゼルがお前等のせいだと反論する。
「そういえば私達も朝から何も食べていませんね~。」
ヒューズが自分の腹を撫でる。
「でもここはレストランです。」
アレンが微笑みながらファベラを見た。
「というわけで、よろしく頼むぜオーナー。」
スノウがニヤッと笑いかける。ファベラは何を求められているか理解すると、
「かしこまりました。」
と、笑って答えた。
ファベラの絶品料理を堪能したスノウ達は食後のデザートのパフェを食べながらアースのエアルのことで盛り上がっていた。
「へぇ~、じゃあそっちの私は女王様なんだ~。」
「そうさ。家庭的なことは全部周りの執事やメイドがしてきたから料理は域を越えてるんだ。」
「へぇ~、一回食べてみたいな~。」
「それだけは止めときな。まだ人生を楽しみたいなら。」
2人が楽しく話しているのを見て、他の2人と1匹は顔を見合わせてクスッと笑った。
「さて、飯も食ったことだしそろそろ行くぞ。」
ヨゼルは立ち上がってドアに向かう。
「もう行くの?もう少し休みたかったな。」
そうぼやきながらもアレンはカウンター席から立って背伸びをする。
「そう言えばヨゼル、どこに行くの?」
ファベラはスノウ達が何故このオリジン領土に来たのか目的を聞いていなかった。
「オリジンに会ってくる。」
ヨゼルが答えると、
「えっ!今の時期に行くの?流石に『あの子』でもヤバいよ…。」
と、ファベラが心配した顔を作る。
「あいつは元からそんなに計画に対して無関心だったと聞いている。キトリスが倒れた今、うまく説得してこっち側に付いてもらうんだ。」
それを聞いたファベラは首を傾げた。
「あれ?もしかしてヨゼル知らないの?」
「ん?何のことだ?」
「数時間前、美の神ヴィーナスが死んだって今大騒ぎなのよ。」
「ヴィーナスが死んだだと!?」
全く知らなかったヨゼルはとても驚いた。ヨゼルだけではなくスノウ達も驚いていた。
「確かレビィさん達が交渉に行ったはず…。」
アレンが呟く。
「じゃあレビィ達はヴィーナスを殺したのか?」
スノウが全体に尋ねるが、返答は返ってこず、代わりにファベラから提案が返ってきた。
「じゃあさ、私イスラさんに話し通しておくから、オリジンとの交渉がうまくいったら基地に来てよ。そしたら何か判るかも……どうかな?」
「確かクトゥリアも一緒だったな……なら基地に帰っている確率は高い……うん、悪かねぇ。」
ブツブツと独り言を言ってからヨゼルはファベラの提案に賛成した。
「じゃあ私はこのまま基地に向かうね。」
「判った。俺らとりあえずオリジンのとこに向かうぞ。」
こうして、ファベラはこのオリジン領土にあるトレイタの隠れ基地へ、スノウ達は計画通りオリジンがいる首都『ジマリハ』の教会へ向かった。
エスポワールが建っている森を抜け、東に走って行くと、オリジン領土首都『ジマリハ』に到着した。町の中は神が2人死んだことによる話や記事やニュースで溢れており、町全体が少々混乱状態な感じであった。そんな状態であるから住人はスノウ達が侵入したことに気が付いておらず、スノウ達はすんなりと教会にたどり着いた。教会の前には人が群がっていて、必死に閉まっている教会の扉に訴えかけていた。
「どうしたんだ?」
スノウが首を傾げる。
「おそらくキトリスとヴィーナスを信仰していた信者どもだ。自分達がすがっていた神が死んでしまってどうしたらいいか判らないんだろ。」
ヨゼルが冷静に分析する。
「ここいう時、宗教は面倒ですね。」
ヒューズはため息をついて呆れる。
「これじゃあ入るのは難しそうだね。」
アレンが言う。
「仕方がない、裏に回るぞ。」
ヨゼルが移動を始める。
「裏から入れるんですか?」
ヒューズが尋ねる。
「忍び込む。」
これを聞いた3人は苦笑いした。
裏に回ったスノウ達は茂みに隠れ様子を伺う
「警備は2人か…。」
スノウがどうしようか悩んでいたら、いきなり警備の2人がパタッと同時に倒れた。
(何で…!?)
