52話 閉ざされた学校(3)
シ・レ・ス・エ・サ・ヒ・ア・サテ「祝!!1周年ーーーーー!!!!」
ス「遂に『〜魔法学園〜』も1年が経ったか。」
エ「すごいね~!」
サ「こんなに続くなんて予想外だったわ。」
ヒ「それは賛成ですね。3ヶ月ぐらいで終わると思っていました。」
ア「でも続いたんだからいいじゃないですか。」
サテ「そうです。結果オーライです。」
レ「こんなに続いたのはこの小説を読んでくださっている読者の皆さんのおかげです。」
シ「さて、1年が経った今、『〜魔法学園〜』はますます頑張ろうと思う。だから、これからも応援頼むぜ。」
シ・レ・ス・エ・サ・ヒ・ア・サテ「では、本編をどうぞ!」
シャイン達がカンバルの駅に着いた時には、空にはキレイな月が上っており、辺りは仕事帰りのサラリーマン達が歩いていた。シャイン達は駅で解散し、レビィと騒ぎにならないように駅で買った帽子をかぶっているウェルサイトはレビィの家に帰っていった。そして、家に着いた時、ウェルサイトがピタリと立ち止まった。
「どうしたの?」
レビィが気が付き、クルッと振り返る。
「いや、何でもない。」
ウェルサイトが何か考えているとすぐにレビィは分かったが、何も聞かず、インターホンを鳴らした。
「はーい。」
優しい声が家の中からして、ガチャリとドアが開いた。
「あら~レビィじゃない、お帰り。」
中からレビィの母、フィリアが出迎えた。
「ただいまママ。」
レビィが返事をする。その時、フィリアがウェルサイトの存在に気が付き、
「あら、お友達?」
と、レビィに尋ねた。
「えっと~…何て言えばいいかな…。」
レビィが説明に悩んでいると、ウェルサイトがパッと帽子を取った。ウェルサイトの顔を見たフィリアは当然驚いた。だが、この時レビィも驚いた。何故かウェルサイトの目には涙が浮かんでいたのだ。
「アースの方は…生きていた…」
小さく呟いたウェルサイトは小走りでフィリアに近付き、
「母さん!」
と、言いながら抱き付いた。そして、顔をフィリアの胸にうずめてひっくひっくと泣き始めた。フィリアは最初は困惑していたが、泣いていると分かると、ウェルサイトの頭を優しく撫でた。レビィはこの光景を見て、首を傾げた。
とりあえず家に入った3人はリビングの椅子に座った。
「エデンのレビィね~。」
レビィからウェルサイトについて聞いたフィリアは、机を挟んで前に座っているウェルサイトを見る。
「すまない、さっきはいきなり泣き出して…。」
ウェルサイトが下を向いたまま謝る。
「謝る必要なんてないわよ。亡くなった自分の母親が目の前に現れたら、誰だって感極まるわよ。」
フィリアが優しく語りかけると、ウェルサイトはコクンと小さく頷いてから、ポケットに入っていたペンダントを取り出し、パカッと開けた。そこにはフィリアそっくりな人と、小さい時のウェルサイトが一緒に写っている写真があった。
「ホントだ、ママそっくり。」
ウェルサイトの隣に座っているレビィがペンダントを覗く。
「オレの母は数年前に魔戦天使団の奴らに殺されたんだ…。」
「魔戦天使団ってさっきレビィが話してくれた時に出てきたあなたを殺そうとしている軍団よね?」
フィリアが確認するように尋ねると、ウェルサイトは頷いた。
「あなたのママも『トレイタ』の1人だったの?」
レビィが尋ねる。
「ああ、トレイタの一部隊のリーダーだったんだ。」
「へぇ~、私がお偉いさん…。」
フィリアがお茶を飲みながら、自分が誰かに指示しているのを想像して、あり得ないなと苦笑いする。
「母はオレにとって憧れてあったし、大好きな人だった。だけど、ある日トレイタの拠点地が襲撃にあり、オレが殺されそうになった時、オレを庇って…目の前で殺されたんだ…。」
ウェルサイトの手が少し震える。その姿を見て、レビィは何も言葉をかけれなかった。
「そう…辛い過去を歩んで来たのね…」
