38話 革命へ(9)
眼鏡「正直に言って、今回の話は繋ぎです…なので中身は微妙かと…たがら、軽い感じで見てください。」
スノウが過去を話した翌日、むくりと布団から起きたシャインは、冬の寒さにブルッと震えながら立ち上がる。そして周りを見てみると、レビィの姿だけなかった。何処にいったと思い、外に出てみると、雪がちらちらと降っていた。
「主ではないか。まだ6時だぞ。」
シャインが立っていると、そこに黒髪、赤い瞳のナイトが近付いてきた。
「目が覚めたもんで。何してたんだよ?」
「ここ数日バタバタしてちゃんとした鍛練が出来ていなかったから、少し森の中でしてきたのだ。」
「ふ~ん…でもそんなのレビィが怒るんじゃないか?私の体よー!的な感じで。」
「奴から頼まれたのだ。私もみんなのために強くなりたいけど、鍛練仕方なんてちゃんと知らないから、ナイトがやって。とな。」
「そうなのか…じゃあよ、久々にお相手してもらおうかな。」
シャインが風砕牙に手をかける。
「…いいだろう。主であろうと容赦はせんぞ。」
ナイトが承諾し、2人はナイトが鍛練していたルルハの少し外れにある森の中に移動した。
森に入った2人は、ナイトが鍛練していた場所に到着した。
「さて、始めようか。」
シャインが風砕牙を抜く。
「来い。」
それと同時に、ナイトが夜桜を抜く。そして数秒後、2人同時に地面を蹴り、2本の刀がぶつかった。そして数分間の攻防があり、2人が間合いを開ける。
「腕上げたじゃねぇか。」
「主が鈍ったのでは?」
2人がニヤリと笑い合っていると、木と木の間から、のそっ、のそっ、と巨大な青色のトラが現れた。だがその姿は、足が6本あり、尻尾が3本生えているという、なんとも奇妙な姿であった。
「トラの域を越えてんじゃねぇか。」
トラの顔を見上げ、シャインが呟く。
「まあ、魔物だからなんでもありだろう。」
その時、シャインの腹がぐ~っと鳴った。シャインは鳴った腹とトラを交互に見て、
「なあ…こいつって食えると思うか?」
と、ナイトに尋ねた。
「まあ、食べれないわけでないだろ。」
と、ナイトが答えると、シャインはニヤリと笑い、
「決めた。こいつを朝飯にする。」
と、決定する。
「そう言うと思ったぞ。」
ナイトが夜桜を構える。
「行くぞ!!」
2人がトラに向かって走る。トラはガァァァ!!と雄叫び、3本の尻尾で攻撃してきた。2人は簡単に回避し、シャインが風砕牙をグッと構え、
「[斬風、"嵐"]!!」
横振りをすると、トラの足下から斬撃の竜巻が発生し、トラを切り裂く。
「[夜刀、"影鳥"]!!」
怯んだところを、ナイトは無数の鳥の形をした影で追い撃ちをかける。トラがヨロヨロしている間に、シャインが能力解放をし、ナイトも魔力を高める。
「トドメ行くぞ!」
2人が同時に地面を蹴る。
「明るい夜に交差する!…[白夜十文字]!!」
交差しながら、突き攻撃を放った。まともに喰らったトラはズウンと音をたてながら倒れた。
「ふ~〜」
シャインは一息しながら、能力解放から戻り、風砕牙を鞘に納める。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
ナイトがレビィから戻り、へたりと座り込む。
「大丈夫か?」
シャインが倒れたトラの3本の尻尾を束ねて持ちながら尋ねる。
「だ、大丈夫…」
レビィが疲れきった顔で笑って見せながら立ち上がる。
「そうか。じゃあ、帰るか。」
シャインはトラを引きずりながらルルハに戻る。
(もうちょっと心配してくれてもいいじゃない…)
少しムスッとしながら、シャインの後ろを付いていった。
2人がルルハに帰ってくると、スノウ達が起きていた。
「お前らどこいってたんだよ?…て、何だよそれ?」
スノウがトラを見て、苦笑いしながら尋ねる。
「朝飯。」
シャインがズンとスノウ達の前にトラを置く。
「気持ち悪いトラね。」
サナが素直な感想を呟く。その隣でサテラがダラダラとヨダレを垂らしている。
(この子は…)
サナが呆れる。
「あのトラはこの辺の魔物の主じゃないか。」
遠くから見ているテオンが唖然とする。
「あのトラを倒せるなんて…なんて奴らだい。」
カカもテオンの隣で唖然とする。
そんなこと知らずに、シャイン達はトラを丸焼きにした。それをルルハにいる全員が美味しく召し上がった。
「さて、テオンさん、そろそろ始めましょう。」
サナがテオンに言うと、テオンは無言で頷き、村の中心に向かう。
「何するんだ?」
スノウが尋ねる。
「テレパシーよ。でもあんた達も他人事じゃないのよ。少し手伝ってもらうわよ。」
「どう手伝うの?」
レビィが尋ねると、サナが説明を始める。
「今からテオンがテレパシーを使う。その範囲を広げるために私の魔力をあげる。だけど、さっき計算した結果、魔力が足りないことが分かったの。だからあんた達の魔力も使うから、あんた達は私達に魔力を集めなさい。」
「どうやってだよ?」
シャインが尋ねる。それを聞いて、サナは人数分の小さな魔法陣を出現させる。
「その上に立って魔力を高めると、自動的に私に魔力が集まるから。」
