59話 アース人討伐作戦(10)
ス「龍空deラジオー。て、もうこのタイトル言うのよくねぇか?ちょい恥ずかしいし。」
シ「どっちでもいいんじゃねぇ。」
ス「だよな!じゃあ次回から言わない方針で!」
ア「えっと…終わったかな。では今回の本題は、前話で皆の成績を発表したんだけど、その中にこの小説内オリジナルの『魔法学』がなかったから、今日はその魔法学の成績を発表します。」
ヒ「魔法学については前にサナが後書きで説明したと思うので探してくださいね。」
シ「教えはしないんだ…。」
ア「てなわけで、早速発表します!えー、『ヒューズが5』、『アレンが4』、『スノウが3』で『シャインも3』のようです。」
ヒ「へぇ~、スノウとシャインが同じ成績ですか。」
シ「ま、俺の成績は正式に言うと3.5だからスノウより上だからな。」
ス「あぁ!なら俺は3.9だ!」
シ「あぁ!なら俺は3.99だ!」
ス「なら俺は3.999だ!」
シ「3.9999!」
ス「3.99999!」
シ「3.999999!」
ア「えー、壮絶な小数点争いが繰り広げられていますが、時間もないので本編をどうぞ。」
革命軍がキトリスの教会に殴り込みに行く数時間前のヴィーナス領土首都『ポプラ』。レビィ達はやっと宿屋を見つけ、部屋で休んでいた。
「さてと、俺らはこれからどうするんだ?」
スノウがドカッとベッドに座りながら特に誰と特定せずに全体に尋ねる。
「ウェルサイトがいない限り、私達は動くことができませんね。」
ドアの側で立っているヒューズが代表で答える。
「ウェルサイトは一体何をしているだろ?」
スノウが座っているベッドと違うベッドに座っているエアルが近くに立っていたミリアに尋ねるが、当たり前でミリアは首を横に振った。
「とりあえず、ウェルサイトさんが来るまで休んどいていいんじゃない?」
アレンの提案に全員賛成し、ひとまず自由な形で休憩をとることにした。
レビィはホテルのロビーの窓から外を1人眺めていた。その時背後から、
「1人で何してんの?」
ミリアが声をかけてきた。レビィはちょっとねと何か心配している顔で答えてからまた外の方を見た。
「シャンが心配?」
ミリアは質問しながらレビィの隣に立ち、同じように外を眺める。図星だったレビィはすぐに当てられたことに少し驚いてからうんと認めた。
「まぁ心配もするよね~。シャンって仲間のためなるとすぐ無茶するし。」
ミリアが笑って話すが、レビィの顔はうかないままだった。そんな顔のままレビィは尋ねた。
「ミリアは小さい時からシャインを知っているんだよね?小さい時のシャインってどんなんだったの?」
尋ねられたミリアは笑って答えた。
「今と変わらないよ。あまり感情を出さないし、自分から人に寄ろうとしないのに困っている人はほっとけない。でも、一人で何でも背負い込んで人を頼ろうとしない人だったよ。」
「そうだったんだ。」
ここで少し無言の時間が流れからミリアがクスクスと笑いながら尋ねた。
「どうしたの急に?」
「い、いや、ちょっと気になっただけ!」
レビィは顔を赤らめる。
「ふ~ん…。」
ミリアがニヤニヤして赤いレビィの顔を覗く。レビィは何か恥ずかしくなりプイッと顔を背いた。ミリアはその反応を見て更に笑った。
「じゃあ次は私から聞いていい?」
笑い終えたミリアはレビィの方を見て尋ねる。
「ホントのとこ、シャンのことどう思っているの?」
「えっ!?」
予想外の質問にレビィがアワアワする。
「シャンのこと……好きなの?」
二人の間に沈黙が流れる。そしてレビィは逆に尋ねた。
「ミリアは……シャインのことどう思っ…」
「大好きだよ。今も昔もずっと。」
ミリアが食いぎみで答えたのでレビィはビックリしたが、ハッキリと自分の気持ちが言えるのが少し羨ましく思った。
「私は小学2年の時にシャンのいる学校に転校して、シャンに初めて会った時に一目惚れしたの。」
「そうなんだ。」