少し空気が重くなった時、くぅ~と情けない音がウェルサイトの腹から鳴った。
「……腹へった…。」
ウェルサイトが少し照れながら呟くと、フィリアとレビィがプッと笑いだした。
「ちょっと待ってて、今から簡単にだけどご飯作るから。」
フィリアは椅子から立ち上がり、キッチンに向かった。
「あっ!待ってママ!まだ本題話して…」
レビィがフィリアを呼び止めようとすると、
「エデンに帰れるまでウェルサイトちゃんを家に泊めるんでしょ?オーケー、大丈夫よ。」
フィリアがこっちにウインクしてから料理を始めた。
「ママ…!」
レビィが嬉しくなる。
「料理出来るまでゆっくりしててね。」
「うん、分かった。」
レビィとウェルサイトは夕食が出来るまで待つことにした。そして、待つこと約20分、オムライスが2人の前に出された。
「いただきまーす!」
レビィがパクパクと食べる隣で、ウェルサイトはオムライスをじーっと見てから、パクッと一口食べ、
「うまっ。」
素直な感想が漏れた。
「でしょ!ママのオムライスは格別に美味しいんだから!」
レビィが母の手料理を自慢する。
「ウェルサイトのお母さんは料理するの?」
オムライスを食べながらレビィが尋ねる。
「母さんはたまに作ってくれたけど、食卓に並んだ料理は全部黒一色だった。」
ウェルサイトがオムライスをパクつきながら普通に答える。
「あはは…さすが平行世界のママ…。」
レビィが苦笑いする。
2人はあっという間にオムライスを食べ終え、
「ごちそうさま〜!はぁ~美味しかった!」
レビィがご満足の顔になる。
「ゴメンねウェルサイトちゃん、空いている部屋ないから、レビィの部屋で一緒に寝てね。布団は用意するから。」
フィリアが洗い物を洗いながら言う。
「何から何までありがとう…ございます、かあ…フィリアさん。」
ウェルサイトがぎこちない話し方でお礼を言う。
「フフフ、別に無理に敬語使わなくていいし、呼ぶときも母さんでいいわよ。それの方があなたも楽でしょ?」
フィリアがクスクスと笑いながら尋ねる。
「……!ありがとう、母さん。」
ウェルサイトが慣れていないのか、少し下手な笑みを浮かべる。
そこから2人は風呂に入り、レビィの部屋に入って眠りについた。
次の日、レビィがベッドの上で目を覚まし、体を起こす。ごわごわになっている髪をクシャクシャしながらベッドの隣を見ると、客用の布団にくるまっている自分…ではなくウェルサイトが寝ていた。レビィはウェルサイトを起こさないようにベッドから下りて、制服に着替え、鏡の前に座って髪を整えて部屋を出た。
「おはようママ…。」
「おはようレビィ。ウェルサイトちゃんは?」
「まだ寝てるわ。」
あくびをしながらリビングの椅子に座ると、フィリアがすっと朝食を出した。レビィはそれをのんびりと食べ終え、そのまま登校する準備をして、
「行ってきまーす。」
龍空高校に登校するため家を出た。その時、レビィの部屋には人影がなかった。
(はぁ…なんか久々って感じになるな~登校するの。まあ、今回の休日いろいろあったからそんな感じになるのかな〜。)
カバンを前にして歩きながら、そんなことを思っていると、
「お~、なかなかキレイな町だな~。」
と、隣から聞き慣れた声がした。それはそのはず、その声は自分と同じ声なのだから…その声の持ち主は…
「ウェルサイト!?あなた何でここに?」
当然ウェルサイトだった。レビィは隣にいる髪を帽子の中に入れて、一応変装っぽいことをしているウェルサイトを見て驚く。
「何でって、脱け出してきたから。」
ウェルサイトが答える。
「もう!あれほど寝る前に外に出ちゃダメって言ったじゃん!こんな状況誰か知ってる人に見られたら大騒ぎになっちゃう!」
レビィがかなりのボリュームで怒るので、
「サファイア、声がでかい。目立つから。」
ウェルサイトがシーとやってレビィをなだめる。
