34話 奴隷の村(5)
眼鏡「皆さん、メリークリスマーーース!!」
眼鏡「いや~もうクリスマスですね~♪でもクリスマスや年末の最後ということで忙しく、全然こっちが書けなくて遅れてしまいました…すいません。1週間をめどにして書いておりますが、遅くなる可能性の方が高いです。」
眼鏡「さて、次回予告でヴァスタリガを冒険すると言っていましたが、都合により全然違うものになっちゃいました。だから次回予告のことは無視してください。では、早速見てください!」
シャイン達は奴隷の村、ルルハに向かうため、山を登っていた。
「あそこだ。」
スノウが指を指す方向は、森がなくなって平地になっており、木の柵に囲まれていた。その中には、古くボロボロの木製の家が並んでいた。
「あそこが俺の故郷、ルルハだ。」
先頭のスノウが振り返り、全員に紹介する。
「で、ここに何しに来たんだ?」
シャインが尋ねる。
「ここはザファールスに一番近いし、俺の知り合いもいるから拠点になると思ったんだ。あと、協力は町人や貴族よりしてくれるはずだからな。」
「ふ~ん…で、その知り合いって誰なのよ?」
サナが尋ねる。
「まあ、聞きたいことはあると思うが、とにかく中に入ろう。話は後からだ。」
そう言ってスノウは村の入口に向かう。シャイン達は付いていくことにした。
「誰ですか?町人でも貴族でも…王族でもなさそうですが…」
入口の前に行くと、見張りの男が丁寧な口調で尋ねてきた。その格好はボロボロの布でできたグレーの上下の服で、お世辞でも裕福とはいえない。
「なんか警戒してるというより、怯えている感じだな。」
スノウの後ろでシャインがヒューズに囁く。
「この国は自分より身分が高い者には絶対服従ですからね。ヘタに行動すると危険だからでしょうね。」
ヒューズが囁き返す。
「俺はスノウ・シルバーだ。覚えて…いるかな?」
スノウが尋ねると、見張りの男は少し考え、ハッと思い出す。
「『銀野良』の…スノウ?」
見張りの男が言うと、スノウは頷く。
「おお!スノウか!久しぶりだな!あの事件以来か?」
見張りの男が急に明るくなり、スノウをバシバシ叩く。
「まあな。」
「でも突然どうした?こんなとこに戻ってくるなんて。」
見張りの男が叩くのを止め、理由を尋ねる。
「少し厄介なことが起きたんだ。協力してほしいのと、少し俺達の拠点地にしたいんだ。」
スノウが理由を説明する。
「後ろの人達は?」
見張りの男が後ろにいたシャイン達に目をやる。
「あいつらは俺の仲間だ。」
スノウが紹介する。
「そうか。では、入れ。」
見張りの男が入口をギ〜と開ける。そして、スノウ達はルルハに入った。
中に入ると、見張りの男同様の格好をしている人達がいた。みんな痩せており、栄養がとれれていないのだろうなと思うと、レビィは心が痛んだ。
「やっぱり、ここにいる全員、警戒というより怯えてやがる。」
シャインが周りの人の反応を見ながら呟く。
「そりゃそうでしょ。ここに来る奴隷以外の人間は、奴隷達を買いに来てるの。私達は奴隷じゃない。買われるかもしれないって怯えて当然ね。」
シャインの呟きを聞いていたサナが囁く。
2人が話している間に、スノウ達はこの村で一番大きな建物に到着した。
「ここは?」
レビィがスノウに尋ねる。
「ルルハの村長の家。」
説明しながらスノウがドンドンとドアを叩く。すると、中から腰の曲がった80歳ぐらいのお婆さんが杖をつきながら少し怯えながら出てきた。
「何かようかね?」
見えているのか見えていないのか分からないぐらいしか開いていない目でスノウを見つめる。
「久しぶり、『カカ』婆さん。」
スノウがニッと笑う。だが、カカと呼ばれた老婆はまだ誰か認識していない。そこに、家の中からスノウぐらい背の眼鏡をかけた男が出てきた。その男とスノウが目が合った瞬間、同時に驚いた。
「スノウ!?」
「『テオン』!!」
2人のリアクションを見たシャインが、
「誰だよ?」
と、スノウに尋ねる。
「俺の『兄貴』だ。」
「兄貴!?」
全員が一斉に驚く。
「血は繋がっていないが、小さい時に親がいない俺をずっと面倒を見てくれてたんだ。だから、俺にとってテオンは兄貴みたいな人間なんだ。歳は俺らより5歳上だ。」
スノウがどこか嬉しそうに説明する。
「そちらは?」
水色の髪に水色の瞳のテオンがシャイン達を見てスノウに尋ねる。
「こいつらは俺の仲間だ。被害は加えないさ。」
スノウが説明すると、テオンはそっ、と言って、
「初めまして。僕の名は『テオン』。スノウの兄貴分だ。よろしく。」
「シャイン・エメラルドだ。」
シャインとテオンが握手していると、2人の下の方から、
「テオン、この人達はお前さんの知り合いか?」
と、カカの声が聞こえた。
「カカ婆さん、こっちの銀髪はスノウ・シルバー。『銀野良』だよ。そして、あの人達は、スノウの仲間さん達。」
テオンはカカに説明する。
「銀野良…………………………………おお!あの事件を起こした奴じゃな!」
カカは考えて考えてやっと思い出した。経過した時間は約30分だった。この間にテオンは村の全員にスノウ達の説明をしておいた。
「なげぇよ…」
シャインがげんなりしながらカカにツッコむ。
