33話 ヴァスタリガ(4)
眼鏡「すいません少し遅れてしまい…ちょっと悩んでいたので…」
眼鏡「今回は特に進むことはないです。では、話すこともないので、早速見てください!」
次の日、シャインはアクセルヒールの部屋ではなく、違う部屋で目を覚ました。
「んっ…」
シャインはベッドの上でむくりと起き上がる。そして横を見るとスノウが寝ていた。その寝顔にシャインはイラッとし、近くにあった目覚まし時計を投げつけた。ガン!と音がして、スノウが起き、
「いってー!何しやがんだてめぇ!」
シャインの胸ぐらを掴み、ヤンキーばりに睨み付ける。
「何かムカついたからだよ!」
シャインが胸ぐらを掴み返す。そして、2人は殴り合いを始めた。それを止めたのは一本の矢と1発の銃弾だった。矢はシャインの鼻を、銃弾はスノウの鼻をかすめた。
「何やっているんですか。」
ヒューズが呆れながら弓をしまう。
「そんだけ元気だと大丈夫だね。」
アレンも一安心しながら銃を納める。
「そういえば…」
シャインとスノウが腰を回したりジャンプしたりして体を動くことを確かめる。
「俺達…」
「動ける!」
シャインとスノウが喜び合う。
「2人とも動けるようね。」
そこにイスラが入ってきた。
「イスラだったな、ありがとうな。」
シャインがニッと笑ってお礼を言う。
「じゃ、体も治ったし、行くぞ!ヴァスタリガへ!」
スノウが拳を上に突き上げて叫ぶが、ぐぅ〜と情けない音が後から響いた。
「まずは、腹ごしらえだな。」
シャインに指摘され、スノウが照れくさそうに笑う。
「ここの朝食はバイキングだから食堂に行ったら好きなだけ食べられるわよ。」
それを聞いてシャインとスノウが食堂に走っていった。
「ちょっと、食堂の場所分かってますか?」
ヒューズが2人を追いかけていった。残されたアレンとイスラが、
「ホントに…『あいつ』の息子なのよね…」
「…うん」
と、短く会話してから食堂に向かった。
シャインとスノウが食堂に入ると、SMCの者達がざわつく。
「シャイン!」
その時、料理が盛られている皿を持っているレビィがシャインとスノウの存在に気が付き、近くのテーブルに置いて2人に近付いてきた。
「レビィ、心配かけたな。」
シャインが素直に謝るので、レビィが少し戸惑ってから微笑む。
「シャイン!」
そこにテテテとサテラが走ってきて、シャインに抱き付く。
「サテラ、心配かけて悪いな。」
シャインがポンと頭を優しく叩く。
「あんたも大丈夫そうね。」
そこにサナも近付いてきてスノウに話しかける。
「ああ。」
スノウが頷く。
「たく…どんだけタフなのよ…」
サナが呆れながら席に戻って座る。
「さて、俺達も食べるか。」
そう言ってシャインとスノウは料理を取りに行った。そして皿に大盛りに乗せて席に座った。
「で、いつヴァスタリガに行くの?」
朝食を食べながらサナが尋ねる。
「今日だ。」
シャインとスノウがハモる。
「だと思った…」
サナがため息をする。
「でもどうやってヴァスタリガに入るの?」
レビィが尋ねる。
「それは普通に電車や飛行機で…」
シャインが話していると、
「無理でしょうね。」
と、サナが遮る。
「何でだよ?」
シャインがムスッとなって尋ねる。
「あんたとスノウは顔がわれてるし、向こうにとっては警戒すべき人間、入国なんてさせてくれるわけないじゃない。」
「なるほど…」
シャインが納得する。
「じゃあどうやって入国すんだよ?」
スノウが尋ねるが、全員う~んと考える。
「ここのワープ装置使ってください。」
そこにアレンが来て提案する。
「いいのか?」
スノウが聞くとアレンが頷く。
「僕もエアルさんは助けたいですから。でも、僕があなた達に加わって、ヴァスタリガを敵にまわして、僕がSMCの人間だと知られたら、SMC全体が標的になってしまうので協力はできません。ですから、せめてヴァスタリガに入るぐらい協力したいんです。」
「そうか、ありがとなアレン。」
シャインがお礼を言う。
「では、食事が済みましたら『G1エリア』と書いたとこに来てください。準備しておきます。」
と言って、アレンはG1エリアに向かうため、食堂を後にした。
「さ、早く食べようぜ。」
