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魔法学園  作者: 眼鏡 純
40/88

40話 消えてゆく記憶(11)

眼鏡「祝40話ーー!いや〜あっという間に40まできてしまいました。だけどまだまだ『ヴァスタリガ編』は終わりません。飽々している人もいるかもしれませんがどうか見てください!では、どうぞ!」

 清潔感を感じられる、白くて大きな家がメインで建っている『貴族エリア』では、ヒューズVSロイクの戦闘が繰り広げられていた。


[伸身拳(しんしんけん)]!!」

ロイクの黒い腕が伸び、ヒューズに向かって放たれる。ヒューズはそれを簡単に回避する。


 ここでロイクの魔法を説明しておきましょう。ロイクの魔法はスノウと似ており、体の一部に魔力を溜めて攻撃するという魔法である。違うとこは、スノウの方は属性を変えることができるが、ロイクの方は属性を変えることはできず、その代わりに、体の強度を変えたり、伸縮が可能である。ちなみに、スノウは伸縮などはできません。では、続きをどうぞ。


 「[魚雷矢(ぎょらいや)]。」

回避したヒューズは、2本の矢を地面に放った。放たれた2本の矢は、地面の中を走り、ロイクに近付いた瞬間に爆発した。

「[アイアンボディ]!」

爆発する数秒前に気が付いたロイクは、体の強度を鉄に変えて防御する。だが、爆風により、空中に吹き飛ばされる。

[天矢(てんや)]!!」

ヒューズが空中にいるロイクに向かって、光属性の矢を放つ。ロイクはそれをギリギリで回避し、

[鉄伸脚(てつしんきゃく)]!!」

鉄に硬化された足を放った。ヒューズはまともに喰らい、誰かの家を貫いて吹き飛んだ。ここに住んでいた人は避難をしているので大丈夫である。着地したロイクは、ヒューズがどうなったか見ようとすると、砂煙が上がっている家の方から矢が飛んできた。ロイクはそれを簡単に回避した。矢は地面に刺さる。

