28話 魂を喰らう炎(2)
シ「最近思うのだが、どんどん内容がややこしくなってきてないか?」
ス「それ、俺も思った。内容が複雑になって、学園ものじゃなくなってきたぞ。」
エ「いっそジャンルを『学園』から『ファンタジー』に変えればいいのにね。」
サ「出演している私達すら訳が分からないわ。」
ヒ「ちゃんと最終的にどうなるとか考えているんでしょうかね。」
レ「み、みんな言いたい放題ね…」
サナにサテラを調べてもらうため、サテラをおんぶしているシャインとミリアは龍空高校に歩いていた。その間にシャインはミリアに革命軍について話していた。
「じゃあ、その革命軍はこの世から魔法が使えない人間を消そうとしているのね?」
「大まかに説明するとな。」
「それで、それを可能にできる装置、ビッグバンを起動するには絶滅魔法の魔力が必要ってわけね?」
「そうだ。お前も絶滅魔法が使えるんだから、少しは警戒しとけよ。」
「うん。………バージェスにも言っとこうか?蛇帝と虎神近いし…」
ミリア少しためらったが聞いてみた。シャインはバージェスの名前を聞いて足を止め、少し考えてから、
「………一応頼む。あいつもいずれ巻き込まれる人間だからな。」
そう答えて、また歩き出した。
「分かった。」
一緒に止まっていたミリアも了解して歩き出した。
そこから数分歩くと、龍空高校が見えてきた。
「ここだ。」
シャインが正門の前で足を止める。
「私龍空高校に入るの初めて〜ちょっとドキドキする。」
ミリアが中をキョロキョロ見ながらはしゃぐ。
2人は中に入り、女子寮に向かった。
「へぇ~キレイ~うちよりキレイかも。」
中に入ってもキョロキョロしているミリアを、
「おい、あんまりウロウロするな。」
シャインが注意する。ミリアは素直に従い、シャインの隣を歩く。そして、
「着いた。」
キレイな建物の前で止まった。
「キレイ〜」
ミリアが見上げる。
「さて、ここからが問題だ。」
シャインの言葉に首を傾げながら、
「何が問題なの?」
と、尋ねる。
「男子は女子寮に、女子は男子寮に入ることは固く禁じられてんだ。これを犯し、教師に見つかった者は単位がえげつないことになるらしい。だから、ミリアやサテラが入れても、俺は入れねぇんだ。」
「バレなきゃいいんでしょ?」
「簡単に言いやがって…」
シャインがはぁとため息をつく。その時、ミリアは女子寮の食堂に男子がいるのを発見した。
「あれ?食堂は入っていいの?」
「ん?ああ、食堂は何故かいいんだ。理由は不明だが。」
「なんか適当ね…」
「校長がバカなんだ。」
シャインは校長をバカ呼ばわりしてから、
「さて、マジでどうするっかな?」
シャインがう~ん…と考える。
「男子禁制の華園の前で何やってんのよ?」
2人が考えていると、突然声をかけられた。ビクッとなりながら振り返ると、何かの研究に使うであろう奇妙な薬品が入っている段ボールを抱えているサナが、半目でこちらを見ながら立っていた。
「サナ!ちょうどいい。お前に少し頼みたいことがあるんだ。」
「私に?」
「こいつのこと、調べて欲しいんだ。」
シャインが背中で気を失っているサテラを見せる。
「誰よその子?」
「説明は中でするから、どうにかして俺を寮に入れてくれ。」
「別に寮に入らなくて大丈夫よ。」
「何だと?」
サナの答えを聞いて、シャインの眉がピクッと動いた。
「こっち来て。」
サナは寮の隅に向かっていった。シャインとミリアは首を傾げ、訳も分からないまま後を付いていった。
「ここよ。」
到着したのは、女子寮の隣にある小さな林の中であった。
「ここに何があるんだよ?」
シャインが尋ねると、サナは段ボールを置いて、草をガサガサとのけると、下から地下に入れそうなハッチが現れた。