シャイン達は朝食を続けた。
朝食を食べ終えたシャイン達はイスラの案内のもと、G1エリアに向かっていた。
「あんた達、魔力上がったわね。」
サナがシャインとスノウを横目で見る。
「そうなのか?自分ではよく分からねぇな。」
スノウが手をグッパッとする。
「なんで上がったんだ?」
シャインがサナに尋ねる。
「多分、アクセルヒールによって平均魔力が傷の回復と同時に上がったようね。」
「ふ~ん…まあ、悪いことじゃないからいいけど。」
シャインが自分の掌を見る。
そんな話をしていると、『G1エリア』とドアの上に書いてある部屋に到着した。中に入ると、アレンが立っていた。
「準備はできています。いつでもワープ可能です。」
アレンが報告する。
「少し、いいかしら?」
シャイン達がイスラに注目する。
「あなた達が敵にしようとしているのは、何も悪事をしていない国。だからあなた達ははれて『犯罪者』になりに行くってことは忘れないでね。」
イスラが真剣の顔で忠告する。
「犯罪者…」
レビィの心がズキンと痛んだ。
「やめるなら、今しかないわよ。」
イスラが全員に問いかける。
「俺はあいつとある約束した。だから、誰に何と言われようと、俺は止まる気はねぇ。」
スノウがハッキリと言い切る。
「犯罪者…んなもん、承知の上だ。仲間を連れ戻すためなら、それくらい背負ってやる。」
シャインもハッキリと言い切る。
「乗りかかった船だしね。」
サナがはぁと呆れながら答える。
「隣に同じです。」
ヒューズがサナに同意する。
「私は…皆さんの役に立ちたいです。」
サテラが両手をグッとやって頑張るアピールをする。
「レビィちゃんは?」
イスラがレビィに尋ねる。それにより、全員がレビィに注目する。
「正直…私は犯罪者なんかになりたくないし、平穏に高校生活をしたいです。だけど、私も…エアルを連れ戻したいです。エアルは…大切な仲間だから。」
「後悔…しないのね?」
「はい。」
レビィがまっすぐイスラを見つめる。
(シャイン君と同じ目…)
イスラ小さくため息をしてから、
「もう何を言っても無駄そうね。ただもう1つ言わせて…捕まったら、殺されるからね。」
イスラのアドバイスに全員が頷く。
「じゃ、行くか。」
そう言ってシャインは、ワープゾーンの上に立ち、ワープした。それに続き、ヒューズ、サテラ、サナ、スノウ、レビィ順にワープし、ついにヴァスタリガに入った。
シャイン達がワープした先は、緑がほとんどなくなった森の中であった。空からは小さな雪がちらちらと降っている。
「さ、寒い…」
レビィが両手にはぁ~と息をあてる。
「何処だここ?」
シャインが辺りを見渡す。
「『ザファールス』の外れかしら?」
サナの言葉にシャインが首を傾げる。
「ザファールス?何処だそこ?」
「あんたね…無知にも程があるわよ…」
サナが呆れて説明する気がおきない。
「『ザファールス』とはヴァスタリガの首都です。」
ヒューズが代わりに答える。
「じゃあそこにエアルがいるんだな?」
シャインが尋ね、ヒューズが頷く。
「ここは『ルルハ』の近くだ。」
周りを見てきたスノウが全員に報告する。
「ルルハ?知らない名前ね。」
サナがそう言うと、
「何だよ、お前も無知じゃねぇか。」
と、シャインがニヤニヤしながら言う。
「う、うるさい!」
サナが怒る。
「知らないで当然だ。あまり聞く名前じゃないからな。『ルルハ』は『ザファールス』の近くにある…『奴隷』の村だ。そして…俺の『故郷』でもある。」
「故郷!?」
スノウの言葉に全員が驚く。
「てことは、お前は…奴隷だったのか?」
シャインが尋ねると、スノウが無言で頷く。
「俺のことやエアルのことは追々話す。とりあえず今はルルハに向かおう。あそこには俺の知り合いもいるからな。」
スノウの提案に全員は賛成し、シャイン達は奴隷の村、ルルハに向かうことにした。
眼鏡「いや~この話、いつまで続くんでしょうね…」
眼鏡「分かっていると思っていいますが、この話は最終章ではありませんよ。」
眼鏡「さて、後書きでも話すことはないので次回予告を。次回から本格的にヴァスタリガを冒険します。」
眼鏡「では、次回をお楽しみに!」