「ビックリだよ、お前がここまで強くなるなんて。初めて見た時はここまでならないと思っていたのに。」

服に付いた汚れをパンパンと落としながら微笑む。

「裏切って、のうのうと生きているお前よりは強いと思うが。」

『裏切る』というワードに、ヒューズがピクリと反応する。

「俺は別に裏切ったてはいない。ただ、自由が許されているだけだ。」

「なるほど、お前の『肩書き』ならそれが可能ってことか。」

「まあ、俺の肩書きは誰がどうしようと絶対に変えられないし、ちゃんと『あの人』の了承を得ている。」

「帰ってくる気はないのか?」

「まだ高校生活を楽しみたいからな…まだかな。ただ…」

ヒューズが弓を構える。

「お前が3大革命柱という席に座っているのが気にくわない。だから…消す!」

「ふざけるな!お前の個人的なことで消されてたまるかよ!俺がお前を消してやる!」

ロイクの腕が巨大化する。

「[ジャイアントナックル]!!」

巨大な腕が迫ってくるが、ヒューズは動じない。

「なんか忘れていないか?放った光の矢は、ただの不発ではないぞ。」

次の瞬間、ヒューズが放った『天矢』が急降下してきて、ロイクの巨大化した腕を貫いた。

「がっ…!?」

腕がもとに戻って怯んだ。それと同時にヒューズは地面を蹴り、ロイクを空中に蹴り飛ばした。

「もう一度言っておくぞ…お前に3大革命柱の称号は荷が重かった。」

ヒューズが、オーロラのように輝く、青色の矢を放つ。放たれた矢はロイクの目の前で無数に分裂し、360度取り囲んだ。ヒューズはクルッと振り返り、

[無双幻矢(むそうげんや)]!」

パチンと指を鳴らした。次の瞬間、無数の矢がロイクを貫いた。貫いた矢は消え、ロイクは地面に落ちた。

「お、お前…本気で…裏切る…気か…」

血だらけのロイクが最後の力を振り絞り尋ねる。

「だから、裏切っていませんって。ただ、今はシャインの仲間です。だからあなた達を敵と見なす。それだけです。まあ、あなたを倒したのは、個人的ですけど。」

口調を紳士的に戻し答えるが、ロイクにはもう届かなかった。

「私は今の生活が好きなんです。邪魔をしないでください。」

もう動かなくなったロイクに言い、城の方に向かった。


 ヒューズVSロイク、貴族エリアでの戦い。勝者:ヒューズ・クオーツ。


 赤茶色の絨毯が敷かれた秘書室で、サナとイルファが睨み合っていた。サテラは、サナに言われ部屋の隅に待機している。

「知ってる?魔法を極めた人間の弱点って?」

イルファが尋ねると、サナが首を傾げる。

「それは…」

次の瞬間、イルファがサナに向かって走り、サナを蹴り飛ばした。まともに喰らったサナは吹き飛び、本棚に叩き付けられ、倒れる。

「『肉体』よ。魔法を極めた人間は、どうしても体を鍛えるのを怠ってしまうの。だけど、私は両方鍛えているから、それが弱点にならない。」

イルファが眼鏡をクイッと上げる。それを聞いたサナはフフッと笑いながら立ち上がる。

「じゃあ、あんたみたいな奴の弱点って知ってる?」

「さあ、何かしら?」

「それは…」

次の瞬間、イルファの足下に魔法陣が現れ、そこから雷が放たれる。イルファはそれをまともに喰らいって倒れる。

「両方とも『中途半端』になってしまうことよ。あんたの言った通り、体は鍛えられていない。だけど魔法だけを見ると、あんたより上よ。」

イルファはヨロヨロと立ち上がり、壊れた眼鏡のレンズを魔法で直す。

「なるほど。あなたの言う通り、魔法だけを見ればあなたの方が上ね。だけど、それはあくまでも魔法『だけ』を見た時。総合的に見ると私の方が上よ。」

「そんなの分かんないわよ。しかも、あんたからは聞き出さないといけないことがあるのよ![アイスニードル]!!」

氷柱がイルファに向かって乱れ飛ぶ。

「それはサテラのことかしら?[フレイムスネーク]!!」

炎の蛇が氷柱を溶かし、そのままサナに襲いかかる。

「[封魔天光]!!」

とっさに光の防御系魔法でガードする。それを見たイルファは、

(!今の技…!ということは、この子…!)

イルファが何かに驚いるのを、サナが「ん?」となる。

「あなた…生まれはどこ?」

イルファの質問に、サナは答えるのを戸惑う。

「答えられないの?」

「……エクノイアよ。それが何?」

「……そう。」

「…今は私のことなんか関係ない!私はサテラの事を聞きたいのよ!」

サナが何かを隠すように、怒鳴りながら尋ねる。

「はぁ…いいわ、話してあげる。」

イルファはサナの一点張りに負け、話すことにした。

「私はある研究施設の元研究員よ。そこで私がしていたのは…『人体実験』。その実験に耐えきれなくなった私は、その研究施設を飛び出した。そして、飛び出す前に実験した最後の人間が…」

イルファが部屋の隅で震えているサテラを見る。

「サテラってこと?」

サナが尋ねると、イルファが頷く。

「てことは、記憶封印魔法をかけたのは…」

「私よ。」

「なんで記憶を封印する必要があったのよ?」

「基本的、実験は失敗してしまうから、使われた人間は死んでしまう。だけど、サテラだけは成功した。それにより、とてつもなく魔力が上がった。だけど、魔力が高すぎて、サテラにその能力を扱えず、暴走してしまった。誰も止めることができず、どうすることもできなかった。その時、思い付いたの。魔力を封印すれば、この暴走を止められるって。だから、私はサテラの魔力を封印して暴走を止めたの。」

「なら、魔力だけでよかったじゃない。なんで記憶まで封印する必要があったのよ?」

「あなたも知っているんでしょ?記憶と魔法はどこかで繋がっているという理論。だから私は記憶も封印したの。だけど…」

「だけど、その記憶封印魔法が拡大して、徐々に最近の記憶まで封印し始めているのね?」

「…そうよ。」

「なら、記憶を解きなさい!じゃなきゃサテラの記憶が全て失ってしまうわ!」

「…いいけど、そんなことすれば、一緒に封印している魔力までも解かれ、サテラの力が暴走して、私達も、あなた達も、ザファールスいる全員死ぬことになるわよ。青幽鬼(ブルーファントム)の恐ろしさなら、知っているでしょ?」