スノウが驚きながら隣を見ると、アレンが拳銃を構えていた。
「もしかして、お前がやったのか?」
スノウが尋ねるとアレンがウインクをして答えた。
「どうやったんですか?銃声も聞こえなかったですよ。」
もう隠れる意味がないので、ヒューズが立ち上がりながら尋ねる。
「銃変換でハンドガンを『スナイパーライフル』にして撃ったんだ。銃声音は最小限に抑えてね。」
「やり方は判ったがスナイパーライフルならスコープはどこにあるんだ?」
スノウも立ち上がり、今浮かんだ疑問を聞いた。
「スコープは僕の目だよ。」
「目!?そんなこと出来るのかよ!」
「これが銃魔法の力だよ。」
「んなことより、気が付かれる前にさっさと行くぞ。」
ヨゼルが盛り上がっている3人をほって裏口に向かう。3人は急いでヨゼルの後を追った。
中に入ったスノウ達は正門から入った最初の部屋に到着した。正門の外からは崇拝するものがなくなった信者達の声が聞こえてくる。中は誰もいず外と違って静かであった。
「誰もいないな…。」
スノウが呟いたその時、
【あっ!やっと入って来た!】
頭の中に突然子供の声が響いた。いや、スノウだけでなくヨゼル、ヒューズ、アレンにも同じ声が聞こえていた。
「気が付いていたのか。」
ヨゼルが部屋全体に響く声で訊く。
【そりゃそうだよ。この近くで感じる魔力の中に知らない魔力が3つ、こっちに向かってくるんだもん。】
子供の声が答えてた。
「中で働いている人はどこにいるのですか?」
次はヒューズが訊いた。
【外でワーワー言っている人達を止めに行ってる。だから今この教会には僕しかいないんだ。ねぇ、1人は寂しいから僕の部屋に遊びに来てよ!】
次の瞬間、教会の奥に行くための扉が独りでに開いた。それと同時にテレパシーも途絶えた。
「どうする?ああ言っていたけど。」
アレンがヨゼルに尋ねる。
「願ったり叶ったりだろ。俺らはオリジンに会いに来たんだから。」
「てか、さっきの声…子供だったぞ。ホントにオリジンなのか?」
スノウは起源の神だと聞いていたので、キトリスのような老人を想像していたのだが、とても子供のような声だったので少々戸惑っている。
「会えば分かる。行くぞ。」
ヨゼル達は開いた扉の中に向かった。
扉をくぐり、赤い絨毯が敷いてある長い廊下を一番奥まで進んで突き当たりの部屋に入った。そこは遊園地などにあるキッズコーナーのような雰囲気で、可愛らしいぬいぐるみや格好いいロボットなどが置いてあった。
「すげぇ部屋だな…。」
スノウは苦笑いしつつ部屋を探索していると、何かに見られている感覚がした。視線を感じる方向を向くと、可愛いぬいぐるみの山があった。その山をじーっと見てみると、山の頂上だけがぬいぐるみではなく人だと発覚した。
「ようこそ!僕の部屋へ!」
ぬいぐるみの頂上が取れ、小学三年ぐらいの身長で白銀色の髪に愛らしいくりくりした金色の瞳を持った子供が元気よく飛び出してきた。
「ま、まさか…お前がオリジンなの…か?」
スノウが引きつりながら尋ねると、
「いかにも!僕は『起源の神オリジン』だ!」
子供がエヘンと威張る格好をして答えた。
「マジかよ…。」
あまりにも予想外過ぎて、スノウは唖然とする以外選択がなかった。
「こんな子供が神…。」
アレンも唖然とした面持ちでオリジンを見つめる。
「こんなとは失礼な!」
オリジンが怒るがどこが可愛らしい。
「そうだ、こんななりでも四大神の中で一番の魔力を持ってんだぞ。ガチで闘ったら瞬殺だ。」
ヨゼルが簡単に説明するとスノウとアレンはまた驚いた。
「ワンちゃんが喋った~!」
オリジンが喋るヨゼルに興味を持ち近付いてよしよしと撫でる。そして撫でたままオリジンが尋ねた。
「ねぇワンちゃん、僕に何か用なの?」
「ああ。お前、魔力吸収計画にあまり賛成していないと聞いているが本当か?」
ヨゼルが質問すると、オリジンは撫でるのを止めて答えた。
「だって僕には関係ないんだもん。」