「でも何でテオンがカカ婆さんの家から?」
スノウが尋ねる。
「少し用事があったら居てただけ。用事はもう済んだから気にしないでくれ。さ、とにかく皆さん家に入ってください。」
と言って、スノウ達とテオンとカカは家に入った。
家の中は畳が敷いており、その上に全員が座った。それにより、1人のエリアはかなり狭い。いや、サナだけは潔癖症で玄関で腕組みをしながら立っていた。
「さて、ただの里帰りではないだろうから、ここに来た理由を説明してくれないか?」
テオンがスノウに尋ねる。スノウは包み隠さず話した。それを聞いたカカが、
「つまり、お前さん達は仲間のダイヤモンド財閥の娘を連れ戻すため、一国を相手にするつもりなのじゃな?」
と、カカがまとめながらシャインに尋ねる。
「そうだ。」
シャインが頷く。その答えを聞いて、カカがはぁと呆れる。
「バカ言ってんじゃないよ。そんなことして、ただで済むと思っているのかい?」
「僕もカカ婆さんに賛成だな。王族に逆らって、一国を相手にして…ただの自殺行為だと思うぞ?しかも君達はエクノイアの民というじゃないか。このヴァスタリガには全く関係ないじゃないか。」
テオンがシャインに尋ねる。
「俺らは別にヴァスタリガを変えに来たんじゃねぇ。ただエアルを連れ戻しに来ただけだ。向こうが素直にエアルを返してくれたら、戦う必要がない。だけど、そんなのあるわけねぇから、戦うんだ。」
「それでも、取り返せる可能性より、死ぬ可能性の方が高い…」
「仲間を守れないぐらいだったら死んだ方がマシだ!」
テオンの言葉を遮るようにシャインが叫んだ。テオンは揺れ動かないシャインの目を見て、もう何を言っても無駄だと悟り、はぁ〜と大きなため息をつく。
「他の人は…いいのか?」
テオンはスノウ、シャイン以外の全員に尋ねる。
「じゃなきゃここまで来ないでしょ。」
サナが腕組みをしたまま代表で答える。後の皆が一斉に頷く。
「このバカ高校生ども…わしゃもう知らん!勝手に死ぬなりなんなりしなさい!」
カカは怒りながら、奥の部屋に入ってしまった。
「ああ言ってるけど、カカ婆さんも心配してるってことは分かってくれ。」
テオンがカカの思いを代わりに言う。
「ああ分かってる。」
スノウが頷く。
「で、この村には何しに来たんだ?」
「それはテオンに、いや、この国にいる奴隷達に協力してほしいんだ。」
「協力?」
「流石の私達だってたった7人で勝てるとは思っていないです。だから、奴隷の皆さんも一緒に乗り込んで欲しいんです。」
レビィが説明する。
「それを何で僕に言うんだ?」
「テオンって人脈がすごいから、他の奴隷達を説得してほしいんだ。」
スノウが手を合わせて頼む。
「あのな、村なんてここ以外にたくさんあるんだ。何日かかると思っている、無理に決まっているだろ。」
テオンが無理だと否定した時、
「『テレパシー』使えんでしょ?あんた。」
玄関に立っているサナが入り込んできた。
「なんで知っているの?」
図星だったテオンが驚きながら尋ねる。
「そこに積んである本、魔法本でしょ?その一番上の本にはテレパシーの使い方が書いてある。テレパシー自体は難しくないから、使えるでしょ?」
「……でも僕の魔力はそんなに高くないから、国全体までは届かないよ。」
「大丈夫、私が協力したらいけるから。」
「……わかった。そこまで言うんだったら、協力しよう。」
テオンが承諾する。
「恩に着る。」
シャインが小さく頭を下げ、お礼を言う。
「今思ったんですけど、いつ決行するんですか?」
ヒューズがスノウに尋ねる。
「冬休みにはあるイベントがあるだろ?その日だ。その方が印象に残りやすいからな。」
スノウがニヤリと笑う。それを聞いてスノウ以外がシンキングタイムに入り、一斉に答えが分かった。
「じゃあ、少し日が空くわね。それまでどうすんのよ?」
サナが全員に尋ねながら背伸びをする。
「各々ゆっくりしとけばいいよ。空き家もあるからそこを使ってくれ。」
テオンが提案し、それに全員甘えさせてもらい、ある日が来るまでルルハで休むことにした。
話し合いが一通り終わった時、カカ婆さんの家で休んでいたサテラがシャインの裾をクンクンと引っ張る。
「どした?」
シャインが尋ねる。
「お腹…すきました…」
グ〜とお腹を鳴らして訴える。
「まー、昼過ぎだからな。」
「僕達を見て分かるように、ここには食料がほとんどない。皆今日食べていくだけで精一杯なんだ。ゴメンね。」
テオンがサテラの目線まで屈んで謝る。
「そうだな。俺も腹減ったし、『かってくるか』。」
そう言ってシャインは立ち上がる。
「買ってくる?多分ザファールスには入れないよ。」
テオンがそう言うと、シャインがきょとんとした顔で、
「なんでザファールスに入る必要があるんだよ。」
と、テオンを見る。
「え?だって今『買ってくる』って…」
「違うよ、『狩ってくる』んだ。」
と、ニヤリと笑いながら、カカの家を出て、ヒューズとスノウを呼んだ。すると、昔の友と話していたスノウと、女の人を口説いていたヒューズが近付いてきた。
「なんかようか?」
「夕食用の食料を狩りに行くぞ。」
「了解。」
スノウとヒューズが考えることなく頷く。
(了承はやっ!)