「記憶が無くなれば、人は感情だって無くなってしまう。そんなの人形同然じゃない!」

サナが怒鳴る。

「じゃああなたは、サテラ1人のために、この国いる全員を殺すの?」

「そ、それは…」

サナが答えるのに戸惑っていると、

「記憶を解く必要はありません。」

サテラがヨロヨロとサナに近付き、イルファに言う。

「バカ!このまま放っておくと、あなたの全ての記憶がなくなっちゃうし、この先生きても、記憶が残らないのよ!」

サナが怒るが、

「だけど、皆さんを傷つけるくらいなら、その方がいいです。」

サテラがサナに優しく微笑む。そんなサテラに、サナは言い返す言葉が出てこなかった。

「昔に、私とあなたの間に何があったかは思い出せません。だから私は、今の記憶に従い、シャイン達の仲間として、あなた達を倒します!」

サテラの体から青色の炎が上がる。イルファはそれを見て、戦闘体勢になる。

[幽鬼槍(ファントムランス)]!!」

青色の炎の槍が放たれる。イルファはそれを回避して、サテラの目の前まで走る。

「敵になるんなら、たとえ子供だとしても容赦はしないわよ。」

イルファはサテラに囁いてから、思い切り蹴り飛ばした。

「[プラントネット]!!」

吹き飛んだサテラが本棚にあたる寸前に、草の網がうまくキャッチした。

「ありがとうございます、サナさん。」

サテラがお礼を言いながら、草の網から出る。

「私もいることを忘れないでね。」

サナがニヤッと笑う。

「いいの?私を倒すと、サテラの記憶を解く人間がいなくなるわよ?」

「それくらい、私が解いてやるわよ。何年経ってもね。」

「そう…じゃあ、最後に聞かせて。何故あなたがそんなにムキになるの?」

「そんなの、私だって分かんないわよ。ただ、なんかムキになんのよ。」

サナが小さく笑う。

「そう。これで私のモヤモヤが解消されたから、死んでもらうわ。」

「そうはいかないわ。行くわよサテラ!」

「はい!」

「死になさい![デモンズハンド]!!」

イルファが唱えると、サテラの頭上の空間に穴が空き、中から悪魔の腕が現れ、サテラを掴んだ。

「キャッ!!」

「[エンジェルリング]!!」

サナが唱えると、悪魔の腕を囲むように大きな天使の輪が現れ、悪魔の腕とともに消滅した。

「そう簡単にはいかないか…なら…」

イルファがサナに向かって走り、

「格闘でいこうかしら。」

蹴りを喰らわす。サナはそれを腕で防御する。そのまま、格闘戦にもつれ込む。

「へぇ…少しはできるのね。」

イルファがクスリと笑う。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

慣れない格闘戦で、サナが息が上がる。

「サナさん!」

サテラが援護しようとすると、

「ダメよ!あんたにもう魔力がないんだから!」

イルファの攻撃を受けながら、サナが叫ぶ。

「1人でこの状況をどうするつもりなの?」

攻撃を続けながら尋ねる。

「大丈夫よ。だって…」

次の瞬間、

[幽鬼鞭(ファントムウイップ)!!」

数本の青色の炎の鞭が、イルファを後ろから捕獲した。それにより、イルファが身動きがとれなくなった。

「な、何!?」

「1人で闘う気なんてないんだもん。」

サナがニヤッと笑う。

「サテラが…なんで…魔力がないんじゃ…」

イルファがサナに尋ねる。

「説明は後。先に…トドメをさしてやるわ!」

サナの周りに電気が走る。そして、右の掌をイルファに向けると、電気が右手に集中する。

「[サンダーボルト=キャノン]!!」

次の瞬間、巨大な一本の青色の(いかずち)がイルファを貫いた。イルファが喰らったと同時に、サテラは青色の炎の鞭を解除する。イルファは焦げて感電しながら倒れこんだ。

「さて、タネ明かしといきましょうか。私が仕掛けたのは、人間の心理を利用した罠よ。あんたは、私の言葉で『サテラには魔力がない』、つまり攻撃がこないと思ったでしょ?実はサテラにはまだ魔力が十分あったの。だけどあんたは私に攻撃していたから、そんなことを魔力察知とかで確認する暇なんてなかった。だから、あんたの頭の中では無意識にサテラを敵対象から外した。それにより、サテラに対して油断ができ、隙ができる。それが罠よ。」

それを聴いてイルファが、

「私は、まんまとあなたの罠にかかった。てことね?」

力を振り絞り、尋ねる。

「そういうことよ。」

サナが頷く。

「そう……じゃあ最後にあなたに言わせて……嘘はダメよ…『同族』さん…」

イルファはクスリと笑い、囁くように言ってから目を閉じ、力尽きた。サナはイルファの言葉にピクリと反応してから、

「はぁ~疲れた…やっぱり格闘はダメね…」

と言いながら、へたりと座り込む。

「死んでしまったんですか?」

サテラがイルファに近付き顔を覗く。

「死んじゃないないわ、気を失っているだけよ。」

サナがゆっくりと立ちながら答える。

「この人、昔に私を助けてくれたんでしょうか?」

「さあ、知らないわ。」

サナが腕組みをする。

【嘘はダメよ…『同族』さん…】

サナの頭の中に、イルファの最後の言葉がよぎる。

(同族…そんなことを言うということは、あいつも『あっちの世界』の人間……でもなんで私があっちの世界の人間だと分かったのかしら…… ! 『封魔天光』!でもあの技を知っているのはごく一部の人間のみ…てことは、イルファがごく一部の人間の1人ってこと?………)

「サナさん!!」

サテラが叫ぶ。それにより、サナがビックリする。

「な、何!?」

「だから、これからどうするかということです。」

「あ、あ~そうね、とりあえずここから移動しましょう。」

サナとサテラは、倒れているイルファをおいて、秘書室を出た。


 サナ&サテラvsイルファ、秘書室での戦い。勝者:サナ&サテラ。

眼鏡「少し記憶封印魔法について捕捉説明をしておきます。」

・記憶封印魔法は、文字通り、記憶を『封印』する魔法ですので、記憶が消えたわけではありません。そして、この魔法は、過去から順に封印していき、拡大していくにつれ、最近の記憶なども封印してしまうのです。ですが、記憶喪失と似たようなものなので、記憶が甦るような強い刺激があれば、記憶は解かれます。


眼鏡「う~ん…捕捉になっていたのか不安です…もし分からなければ、感想などで質問してください。」


眼鏡「では、次回をお楽しみに!」

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