「関係ない?あなたもエデン人なら魔力がなくなるのは重大なことではないのですか?」
ヒューズが尋ねる。
「僕はちゃんと僕の魔力を持ってるもん。君達アース人のようにね。」
オリジンがアースの3人を順々に見て笑う。
「てことは、お前はエデン人じゃなくてアース人なのか?」
スノウが訊くと、オリジンはふるふると首を横に振った。
「僕は起源…つまり始まりの神。『始まり』というのは『ゼロ』ということ。人や自然や魔力の全てのゼロを司るのが僕だ。だから僕と同じ魔力を持っている者はアースにもエデンにもいないんだ。」
「さらっと言ったけど…かなりの事言ってるよね…。」
アレンが苦笑いする。
「神の中ではオリジンがトップの力を持っている。でもこんなナリだから統率力がない。だから統率力を持つゼウスが神の王と言われているんだ。」
ヨゼルは補足説明をしてから話を本題に戻した。
「ともかく、俺らはお前の力が必要なんだ。」
「僕の力を何に使うの?」
「ゼウスと戦うのに使う。」
それを聞いたオリジンは突然嫌悪な顔をした。
「もしかしてワンちゃん……トレイタ?」
「……そうだ。」
「……ヴィーナス姉やキトリス爺を殺した……!」
オリジンの魔力が怒りと比例して徐々に高くなっていく。それにより、周りのオモチャなどがカタカタと揺れる。
「僕はワンちゃんの言った通り計画には無関心だよ。でも、だからといってゼウス兄達の仲間でない訳じゃない。ヴィーナス姉やキトリス爺を殺しておいて僕にゼウス兄を倒すために協力しろと?バカにするな!」
魔力はさらに高くなり地響きが発生する。しかしヨゼルは怯むことなく交渉にかかった。
「俺達トレイタはキトリスもヴィーナスも殺していない。キトリスを殺したのは革命軍というアース人達だ。だけどここにいる3人の仲間ではない。むしろ敵対関係の奴等の仕業だ。ヴィーナスは確かにトレイタは関わっているがクトゥリアの奴が殺すまで至るとは思えない。俺らトレイタはお前らを殺す気は一切ないからな。でも殺されたとなれば犯人はさっき言った革命軍というアース人達か…お前ら側かということだ。革命軍の奴等はキトリス殺害後誰も姿を見ていないからこいつらではない。てことはお前ら側にヴィーナスを殺した者がいるということだ。だがヴィーナスも神、半端な奴では殺せるはずがない。つまり、ヴィーナスの神の力と近い力を持つ者の犯行ってわけだ。それは他の四大神の可能性が高い。キトリスは死んでいて、お前でもない…ならもうゼウスしかいないんだ。」
「……ゼウス兄が裏切ったってこと?」
「裏切ったというよりあいつは頭ん中で魔力吸収計画以外に何か企んでいるはずだ。お前らはそれの駒に過ぎないんだろう。」
「そんなこと信じられるか!」
「まだ俺だって仮説の段階、信じられなくて当然だ。でももし、この仮説が当たったなら…その時は協力してくれないか?お前も駒扱いされるのは嫌だろ。」
ここで話は途切れ、オリジンは魔力を元に戻した。しかし、オリジンからは返答は返ってこず、黙ったままであった。
「……要請はした。後はお前が協力してくれることを信じている。」
ヨゼルはそう言い残して部屋を後にした。
「俺達からも待ってるからな。」
スノウ達もヨゼルを追うように部屋を後にした。
「協力してくれますかね?」
部屋の外に出たヒューズがヨゼルに尋ねる。
「信じるしかねぇな。」
ヨゼルもどこか不安そうであった。
「とりあえず今からはお前らトレイタの基地に行くんだろ?」
スノウが確認のため尋ねるとヨゼルが頷いた。
「基地はエスポワールがあった森の奥だ。行くぞ。」
ヨゼル達は次なる目的地『オリジン領土班基地』へと急いだ。
ジマリハから森へ戻ったスノウ達は森の奥の方に入っていった。そして樹齢がかなり上だろう大木の前に立っていた。
「ここに入口があんのか?」
「どうだろう?」
