43話 戻る罰(14)
眼鏡「はいどうも、朝に見ている人おはようございます。昼に見ている人こんにちは!そして夜に見ている人こんばんは。ん?どうして突然挨拶をしたかって?答えは簡単、書くことがないからです!ということで、早速見てください!」
「がはっ…!!はぁ…はぁ…!」
血を吐きながら、ザウルスが立ち上がる。
(な、なんて力だ…!だが、これでハッキリした…奴は…『闇落ち』した…!)
ザウルスがキッ!と獣の目付きでシャインを睨み付ける。
「…殺す。」
そう呟くシャインの目付きからは、殺意しかない感じられない。
「仕方がない…この力で一思いに潰してやる!」
ザウルスが一気に魔力を上げると、その姿から人の形はなくなり、龍そのものに変化した。
「ガァァァァァァァ!!」
ザウルスが吼える。
「どれだけ吼えようが、どれだけデカくなろうが、それで俺に勝てるわけじゃない…」
シャインは全く動じず、スゥ~っと鞘から風砕牙を抜く。
「[龍火炎]!!」
ザウルスが口から炎を放つ。シャインは全く動くことなく、風砕牙を持っていない腕に黄緑と紫のオーラを纏い、バッと掌で炎を受け止めた。止めたられた炎は消えてなくなった。そこに、ザウルスは立て続けに尻尾を振り下ろしてきた。シャインは冷静に風砕牙を構え、ザン!!と尻尾を切った。
「ギャララララ!」
切られた痛みにより、ザウルスが怯む。シャインは走り出し、ザウルスの下に潜り込み、風砕牙を構える。
「[龍上天風]!!」
門に亀裂を入れた斬撃が、ザウルスの体を貫いた。
「ギャアアア!」
ザウルスは苦しみながらも、天井ギリギリまで飛んで、シャインの方を睨み付ける。だが、そこにはシャインはすでにいなかった。ザウルスが探していると、自分の頭上に殺意を感じ見てみると、そこにはシャインの姿があった。
「ドラゴンフ…」
「おせぇよ…[ダークウィンドウ]!!」
ザウルスが攻撃する前に、シャインが闇属性の風でザウルスを地面に叩きつけた。
「グッ…」
ザウルスがヨロッと立ち上がる。
「言っただろ…デカイだけじゃ勝てないって。むしろデカイ方が不利かもな。」
シャインは着地し、見下しように言う。
「コノオレガ、マケルワケナイ!」
「……………」
シャインにはもう感情はなく、ただ殺しを求めている鬼人のようだった。
「ガァァァァァァァ!!」
ザウルスがシャインに向かって突進する。シャインは一瞬で後ろに回り込む。
「ガァァァァァァァ!!」
ザウルスは反転し、再度突進をする。シャインは風砕牙を構えると、紫のオーラのみを纏い、姿勢を低くくし、そのままザウルスの下を目にも止まらぬ速さで通り抜けた。
「チョコマカト!!」
ザウルスもまた反転し、突進してくる。シャインはそれに背を向けたまま、鞘と風砕牙を縦に持った。
「[夜狩りの大蛇]!!」
そして、キンと風砕牙を鞘に納めると同時に、ザウルスの体を蛇行に切り裂いた。
「ギャアァァァ!!」
苦しみの雄叫びをあげ、ズウンと倒れた。そして、姿が龍から人に戻った。
「こ…この俺が…こんな…子供に…」
背を向けているシャインに手を伸ばすが力尽き、パタンとむなしく地面に横たわった。その数秒後に、シャインの頭に激痛が走った。
「うわぁぁぁぁ!」
シャインが頭をかかえ、もがき苦しむ。そして、10秒くらい叫ぶと、しだいに痛みは消え、同時に紫のオーラと紫の瞳も消えた。
「はぁ…はぁ…何がどうなっている…」
シャインがよろよろと立ち上がり、辺りを見渡す。そして、振り向くと、血だらけで倒れているザウルスを見つけた。
「お前…」
シャインが近付いて、生きているか確認する。
「……死んでやがる。誰に…」
その時、血が付いている風砕牙に目がいった。