「てか、私のことなんて今はどうでもいいの。私はレビィの気持ちが聞きたいんだよ。」
「私は……」
そこでレビィは黙ってしまった。
「自分の気持ちに嘘をつくのが一番辛いと思うよ。」
ミリアがレビィが素直に言えるように後押しする。それを聞いたレビィは決心したのか口を開いた。
「好きだよ、シャインのこと。」
遂にレビィが自分の気持ちに正直になった。レビィも気のせいか、心のどこかでモヤモヤしていた部分が晴れたようだった。
「……そっか、良かった。」
ミリアが安心した笑顔を作る。
「良かった?どうして?ミリアにとっては嫌なことなんじゃないの?」
「え?何で嫌なことなの?私が好きな人が違う人からも好かれているってことはそれほど良い人っことでしょ。嫌になるわけないじゃん。むしろ嬉しいぐらいだよ。」
ミリアがニコッと笑う。
「なる…ほど。」
レビィがそういう考え方があるのかと学んだ。その時、ミリアがスッと手を出した。レビィはよく分からず首を少し傾けた。
「私達は仲間、でも恋愛に関しては今日からライバルになる。だから、お互い頑張ろう。だけど、負けないからね。」
「………うん、私も負けないんだから。」
レビィとミリアが堅く強く握手する。
「じゃあ、私先に部屋に戻るね。」
レビィはとてもスッキリした顔で部屋へ戻っていった。
(簡単に人を信じないシャンが私に対して心をちゃんと開いてくれたのは小学三年の中頃。会ってから一年半はかかったのにレビィに対してはすぐに心を開いていた…。シャンにとってレビィという存在はどう映っているんだろう…。レビィはレビィでこの違和感に気が付いているのかな…。)
そんな疑問を抱きながらミリアも部屋へと戻っていった。
その日の夜。エデン中のテレビはある大事件の中継が流れている。それは『キトリス教会襲撃』という事件であった。この中継をレビィ達もホテルのロビーの大画面スクリーンで見ていた。
「おいおいおい、何かすげぇことになってるぞ。」
スノウがビックリした顔になる。
「どこの誰がこんなことを…。」
レビィが呆れる。
「ここから近いんでしょうか?」
「さぁ?でも近かったら巻き込まれたくないな~。」
サテラとエアルが話す。
「いや、間接的にはもう巻き込まれているようですよ。」
ヒューズがスクリーンを指した。それと同時に中の女性のニュースキャスターが今の状況を話し始めた。
「えー、今入った情報です。襲撃したのはリーダーらしき白髪の男、眼鏡をかけた女、和服を着た男、緑髪の子供の四人組のようです。あと、一部の専門家の中では眼鏡をかけた女以外はアース人ではないかという声も上がっております。」
「このことって…」
エアルがヒューズを見ると、ヒューズがコクッと頷いた。
「革命軍です。」
「だよね~…。」
エアルがはぁとため息をつく。
「これは確実に飛び火するわね。」
レビィが言う。
「今日はもう休んだ方がいいですね。明日は荒れる可能性がありそうです。」
アレンの提案に全員賛同し、今日は部屋で休むことにした。
次の日の夜明け。男チームが寝ている部屋にノック音が響いた。
「……誰だ?」
寝起きで不機嫌なスノウがドアの方に尋ねた。すると、キィとドアが開きエアルが入ってきた。
「朝っぱらから何の用だよ?」
スノウはイライラしたままベッドから下りてエアルに近付く。
「ねぇ、やけに静かじゃない?」
そう言われたスノウはおもむろに廊下に出て耳を澄ました。確かに静かだった。夜明けだからほとんどの人が寝ているとしても不気味なくらいだった。
「どうなってる…。」
スノウが向かいのドアをノックした。しかし返事もなく誰も出てこなかった。
「おかしいな…。」
その時、1階のロビーに下りていたレビィとミリアが4階にいるスノウとエアルの前に戻ってきた。
「ロビーにも誰もいなかったわ。」
レビィが報告する。
「従業員もね。」
ミリアが補足する。