「何、このハッチ?」
ミリアが尋ねる。
「私の研究室の入り口。」
サナがギ〜っとハッチを開けながら答える。中には下に行ける階段が続いていた。
「さ、早く入って。この光景を教師達に見られたら怒られる。」
置いていた段ボールを再度持ち、サナは階段を下っていく。
「なんかわくわくしてきた。」
ミリアが目を輝かせながら階段を下っていった。
(無断で作ったなこいつ…)
シャインは呆れてから、ハッチを閉めて、階段を下っていった。
階段を一番下まで下りると、まあまあ広い部屋があった。そこには研究に使ういろんな用具が置いてある。
「うわ~、すっご〜い。」
ミリアが謎の液体がコポコポしている試験管を触ろうとすると、
「むやみに触ると死ぬわよ。」
と、サナが脅す。ミリアはビクッ!と手を引っ込めた。
「とりあえず、その背中の子を真ん中の台の上に寝かして。」
段ボールを隅に置きながら、サナがシャインに指示する。シャインは言われた通り、サテラを部屋の真ん中にある台に寝かした。
「確かこの棚に…」
その間にサナは、難しそうな本が並んでいる本棚を探り、1冊の本を取り出してきた。
「さて、調べるわよ。」
サナはサテラが寝ている隣でその本を開けた。
「ああ。」
シャインが頷く。
「[データスキャン]。」
サナが唱えると、サテラの下に魔法陣が現れ、調べ始めた。
同じぐらいの時間、何処かにある基地の大きな部屋に、フォーグ達は集結していた。
「お前がいて何故サテラを連れてこれなかった?」
王座に座っているフォーグが前に立っているカギスタに尋ねる。
「すいません、閃風の坊っちゃんに邪魔されてしまって。」
カギスタが面目無いと謝る。
「その代わり、いい情報もって帰ってきましたよ。」
カギスタがニヤリと笑う。
「いい情報だと?」
「閃風の坊っちゃんと一緒にいた青色のポニーテールの嬢ちゃんが、神魔法、水神魔法が使えました。」
「神魔法だと?」
流石のフォーグも驚いた。
「その女の名前は?」
その質問に、カギスタはピタッと黙り、汗を流す。
「そういうとこが、お前のダメだとこだ。」
「はい…」
フォーグに怒られ、カギスタがしゅんとなる。
「イルファ、その女のこと調べておけ。」
フォーグが、王座の隣にいたイルファに命令すると、
「かしこまりました。」
イルファは頷いて、部屋を出ていった。
「!そうだボス、もうひとつ情報が…」
カギスタが何かを思い出す。
「なんだ?」
あまり聞く気のない顔をしながらフォーグが一応尋ねる。
「あの閃風の坊っちゃん、『闇落ち』しかけてます。」
「闇落ちだと?」
フォーグが聞く耳をたてた。
「確か閃風魔法が闇落ちすると、『目が燃えている』ようになるんですよね?」
「ああ。」
「閃風の坊っちゃん、能力解放した時、左目だけ燃えていました。」
「…なるほど、どれだけ正義の人間でも、心のどこかには闇があると言うことか…」
そう言いながらフォーグは王座を立ち、
「監視はしておけ。暴走されたら面倒だ。」
そう命令を言い残して、部屋を出ていった。
「了解しました。」
カギスタはフォーグの背中を見送った。
その頃、龍空高校に無断に作られた地下の研究室では、サテラの診断が終了しており、サナはサテラのデータを見ていた。
「この子凄いわね。12歳でこんな高い魔力を持っているなんて。」
「そんなになのか?」
壁にもたれ掛かって、お茶をすすっているシャインが尋ねる。
「ええ。魔力だけ見ると、シャインやミリアより上よ。」
それを聞いて、シャインはブハッとお茶を吹いた。
「マジかよ…」
シャインが苦笑いする。
「それで、結局サテラの魔法ってどんな魔法なの?」