スノウとアレンが話している時、ヨゼルは大木の根元で何かを探していた。そして簡単には見つかりそうにない隙間にくぼみを発見し、そこに右前足を入れた。すると、待っている3人の前の大木に扉が出現した。これを見た3人はピュアに驚いた。
「早く入るぞ。魔戦天使団に見られたら最悪だからな。」
ヨゼル達は急いで扉の中に入り、最後のヒューズが入った数秒後に扉は自動的に消えた。
中に入ると、土で出来た通路がアリの巣のように入り組んであった。その通路を間違えることなく進んでいき、2人の見張りが立っている近代的なドアに到着した。
「イスラ隊長がメインルームで待っている。」
1人の見張りが話しかけてきて、もう1人がドアの近くのテンキーにパスワードを入力してドアを開けた。そして見張りが言っていたメインルームに向かった。
メインルームに入ると、大きなモニターの前にエアル•ファベラと赤髪でピンク色の瞳、スタイル抜群のエデンの『イスラ•ソルージュ』が待っていた。
「来たか、忌々しいフィリアの犬め。」
ソルージュが嫌悪感丸出しの睨みをヨゼルに浴びせる。
「お前はいつになっても気に食わない女だな。」
ヨゼルも嫌悪がある睨みで返す。ソルージュとヨゼルが睨み合っているのを見て、スノウがファベラに小声で訊く。
「なぁ、これはどういう状況だ?」
「えっとね、ヨゼルはキトリス領土班の隊長ってのは知ってるよね?」
「そうだったのか!?」
スノウは初耳で驚いた。
「あっ、聞いてなかったんだ。まぁ何でもいいんだけどね。でね、その隊長に任命したのがフィリアさんだったんだけど、イスラさんは犬に隊長を託すとは有り得ないって反対したままなの。」
「なるほど、つまり納得してねぇってことか。」
「そういうこと。 」
2人が話している間もソルージュとヨゼルは睨み合っており、拉致があかないのでファベラが止めに入ってようやく治まった。イスラは自分の心を落ち着かしてから部下に映せと命令した。すると、大きなモニターにウェルサイトが映し出された。
「久しいな、レビィ。」
「ホントに久し振りだなイスラ。で、何か用か?」
「いや、私ではなくこのアホ犬が用があるようだ。」
ソルージュは隣にいるヨゼルをもう一度睨んでから一歩下がった。
「クトゥリア、とりあえず確認したいことがある。お前らがヴィーナスを殺したのか?」
「んなわけねぇだろ。完全な濡れ衣さ。殺したのはおそらく……」
「ゼウス…だな。」
「…ああ。」
ここでソルージュが会話に加わる。
「しかし、えらく勝手にこの国を混乱させてくれたな。」
ソルージュがはぁと呆れる。
「まぁなんと言うか、勢い…かな。アースの奴等の騒動に便乗したみたいな。」
ウェルサイトが少し頬をかきながら笑うと、
「こんな言い方悪いけど、ぶっちゃけ私達は巻き込まれた方だからね。」
画面の横からエアルがひょこっと現れた。
「エアル!無事だったか!」
エアルの姿を見たスノウがヨゼルを突き飛ばして画面に現れて喜んだ。
「スノウ!良かった~そっちも無事そうだね。」
エアルもスノウを姿を見て安心した顔をする。
「……画面をもっと引け。」
モニターの前がゴチャゴチャしそうなので、イスラは部下に画面を引くように命令した。ウェルサイトも同じように画面を引くように命令した。
「とりあえず、全員無事……ではないですね。サテラはどうしました?」
ヒューズが画面越しのレビィに尋ねる。
「サテラちゃんは…サナに連れて行かれた。理由は判らないけど…。」
「サナに?大丈夫なのですか?」
「大丈夫、サナだもん。」
「あっ!私がいる!」
2人の会話を断ち切り、エアルはモニターに映っているもう1人の自分を見つけて驚いた。ファベラも同じく驚いていた。
「もしかしてエデン人の私?」
「そうだよ!私エアル•ファベラ!あなたは?」
「私エアル•ダイヤモンド!よろしくね!」
ダブルエアルのハイテンションをソルージュはうるさい!と一喝して止めた。ダブルエアルはごめんなさいとハモってからしょんぼりした。そして、一息入れてからレビィに話しかけた。