「夜明けだから客は分かるとしても、従業員が誰もいないは奇妙だな。」
スノウ達が悩んでいると、
「これが原因でしょうね。」
いつの間にか起きていたヒューズが部屋の中からスノウ達を呼んだ。スノウ達は部屋に入るとテレビが付いており、次のような臨時ニュースが流れていた。
「昨日の夜に起こったキトリス教会襲撃事件でありますが、魔戦天使団副隊長サナ•クリスタルさんの調査によりますと、現場には殺害されたキトリス様の遺体しかあらず、犯人の姿はなかったようです。調査をしたところ何も盗られてはおらず、犯人達の目的は今だ不明とのことです。」
ここでニュースを読んでいた女性キャスターのところに新しいニュースが飛び込んできた。
「ただいま新しいニュースが入りました。襲撃した犯人の仲間だと思われる者達がポプラのホテルに泊まっているらしく、ヴィーナス様の許可が下りているようなので、今から攻撃をしかけるようです。」
「完全に共犯扱いのようです。」
ヒューズがはぁと小さくため息をする。
「皆さん外を見てください。」
こちらもいつの間にか起きていたアレンに言われ、全員一斉に窓の外を見た。まだ薄暗い外では、魔戦天使団と思われる天使達が大量に発見できた。
「殺す気満々ね……。」
ミリアが苦笑いする。
「怖いです…。」
サテラが恐怖からレビィの背中に隠れキュッと服を掴む。レビィは大丈夫だよとサテラを慰める。
「こうなったら仕方がねぇ…対抗するしかないな。」
スノウが手のひらと拳をバチッと合わせて気合いを入れる。
「それしかないね。」
アレンも拳銃を構える。他のメンバーも戦闘準備をしている途中、ふとレビィが気が付いた。
「ねぇ、さっきのニュースで『サナ•クリスタルさんの調査』って言ってなかった?」
レビィの発言で全員が理解した。
「足止めをくらったのはシャインの方か…。」
スノウが呟く。
「じゃあシャンはこっちに来れないんじゃないの?」
ミリアが不安がる。
「あいつはあいつで何とかして来るだろう。今は自分のことを心配しな。」
「……そうだね。」
ミリアはシャインを心配しつつ、戦闘に備えて準備をした。
そこから数分後、
「これより、『アース人討伐作戦』を開始する。」
シャイン•ハールロッドが開始の合図を告げた。
「第3部隊!奴等がいる部屋に狙撃!」
ハールロッドが空にいる第3部隊に命令する。第3部隊は一斉に弓を構え光の矢を放ってきた。
「まずい!皆廊下に出るんだ!」
外の様子を観察していたアレンが叫ぶと同時に廊下に走る。それを見てヒューズとスノウも走り、間一髪で狙撃を回避した。
「あっぶねぇ…。」
スノウがビックリしていると、隣の部屋からも間一髪で回避した女チームが出てきた。
「とうとう始まったようですね。」
ヒューズが弓を構える。
「とりあえず1階まで走るぞ!」
スノウを先頭に階段を目指し走り始めた。
「第3部隊は空からの監視を続けろ!奴等の姿が見えたら即狙撃だ!第1、第2部隊はまだ周りを囲んでおけ!第4部隊は突入しろ!」
ホテルの前でハールロッドが的確に指示する。第4部隊は指示通りホテル内に突入する。
「後で『アレ』をホテル内に放つ。用意しておけ。」
「ア、アレをですか!?危険では?」
「やるからには徹底的だ。早く用意しておけ。」
「……了解しました。」
4階からすんなりと3階に下りたスノウ達は遂に魔戦天使団と接触した。
「アロー隊構え!」
小隊長が命令すると、前線のグループが弓を構える。
「放て!」
次の命令と共に、一斉に光の矢が放たれた。
「[水神城壁]!!」
ミリアは水の壁を出現させて全員を防御した。そして瞬時に反撃に移る。
「行くよスノウ!」
「おう!」
スノウは右の、ミリアは左の廊下の壁を壁走りして、同時に相手の陣形の中に飛び込んだ。それにより、魔戦天使団の陣形は崩れパニック化した。
「僕達も続こう!」
アレンとヒューズを先頭に陣形がなくなった魔戦天使団に向かって走り出す。先頭の2人がアロー隊を倒すと、次は剣を所持したソード隊が前から迎え撃ってきた。