「……俺が殺したのか…」
そこで自分が殺したことを確信した。
「でも…何も覚えていない…一体、俺は何をしていたんだ…」
シャインが必死に思い出そうとするが、全く出てこなかった。
「……くそ、こいつの言葉が気に入らなかったぐらいまでしか思い出せねぇ!」
シャインが自分にイラ立ち、髪をグシャグシャとする。そして、はぁと一息して、動かないザウルスを見、
「命まで取る気はなかったんだ……すまなかった。」
と、申し訳ないという顔をして謝った。
「でもな、これだけは言わせてくれ。『力』は…『大切な人間を守る』ものだ。『民の幸せ』、つまり『人を守る』ということに、『歴史』、つまり『権力の暴走』ってことに繋がる。そのニ択に、お前は…いや、お前らは『歴史』を選んだ。それは人の上に立つ人間として失格だ。『権力』も使い方次第で、国にとって『大切な民』を守れるんだよ。」
シャインはそう言って、パーティー会場を後にしようとした。その時、
「シャイン!」
と、聞き覚えのある声が聞こえた。その方向を見てみると、紺色の髪のレビィが走ってきた。
「レビィじゃねぇか。」
シャインが小さく驚く。そして、レビィはシャインに近付いた時、血の中で倒れているザウルスを見つけ、
「……シャインが殺ったの?」
と、尋ねる。シャインは素直に頷く。
「殺す必要……あったの?」
レビィがまた尋ねる。
「……なかったさ。でも、殺す時の記憶がないんだ…」
「えっ…」
その時、サナ達も後から来た。
「だから、記憶がないんだ。いつの間にか死んでいたって状態だ。」
シャインが頭をかきながら言うと、
「やっぱり。」
と、サナとアレンが口を揃えて言う。
「魔力の感じがヤバかったからまさかと思ったけど…的中したわね。」
「あれ?なんでサナさんが知っているんですか?」
「私を舐めないでちょうだい。」
「ちょっ…2人だけで話しを進めないでくれ。俺のことだろ?なんか知ってんだったら教えてくれよ。」
シャインが2人の会話を止めて尋ねる。
「全てが終わってから説明するわ。」
「終わってからって、またこんなことがあったらどうすんだよ?」
「大丈夫、もう起きないよ。今はだけど。」
サナとアレンに言われ、シャインはモヤモヤを残したまま、
「ちっ…わかったよ。でも、終わったらちゃんと説明しろよ。」
と、了承する。
「さ、エアルのとこに行くわよ。」
サナがどこかに行こうとすると、
「場所わかったんのか?」
と、シャインが止めて尋ねる。
「ええ。私の魔力察知が範囲に入ったから特定済みよ。」
「範囲?」
サテラが首を傾げる。
「魔力察知は人によって感知できる範囲が決まっているの。私の範囲は…まあ、自分で言うのもなんだけど、並の人間より3、4倍はあるわ。」
「へぇ~」
サテラが納得する。
「で、そこにスノウはいるんですか?」
ヒューズが尋ねる。
「一直線にエアルの方に走っているわ。あいつって魔力察知できたっけ?」
サナが全員に尋ねると、
「勘だろ。」
と、全員がハモる。
「あっそ…」
サナが苦笑いする。
「じゃ、場所がわかってんなら、さっさと行くか!」
シャイン達はサナの案内のもと、エアルがいる場所に向かった。
シャインvsザウルス、パーティー会場での戦い。勝者:シャイン・エメラルド。
城のちょうど裏側には、とてもキレイで神秘的な聖堂がある。高い天井に美しいステンドグラス、真ん中をヴァージンロードが通り、奥には男の神を彫った石像が立っている。そんな聖堂の中に、1人の男が神の石像で膝をつき、両手を合わせて祈っていた。そこに、
「やっと見つけましたよ、お父様。」
ドレスを着たエアルが扉から入ってきた。
「エアルか…」
祈っていた男、ライズがエアルの方を見る。