「……ママに止めるよう言っといたのにどうやって出てきたの?」
ボリュームを下げ、自分を落ち着かしてから尋ねる。
「オレは玄関から出てないぜ。」
ウェルサイトの解答にレビィは首を少し傾け、どういう意味か考えると、1つの答えにたどり着き、
「窓から出たわね…。」
と、呆れる。しかし、そこからレビィはウェルサイトを怒ることはなかった。何を言っても無駄だと悟ったからである。
「…その服私のよね?」
ウェルサイトの今の服装は、レビィの服を着ている。
「あー悪い、勝手に借りた。でもやっぱりこういうスカートってやつ?スースーして落ち着かねぇ。」
ウェルサイトが着ているスカートを上から押さえる。
「最初にウェルサイトと出会った時、男性ファッションだったよね?エデンはずっとそういうファッションなの?」
「オレはそういう方が落ち着くんだ。」
「ふ~ん…。」
そんな会話をしていると、龍空高校の正門に到着していた。
「さあ、もう気が済んだでしょ?早く家に戻って。」
レビィは立ち止まって、ウェルサイトに帰るよう説得する。
「嫌だね。」
ウェルサイトが即答する。
「ダメ!この状態をもし友達とかに見つかったら…」
レビィがウェルサイトを怒っていると、
「おはようレビィ。」
数人の友達が挨拶してきた。
「えっ!?…あ…お、おはよう。」
レビィはビクッとなり、少しパニックになりながら挨拶する。
「どうしたのレビィ?」
レビィの変な行動にクスクス笑いながら尋ねる。
「う、ううん!何でもない!」
レビィが首を振ってから、笑って誤魔化す。
「あれ?この人誰?」
友達の1人がウェルサイトの存在に気が付いた。
「あ、この人は…し、親戚なの!親戚!」
レビィが必死に誤魔化す。
「親戚?そう言われてみれば似てる~。」
友達がウェルサイトの顔を覗き込む。ウェルサイトもとりあえず顔を隠す。
「あ~顔隠した~。照れ屋さん?」
「ねぇ、帽子とって顔見せて~。」
友達の1人が帽子を取ろうとする。
(ヤバい…顔を見られたら大騒ぎになっちゃう!)
レビィが止めようとした瞬間、
「おいお前ら、早くしないと遅刻すんぞ。」
ウェルサイトの後ろからシャインが現れた。
「シャイン!」
レビィがビックリする。
「早くいけよ。」
シャインがレビィの友達に言うと、友達は二人もだよ~と言い残して、素直に学校に向かった。
「ありがとうシャイン、もう少しで大騒ぎになるところだったよ。」
レビィがシャインに礼を言う。
「…そういえば、お前もこの学校に通っていたんだな。」
ウェルサイトはシャインをキッと睨んでから、反転して歩き始めた。
「どこ行くの?」
レビィがウェルサイトが尋ねると、
「帰るんだよ家に。」
不機嫌MAXの口調で言って、そのまま家に帰っていった。
「へっ、後ろ姿はマジレビィなのに、てんで性格は違うな。」
シャインは鼻で笑ってから、正門をくぐった。レビィもあとに続いて正門をくぐった。
時は過ぎ、昼休みになった。シャイン達は早めに昼食を食べ終え、図書室に集結していた。龍空高校の図書室は大きく、ちょっと小さめの図書館くらいはある。
「う~ん…書いてないな~。」
レビィが分厚い本を開けて、むむむ〜と難しい顔をしている。その本のタイトルとは『神話を知ろう』という本である。
「う~ん…いいの書いてないな~。」
レビィの隣に座っているエアルも難しい顔をして本を眺めている。その本のタイトルとは『必見!誰でも簡単に作れるお料理レシピ!』である。
「エアル…気持ちは分かるけど、今はエデンに行く方法を見つけようよ…。」
レビィが苦笑いで注意する。
「だってさ~、どんだけ探したって書いてないんだもん。流石に飽きちゃうよ〜。てか、行き方なんてホントに書いてるの?」
エアルがため息をつく。
「そう言わずにもうちょっと探そ。行き方が精密に書いてるなんて私も思ってないけど、ヒントぐらいは見つけようよ。」