「ここは私がやろう。」
アレンとヒューズの間を抜けて出てきたのは、黒髪に赤い瞳をした『ナイト』だった。
「[舞乱華花]!!」
ナイトはソード隊の間を舞い踊るようにすり抜けて切り倒し全滅さした。
「やはり少し戦闘の感が鈍っているな。」
「ナイト!もう大丈夫なんだ!」
エアルが喜びながら近付く。
「ああ。心配をかけてしまったな。事情は大体理解している。私も力を貸そう。」
【戦闘ばかり任してゴメンね。私自身がもうちょっと戦闘慣れしていれば…。】
レビィが心の中で謝る。
(気にするな。私はお前の闘争心の化身みたいなものだからな。)
ナイトが慰める。
【……うん。】
レビィは小さく微笑んだが、やはり申し訳ない思いだった。
「うわっ!後ろからも来た!」
ナイトとレビィが話していると、エアルが驚いた声を上げた。その声に気が付いたナイトは振り向くと、新たな小部隊が迫ってきていた。
「よーし!私だって!」
エアルがピンクの杖を横に持って構えると、前に黄色の魔法陣が出現した。
「[ホーリーフェザー]!!」
そして魔法を唱え、魔法陣から無数の光の羽を放った。
「シールド隊前へ!」
小隊長が命令すると、大きな盾を所持した天使が前線に出てきた。そして、エアルの攻撃を全て防御した。
「うそっ!?」
エアルが驚く。
「ソード隊突撃!」
小隊長の命令でソード隊が襲いかかってきた。
「ヤバい!」
エアルが慌てる。
「僕に任せて下さい。」
エアルの肩をポンと叩き、アレンがエアルの前に出た。
「[属性変換:闇]。」
銃魔法により、アレンの銃に闇属性が付いた。
「[ダークネスライフル]!!」
アレンが引き金を引くと闇の弾丸が五発一斉に放たれた。闇の弾丸は的確にソード隊に命中し倒していく。アレンは五発1セットで連続で撃っていき、ソード隊を全滅させた。
「シールド隊は任せて下さい。」
アレンが後ろに下がり、現れたのはサテラである。
「[幽鬼暴風]!!」
サテラは青い炎の竜巻をシールド隊の真下から発生されて攻撃した。巻き込まれたシールド隊は苦しみながら吹き飛び、廊下に倒れた時にはもう魂は焼かれ消滅し、シールド隊以外の兵士も倒した。
(つくづく思うな…サテラちゃんが味方で良かったって…。)
エアルが心の中で味方でありがとうと感謝する。
「これで相手は全滅のようですね。」
ヒューズが廊下を見渡し確認する。階段近くでの戦いはナイトも参戦して勝利していた。
「うっし!行くか!」
スノウ達は階段を下りて2階に向かった。
「シャイン様、第4部隊からの通信が完全に途切れました。全滅しかたと思われます。」
1人の兵士がハールロッドに知らせる。
「そうか…。」
知らせを聞いたハールロッドは次の戦略を考える。
(逃げるだけならいちいち1階まで下りなくても窓から飛び降りればいいだけのことだ。それをしないということはあくまでもこちらを潰しにきている。てことは、もう周りを包囲する意味はないな。)
「第2部隊はホテル包囲を止め、奴等を2階で迎え撃て!第1部隊も包囲を止め、1階全域を見張れ!」
ハールロッドの命令で即座に第1、第2部隊はホテル内に突入し、命令通り第2部隊は2階に上り、第1部隊は1階にまんべんなく散り見張り始めた。
「シャイン様、『アレ』の準備が整いました。」
さっき知らせに来た兵士とは違う兵士が『あるもの』の準備終了を伝える。
「そうか。ならロビーで待機させ、万が一奴等が1階に下りてきたら解き放て。」
「了解しました。」
その時、狙撃にあたっていた第3部隊から通信が入った。
「シャイン様!ただいま東方面よりこちらにものすごい速さで向かってくる女と『1匹』がいます!」
「女と…1匹だと?」
「はい。確かにあの影は人ではないと思われます。」
(俺らの仲間ではないな…。てことは奴等の援護だろな。誰だ…誰だ…誰……!)