「直接テオンじゃないのか?」
スノウが尋ねる。
「テオンさんはそんなに魔力を持てないから、一旦私に集めて調節するの。」
「ふ~ん…」
スノウが納得する。
「さ、みんな始めるよ。」
テオンの合図と同時に、シャイン達は魔法陣の上で魔力を高める。テオンはテレパシーを発動する。すると、シャイン達の頭の中に直接話されているかのように、いろんな人の声が響いてきた。突然のテレパシーでほとんどの人が驚き、ざわざわしている。
「なんで俺達まで聞こえんだ?」
スノウが驚きながら尋ねる。
「たぶん連動してるんでしょうね。気にしないで!集中しなさい!」
サナが叱る。
「みんな!僕はルルハのテオン!いきなりのテレパシーに申し訳ない!だけど、少し聞いてほしいことがあるんだ!」
テオンが叫ぶと、さらにざわざわとする。だけど、テオンはなんとか静め、説明を始めた。そして、説明が終わった瞬間、
「ふざけるな!」
「そんなことできると思っているのか!」
「死刑になって終わりだ!」
と、罵声が飛び交う。それを聴いていたシャインは、イライラが頂点に達し、
「じゃあてめぇらはこのままでいいのかよ!!」
と、怒鳴った。それによって全員が黙り、少し沈黙が流れてから、シャインが話を続ける。
「じゃあ、お前らは今の『格差身分』に満足してんのかよ?してねぇだろ!だったら、自分達で変える気はないのか!待っていたってこの国は変わらない、変えるためには自分達で革命を起こすしかないんだ!革命を起こす日は今日から3日後の『クリスマス』!!集合場所は門近くの森の中だ!この国を変える気がある奴だけ集まりやがれ!!」
シャインは話が終わると同時に魔力を低める。それにより魔力が不足し、テレパシーが切れた。
「おい、そんなのでよかったのかよ?」
スノウが尋ねる。
「いい。覚悟のない奴は足手まといになるだけだからな。」
シャインが答える。
「誰も来なかったらどうすんのよ?」
サナが腕組みしながら尋ねる。
「その時は…その時だ。だけど、俺はこの国の奴隷達が、そんな腰抜けなんて思っていないさ。」
シャインの答えを聴いて、
「そっ。」
と、サナが呟いた。
奴隷達への説得が終了し、一段落したとこで、ルルハの入口の門が開き、見たことある人物が近付いてきた。
「アレンじゃない!」
なんとそれは、緋色の髪のアレンだった。その姿を見て、レビィが驚く。
「一緒には戦えないと言っていたのに、どうしたんですか?」
ヒューズがアレンに尋ねる。
「シャインに頼まれていたのができたから持ってきたんだ。」
アレンがカプセルを取り出し、それをポイッと投げると、ボンという音がして、中から人数分のアタッシュケースが現れた。そこには個人の名前が書いてあった。
「おっ、間に合ったようだな。」
シャインが自分のアタッシュケースを取る。
「何が入っているの?」
レビィがアタッシュケースを取って尋ねる。
「開けてみりゃ分かるよ。」
それを聴いて、レビィ達は一斉にアタッシュケースを開けた。中には黒色の、男にはタキシード、女にはドレスが入っていた。
「わぁ、綺麗です!」
サテラがドレスを取り、合わしながらはしゃぐ。
「このタキシードとドレスは俺の戦闘服と同じ素材で、鎧とかより強度がはるかに上だ。それをSMCで作っているって聞いたら、アレンに頼んでおいたんだ。」
「なんでタキシードとドレスなの?」
レビィが尋ねると、シャインがハッと笑う。
「俺らが行くのは城だぜ?ドレスアップしなきゃいけないだろ。」
「それだけの理由だけで…」
レビィが苦笑いする。
「さて、準備は整った。あとは時が来るのを待つだけだ。」
シャイン達は3日後のクリスマスまでルルハで待機した。この間も、他の村の奴隷達の心は揺らいでいた。
そして、あっという間に3日が経ち、クリスマスとなった。ザファールスはクリスマス一色になり、サンタからプレゼントを貰った子供達が大喜びしている。
シャイン達は浮かれることなく、アレンから貰ったタキシードとドレスを身に纏い、集合場所にいた。
「全然来ないわね。」
サナの言う通り、集合場所には、ルルハの村人以外、誰もいない。
「集合時間過ぎました。どうしますかシャイン?」
ヒューズがシャインに尋ねる。
「……仕方ないか…よし、俺らだけで乗り込むぞ。」
シャインが言うと、他の全員が頷く。そして、門に向かおうとした時、
「待ってくれ!!」
何処からか声が聞こえ、全員が声がした方を見る。そこには他の村人達がたくさんいた。
「俺らも一緒に戦わしてくれ!」
「もう奴隷生活はうんざりだ!」
村人達が決意を叫ぶ。その光景を見てから、シャイン達は顔を見合せ、ニッと笑った。
「さあ、行くぞお前ら!!」
「オーーーーーー!!!」
シャインを先頭に、全員がザファールスに向かって走り出した。
眼鏡「ついに、ついに次回から戦闘に入りそうです!」
眼鏡「そして、何も話すことがないので、たぶんですけど、次回から前書きと後書きは書かないかもしれません。ですけど、中身は精一杯頑張りますので、応援よろしくお願いします。では、次回をお楽しみに!」