レビィがエアルを元気付けるが、エアルはまだ乗る気じゃない感じである。
「ほら、シャイン達もあんなに探しているんだよ。」
レビィが少し離れたとこに座っているシャイン、スノウ、ヒューズは同じ本を真剣な顔で見ている。
「あの3人があんなに真剣に…あれ?」
エアルがあることに気が付いた。3人が見ている本がやけに薄いのである。レビィとエアルが3人を見ていると、
「見つけたー!」
スノウが本をビシッと指して叫んだ。
「ああ?どこだよ?」
シャインが何故か不機嫌な顔で聞く。
「これだよ!これ!」
スノウが嬉しそうに言う。
「あー、確かにそうですね。」
ヒューズが確認する。
「やったー!3連勝!」
「くそっ!」
喜ぶスノウ、残念がるヒューズ、怒るシャイン、この状況を見ているレビィとエアルは気になり、3人のとこに近付いて、後ろから見た。その本のタイトルは『ウォーリーを探せ』だった。
「何を探してんだよ。」
レビィとエアルが3人を後ろからひっぱたいてツッコんだ。
「いって~、何すんだよ。」
シャインが二人の方を振り向く。
「ちゃんと探してよ。」
レビィがプンプン怒る。
「ちゃんと探してんじゃねぇか。」
シャインが『ウォーリーを探せ』を見せる。
「誰がカラフルなメガネのおっさんを探せって言ったのよ!エデンについてのことを探してよ!」
レビィがガー!と怒る。そこに、図書委員で、月曜日は図書室の管理をしているサナが近付いてきた。
「あんた達うるさいわよ。」
「おうサナ。」
スノウが言う。
「おうじゃないわよ。…あんた達さっきからなに調べてんのよ?」
サナが全員に尋ねる。
「そうか、サナにはまだ話してなかったな。」
シャインが思い出す。
「何のこと?」
サナが再度尋ねる。
「実はね…」
レビィが休日に起こったことを話した。
「…てなことがあったの。」
「ふ~ん…エデンね〜。」
サナが腕組みをして、足をトントンする。
「信じられないと思うけどね。」
レビィが小さく笑いながらサナを見るが、サナは何か考えている感じであった。
「サナ?」
エアルが声をかけると、サナが、
「えっ?あ〜ゴメン、ちょっと考え事。気にしないで。」
と、適当なことを言って流した。
「探すのは勝手だけど、もう少し静かにしなさいよね。」
サナは最後にシャイン達を注意してから、別の場所に去った。そこからシャイン達は本気で資料を探したが、特に良い情報が見つからないまま、終了を告げるチャイムが鳴った。
「くそ~、全然なかったな。」
スノウが悔しがる。
「やっぱり図書館とかの方がいいのかな~…。」
レビィが本を元の場所に片付ける。
「この辺の図書館より、ここの図書室の方が充実してるわよ。」
そこに管理を終えたサナが来た。
「ま、まだ1日目だし、根気よく探すしかないな。」
と言っているシャインは違う『ウォーリーを探せ』の本を見ている。
「そのおっさんは探さなくてもいいの。」
レビィがひょいとシャインから本を取り上げ、本棚に戻す。シャインは取り上げられたことにムッとする。
「さ、早く教室に戻りましょう。五時間目に遅れますよ。」
ヒューズを先頭に図書室を出ていく。そして最後尾のサナはやはり何か考えている感じであった。
時は少々遡り、ウェルサイトが不機嫌な顔で家に帰宅した。ドアを開けると、そこにはフィリアが立っていた。
「あっ…」
ウェルサイトは自分が脱け出したことを思い出した。
「勝手に脱け出したでしょ?」
フィリアが短く質問すると、ウェルサイトがコクンと頷いた。
「危ないでしょ。次からは玄関から出なさいよね。」
フィリアはちょっとだけ怒り、リビングに戻った。
「えっ?…それだけ?」
ウェルサイトはもっと怒られると思っていたため、驚きながらフィリアを追いかけリビングに入った。
「それだけ。どれだけ怒ったって、反省する性格じゃないでしょ。」