ハールロッドがある人物が頭に浮かんだ。
「第3部隊!狙撃を中止し、全勢力をかけてその女と1匹を仕留めろ!」
「了解しました!」
第3部隊は命令通りこちらに向かってくる女と1匹を仕留めに行った。
(正直第3部隊では奴を止めるのは不可能だろう。せめて足止め程度…奴が来るまでに決めるしかないな。)
ハールロッドが外で考えている時。2階廊下では第2部隊とナイト達が激闘を繰り広げていた。
「[虎双牙拳]!!」
スノウが両手の拳を突き出し兵士を殴り飛ばした。
「クソ…キリがねぇ…。」
スノウが舌打ちする。
「[影鳥]!!」
ナイトが無数の漆黒の鳥を放ち兵士を倒してからスノウに近付き背中合わせになる。
「とにかく数で押して、私達を疲れさせる腹のようだな…。」
そう言うナイトは少し息を切らしている。
「そのようだな。」
スノウが呟く。そこに他の全員も集まった…いや、集められたと言うのが正しいだろう。
「体力が削られた上、完全に挟まれたか…。」
ナイトは必死に打開策を考えた。そして1つ案が浮かび、スノウに作戦を囁いた。
「了解。他の奴等には……」
スノウが他のメンバーに伝えるか聞こうとした時、
「アロー隊構え!」
左右の部隊の前線の兵士が光の矢先をこちらに向けた。
「伝える暇はないようだな。」
「そのようだ。」
「今から3秒後に実行する。」
「オーケー。」
「行くぞ…3…2…1…跳べ!」
ナイトがカウントした後に叫んだ。それを聞いたスノウ以外が反射的に跳び上がった。それにより、矢を構えていた兵士達がこちらも反射的に矢を上に向けた。しかし、小隊長だけスノウが跳び上がらず拳を振り上げているのに気が付き、
「違う!あの銀髪を狙え!」
慌てて命令したが、
「もう遅いぜ!」
スノウが振り上げていた拳で廊下を殴りつけた。すると、バキバキバキと廊下から音が響き廊下に大きな穴が空いた。飛び上がったメンバーおよびスノウはその穴に落ちていき1階に着地した。
「もーー!するならするって言ってよ!」
当たり前のようにエアルが怒る。
「すまないな、伝える暇がなかったのだ。」
ナイトが素直に謝る。
「何はともあれ成功したんだからいいじゃねぇか。」
スノウがニッと笑う。
「それにしても見事に揃ったものだ。」
ナイトが関心する。
「息ピッタリですね、私達。」
サテラがルンルンと喜ぶ。
「のんびり話している時間はないです。今のうちに行きますよ。」
ヒューズに言われ、全員ロビーに走り出した。
「クソッ!やられた。」
小隊長は悔しがってからハールロッドにテレパシーを繋げる。
「ハールロッド様、奴等廊下に穴を空け1階に下りました。」
「そうか、では第2部隊はそのまま撤退しろ。」
ホテル前にいるハールロッドは命令をしてからテレパシーを切った。そして、そのままホテル内のロビーに準備しておいた『ある生物』が入った巨大な檻の前に移動した。
「こいつを放つ。それと俺が出る。」
「シャ、シャイン様自らですか!?」
兵士が驚く。
「このままじゃただ被害が出ただけで逃げられっちまうからな。第1部隊に深追いをするなと言っておけ。あと、こいつを放つからくれぐれも巻き込まれるなとも言っておけ。」
ハールロッドは指示を終えると刀を抜いて檻の扉をぶった斬った。すると、中にいた生物がのそっと出てきた。
「さぁ、行くぞ!」
「アウゥゥゥゥ!!」
1階に下りたナイト達は向かってくる第1部隊を倒しながら激走していた。
「しっかし広いホテルだな~。」
そう言うスノウは油断丸出しである。しかし、先頭を走っているナイトとその後ろを走っているヒューズは油断なく注意を払っていた。そして、ある違和感を感じた。
「ナイト、何か妙ではありませんか?」
ヒューズが並走に変えて尋ねる。
「ヒューズも気が付いたか。」
「てことはナイトも…?」
「ああ。向こうが深追いをしなくなった。」
「そうです。さっきまではかなり攻めてきたのに、今は自分の見張りエリアから我々が出ると追ってこなくなっています。」
「……何か仕掛けてくる気だな。」
「そう考えるのが適切でしょう。」
2人は話しながら廊下を曲がった。だが、曲がった途端2人は突然急停止した。
「ぬわっ!?いきなり止まるなよ!」