「この魔力の数値と、あんた達の証言を聞いて、1つの魔法にたどり着いたわ。」
サナが机に本を開けた。それをシャインとミリアは覗き込んだ。
「名前は『青幽鬼魔法』。別名…『魂を喰らう炎』よ。」
「魂を…」
「喰らう炎?」
シャインとミリアが一緒に首を傾げる。
「そう。サテラが放した青い炎に包まれたら、魂が抜かれ、焼かれ、死んでしまう。」
「そういや、青い炎に包まれたあの巨大の男、死んでたな。」
シャインが思い出した。
「でも、野原一面が枯れたのとなんか関係あるの?」
ミリアが尋ねる。
「草花だって生きてるんだから死ぬでしょ?草が死ぬってことは枯れるってこと。分かった?」
サナの答えを聞いて、ミリアは納得して頷いた。
「これも絶滅魔法なのか?」
「ええ。でも私はこの子の魔法より、この子の記憶が気になるわ。」
「記憶?」
「そう。この子、記憶が途中でなくなっているの。」
「記憶喪失ってこと?」
ミリアが聞き、サナがコックリと頷いた。
「仮説だけど、記憶がないせいで、魔法がコントロール出来ないんだと思うわ。」
「ますます分からないな…サテラっていう存在が…」
3人が寝ているサテラを見ていると、
「ん…ここは…?」
サテラが台の上で目を覚まし、ムクリと起き上がり、キョロキョロと周りを見渡す。
「おっ、やっと気が付いたか。」
シャインがサテラに近付く。いきなり話しかけられたサテラはビクッ!となるが、シャインと分かると、安心した顔になった。
「ちょうどいいわ。本人に聞くのが一番だから、サテラ、今から少し質問に答えてちょうだい。」
サナがサテラに話しかけるが、サテラは首を傾げ、
「あの…どなた…ですか?」
と、サナに尋ねた。
「……そういえば初対面だったわね。」
サナがあ〜、と思い出した。
「とりあえず、今の状況を説明するな。」
シャインはサナの紹介と、サテラが気を失っている間の出来事を話した。
「……てな訳だ。大体分かったか?」
シャインが尋ねると、サテラはコクンと頷いた。
「サテラちゃん、ホントに記憶ないの?」
ミリアが心配する。
「……小さい時の記憶は、あやふやになっています。」
サテラが小さい声で答える。
「昔、強く頭を打ったとかない?」
サナが尋ねると、サテラがう~ん…と考え始める。そこから20分ぐらい経って、
「分からない…です。」
と、首を振った。
「え、えらく時間かけたわね…」
サナがげんなりする。
「じゃあ、なんで青幽鬼魔法が使えるかも分からないの?」
ミリアが聞くと、サテラは申し訳なさそうに頷く。
「コントロールは出来ないが、魔法は発動してるってことは、何か条件が揃った時に発動するんだろ。サテラ、炎が発動した時の気持ちとか、場面とかは思い出せねぇか?」
シャインが尋ねると、サテラはまたう~ん…と考え始め、
「怖い気持ちでした。」
今度はすぐに答えた。
「なるほど。」
それを聞いてサナが閃いた。
「どうした?」
シャインがサナに尋ねる。
「怖い気持ち、つまり恐怖が頂点に達した時に、勝手に発動するようね。」
「なるほど。」
シャインとミリアとサテラがなるほどと頷いた。
「とりあえず、調査はこれで終了。あんた達早く帰って。」
サナが机に座って、手でシッシッとする。
「んだよ、もう追いやられるのかよ…」
シャインがブーブー言う。
「もう用は済んだでしょ?ここに居られたら研究の邪魔なの。」
サナは背中を向けたままである。
「まあいいか、ありがとなサナ。」
シャインはサテラを連れて、階段を上がっていった。ミリアも帰るために階段を上がろうとした時、
「ちょっと待って。この際だからあんたに聞きたいことがあるの。」
と、サナが振り返りながら呼び止めた。
「何?」
「あんた、なんで私の正体が分かったの?」