フィリアが答えながらキッチンに向かい、ウェルサイトの朝食を温め始めた。ウェルサイトは当たってると苦笑いしながらリビングの椅子に座る。
「ねぇウェルサイトちゃん、1つ聞いていい?」
フィリアが温めた朝食をウェルサイトの前に出し、自分はウェルサイトの前の椅子に座った。
「何?」
ウェルサイトが朝食を食べ始める。
「あなたの名字…本当の名字?」
質問を聴いた途端、ウェルサイトの朝食を食べる手がピタリと止まった。
「何でそんなこと聞くの?」
ウェルサイトが尋ね返す。
「私もみんなの役に立ちたいな~と思ってね、昨日の夜、家にある神話系の本を読んでみたの。そこにね、ある神様の名前が書いてあったの。名前は…『ウェルサイト』、別名『悲しみの神』。…これは偶然なのかしら?」
フィリアが尋ねると、数秒間沈黙が流れから、ウェルサイトが、
「偶然じゃないかな?たく、付けるならいい意味の名前付けてほしかったよ。」
と答え、食べるのを再開する。
「そう。」
フィリアは椅子から立ち、掃除をしに行った。ウェルサイトはそこから一言も話さず朝食を食べ終えた。
時は戻り、龍空高校は全ての授業が終了した。誰もいない教室の教卓に座っている女が片手に持っている水晶玉に魔力を注ぐと、ポワッと光り、1人の男を映し出した。
「どうした?実行は3日後だろ?」
男が尋ねる。
「急きょ変更。うちの連中が動き始めた。何ならの情報掴んで面倒なことになる前に実行するわ。だから、明日の昼に実行するって報告しといて。」
女が伝える。
「…了解した。こちらも準備をしておこう。」
男は通信を切った。女は何も映っていない水晶玉を教卓に置いて窓に近づき、
「明日でお別れね…。」
と呟きながら、冬の空を眺めた。
次の日、何も知らない生徒達は普通に登校してくる。それを屋上から眺めている女がいた。女は屋上の中心に向かい、片膝をついて手のひらをソッと地面に付けると、赤色の魔法陣が展開された。それを確認してから女は立ち上がり、屋上を後にした。
そして昼休みになった。生徒達はいつも通りの生活をおくっている。シャイン達は教室で昼食を食べていた。
「ホント好きね、焼きそばパン。」
レビィが焼きそばパンを食べているシャインに言う。
「旨いんだよ。」
シャインが食べ続ける。
そんなたわいもない話が飛び交っている昼休みの学校の中、誰かが、
「実験開始。」
と呟いた。次の瞬間、屋上の魔法陣から一本の光の柱が伸びた。そして一定の高さまで伸びると、半球ドーム状に広がり、龍空高校を囲んだ。
「おい…何だあれ?」
シャイン達の教室がザワめく。いや、教室だけでなく、学校全体がザワめいている。
「何だろ?」
レビィが窓の外を覗く。
「とにかく外に行くぞ。」
シャイン達は急いで外に出た。
外に出たシャイン達は正門に向かい、龍空高校を覆っているバリアのようなものに近付いた。
「これは一体…」
アレンがそ~っとバリアに触った瞬間、バチッ!と電気のようなものが流れた。
「いっ…!!」
アレンは突然の痛みに反射的に手を引っ込めた。
「大丈夫!?アレン!」
エアルがすかさずアレンの手をとり、治癒魔法をかけた。
「触れられないのか…。」
スノウが言う。
「つまり、私達は出られない状態になったようですね。」
ヒューズが冷静に分析する。
「いや、それだけじゃねぇようだ。」
シャインが深刻な顔をする。
「どうしたの?」
レビィが尋ねると、シャインが正門の外を見る。レビィはシャインと同じ方向を見ると、人が行き来していた。
「人がいるだけよ。」
「こいつら、何かおかしくないか。」
シャインに言われ、レビィはもう一度行き来する人達を見た。そして、あることに気が付いた。
「この状況に…気が付いていない。」
「そうだ。こんなでかいバリアがあるんだぞ。学校周りで騒ぎになってもおかしくないはずだ。だけど見ろ。今、目の前を歩いている奴らは俺らが立っているのに何も反応がないし、周りも騒いが起きていない。」