後から曲がったスノウが慌てて停止する。
「早速仕掛けてきたようだな…。」
ナイトはゆっくりと鞘を掴んだ。その時、長い廊下の先の曲がり角からさっき檻に入っていたある生物がぬっと現れた。その姿を見て全員背筋が凍った。
「あ…あれは…『地獄の番犬:ケルベロス』!」
アレンが少し震えながら叫ぶ。天井ギリギリの巨大な体に茶色の毛が生えており、一番の特徴は3つの首が生えている。計6つの血に飢えた眼がナイト達を見つけ睨み付けた。
「ケルベロスって…確か空想の生き物じゃなかったっけ?」
エアルがビビりながら誰でもいいから応答を求めた。
「このエデンだってアースにとっては空想の世界だった。だけど実際こうやって実現しているんだ。だったら空想の生き物がいてもおかしくねぇよ。」
そう答えるスノウにはさっきの余裕はなかった。全員が警戒していると、ケルベロスは唸りながら少しずつ近付いてきた。そして次の瞬間、この巨大からは想像もできなかったスピードで走ってきた。
「ヤバい!!」
ナイト達は一瞬で後ろに下がりケルベロスの突進を回避した。しかし、逃げた方向が違い、男チームと女チームできれいに別れてしまった。ケルベロスは突進で壁に激突して巨大な穴を空けたが、何事もなく穴からぬっと出てきて標的を男チームにし、襲いかかってきた。
「逃げろーーー!!」
男チームは叫びながら全力で逃走する。ケルベロスはそんな3人を恐ろしい牙を剥き出しにして追いかけてきた。
「行っちゃいましたね…。」
サテラが苦笑いをする。
「助けに行った方がいいんじゃない?」
ミリアがナイトに尋ねる。しかし、その時近くから魔戦天使団の声が聞こえたので、
「あいつ等はあいつ等で倒すなり逃げ切るなりするだろう。私達は先にロビーに向かうぞ。」
ナイトは優先すべきものを逃走と選んだ。
「大丈夫かな…。」
エアルが不安な顔をする。
「そう簡単にやられるほど、弱い奴等ではない。それはエアルも知っているだろ?」
ナイトがエアルの肩をポンと置いて微笑む。
「……そうだね。」
エアルは微笑み返した。
「よし!行こう!」
ナイトを先頭に女チームは先にロビーに向かった。
「しーつーこーいーーー!!」
スノウは叫びながら必死に激走していた。その両隣をヒューズとアレンも激走していた。
「くそっ…!どうすりゃいいんだよあの犬!」
スノウが嘆く。
「とにかくこのまま走っていてもこちらが先にジリ貧になるのは目に見えています……。」
ヒューズが冷静に考える。
「そう言われたって走るしかねぇだろ!」
「……!スノウ!ヒューズ!前に扉が!」
アレンが前の大きな白い扉を指す。
「とりあえずあそこに入るぞ!」
3人は目の前の扉に体当たりして中に入った。そこは椅子やテーブルはないものの、赤い絨毯が敷かれているパーティー会場だった。
「おっ!広くなった!」
スノウは喜んでから振り返る。ケルベロスもパーティー会場に入ってきて、3人を睨みながら唸る。
「ここなら思いっきり戦えそうですね。」
ヒューズが弓を構え戦闘体勢になる。
「本当に倒せるのかな…。」
アレンは少し心配しつつ拳銃を構え戦闘体勢になる。ケルベロスは高々に雄叫びを上げて威嚇する。
「たっぷり遊んでやるよ……犬っころ!」
スノウがグッ!と拳を握り戦闘体勢になる。
女チームは男チームと別れてから、兵士を倒しつつ、やったとロビーに到着した。
「誰も……いないね。」
エアルが周りを見渡す。ロビーにはさっきまでケルベロスが入っていた頑丈な檻しかなく、人の気配はなかった。
「う~ん、とりあえず男どもを待たなきゃいけないし、それまでは一休みが出来そうね。」
ミリアが背伸びをしてリラックスする。エアルとサテラも同時にリラックスモードになり、巨大な檻をジーッと観察する。
(妙だ…。ここまでが手薄だったからロビーで一気にくると思ったが誰もいない…。何を考えている…。)
ナイトも違和感を抱きながらも体を休まそうとした。その瞬間、背後から恐ろしい殺気を感じた。ナイトはとっさに檻のそばにいるエアルとサテラのところに走り出し、
「伏せろ!」
2人の後頭部を掴んで無理矢理頭を下げた。
「ちょっ…!何すん…」