「アースのクトゥリアよ。お前達は何故こちらに来た?」
「仲間を連れ戻しに来たんです。」
レビィはハッキリを答えた。
「仲間とは誰のことだ?」
「魔戦天使団副隊長サナ•クリスタルです。」
「…?あの『偽天使』をだと?」
ソルージュが口にした『偽天使』という単語にアースメンバーが反応した。
「偽天使ってどういうことだよ?あいつは生まれつき天使じゃねぇのか?」
スノウが尋ねるとソルージュは少しだけ振り向いてそうだと頷いた。
「奴も生まれた時は私達と同じ普通の人間だったのだ。だが10年前に天使魔法の魔力を蓄えたこのエデン特有の石『エルクワタストーン』を装備し『偽りの天使』となって魔戦天使団に入団した。そして奴は天才的な頭脳でみるみると昇格し、今の地位となった。」
「何でそんなこと知っているんですか?」
レビィが尋ねる。
「言っただろ、奴は天才的な頭脳を持っていると。だから奴の名はこの国でかなり知られている。三歳で大人でも何時間もかかる解読困難の本を五分で解いたと聞いたことがある。」
「マジかよあいつ…。」
スノウが苦笑いする。
「その話からすると、サナが魔戦天使団にいるのは何か理由がありそうね。」
ミリアがまとめるとレビィがそれに頷いて見せた。
「ならついでにもう一つ訊きたい。キトリスを殺したアース人達とは仲間ではないのだな?」
ソルージュの質問にレビィは大きく首を振って否定した。
「どうでもいいけどさ、エデンのお前の姉ちゃんかなり男勝りだな。」
「僕に言われてもどうにもならないよ…。」
スノウとアレンがヒソヒソ声で話していると、ソルージュが気が付き何だとキッと睨んできた。2人は何でもありませんと目をそらして黙り込んだ。
「さて、アース人達の来た理由は判った。今からは今後の話をしよう。クトゥリア。」
ソルージュがウェルサイトを呼んだ。だが、ウェルサイトは黙ったままであった。
「クトゥリア?」
ソルージュが再度名前を呼ぶとウェルサイトが、
「……違う。」
という一言を言ってから続けた。
「オレはクトゥリアじゃない。ウェルサイトだ。」
これを聞いたソルージュははぁと呆れたため息をついた。
「お前、まだその名を言っているのか。」
「うるさい、オレの勝手だろ。」
「お前の勝手に付き合っているほどこちらも暇ではない。」
「………!」
ウェルサイトは無言のまま部屋を出て行った。
「ウェルサイト!」
レビィが追いかけようしたが、ソルージュに放っておけと言われ追うので止めた。
「やはりウェルサイトは本名ではありませんでしたか。」
ヒューズがウェルサイトの行動を見て確信した。
「そうだ。あいつの本名は『レビィ•クトゥリア』、ウェルサイトではない。」
ヨゼルが頷いて見せる。
「ねぇ、『クトゥリア』と『ウェルサイト』ってどういう意味なの?」
ミリアの質問にソルージュが答えた。
「両方とも感情の神の名だ。クトゥリアが『喜び』、ウェルサイトが『悲しみ』を司る神だと言われている。」
「言われている?てことはその神様はこっちでも存在してないってこと?」
エアルが尋ねると、ソルージュは頷いてから続けた。
「神の世界だと言われていても語られている全ての神が存在しているわけでない。クトゥリアとウェルサイトはその存在しない神だ。あいつはその神の名、クトゥリアという名字であったが、自分の母のフィリアが死んだ後、突然自分をウェルサイトと名乗り始めたのだ。」
「理由は判らないんですか?」
レビィが訊くとソルージュは頷いた。
「訊いても教えてくれねぇんだ。」
ヨゼルが小さくため息をつく。レビィはそうですかと言ってからウェルサイトが出て行った扉をチラリと見た。
「さて、あいつの話は終わりだ。さっき言った通り今後の行動について話そう。」
ソルージュがそう言った時だった。通信システムに新たな通信が加わり、とても見たことがある人物が映し出された。その人物を見た瞬間、アースメンバー全員が声を揃えて名前を叫んだ。