「『キトリス教』に祈っても、この革命は終わりませんよ。」
エアルがライズに近付く。
・キトリス教…この世界にある宗教の1つ。他にも何個かあるが、9割以上の国がこの宗教である。
「何しにきたエアル?」
「頼みがあるから来ました。」
「頼み?」
「…単刀直入に言います。…降伏してください。」
エアルの頼みを聞いて、
「ふざけるな!!そんなことできるわけないだろ!」
ライズが怒鳴る。
「このままだと死ななくてもよかった人まで命を落としてしまいます!奴隷の人々は止まる気はないと思います。だから、私達王族が負けを認めるしか命を救うことができないんです!」
エアルも声を上げる。
「そんなことしたら、我々王族という地位も、この国が築き上げてきた歴史も消えてしまうのだぞ!」
「命より地位ですか!民の命があるからこそ、私達は王族という地位にいられるのです!民がいなくなれば、私達の地位なんてなんの意味もないんです!」
「我々王族がこの革命に勝てばなんの問題もない!!」
ライズの心のない言葉に、エアルは愕然とした。
「お父様には失望しました!」
「黙れ!!」
ライズの怒りが頂点に達し、服のポケットから銃を取り出しエアルに向けた。
「今謝ったら許してやる!」
「謝る気は全くありません!」
エアルの答えを聞き、ライズがはぁとため息をついてから、拳銃のハンマーを下ろす。
「そうか…なら、お前は王族の地位にいる資格はない!」
「それはこっちのセリフです!!」
「娘だとしても許さん!!」
ライズが発砲をしようとした瞬間、拳銃が突然ライズの手から離れ、フワフワと空中に飛んだ。
「な、なんだ!?」
ライズがジャンプして拳銃を取ろうとするが、届かない高さまで上がり、そのままどこかに飛んでいき、ある男の手に納まった。拳銃を持った男はそのまま銃口をライズに向け発砲した。銃弾はエアルの横を通り、ライズの肩を撃ち抜いた。
「ぐっ…!?」
ライズは傷口を押さえながら倒れる。
「お父様!?」
エアルがライズの方を振り向く。
「親が子に銃を向けるとは、親としてどうかと思うぞ…」
男が呟く。
「誰!?」
エアルが銃弾が飛んできた方をキッ!と睨み付けるが、撃った男を見て驚いた。
「あ、あなたは…『フォーグ・サイバスター』!!」
黒い服を纏い、長い白い髪で緑色の左目が隠れているフォーグが2人の前に現れた。
「フォーグ…キサマ…裏切るのか…」
ライズが痛みを堪えながら尋ねる。
「どういうこと…?」
状況が把握できていないエアルが尋ねるが、ライズは答えず、フォーグの方を見たままであった。
「裏切るもなにも、この国はもうもたない。あなたの国からは技術や資金を貰っていたが、こういう革命をされたら、ろくに訓練もしていない兵士が勝てるわけがない。だから滅びる前に切り捨てる。」
フォーグがハッキリと言う。
「では、我々をお前達の計画から外し、我々の命を助けるという契約は…」
「破棄に決まっている。」
「……!!ふざけるな!我々がどれだけお前達に貢献したと思う!冗談にもほどがあるぞ!」
ライズは激怒しながらフォーグに近付き、胸ぐらを掴む。
「そもそも、お前達との契約なんかを守る気なんて最初からなかったからな。」
「な、なんだと…!?」
「『ビッグバン』にそんな面倒な指示を入れると思うか?」
「では、我々は…一体何をしてきたのだ…」
胸ぐらを離し、よろよろと後退る。
「お前らは利用されていた。ただそれだけだ。」
その時、フォーグの掌から小さな魔法陣が現れ、聖堂の隅にあった鎧が持っている剣が何かの魔法にかかったようにフワッと浮いて、剣先がライズに向けられる。
「自分達のみが生きようとするからこんな結果を生むのだ、ライズ・ダイヤモンド。キサマはもう用済みだ…死ね。」