エアルが怒ろうした瞬間、3人の頭の上ギリギリを斬撃が通過していった。その斬撃により、頑丈な檻が豆腐を切ったかのように真横にスパッと切れ、大きな窓が一斉に割れた。この光景を見たエアルはナイトに対する怒りという感情より恐怖からの寒気が勝ちゾワッと背筋が凍る。ナイトはミリアは無事かとミリアの方を向く。ミリアはナイトと同じく殺気を感じていたらしく、ギリギリで回避していた。
「まさかキサマが自ら出てくるとは…。そういう好戦的なとこは我が主に似ているな、シャイン•ハールロッド。」
ゆっくりとナイトは立ち上がり、夜桜をスッと抜く。
「そりゃそうだ。あいつは俺であり、俺はあいつだからな。」
斬撃を放ったハールロッドがナイトを睨む。
「てか、お前何か雰囲気変わったな。お前がサナが言ってたナイトか。」
「そうだ。」
「へ~、ホントに違う人間のようだ。」
「1つの体に2つの魂でなく、1つの魂に2つの心だと思ってくれればいい。」
2人が睨み合って話しているところにミリアが入り、ナイトとミリアは頷き合って戦闘体勢になる。
「ふっ…、ケンカっ早い奴等だ。」
ハールロッドが微笑を浮かべる。
「素直に殺される気なんてないから。」
ミリアがグッと睨む。
「……お前らの大切な人間と同じ姿をしているんだぞ。攻撃できるのか?」
「たとえお前が我が主シャインと同じ姿でも、敵であるからには斬るまでだ。」
ナイトが冷静に答える。
「そうか…それを聞いて安心したぜ。どうせ殺すなら全力のお前らと戦いからな。」
ハールロッドがニヤリと笑う。
「これ、私達足手まといになりそうじゃない?」
「そうですね。後ろに下がっておきましょう。」
エアルとサテラが囁き合っていると、突然背後にハールロッドが現れた。
「そんなこと言うなよ、あの2人だけじゃ面白くねぇだろ。」
エアルとサテラは慌ててナイトとミリアの後ろに行く。
「な、何で話聞こえていたのよ?」
エアルがビックリする。
「あなたも耳がよく聴こえるようね。」
ミリアが言う。
「あなた『も』ってことは、アースの俺もそうのようだな。」
ハールロッドがフッと笑う。
(そんなことよりなんて速さだ…!何も見えなかった…!)
ナイトが内心驚いていると、ハールロッドが魔力を上げた。
「さぁ行くぞ!殺してやる!」
ホテルロビーにて、ハールロッドvs女チームの戦闘が始まった。
エ「龍空deラジオー。て、こっちももう言わなくていいんじゃない?」
レ「私が決めることじゃないけど、まぁいいんじゃない。」
エ「だよね~!じゃあこっちも次回から言わない方針で!」
サ「前書きとほとんど同じ掛け合いしなくていいから。それよりハガキコーナーいくわよ。えっと…『シャインとサテラは家賃など生活費はどうしているんですか?』だって。これはサテラに答えてもらうしかないわね。」
エ「それ私も気になってたんだよな~。」
サテ「えっとですね、私はずっと革命軍に追われていたのは知っていますよね?」
レ「うん。」
サテ「その逃げているときに私は何度も青幽鬼が発動していまして、そのたびに兵士を倒していたんです。そしてその倒した兵士からお金を頂いていたんです。それを繰り返していたんでかなり貯まりまして、今はその貯めたお金で生活しています。」
エ「笑顔で答えているけど、つまり、倒した相手からお金を盗んで、そのお金で生活しているってことよね…。」
サテ「盗んでいません!頂いていたんです!」
エ「いや、話からすると完全に盗んで…」
サテ「頂いていたんです!」
エ「そ、そう…そうね!そうだよね!頂いていたんだよね!」
サテ「そうです。」
エ(青幽鬼で脅すのは反則だよ…。)
レ「でも今はそうだとしても、一人暮らしのときはシャインどうしてたの?」
サテ「『バウンティハンター』をしていたらしいでよ。ついでに鍛えられるからって。」
エ「バウンティハンター?」
サ「警察が指名手配した奴の中に捕まえたら賞金が貰える奴がいるの。そんな奴を捕まえてお金を貰っている奴をバウンティハンターって言うのよ。」
エ「へぇ~。」
サテ「今も学校が休みの日は修行かバウンティハンターしています。」
レ「あいつもけっこう大変なのね。」
エ「さて、無事返答したし、今回はこのへんで!皆さん次回をお楽しみに~!」