「外からは私達の姿は見えないみたいですね。」
ヒューズが分析する。
「多分、この中で何が起こっても、外からは何も起きていない学校にしか見えないんだろな。」
シャインが推測する。その時、
「おい!あれ見ろよ!」
外にはシャイン達以外にも生徒や教師がおり、その中の生徒の1人が龍空高校の上空を指差した。それにより、全員がその方向を見上げた。そこには大きな魔法陣が展開されていた。
「魔法…陣?」
レビィが呟く。その時、自分達の周りには緑の光る粒子のようなものが無数に飛び始めた。
「次から次へと一体何だよ!」
スノウは何が起こっているのか分からずイライラする。次の瞬間、
「うわあぁぁぁぁ!!」
シャイン達の近くにいた1人の男子生徒が叫び苦しみ始めた。
「今度は何!?」
エアルが怯える。男子生徒は苦しみ続け、パタリと倒れてしまった。そして体からポワッと何かが出てきて、上空にある魔法陣に飛んでいってしまった。そのようなことがあちこちで発生し始めた。
「あれは…『魔力』!あの魔法陣が体から魔力を吸いとっています!」
ヒューズが叫ぶ。それを聴いた周りの生徒達が、
「どうすんだ!」
「助けてくれー!」
「キャーー!」
大パニックになり右往左往している。教師達はそれを何とか落ち着かせようと頑張るが、全く落ち着くことはなかった。流石のレビィ達も困惑している。その中で、シャインはあることに気が付いた。いない。この時、真っ先に動いて調査する『あいつ』がいない。そういえば自分達が外に出た時、『あいつ』はいなかった。
「あの野郎…!」
シャインはレビィ達を置いてダッ!と校舎の方に走り出した。
「シャイン!?どこに行くの!」
レビィがシャインに叫ぶが、シャインは止まらず走り去っていった。
誰もいない1―1の教室…いや、正確にはいるのだが、全員魔力が吸収されて倒れている。教室は緑の光る粒子がかなり充満しており、ここが発症地だと分かる。その教室にシャインがバン!と勢いよくドアを開けて中に入った。そこにはただ1人、ある女が自分の机に座って足を交差している。
「やっぱりお前だったか。」
シャインが女を睨み付ける。
「あら?何で分かったのかしら?」
女は微笑を浮かべながら尋ねる。
「どういうつもりだ!『サナ』!!」
シャインが睨んでいた女、その正体は…金の瞳をし、金髪に赤いヘヤピンをとめている、天才少女と呼ばれそうな頭脳を持つ…『サナ・クリスタル』だった。
エ「『龍空deラジオ』ー!」
レ「あれ?サテラちゃんとサナは?」
エ「ホントだ。どこいったんだろ?」
バン!
サテ「大変です!」
レ「うわっ!ビックリさせないでよ~、その段ボールの中の紙なに?」
サ「全部質問のハガキよ。これもね。」
エ「すご~い!段ボール2箱分もハガキくるなんて~!」
サ「これ全部同じ質問なの。」
レ「どんな質問なの?」
サ「1枚だけ読むわね…『質問です。エデンレビィの名字【ウェルサイト】と、ソウルの名字【ヴェルライト】ってすごく似てますけど、何か意味があるんですか?』……この質問のハガキが大量に送られたの。」
エ「そう言われたら似てるね。『ウ』と『ヴ』、『サ』と『ラ』の違いだけだもんね。」
レ「こ、これは…私達は答えられないわね…。」
サ「というわけで、本人を無理矢理連れてきたわ。」
眼鏡「ども〜久々の登場です。」
レ「じゃあお答えをお願いします。」
眼鏡「えっと、一言で言うと…ミスです。」
レ「ミス…なんですか…。」
眼鏡「投稿して次の日に気が付いてヤバいと思いました。だから、もう一度言います、純粋なミスです。」
エ「じゃあ何も意味はないの?」
眼鏡「はい。」
エ「何だ~〜〜。」
眼鏡「ややこしいミスをしてすいませんでした。」
レ「では、今回はこのへんで。前書きで言った通り、『〜魔法学園〜』は1年経ちました!頑張っていきたいと思いますので応援よろしくお願いします!」