一瞬ピリッと緊張が走ってから、ミリアは答えた。
「感じる魔力が違うの。」
「魔力が違う?でも魔力は人によって違うもの、それだけで分かったとは…」
「サナの言う通り、魔力は人によって違うもの、だから魔力の感じを覚えておくと、その人がどこにいるか、どれだけ強くなったなどが遠くにいても分かる。これを通称魔力察知と言う。だけど魔力なんて原点を見れば皆同じ源からできているもの。源だけ見れば誰が誰だか分からない。だけど、サナはその源自体が違うの。」
「そんなのどうやって分かったのよ?」
「私は魔力察知で源まで分かるぐらい長けているらしいわね。私も最近気が付いたけど。」
「おーい、何してんだミリアー?」
2人が話しているとこに、シャインの呼ぶ声が飛び込んできた。
「最後に私からも1つ質問。いつまでシャン達に黙っとくの?」
「……時が来れば。って言っておくわ。」
「おーい!ミリアー!」
シャインの呼ぶ声が大きくなる。
「ゴメン!今行く!」
ミリアは返事をして、階段を上がる途中で立ち止まり、
「サナって敵?味方?」
と、尋ねると、
「1つって言わなかった?」
と、サナに言われ、ミリアはそこから何も言わずに階段を上がっていった。1人になったサナは、再度サテラのデータを見て、
(このデータを見るからにして、サテラの記憶、『封印』されている。だけど、誰が何の目的に…?)
サナがペン回しをしながら考える。
【サナって敵?味方?】
サナの脳裏にミリアの言葉がよぎる。
(敵か…味方か…か…できればまだ…味方でいたいかな…)
サナはそんなことを思ってから、研究を始めた。
外に出てきたシャインとミリアとサテラは太陽の光に目を細める。
「さてと、サテラちゃんをどうするのシャン?」
ミリアに尋ねられ、シャインが頭をかきながらサテラを見、
「このまま野放しってわけにはいかないしな~」
と、困る。
「サテラ、お前はどうしたい?」
シャインがサテラに尋ねる。サテラはう~ん…と考えから、シャインの裾をキュッと持ち、
「シャインと居たいです。」
と言って、シャインの顔を見上げながらニコッと笑った。
「そうか。」
シャインはニヤッと笑い返した。
「居たいってサテラちゃんどこに住むのよ?」
ミリアが尋ねる。
「俺の家。」
シャインが即答する。
「ええ!?い、いいのサテラちゃん!?」
サテラはコクンと頷いた。
「い、いいんならいっか…シャン!変なことしちゃダメだよ!」
「するかバカ。」
3人は笑い合いながら龍空高校を後にした。
シャイン達の中に、また新しい仲間が増えた。
シ「前話からの新キャラ、サテラ・オパールでーす。」
サ「よ、よろしくお願いします。」
エ「本編より先に後書きで会っちゃっていいのかな~?」
サ「別にいいんじゃない?」
レ「あれ?今サテラちゃん喋った?」
サ「わ、私まだ喋っていません。」
サ「私が喋ったの。」
レ「あ、サナが喋ったんだ。」
サ「そうよ。逆にどう間違えるのよ。声全然違うじゃない。」
ヒ「小説は活字ですからね。読者に声は聞こえません。だから誰が喋っているかはカッコの前の一文字で表しています。」
エ「あっ!『サナ』も『サテラ』も一文字目『サ』だから分からないのか!」
ヒ「そういうことです。」
ス「じゃあどっちかが表現を変えなきゃいけないな。」
シ「サナは二文字だからサナが変えればいいんじゃねぇか?」
サ「イヤ。」
シ「即答かよ…」
サ「あ、あの、私そんなに前書きにも後書きにもでないので、私を『サテ』で表したらいいんじゃないでしょうか?」
シ「いいのか?」
サテ「はい。」
エ「あっ、早速変わった。」
レ「ま、何はともあれ、次回をお楽しみに!」
ス「強引にしめたな…」