「『バージェス』!」
そう、その人物とは金の短髪に金の瞳、頬には『メ』の形をした傷があるバージェスだった。
「残念だアース人諸君、俺はキサマらが知っているバージェスではない。俺の名は『バージェス•ドラグニル』、ゼウス領土班隊長だ。」
「エデンの…バージェス?」
ミリアが確認のために訊くとドラグニルがそうだと言った。
「しかも隊長クラス…。」
スノウが言う。
「キサマら知っているバージェスは…『こっち』だろ?」
ドラグニルがおいと画面外に誰かを呼んだ。すると、同じ姿をした人物が現れた。そしてまたアースメンバーが声を揃えて名前を叫んだ。
「バージェス!?」
そう、現れたのはアース人のバージェスだった。証拠として取り巻きに桜色の髪のクラウドと黒髪眼鏡のレインがいた。
「久し振りだなお前ら。」
バージェスがニヤッと笑う。
「もう!心配してたのよ!」
ミリアがプンプンと怒る。
「バージェ……いや、今はドラグニルと言った方が良いか…ドラグニルよ、今から今後の行動について話す。何か意見はないか?」
ソルージュが腕を組んでからドラグニルに意見を求めた。
「簡単なこと。神が2人消え、この国は大混乱だ。この混乱を利用しない手はないだろ。」
「『中央』に襲撃するのか?」
ヨゼルが言う。
「今しなくていつするんだ。俺らが望んでいた一世一代のチャンスだろ。」
ドラグニルがニヤリと笑う。
「でもウェルサイトは出来れば神達とは争いたくないって……」
レビィが言い掛けると、
「この状況で争いを避けれると思っているのかアースレビィ。神を俺らに殺されたと思っている以上、向こうは本気でこっちを殺そうに来るだろう。だったらこっちも本気で行かねぇと。みすみす殺される気なぞないからな。」
ドラグニルが遮り、キッと睨んだ。レビィは正論だったから言い返すことが出来なかった。
「……奴らと戦うとしても唐突過ぎて準備が出来ていない。」
ソルージュが言うと、
「3日で済ませろ。それ以上は奴等の方の準備が整って攻めずらくなるからな。」
ドラグニルがピッとソルージュに指を指す。
「……判った、何とかしてみよう。」
ソルージュが部下にすぐに戦闘準備をしろと命令する。部下は敬礼してから部屋を出て行った。
「さて、こちらはいつでも攻撃が出来るようになっているが最終確認をするから切らしてもらうぞ。」
そう言って、ドラグニルは通信を切った。
「はぁ…あいつが関わると嵐が通過したようだ。」
ヨゼルが少し疲れた顔をする。
「……勢いで奴に賛同してしまったが、冷静に考えるともう私達には争いしか選択がないようだな。」
そう呟くソルージュの顔はどこか腑に落ちていない感じだった。
「……そうだな。」
ヨゼルは呟き返してから続ける。
「さて、俺は自分の基地に戻る。俺は納得していないが3日で準備しなければならないからな。」
「そうか、ならさっさと帰れ。私の基地が犬臭くなる。」
「ああそうですか。たく、口の減らない女だ。」
ヨゼルはガルルルと威嚇してからメインルームから出て行った。
「すまないなアース人達よ。私達エデン人で決めてしまったな。」
ソルージュがモニターに映るレビィ達と自分の後ろにいるスノウ達に謝る。
「いえ、仮に会議で戦わないとなったとしても、私達は私達の目的でセントラルに襲撃していましたので。だから目的は違えど一緒に戦えるなら心強いです。」
レビィがだから気にしないで下さいとニコッと笑った。
「…そうか、そう言ってもらうとこちらも楽になる。あと、この作戦のことをクトゥリアに伝えてほしい。」
「判りました。」
「では、私も準備をしたいから切らしてもらうぞ。3日あるからお前達は休んでいるといい。」
「はい。」
ここで通信がプツンと切れた。
「じゃあ、私はお店に戻るね。」
ファベラは全員にバイバイと手を振ってメインルームを後にした。
「さて、部下と同じ部屋であれば寝床はあるぞ。」
ソルージュがクルッとスノウ達の方を見る。
「構いませんよ。」