フォーグが魔法陣を展開している手をフッと振った瞬間、剣が勢いよくライズに向かって放たれた。
「お父様!!」
それにエアルは気が付き、助けようとするが、もう間に合わない距離だった。だが、次の瞬間、ガキン!!!と鉄と鉄がぶつかり合う音が響き、剣は空中を舞ってから離れたとこの地面に刺さった。そして、飛んできた物も空中を舞い、エアルの近くに刺さった。
「これは…刀!?」
なんと飛んできたのは風砕牙であった。エアルは風砕牙が飛んできた扉の方を見た。そこにはシャイン達が立っており、スノウも合流していた。
「そのおっさんは殺さないでほしいな…フォーグ。」
風砕牙を投げたシャインがフォーグを睨み付ける。
「エアル無事か!」
スノウがエアルに尋ねる。
「スノウ…みんな…」
シャイン達の姿を見て、エアルは目から涙がこぼれた。
「全員お揃いで…」
フォーグが睨み返す。
「何故止めた?せっかくお前らの手を汚さないでやろうとしたのに。」
フォーグが言うと、シャインはため息をついて、
「お前、なんか勘違いしてるぞ。」
と、呆れながら言う。
「なに?」
フォーグがピクンと反応する。
「俺らは別にライズを殺しに来たんだじゃねぇよ。」
シャイン以外も頷く。
「ほう…では何故お前らはここに来た?」
フォーグが尋ねると、
「『罰』を与えに来たんだ。」
と、シャインが答えた。
「罰だと?そんなもの『死』与えたらいいだけの話、罰などいら…」
「いるんだよ。それは…『戻る』罰だ。」
シャインの言葉に、フォーグは理解ができなかった。
「ライズがやってきたことは最低で最悪だ。このままこの革命に負けたら、まず王族の地位に戻れることはねぇだろう。だけどな、どんだけ悪者になってもな、エアルの『家族』ということは変わらないんだ。王族の地位に戻るのは不可能でも、家族に戻るのはまだ可能性がある。だから、ライズには『死』という罰じゃなく、『父親』として、エアルの『家族』として『戻る』という罰を与える。……ということだから、ライズを殺されると困るんだ。」
シャインが話終えると、フォーグがフフフと笑う。
「なるほど…家族に戻すか……くだらん!底辺まで落ちた人間が、どれだけ足掻こうと同じことだ!」
「足掻いて同じか同じじゃないかは、足掻く人間の努力次第だ!他人が決めつけることじゃねぇだろ!」
シャイン以外が戦闘体勢になる。
「エアル!お前はライズ連れて離れてろ!」
スノウに言われ、エアルは素直に頷き、自分の父親を連れて、邪魔にならないとこに避難する。
「シャイン、刀!」
避難している途中に、エアルはシャインに風砕牙を投げた。シャインは見事にキャッチして、
「ライズはエアルの家族に戻すんだ。だから、ライズは殺させねぇぞ…フォーグ!」
戦闘体勢になる。
「やれやれ、自分達の力を過剰に見ている奴らは…まあいい、敵わない力の前で絶望しろ!」
フォーグも戦闘体勢になった。
眼鏡「ふと、こんな疑問を持った人がいると思います……【あれ?シャインvsザウルスの戦闘、シャイン圧倒的過ぎない?】…と。まあ、これをぞくに言う『チート』というものですね。こうなってしまった理由はちゃんとあります……中身が全然思い付かなかったんです…。」
眼鏡「あともう1つ、『民の幸せ』→『人を守る』、『歴史』→『権力の暴走』という考え。これも【無理矢理じゃない?】と思った人、これに関しては、深く考えず、薄っぺらく、あっ、なんかカッコいいこと言ってるわ~、ぐらいの気持ちにしといてください…。」
眼鏡「では、次回はフォーグとの戦闘です!もうわかっている人もいるかもしませんが、フォーグの魔法が明らかになります!では、次回を楽しみにしてください!」