テオンが心の中で驚く。
「昼は間に合わなかったけど、夜にたらふく食わせてやる。」
シャインがサテラの頭を優しくポンと叩いてから、出発した。サテラは手を振って見送った。
シャイン、スノウ、ヒューズが狩りに出掛けている時、首都ザファールスの中心にそびえ立つ城の中で、赤い豪華なドレスを身に纏っているエアルが、赤い絨毯が敷いている自分の部屋の窓から雪がちらつく外を眺めていた。
(みんな、どうしているかな…)
エアルがシャイン達のことを心配していると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「誰?」
エアルがゆっくりドアの方に振り返る。すると、ドアがガチャッと開き、白いスーツを着たライズが入ってきた。
「お父様…」
今のエアルからは全く笑顔がない。
「『ヘイホ』男爵がお前に会いたがっている。来なさい。」
ヘイホ男爵、有名な一族の1人。少し小太りで、エアルをえらく気に入ったらしい。エアルは生理的に受け付けなかった。
「……まだ、あの者達に希望を持っているのか?」
ライズが少し呆れた表情で尋ねる。エアルは黙ったままドアに向かい、ライズの隣を通り過ぎる。
「流石のあの者達も、国自体を相手にしないだろ。ただの無駄死にするだけだからな。」
ライズの言葉を聞いて、エアルはピタッと止まって、
「スノウ達は、必ず来ます。私は、信じています。」
それだけを言って、ヘイホ男爵がいる部屋に向かった。
シャイン、スノウ、ヒューズが狩りから帰った頃には日が落ちかけ、キレイな夕日が見える。
「ただいま帰りました。」
ヒューズが空き家の中に入って戻ってきたことを報告しにきた。
「獲物は?」
部屋の隅で座って本を読んでいるサナが尋ねる。
「シャインとスノウが持ってきています。」
そう言うので、レビィ、サナ、サテラは家を出た。すると、入口の方から、シャインとスノウが大きなマンモスのような魔物の2本の牙を持って、引きずりながらこちらに向かってきていた。村の住人はその光景を見て、ただ驚くしかなかった。
「これだけあれば、村の全員たらふく食べれるだろ。」
シャインが少し笑いながら、スノウと共に村の中心の広場に、ズンと魔物を置いた。
「化け物ね…あんた達…」
サナが魔物を見ながら呆れる。
「さ、宴の用意でもしますか!」
スノウが言うと、さっきまで驚いていた村の住人達と、シャイン達が、
「おーー!」
と、一斉に拳を上にあげた。
「じゃあ、私達は待っとこうか。」
レビィが隣にいるサテラを見ると、サテラは口から、飢えた野獣のようにダラダラとよだれを垂らしていた。
(どんだけ食べたいのよ…この子は…)
レビィは苦笑いするしかなかった。
その夜、宴はおおいに盛り上がり、村の人達も幸せそうな笑みを浮かべながら楽しんだ。
そして、宴が終わり、みんなが寝始めた頃、空き家にいるシャイン達はまだ起きていた。
「なあ、そろそろ教えてくれよ。」
自分の布団の上であぐらをかいているシャインがスノウに聞く。
「何をだよ?」
寝転んでいたスノウが起き上がり、シャインに聞き返す。
「お前と、エアルの過去。」
「あ、それ私も聞きたい。2人がどう出会ったとか知りたいし。」
宴で疲れ、スヤスヤ寝ているサテラを布団の上から優しくポン、ポンと叩いているレビィが話に入る。
「私も興味があります。」
ヒューズも話にのる。
「私はどっちでもいい。」
サナはあまり聞く気はない。
「…分かった、話すよ、俺とエアルの過去。」
そう言って、スノウは自分の過去を話し始めた。
眼鏡「皆さん、メリークリスマス!て、さっき言いましたね♪」
眼鏡「さて、次回はスノウとエアルの過去の話です。次はちゃんと次回予告通り作ります!」
眼鏡「次の投稿は正月なると思います。皆さん、よいお正月を向かえましょう!では、次回をお楽しみに!」