ヒューズが承諾する。
「そうか、なら部下に案内させよう。」
ソルージュ部下を呼んでスノウ達を案内させた。その時、
「ちょっと待ってくれ。」
最後尾にいたアレンをソルージュが呼び止めた。
「何でしょうか?」
アレンが振り返って尋ねる。
「お前、私の弟と同じ姿をしているようだな。」
「会ってはおりませんがファベラさんによるとそうらしいです。」
「そうか……」
ソルージュは話を止め、ジッとアレンを見つめる。アレンは首を少し傾げてから尋ねた。
「あの…もしかして弟さんとうまくいってないんですか?」
「いや、そうではない。このトレイタに入ってから会っていないんだ。もう七年も経つかだろう。だから、私の弟もこれくらい大きくなっているのだろうなと思っただけだ。」
「そうだったんですか。」
「お前、名字は何という?」
「ルビーです。」
「ルビー、弟の顔を見させてくれてありがとう。」
ソルージュはアレンの頭をポンと叩いてから先にメインルームを出て行った。アレンはフッと小さく微笑んでからメインルームを後にした。
キトリス領土首都ベガスから数キロ離れた森の中に革命軍の4人はいた。
「……通信は終わったようですね。」
どういう魔法か不明だがイルファの魔法でさっきの通信を聴いていたようだ。
「3日後か…。」
フォーグが平たい岩の上で寝ころびながら黒石のデビルエルクワタをイジっている。
「その日に俺らもセントラルに?」
カギスタが尋ねる。
「当然だ。混戦に紛れて戻る。」
フォーグが体を起き上がらし、持っていたデビルエルクワタをぽーんとカルマの影に投げた。するとなんと、カルマの影の中にデビルエルクワタが入ったのだ。
「まさかお前の影に収納能力があったとはな。」
カギスタが隣に座っているカルマの頭をペチペチと叩く。
「[シャドーエリア]って技だよ。」
カルマは止めろと睨みで訴えながら説明する。
「でも扉はどうるすんですか?かなりの天使魔法と神魔法の魔力が必要なのですよ。」
イルファが尋ねる。
「大丈夫だ、策はある。」
フォーグがニヤリと笑う。
「お前ら、3日後に備えておけ。」
フォーグが命令すると、3人は了解と答えた。
神の国カーラーンの中央部、名をセントラル。そこに建っている研究所『サイエン』。その中の研究部屋にサナはいた。
「研究熱心な副隊長だ。」
サナがいる部屋にハールロッドが入って来た。
「うっさいわね、私が何しようが勝手でしょ。」
サナが試験管を振りながら言う。
「そりゃそうだが。」
「あんたは?信者達の暴走止めなくていいの?」
「俺がいなくても大丈夫だろ。」
「つまりサボリね。」
「………トレイタの奴らが動かねぇのが気になるんだが。」
ハールロッドが話を変えた。聴いたサナは少し試験管を振る手を止めて、何かを考えてからまた研究に戻ってさらっと言った。
「……3日後ってとこかな。」
「3日後?」
ハールロッドが首を傾げる。
「今の私達は信者達を抑えることで手一杯。だからセントラルの兵力は削がれている状態になってるじゃん。私が向こうの立場ならこの状況を利用しない手はない。で、こちらがまだゴタゴタしていて、戦闘準備が最短で終わって、色々あったら3日かなって思っただけ。」
「成る程、なら兵力をセントラルになんぼか戻すか。」
「私のこの予想を信じるならね。」
「お前の予想は当たるからな~……よし!兵力戻してくる。」
ハールロッドはバタバタと部屋を出て行った。
「ご勝手に。」
ハールロッドが出て行ったドアに向かってサナは呟いてから研究を止めて自分の部屋へ戻った。
部屋に戻ると、ベッドの上でサテラがスースーと眠っていた。サナはベッドの縁に座り、サテラの頬を軽く触って、
「サテラ、あなたは私が守るから。」
と、呟いた。
エ「今日は後書きはないよ~♪え?何でかって?書くことが一切思い付かなかったんだって♪じゃあみんな~♪また次回をお楽しみに~♪」
レ「ホントに終わっちゃったよ!?」